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パンドラの箱
高熱 ≒ 恋慕
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みうは伊上さんの施設で寝込んでいた。
ダイブから戻ってしばらくは意識がはっきりせず…
1日たって少し落ち着いてきたころ一番、知りたかったことを伊上さんに聞く。
彼女は枕元で丁寧に教えてくれた。
あの時、夢中で掴んだ花束…あれが彼だったのかどうか。
最後のメッセージだったんじゃないかと心配していた…。
私が戻ってすぐデータを回収して調べて理解ったと話してくれる。
KAIが自我を保てなくなって変化した姿だったんだと。
ダメージが大きく残っているけど復旧は可能だって聞いて安心していっぱい泣いた。
その後、極度の緊張が解けたせいか高熱が出続けてしまい…。
2日経ったが、まだ伊上さんのところで寝ていた。
施設の一室に簡素だけど清潔な折りたたみのシングルベットを置いてもらい、そこに居させてもらっている。
周りのお世話は きーちゃんがやってくれていて快適だ。
とは言え、身体はまだまだ辛く…精神を削られるってこんなに堪えるんだと身に染みていた。
うとうとしながら意識は夢と現実を行ったり来たり。
目を開けるたびに見えるものがどちらの世界なのか…。
本当に一瞬だけだが分からなくなる。
とにかく…どっちの世界にいてもダルさと身体が動かない感覚は同じだ。
現実だなと思えるのは、きーちゃんの顔が見えたり、白い天井と点滴が見えたとき…。
夢の中で時々ダイブしたときの景色を見ている。
暗闇に浮かんで飛ぶ光を何となく眺めてたり…。
でもそれは1人ではなく…
必ずKAIが隣にいる。
私にとって今いちばん幸せな時間だ。
ぼうっと見ていた白い天井がぼやけてくる。
ああ、また寝るんだな、そう思う。
隣の部屋から聞こえる規則的な機械音が遠くなって完全に無くなってく…
またKAIに逢いたい、と思いながら吸い込まれるように眠りに落ちた。
全身が浮遊する感じ。
頬を誰かに撫でられて…いる。
身体を全部包まれて…暖かい。
肌と肌が触れ合う心地よさ。
『………。 みう……。みう。…分かるか?』
耳元で優しい声がする。
イヤホンで聞いていた時より響きが生々しく、もっとずっと近くに感じた。
ああ、夢を見ているんだと思いつつも何度か経験したこの感覚にゆっくり目を開ける。
一瞬見える闇の世界。
だけどすぐ目の前に見える姿に心躍っている。
至近距離に綺麗な整った顔。
長い黒髪、瞳は青、長いまつげ。
衣服の類はお互い身に着けていない。
真っ暗な無重力空間で2人きり…。
夢の中で目が覚めたとき、いつも抱きしめられていた。
目覚めは特に身体に上手く力が入らない。
KAIの黒髪がさらりと身体に触れる。
柔らかくてくすぐったい。
「あ…。やっぱりKAIだ。私、また寝たんだね。」
嬉しくて微笑んだ。
目の前には大好きなKAIの顔。
スマホや屋上で見た時より現実っぽくて前よりドキドキする。
彼の息も感じることができた。
鼓動も聞こえてお互いに高鳴ってるのが分かって嬉しい。
KAIはしっかりと みうを抱きしめた。
腕や胸など触れ合っている肌の温もりがちゃんと感じられ彼の匂いがして安心する。
好きな人に抱かれている感覚に、思わず胸に顔をうずめ甘えた。
