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第3章 盗まれた作品
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未来はパソコンから吐き出されたデータに嫌そうにため息を吐いた。
未来が今見ているのは、Aria所属の中でも警察関係の協力者に与えられるチャット系アプリで、だいたいの情報のやり取りはここでされる。このアプリさえあれば、警察関係の協力者同士とのチャットのやり取りはもちろん、現在未解決の事件のデータベースも見る事が出来る。未来も見た夢の中で事件性があるものはこちらのデータベースで確認をし、情報提供をする。その情報の有用性が認められればAriaから謝礼金が振り込まれることとなっている。
このアプリがあるからか、未来はもちろん弥生もAria所属の人間と直接かかわることはほとんどない。やり取りではハンドルネームを使用してはいるが、本名は知っている人もいる。もちろん知らない人間も多いが。相手がどんな人間か全くわからない、というタイプのチャットではないため自分の個人情報を隠そうとする人はあまりいない。
未来はこの中でコンピューターがあれば、ネットでわかる情報に関しては完ぺきに集めることができるという天才プログラマーの能力者、宮前(みやまえ)一樹(かずき)、通称ファーストに調査を依頼していた。今時点で未来や弥生が知り得た情報を元に調べてもらったのだ。その結果を目にした未来は嫌悪感を隠すことができなかった。それは弥生も同じなのだろう、本当に、心底嫌そうに顔を顰めていた。
「はぁ」
大きくため息をついた未来の背後で軽くノックする音が聞こえ、姉の奈々子が顔を出す。
「未来、お客さん」
「客?誰?」
今日誰かが来る予定なんてなかったはずだが……
「この間来てた……学校の先生」
「榊原、先生?」
小さく頷いた姉に未来は思わず声を上げた。確か、爆弾を落としたまま放置していた気がする。山内美穂の身辺調査に入ったため、半無理やり協力させていた榊原の存在をきれいさっぱり忘れてしまったのだ。
「やば……」
「入ってもらったら?協力してもらえばいいんじゃない?」
弥生の言葉に未来は慌てて頷いた。
「お姉ちゃん、入れて」
「いいの?」
「平気、Ariaで私と同じ警察系協力者だから」
驚いたように目を瞬いた姉が部屋から出ていく。すぐに榊原を呼んできてくれるだろう。
「ようこそ、Aria臨時対策本部へ」
「は?」
「何それ?」
榊原が部屋に入って来るなり告げた未来に榊原が怪訝そうな表情を浮かべ、弥生が不機嫌そうにため息をつく。どこか冷たい印象を残す弥生の表情はAriaの会議室で初めて顔を合わせた時と同じだった。弥生のこんな顔は久しぶりに見た。多分、初めの内だけだろうが、彼女が榊原になれるまではしばらく窮屈な思いをしそうだ……。
今日の榊原はいつもとは違い、瓶底メガネをしていなかった。髪型はボサボサ状態のままだが、顔が見える分雰囲気が大分変って見える。未来はこの榊原にも慣れているが、姉はよく気付いたな。
「先生、まず紹介します。彼女は……」
「草凪弥生、あなたにはレティと言った方がわかり易いかもしれないけど」
淡々と告げた名に榊原の目が見開かれる。その名前には覚えがあったらしい。もっとも榊原も警察系協力者用のアプリを利用しているのだから当たり前だと思うが。ここには本名が表示されることはあまりないが、ハンドルネームは絡む、絡まないにかかわらず登録者全員分が表示されている。それに、未来が弥生を通して榊原に今回の復讐劇の指示文を送ってもらっているのだ。……そのせいで初めから印象最悪、だろうが。
「協力をする、とは言ったが、あれは俺にとっては不得意分野だ」
不機嫌そうに告げる榊原に小さく頷いた。そんなことは知っている。相手があの山内美穂でなければ未来もそんな方法を取ろうとは考えなかった。もっとも今の今まで榊原に「色仕掛け」の指示を送っていたことをきれいさっぱり忘れていたが。
「先生、ごめんなさい。あれ、私の指示です」
「知ってる」
「あと、計画変更になりました。その前にやらないといけない事が出来たので」
