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第3章 盗まれた作品
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警察が孤児院に踏み込む当日、朝早くから弥生と彰禧が未来の部屋に集合した。孤児院の家宅捜索終了後にトウマから報告書が未来のパソコンに送られてくることとなっている。
本当は弥生と未来の力で捕物帳を見に行く予定にしていた。だが、弥生が力を使ったところ未来ともどもはじかれてしまった。強い結界の能力者が孤児院全体に結界を発動していたらしい。未来たちの力から覗きに行くことを懸念して、という事なのだろう。いくら協力者として所属していたとしても未来も弥生もまだ未成年で、警察官でもない。そのため捕物帳に関しては蚊帳の外に置くこととしたのだろう。
ピピピ、とパソコンが小さな音を立てたのは三人が集まってから三時間ほどたってからだった。捕物帳は朝の八時に始まると聞いていたので未来たちは自然八時前に全員が集合した。別に示し合せていたわけでもないのだが、未来はもちろんそうだが、他の二人も気になっていたのだろう。そんな未来たちの表情を見たからなのか、奈々子は本来開店する予定だったお店を「研究日」としてくれた。個人経営なのと、店主である奈々子が創作料理人ということもあり研究日としてお店を休みにする日が多々あるが、だいたいは前日までに休みを決めている。だが、たまに突然休みになることもあるため、常連客はそのたま~にを大して気にしなかったりする。それには突然「研究日」とした日には扉の前に「試食会への優待券」を入れているからだろう。それを持ってきた人間は抽選待ちをせずに奈々子発案の料理の試食会に参加することが可能となっている。
パソコンが音を立てると同時に三人の視線が一瞬でパソコンに向かう。未来は慌ててメッセージを受け取ると、トウマからの今日の報告書が送られてきていた。印刷をしながら目を通した未来が小さく息を呑む。読むであろう未来や弥生に対する配慮からか報告書には一切写真が貼られてはいないが、内容は想像以上に胸糞悪い物だった。
「未来?」
「……印刷もするけど、まず山内美穂の母親は捕まった。罪状は殺人罪……もちろん余罪有だけど」
「「殺人?」」
弥生と榊原の声がきれいにハモル。その気持ちは未来も痛いほどわかった。この報告書を読む前は、彼女の罪状は「売春斡旋」や「虐待」くらいだと思っていた。殺人罪、というのは予想外なのだ。
「……あの女が、みなし部屋の子ども達にはろくな食事も与えていなかったことや、表の子どもたちに売春をさせていた事は私たちが調べたけど、問題は地下……。全くわからなかったでしょ?それもそのはず、その女地下に放り込んだなり一切かかわらなかったらしいわ。地下に……子供の遺体があったって」
顔をゆがめて告げた未来に弥生たちの表情も歪む。本当に胸糞悪い。
「後、それを七尾さんと山内さんが見たらしくて、ショックを受けてるからこっちに連れてくるそうよ」
その部屋に入れられてどのくらい経ったのかにもよるが、腐敗しているであろう子供の遺体を見て平気でいられる人間がいたら正気を疑う。特にあの子たちのような高校生が平然としていたらそれは人ではなく悪魔だ。それに……その中には……
小さな着信音が流れる。未来が慌てて顔を上げるのと弥生が出るのが同時だった。音が同じだったため未来の携帯かと思ったがどうやら弥生の携帯電話だったらしい。
「はい……わかりました」
しばらく通話をしていた弥生が憂鬱そうな表情を浮かべて顔を上げた。今日は朝から疲れたような顔しかしていない気がする。もっとも、この状況ではしゃげるわけもないが。
「弥生?」
「トウマさんから。途中で山内さんが倒れたので病院へ連れて行くそうよ。……面会は最低でも明日以降ですって」
山内美穂は自分が見た光景に耐える事が出来なかったのだろう。
「七尾は?」
しばらく空気と化していた榊原の問いに弥生が困ったように笑う。
「ついていくって。今の美穂を一人には出来ない、と離れないそうよ。トウマさんも今日は来れないみたい。……子供たちの行き先が決まったらまた連絡をするそうだけど……」
弥生が困ったように笑う。多分みなし部屋の小さな子供たちの行き先は直ぐに決まるだろう。他の、まともな孤児院に移ることになる。でも、表で売春をさせられていた子ども達はまともに生活できるようになるまでに相応にかかるはずだ。彼女たちにまず必要なのは“カウンセリング”だ。彼女たちの地獄は孤児院が決まってから始まるのかもしれない。普通の孤児院、普通の子どもたちがどういうものなのか、その子たちはこれから知っていかなければならない。その中で、「自分たちが何をさせられていたのか」も知ることになるだろう。
「その中で高校生以上は……七尾と山内だけか?」
「ええ。彼女たちは孤児院に入るか……それとも何かしらの援助を受けて一人暮らしするか……すべては山内さんが目を覚ましてから、だけど、既に高校生の彼女たちを受け入れてくれる孤児院があるかは……」
そう、元々小学生、中学生であれば高校卒業までは面倒を見てくれる。でも、既に高校生となると今更受け入れてくれる孤児院があるかもわからない。あったとしても、彼女たちが再び共同生活を望むかも不明だ。しかも、山内美穂は犯罪者の子として見られる可能性もある。共に過ごす子供たちが知らずとも、孤児院に勤める大人は皆知ることになるはずだ。二人は、既に高校二年生。今後の事は自分で考えられる年齢ではある。……精神が元に戻れば、だが。