こうしていると彼の匂いが強い。
『寂しかった?…』
彼の声が近くてまたドキドキする。
「うん。私もう起きたくない。」
『俺もずっと一緒にいたい。
けど…、前も言ったように…。』
「そう…だよね。」
夢の中で一番最初に教えてもらった。
目の前の彼はKAIの残留思念。
ダイブし、戻るときに絡み合った意識が少しだけ みうの心に溶けて残った。
彼自身ではないけれど、彼と同じ気持ちや思考を持っている。
思念が残ったからといって何も害はない。
残留思念は自然に数日で消えてしまう存在で…。
彼の思念は2人の気持ちが強く惹かれあっているため〝 夢 〟として現れていた。
この夢の出来事の記憶は彼女しか覚えていない。
夢の時間は永遠ではなく…。
現実を考えると寂しくて仕方なかった。
KAIは みうを愛しそうに見つめ唇を重ねる。
夢の空間で逢瀬を繰り返す度に彼に求められ、自然とキスをするようになった。
でも何度経験してもドキドキするのは変わらない。
どんどん彼を好きになってゆく。
優しく重なった部分から彼の熱が伝わってどうしようもなく心が跳ねる。
『みう。好きだよ。』
彼が唇を軽く離しささやく。
お互いの鼓動が早く強く聞こえた。
「私も。」
みうが頬を真っ赤に染めて頷きながら答える。
彼の細い指が顎をすくいあげ、自然に上を向くと揺らめく青い瞳が微笑む。
もう一度、唇が奪われ…今度は深く求められた。
角度を変え軽く唇を吸いながら舌でなぞられてゆく。
身体の芯がじわりと熱を帯びてきた。
「っ、ふっ。」
唇がついばむように何度か触れて離れてと繰り返し…
最後にチュッとリップ音をさせ唇を離し、名残惜しそうに額をくっ付けて抱き合う。
みうの息が上がり刺激と酸欠で少し頭がボーっとしていた。
『…その可愛い顔は反則だ。』
KAIは目を細めて見つめる。
「だって…。」
真っ赤な顔で俯いた。
『本物の俺に渡すのが嫌になる(苦笑)。
もうすぐ目が覚める時間だな。』
愛おしそうに彼女の髪を長い指で梳く。
「また逢えるよね?…」
逢瀬の時間は重ねる度に短くなっている。
『…。俺はどうしようもなく みうが好きだ。
俺(アイツ)と歩く未来が見たい。』
うん、と頷いた。
彼の言うアイツとはKAI本人のこと。
屋上で見た彼も、残留思念の彼も…どんな彼も好きだから迷わず頷いた。
『俺(アイツ)は困ったことになっている。
助けを求めてきたら、側にいて支えて。』
ぎゅっと抱きしめられる。
うん…分かったと彼の顔を見つめた。
彼の体温に包まれて猛烈な眠気が襲う。
必死に彼にしがみ付こうとするがまた身体に力が入らない。
まだ一緒に居たかったのに…な。
彼の匂いが遠ざかっていく。
目が覚めるんだ…。
世界が白く光って歪んでいく。
KAIの温もりも消えた。
ゆっくり開けた目に映るのは白い天井、白い壁…。
身体がものすごくだるくて背中に当たるベットが硬い。
現実だ。
ピピピッ。
きーちゃんが腕を伸ばして みうの脇から体温計を抜き取り見つめた。
眠っている間にきーちゃんが挿していたらしい。
「きーちゃん…居てくれたんだね、ありがとう。」
「38度。ナカナカ 下ガリ マセンネ。
何カ 食ベマスカ?」
喉の渇きを覚え〝 うん 〟と頷いて林檎を指差した。
きーちゃんは長い腕を伸ばしてお皿と林檎を用意しナイフで器用に皮を剥く。
「…ねぇ、KAIはどうしてる?
