新人種の娘

如月あこ

文字の大きさ
7 / 66
第一章 新たな世界へ

5、

しおりを挟む
 にこやかな東堂の口から発せられた質問に、小毬は戸惑いながら俯いた。
 趣味の話などどうでもいい。もっと新人種について聞かせてほしい。教えてくれないのなら、今すぐ帰宅してこの本を読みたい。
 そんな小毬の心の叫びは相手には通じず、黙り込んだ小毬を見る東堂の目が、次第に吊り上っていくのに気づいた。
 また、相手を不愉快にさせてしまう。
(なにか、気の利いたこと言わなきゃ)
 そうは思っても、なかなか言葉が出てこない。趣味を正直に答えればよいのだろうが、あいにく小毬には趣味と呼べる娯楽がない。あえていうなら読書だが、つい先ほど本を読んでいて怒られたばかりだ。
「霧島、お前は」
「あ、あの」
 顔をあげて、じっと東堂の目を見返した。
「先生の趣味はなんですか?」
「俺?」
 東堂は軽く目を見張り、考えるように腕を組んだ。
「前に授業でもちらっと話したが、狩りが趣味かな」
「狩り? 猟師さんなんですか」
「ああ、資格も持ってるぞ」
 まさか、あの青年を撃ったのは東堂じゃないか、と思ったが「ここ半年ほどは狩りに出てないがな」という言葉を聞き、ほっと息をつく。
「でも、銃の手入れは欠かさないんだ。この近辺は田舎だし、猟師も多いだろう? 霧島の住んでる辺りは、もっと猟が盛んなんじゃないか」
「はい。猪の皮とか、庭で干してる家も多いです」
「だろうな。ああ、久しぶりに狩りがしたくなってきた」
 機嫌が戻ったらしい東堂の姿に、ほっと安堵の息をつく。
 話がまたもとに戻る前に、小毬は鞄を小脇に抱えて頭を下げた。
「そろそろ帰ります。失礼します」
「あ、おい。話はまだ終わってないぞ」
「施設で手伝いをする用事があるので」
 早口にそう告げ、小毬は不自然ではないよう心掛けながらも早足で図書室を出た。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...