不機嫌な先生は、恋人のために謎を解く

如月あこ

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第二章 少女失踪事件

6-4

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「拙者ひとりで向かうつもりでござったが、姫島屋先生の言葉は正論でござる。そして、お二方の行動と拙者の目的を鑑みるに、行動とともにするという選択肢がベストではござらんか」
 姫島屋先生は、なんともいえない顔をした。
 ミカンだと思って食べたら餃子だった、くらい変な顔をしている。
「……神崎先生、彼は受け持ちの生徒ですか」
「あ、はい。うちのクラスの空閑くんです。山城ヶ原村の子なんですよ。すごく頭がよくて、誰とでも仲良くなれる長所を持ってるんです」
「神崎先生、拙者をそのように……感服でござる。うう、だが拙者、好奇心は抑えきれんゆえに、申し訳ないが、お二人のデートの邪魔をしてしまうでござる」
 デート。
 その言葉に、私は唖然とした。
 これがデートならば、交際してから初のデートということになる。
 体操着で、夕方に獣道をひたすら歩くデートが、初デート。なんか嫌だ。
「それだけ回る頭があるのなら、気を遣え」
「申し訳ないでござるうう」
「ちっ」
 動揺する私とは正反対に、姫島屋先生は落ち着いている。
「保護者には、伝えてあるのか」
「母と妹に、出かける旨を伝えてござる。父は仕事で海外でござるよ」
「まったく。今回は同行を許すが、以後、このような無茶をするな。ひとりで夜の山へ入るなど、自殺行為だ」
 その言葉は、ブーメランになって私にも突き刺さる。
 ですよね、ごめんなさい。心のなかで謝る私と違って、空閑くんはやはり礼儀正しく、「承知いたしました」と啓礼した。なぜに、啓礼。
 そういう経緯で、三人で夕方の森を登山することになったのだった。

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