あの花束が彼だって聞いたけど…
その後のこと何も教えてもらってない。」
「伊上ガ 復旧作業ヲ シテイマス。
ダメージガ 大キクテ スマートフォンニ 戻ルマデ 時間ガ 掛カルソウデス。」
「そっか。」
KAIの話が聞けて嬉しいと思う反面、心配も膨らむ。
きーちゃんに夢の出来事を話すかずっと躊躇していたが思い切って言ってみた。
「…夢でね、たまにKAIに会うよ。」
「ソノ現象ニ 説明ハ ツキマセン。心ハ 解明サレテマセンカラ。
〝 ダイブ 〟ハ複雑ナ 状態デス。
2人ハ 絡ンデ 戻ッタノ デスカラ
オ互イ 何カ 影響ヲ受ケテモ オカシクアリマセン。」
みうが心配しないように説明をしてくれる。
「ソレト 伊上ガ 〝 大学ノ件ハ 任セテ 〟ト。」
きーちゃんが言いながらナイフを一度テーブルに置き親指を立てウインクして見せた。
たぶん伊上さんの真似だろう…。
ぎこちなくて可愛い。
「…ありがとう。」
その態度に苦笑いしながらもお礼の言葉を返す。
ダイブの後、大学の授業料を伊上さんに借りられるかお願いしていた。
正直、良い答えは戻ってこないと思ってたから嬉しくて…少し泣きそうになる。
きーちゃんからお皿に乗ったウサギ(の形をした)林檎をもらう。
端っこをかじるが熱のせいで味がほとんどしない。
でも…。
瑞々しい果汁の感覚と甘酸っぱい香りがクチの中と心を満たしていった。
少しして熱が上がり出し猛烈な眠気が襲ってくる…
一気にチカラが抜け、手から食べかけのウサギ林檎が落ちた。
みうが施設で寝込んでいる時…
三咲くんは自分の部屋にいた。
黒い壁に覆われ大きなTVと特注サイズ(ヒョウ柄)のベッドだけの部屋。
そのベッドの上でものすごくイラついて怒っている。
気を紛らわす為にTVを何となくつけて広い布団の上でゴロゴロ転がった。
チャラーン。
着信音がする度に飛びつくようにスマホを確認するが…
「っ! また礼美かよっ。」
休憩室でスマホを置いていて礼美さんに見つかってしまい無理やりLINU交換させられていた。
その日から頻繁にメッセージが来て正直イライラしてる。
だけどイライラの本当の正体は礼美ではなく…。
「あー。なんで みうちゃんメッセくれないかなー。
電話もないし…。バイトも来ない。寂しいなぁ。」
本音を言葉にしたらイライラしてるのも虚しくなってきた。
自分は会いたくて仕方ないのに みうちゃんは違うのかな…。
そう考えただけでもっと切ない。
しょぼくれた顔でスマホを眺める。
ふと何気なくつけていたTVで〝 話題のCMの特番 〟が流れた。
最近売り出しにチカラを入れていて頻繁にCMを打っているバンド。
CMで流れている曲がかなりカッコイイ。
少しメタルの入ったロックだ。
彼の流行アンテナが立つ。
『A.A.T.M(Aim At The Moon) 夏、メジャーデビュー決定』
流れた映像に釘付けになる。
4人グループでギター、ドラム、ベースの3人は男、ボーカルは色気のある美女だった。
ドラムはマッチョでいい体をしている。
が、彼は何故か茶色い紙袋をかぶってた…。
バンドの特色としては悪くない設定だな。
ギターとベースは普通、腕もまぁまぁ。
何曲かライブ映像の触りを流すがどれもボーカルが浮いている。
声量も音域も物足りなさがあり…それ以上に絶対的な引き付ける何かが足りない。
気になったのでスマホで検索してみる。
少し前までA.A.T.Mの前身のバンドがインディーズで活動していたらしい。