弥生と未来の間に座るように告げる。この部屋にあるテーブルは勉強・パソコンデスクの他は丸テーブルが一つだけだ。未来と弥生はその丸テーブルに向かい合うように座っているので、必然的に榊原の席は二人の間になってしまう。一瞬嫌そうに顔を顰めた榊原が、それでも軽く頷いて腰を下ろした。その前に今見ていた資料を置く。
「何だ?」
「山内孤児の実態調査票」
「山内孤児?」
「山内美穂の家で、七尾さんが育った場所」
榊原が軽く目を瞬く。
「七尾が孤児院育ちなのは知っていたが……そんなところ繋がりか」
小さく呟いた榊原が資料に目を通す。その表情がだんだんと険しくなってきた。資料の内容を知る未来からすればその表情が当然だ。この資料はそれだけ胸糞悪い。
「……なんだ、これ?こんな孤児院があっていいのか?」
「私もビックリしました。みなし部屋、という部屋があるのは七尾さんから聞いていましたが、七尾さん自身も、山内美穂の母親の意にそぐわない人間が行く場所、と表現していましたし、事実そうなんでしょうが……」
「意にそぐわない、ようは従順に従ってくれない子ども、という事か。初めから無理そうだと思ったらみなし部屋。もし、やってみて無理そうだと感じたら地下牢……か。秘密が洩れないようにするためとはいえ……」
「今、表に残っている子供たちの内、ある程度の年齢に達した子供たちはみんな、商品ってわなのね。……七尾さんは比較的早い段階でみなし部屋に行ったらしいけど、その原因は山内美穂。正確には七尾さんが彼女とのかかわりを絶つことに抵抗したから、みたいね。これを見て考えれば七尾さんのその行動は正しかったわけだけど」
もし、七尾が美穂と関わることを控えるようなことがあれば、七尾もまた商品となっていた可能性がある。今表にいる子供たちは十五人、みなし部屋が十人、今までに引き取り手が見つかったという理由で孤児院を去ったのが五人。その五人の内何人が本当に引き取られて行ったのかわからない。宮前といえど、地下にいる人間の数や、今現在どうなっているのかまでは調べきれなかった。これは直接行って調べる必要がある。ただし……
「これは、直接調べるにしても、乗り込むにしてもAriaか警察の力がいるな。それがなければまずい」
「トウマさんに頼んで警察に動いてもらう。……孤児院や院長は警察に任せて、私たちは山内美穂と話をする」
トウマ、本名は知らないが現職の警察官であり、Aria所属であり、そして警察系協力者のリーダーだ。彼が動くという事は警察が動く。きっと大きな騒ぎになるだろうが、事がここまでになってしまえば未来たちにできる事はない。
未来が今見ているのは、Aria所属の中でも警察関係の協力者に与えられるチャット系アプリで、だいたいの情報のやり取りはここでされる。このアプリさえあれば、警察関係の協力者同士とのチャットのやり取りはもちろん、現在未解決の事件のデータベースも見る事が出来る。未来も見た夢の中で事件性があるものはこちらのデータベースで確認をし、情報提供をする。その情報の有用性が認められればAriaから謝礼金が振り込まれることとなっている。
このアプリがあるからか、未来はもちろん弥生もAria所属の人間と直接かかわることはほとんどない。やり取りではハンドルネームを使用してはいるが、本名は知っている人もいる。もちろん知らない人間も多いが。相手がどんな人間か全くわからない、というタイプのチャットではないため自分の個人情報を隠そうとする人はあまりいない。
未来はこの中でコンピューターがあれば、ネットでわかる情報に関しては完ぺきに集めることができるという天才プログラマーの能力者、宮前(みやまえ)一樹(かずき)、通称ファーストに調査を依頼していた。今時点で未来や弥生が知り得た情報を元に調べてもらったのだ。その結果を目にした未来は嫌悪感を隠すことができなかった。それは弥生も同じなのだろう、本当に、心底嫌そうに顔を顰めていた。
「はぁ」
大きくため息をついた未来の背後で軽くノックする音が聞こえ、姉の奈々子が顔を出す。
「未来、お客さん」
「客?誰?」
今日誰かが来る予定なんてなかったはずだが……
「この間来てた……学校の先生」
「榊原、先生?」
小さく頷いた姉に未来は思わず声を上げた。確か、爆弾を落としたまま放置していた気がする。山内美穂の身辺調査に入ったため、半無理やり協力させていた榊原の存在をきれいさっぱり忘れてしまったのだ。
「やば……」
「入ってもらったら?協力してもらえばいいんじゃない?」
弥生の言葉に未来は慌てて頷いた。
「お姉ちゃん、入れて」