「命を落とした子供達の中には、山内美穂の妹もいたって。……離婚した父親に引き取られたと山内さんには説明していたらしいけど……」
未来が落とした最後の爆弾に、榊原と弥生が今度こそ言葉を失う。
本当は弥生と未来の力で捕物帳を見に行く予定にしていた。だが、弥生が力を使ったところ未来ともどもはじかれてしまった。強い結界の能力者が孤児院全体に結界を発動していたらしい。未来たちの力から覗きに行くことを懸念して、という事なのだろう。いくら協力者として所属していたとしても未来も弥生もまだ未成年で、警察官でもない。そのため捕物帳に関しては蚊帳の外に置くこととしたのだろう。
ピピピ、とパソコンが小さな音を立てたのは三人が集まってから三時間ほどたってからだった。捕物帳は朝の八時に始まると聞いていたので未来たちは自然八時前に全員が集合した。別に示し合せていたわけでもないのだが、未来はもちろんそうだが、他の二人も気になっていたのだろう。そんな未来たちの表情を見たからなのか、奈々子は本来開店する予定だったお店を「研究日」としてくれた。個人経営なのと、店主である奈々子が創作料理人ということもあり研究日としてお店を休みにする日が多々あるが、だいたいは前日までに休みを決めている。だが、たまに突然休みになることもあるため、常連客はそのたま~にを大して気にしなかったりする。それには突然「研究日」とした日には扉の前に「試食会への優待券」を入れているからだろう。それを持ってきた人間は抽選待ちをせずに奈々子発案の料理の試食会に参加することが可能となっている。
パソコンが音を立てると同時に三人の視線が一瞬でパソコンに向かう。未来は慌ててメッセージを受け取ると、トウマからの今日の報告書が送られてきていた。印刷をしながら目を通した未来が小さく息を呑む。読むであろう未来や弥生に対する配慮からか報告書には一切写真が貼られてはいないが、内容は想像以上に胸糞悪い物だった。
「未来?」
「……印刷もするけど、まず山内美穂の母親は捕まった。罪状は殺人罪……もちろん余罪有だけど」
「「殺人?」」
弥生と榊原の声がきれいにハモル。その気持ちは未来も痛いほどわかった。この報告書を読む前は、彼女の罪状は「売春斡旋」や「虐待」くらいだと思っていた。殺人罪、というのは予想外なのだ。
「……あの女が、みなし部屋の子ども達にはろくな食事も与えていなかったことや、表の子どもたちに売春をさせていた事は私たちが調べたけど、問題は地下……。全くわからなかったでしょ?それもそのはず、その女地下に放り込んだなり一切かかわらなかったらしいわ。地下に……子供の遺体があったって」
顔をゆがめて告げた未来に弥生たちの表情も歪む。本当に胸糞悪い。
「後、それを七尾さんと山内さんが見たらしくて、ショックを受けてるからこっちに連れてくるそうよ」
その部屋に入れられてどのくらい経ったのかにもよるが、腐敗しているであろう子供の遺体を見て平気でいられる人間がいたら正気を疑う。特にあの子たちのような高校生が平然としていたらそれは人ではなく悪魔だ。それに……その中には……
小さな着信音が流れる。未来が慌てて顔を上げるのと弥生が出るのが同時だった。音が同じだったため未来の携帯かと思ったがどうやら弥生の携帯電話だったらしい。
「はい……わかりました」
しばらく通話をしていた弥生が憂鬱そうな表情を浮かべて顔を上げた。今日は朝から疲れたような顔しかしていない気がする。もっとも、この状況ではしゃげるわけもないが。
「弥生?」
「トウマさんから。途中で山内さんが倒れたので病院へ連れて行くそうよ。……面会は最低でも明日以降ですって」
山内美穂は自分が見た光景に耐える事が出来なかったのだろう。
「七尾は?」
しばらく空気と化していた榊原の問いに弥生が困ったように笑う。
「ついていくって。今の美穂を一人には出来ない、と離れないそうよ。トウマさんも今日は来れないみたい。……子供たちの行き先が決まったらまた連絡をするそうだけど……」
弥生が困ったように笑う。多分みなし部屋の小さな子供たちの行き先は直ぐに決まるだろう。他の、まともな孤児院に移ることになる。でも、表で売春をさせられていた子ども達はまともに生活できるようになるまでに相応にかかるはずだ。彼女たちにまず必要なのは“カウンセリング”だ。彼女たちの地獄は孤児院が決まってから始まるのかもしれない。普通の孤児院、普通の子どもたちがどういうものなのか、その子たちはこれから知っていかなければならない。その中で、「自分たちが何をさせられていたのか」も知ることになるだろう。
「その中で高校生以上は……七尾と山内だけか?」
「ええ。彼女たちは孤児院に入るか……それとも何かしらの援助を受けて一人暮らしするか……すべては山内さんが目を覚ましてから、だけど、既に高校生の彼女たちを受け入れてくれる孤児院があるかは……」
そう、元々小学生、中学生であれば高校卒業までは面倒を見てくれる。でも、既に高校生となると今更受け入れてくれる孤児院があるかもわからない。あったとしても、彼女たちが再び共同生活を望むかも不明だ。しかも、山内美穂は犯罪者の子として見られる可能性もある。共に過ごす子供たちが知らずとも、孤児院に勤める大人は皆知ることになるはずだ。二人は、既に高校二年生。今後の事は自分で考えられる年齢ではある。……精神が元に戻れば、だが。
「命を落とした子供達の中には、山内美穂の妹もいたって。……離婚した父親に引き取られたと山内さんには説明していたらしいけど……」
未来が落とした最後の爆弾に、榊原と弥生が今度こそ言葉を失う。
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