その時に1枚だけアルバムを出していたようだ。
「う~ん。ビジュアルは問題ないけど…。
曲はカッコイイのになー。彼女が歌うんじゃ売れないな。」
また鳴らないスマホをじっと見つめながら独り言を吐く。
家ぐらい教えてもらっておけば良かった…。
あーぁ。みうちゃん会いたいなー。
三咲くんはベッドの上をしばらくゴロゴロと転がっていた…。
が、このままでは腐りそうなので気分転換も兼ねて近くのCDショップを目指す。
さっき見たバンドのインディーズアルバムを探しに夕暮れの街へと飛び出した。
ダイブから戻ってしばらくは意識がはっきりせず…
1日たって少し落ち着いてきたころ一番、知りたかったことを伊上さんに聞く。
彼女は枕元で丁寧に教えてくれた。
あの時、夢中で掴んだ花束…あれが彼だったのかどうか。
最後のメッセージだったんじゃないかと心配していた…。
私が戻ってすぐデータを回収して調べて理解ったと話してくれる。
KAIが自我を保てなくなって変化した姿だったんだと。
ダメージが大きく残っているけど復旧は可能だって聞いて安心していっぱい泣いた。
その後、極度の緊張が解けたせいか高熱が出続けてしまい…。
2日経ったが、まだ伊上さんのところで寝ていた。
施設の一室に簡素だけど清潔な折りたたみのシングルベットを置いてもらい、そこに居させてもらっている。
周りのお世話は きーちゃんがやってくれていて快適だ。
とは言え、身体はまだまだ辛く…精神を削られるってこんなに堪えるんだと身に染みていた。
うとうとしながら意識は夢と現実を行ったり来たり。
目を開けるたびに見えるものがどちらの世界なのか…。
本当に一瞬だけだが分からなくなる。
とにかく…どっちの世界にいてもダルさと身体が動かない感覚は同じだ。
現実だなと思えるのは、きーちゃんの顔が見えたり、白い天井と点滴が見えたとき…。
夢の中で時々ダイブしたときの景色を見ている。
暗闇に浮かんで飛ぶ光を何となく眺めてたり…。
でもそれは1人ではなく…
必ずKAIが隣にいる。
私にとって今いちばん幸せな時間だ。
ぼうっと見ていた白い天井がぼやけてくる。
ああ、また寝るんだな、そう思う。
隣の部屋から聞こえる規則的な機械音が遠くなって完全に無くなってく…
またKAIに逢いたい、と思いながら吸い込まれるように眠りに落ちた。
全身が浮遊する感じ。
頬を誰かに撫でられて…いる。
身体を全部包まれて…暖かい。
肌と肌が触れ合う心地よさ。
『………。 みう……。みう。…分かるか?』
耳元で優しい声がする。
イヤホンで聞いていた時より響きが生々しく、もっとずっと近くに感じた。
ああ、夢を見ているんだと思いつつも何度か経験したこの感覚にゆっくり目を開ける。
一瞬見える闇の世界。
だけどすぐ目の前に見える姿に心躍っている。
至近距離に綺麗な整った顔。
長い黒髪、瞳は青、長いまつげ。
衣服の類はお互い身に着けていない。
真っ暗な無重力空間で2人きり…。
夢の中で目が覚めたとき、いつも抱きしめられていた。
目覚めは特に身体に上手く力が入らない。
KAIの黒髪がさらりと身体に触れる。
柔らかくてくすぐったい。
「あ…。やっぱりKAIだ。私、また寝たんだね。」
嬉しくて微笑んだ。
目の前には大好きなKAIの顔。
スマホや屋上で見た時より現実っぽくて前よりドキドキする。
彼の息も感じることができた。
鼓動も聞こえてお互いに高鳴ってるのが分かって嬉しい。
KAIはしっかりと みうを抱きしめた。