「いいの?」
「平気、Ariaで私と同じ警察系協力者だから」
驚いたように目を瞬いた姉が部屋から出ていく。すぐに榊原を呼んできてくれるだろう。
「ようこそ、Aria臨時対策本部へ」
「は?」
「何それ?」
榊原が部屋に入って来るなり告げた未来に榊原が怪訝そうな表情を浮かべ、弥生が不機嫌そうにため息をつく。どこか冷たい印象を残す弥生の表情はAriaの会議室で初めて顔を合わせた時と同じだった。弥生のこんな顔は久しぶりに見た。多分、初めの内だけだろうが、彼女が榊原になれるまではしばらく窮屈な思いをしそうだ……。
今日の榊原はいつもとは違い、瓶底メガネをしていなかった。髪型はボサボサ状態のままだが、顔が見える分雰囲気が大分変って見える。未来はこの榊原にも慣れているが、姉はよく気付いたな。
「先生、まず紹介します。彼女は……」
「草凪弥生、あなたにはレティと言った方がわかり易いかもしれないけど」
淡々と告げた名に榊原の目が見開かれる。その名前には覚えがあったらしい。もっとも榊原も警察系協力者用のアプリを利用しているのだから当たり前だと思うが。ここには本名が表示されることはあまりないが、ハンドルネームは絡む、絡まないにかかわらず登録者全員分が表示されている。それに、未来が弥生を通して榊原に今回の復讐劇の指示文を送ってもらっているのだ。……そのせいで初めから印象最悪、だろうが。
「協力をする、とは言ったが、あれは俺にとっては不得意分野だ」
不機嫌そうに告げる榊原に小さく頷いた。そんなことは知っている。相手があの山内美穂でなければ未来もそんな方法を取ろうとは考えなかった。もっとも今の今まで榊原に「色仕掛け」の指示を送っていたことをきれいさっぱり忘れていたが。
「先生、ごめんなさい。あれ、私の指示です」
「知ってる」
「あと、計画変更になりました。その前にやらないといけない事が出来たので」
弥生と未来の間に座るように告げる。この部屋にあるテーブルは勉強・パソコンデスクの他は丸テーブルが一つだけだ。未来と弥生はその丸テーブルに向かい合うように座っているので、必然的に榊原の席は二人の間になってしまう。一瞬嫌そうに顔を顰めた榊原が、それでも軽く頷いて腰を下ろした。その前に今見ていた資料を置く。
「何だ?」
「山内孤児の実態調査票」
「山内孤児?」
「山内美穂の家で、七尾さんが育った場所」
榊原が軽く目を瞬く。
「七尾が孤児院育ちなのは知っていたが……そんなところ繋がりか」
小さく呟いた榊原が資料に目を通す。その表情がだんだんと険しくなってきた。資料の内容を知る未来からすればその表情が当然だ。この資料はそれだけ胸糞悪い。
「……なんだ、これ?こんな孤児院があっていいのか?」
「私もビックリしました。みなし部屋、という部屋があるのは七尾さんから聞いていましたが、七尾さん自身も、山内美穂の母親の意にそぐわない人間が行く場所、と表現していましたし、事実そうなんでしょうが……」
「意にそぐわない、ようは従順に従ってくれない子ども、という事か。初めから無理そうだと思ったらみなし部屋。もし、やってみて無理そうだと感じたら地下牢……か。秘密が洩れないようにするためとはいえ……」
「今、表に残っている子供たちの内、ある程度の年齢に達した子供たちはみんな、商品ってわなのね。……七尾さんは比較的早い段階でみなし部屋に行ったらしいけど、その原因は山内美穂。正確には七尾さんが彼女とのかかわりを絶つことに抵抗したから、みたいね。これを見て考えれば七尾さんのその行動は正しかったわけだけど」
もし、七尾が美穂と関わることを控えるようなことがあれば、七尾もまた商品となっていた可能性がある。今表にいる子供たちは十五人、みなし部屋が十人、今までに引き取り手が見つかったという理由で孤児院を去ったのが五人。その五人の内何人が本当に引き取られて行ったのかわからない。宮前といえど、地下にいる人間の数や、今現在どうなっているのかまでは調べきれなかった。これは直接行って調べる必要がある。ただし……
「これは、直接調べるにしても、乗り込むにしてもAriaか警察の力がいるな。それがなければまずい」
「トウマさんに頼んで警察に動いてもらう。……孤児院や院長は警察に任せて、私たちは山内美穂と話をする」
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