腕や胸など触れ合っている肌の温もりがちゃんと感じられ彼の匂いがして安心する。
好きな人に抱かれている感覚に、思わず胸に顔をうずめ甘えた。
こうしていると彼の匂いが強い。
『寂しかった?…』
彼の声が近くてまたドキドキする。
「うん。私もう起きたくない。」
『俺もずっと一緒にいたい。
けど…、前も言ったように…。』
「そう…だよね。」
夢の中で一番最初に教えてもらった。
目の前の彼はKAIの残留思念。
ダイブし、戻るときに絡み合った意識が少しだけ みうの心に溶けて残った。
彼自身ではないけれど、彼と同じ気持ちや思考を持っている。
思念が残ったからといって何も害はない。
残留思念は自然に数日で消えてしまう存在で…。
彼の思念は2人の気持ちが強く惹かれあっているため〝 夢 〟として現れていた。
この夢の出来事の記憶は彼女しか覚えていない。
夢の時間は永遠ではなく…。
現実を考えると寂しくて仕方なかった。
KAIは みうを愛しそうに見つめ唇を重ねる。
夢の空間で逢瀬を繰り返す度に彼に求められ、自然とキスをするようになった。
でも何度経験してもドキドキするのは変わらない。
どんどん彼を好きになってゆく。
優しく重なった部分から彼の熱が伝わってどうしようもなく心が跳ねる。
『みう。好きだよ。』
彼が唇を軽く離しささやく。
お互いの鼓動が早く強く聞こえた。
「私も。」
みうが頬を真っ赤に染めて頷きながら答える。
彼の細い指が顎をすくいあげ、自然に上を向くと揺らめく青い瞳が微笑む。
もう一度、唇が奪われ…今度は深く求められた。
角度を変え軽く唇を吸いながら舌でなぞられてゆく。
身体の芯がじわりと熱を帯びてきた。
「っ、ふっ。」
唇がついばむように何度か触れて離れてと繰り返し…
最後にチュッとリップ音をさせ唇を離し、名残惜しそうに額をくっ付けて抱き合う。
みうの息が上がり刺激と酸欠で少し頭がボーっとしていた。
『…その可愛い顔は反則だ。』
KAIは目を細めて見つめる。
「だって…。」
真っ赤な顔で俯いた。
『本物の俺に渡すのが嫌になる(苦笑)。
もうすぐ目が覚める時間だな。』
愛おしそうに彼女の髪を長い指で梳く。
「また逢えるよね?…」
逢瀬の時間は重ねる度に短くなっている。
『…。俺はどうしようもなく みうが好きだ。
俺(アイツ)と歩く未来が見たい。』
うん、と頷いた。
彼の言うアイツとはKAI本人のこと。
屋上で見た彼も、残留思念の彼も…どんな彼も好きだから迷わず頷いた。
『俺(アイツ)は困ったことになっている。
助けを求めてきたら、側にいて支えて。』
ぎゅっと抱きしめられる。
うん…分かったと彼の顔を見つめた。
彼の体温に包まれて猛烈な眠気が襲う。
必死に彼にしがみ付こうとするがまた身体に力が入らない。
まだ一緒に居たかったのに…な。
彼の匂いが遠ざかっていく。
目が覚めるんだ…。
世界が白く光って歪んでいく。
KAIの温もりも消えた。
ゆっくり開けた目に映るのは白い天井、白い壁…。
身体がものすごくだるくて背中に当たるベットが硬い。
現実だ。
ピピピッ。
きーちゃんが腕を伸ばして みうの脇から体温計を抜き取り見つめた。
眠っている間にきーちゃんが挿していたらしい。
「きーちゃん…居てくれたんだね、ありがとう。」
「38度。ナカナカ 下ガリ マセンネ。
何カ 食ベマスカ?」
喉の渇きを覚え〝 うん 〟と頷いて林檎を指差した。
きーちゃんは長い腕を伸ばしてお皿と林檎を用意しナイフで器用に皮を剥く。
「…ねぇ、KAIはどうしてる?
あの花束が彼だって聞いたけど…
その後のこと何も教えてもらってない。」
「伊上ガ 復旧作業ヲ シテイマス。
ダメージガ 大キクテ スマートフォンニ 戻ルマデ 時間ガ 掛カルソウデス。」
「そっか。」
KAIの話が聞けて嬉しいと思う反面、心配も膨らむ。
きーちゃんに夢の出来事を話すかずっと躊躇していたが思い切って言ってみた。
「…夢でね、たまにKAIに会うよ。」
「ソノ現象ニ 説明ハ ツキマセン。心ハ 解明サレテマセンカラ。
〝 ダイブ 〟ハ複雑ナ 状態デス。
2人ハ 絡ンデ 戻ッタノ デスカラ
オ互イ 何カ 影響ヲ受ケテモ オカシクアリマセン。」
みうが心配しないように説明をしてくれる。
「ソレト 伊上ガ 〝 大学ノ件ハ 任セテ 〟ト。」
きーちゃんが言いながらナイフを一度テーブルに置き親指を立てウインクして見せた。
たぶん伊上さんの真似だろう…。
ぎこちなくて可愛い。
「…ありがとう。」
その態度に苦笑いしながらもお礼の言葉を返す。
ダイブの後、大学の授業料を伊上さんに借りられるかお願いしていた。
正直、良い答えは戻ってこないと思ってたから嬉しくて…少し泣きそうになる。
きーちゃんからお皿に乗ったウサギ(の形をした)林檎をもらう。
端っこをかじるが熱のせいで味がほとんどしない。
でも…。
瑞々しい果汁の感覚と甘酸っぱい香りがクチの中と心を満たしていった。
少しして熱が上がり出し猛烈な眠気が襲ってくる…
一気にチカラが抜け、手から食べかけのウサギ林檎が落ちた。
みうが施設で寝込んでいる時…
三咲くんは自分の部屋にいた。
黒い壁に覆われ大きなTVと特注サイズ(ヒョウ柄)のベッドだけの部屋。
そのベッドの上でものすごくイラついて怒っている。
気を紛らわす為にTVを何となくつけて広い布団の上でゴロゴロ転がった。
チャラーン。
着信音がする度に飛びつくようにスマホを確認するが…
「っ! また礼美かよっ。」
休憩室でスマホを置いていて礼美さんに見つかってしまい無理やりLINU交換させられていた。
その日から頻繁にメッセージが来て正直イライラしてる。
だけどイライラの本当の正体は礼美ではなく…。
「あー。なんで みうちゃんメッセくれないかなー。
電話もないし…。バイトも来ない。寂しいなぁ。」
本音を言葉にしたらイライラしてるのも虚しくなってきた。
自分は会いたくて仕方ないのに みうちゃんは違うのかな…。
そう考えただけでもっと切ない。
しょぼくれた顔でスマホを眺める。
ふと何気なくつけていたTVで〝 話題のCMの特番 〟が流れた。
最近売り出しにチカラを入れていて頻繁にCMを打っているバンド。
CMで流れている曲がかなりカッコイイ。
少しメタルの入ったロックだ。
彼の流行アンテナが立つ。
『A.A.T.M(Aim At The Moon) 夏、メジャーデビュー決定』
流れた映像に釘付けになる。
4人グループでギター、ドラム、ベースの3人は男、ボーカルは色気のある美女だった。
ドラムはマッチョでいい体をしている。
が、彼は何故か茶色い紙袋をかぶってた…。
バンドの特色としては悪くない設定だな。
ギターとベースは普通、腕もまぁまぁ。
何曲かライブ映像の触りを流すがどれもボーカルが浮いている。
声量も音域も物足りなさがあり…それ以上に絶対的な引き付ける何かが足りない。
気になったのでスマホで検索してみる。
少し前までA.A.T.Mの前身のバンドがインディーズで活動していたらしい。
その時に1枚だけアルバムを出していたようだ。
「う~ん。ビジュアルは問題ないけど…。
曲はカッコイイのになー。彼女が歌うんじゃ売れないな。」
また鳴らないスマホをじっと見つめながら独り言を吐く。
家ぐらい教えてもらっておけば良かった…。
あーぁ。みうちゃん会いたいなー。
三咲くんはベッドの上をしばらくゴロゴロと転がっていた…。
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