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第三章

三、

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 大方の報告が終えて、あとは返事待ちになる。
 早く戻ってきたこともあって、麻野は内風呂に入ることにした。
 湯舟でゆったりとしながら、昨日の白峰神宮でおこったことを思い出す。不思議な体験をした。白昼夢を見たかのようだった。過去にも何度か似たような経験があるのだが、あそこまではっきりと神内から追い出されたのは初めてだ。
 詳しいことはわからないが、麻野からは、酒呑童子の力が感じられるらしい。マーキングのようなものだという。相手が鬼ではなく神だったら、加護を受けていると言えるのかもしれないが、鬼となると話は変わってくる。
 麻野は、自分の手のひらを見た。
「……友達に、か」
 自分の呟きは、誰にも聞こえることなく、消えていく。
 それが必然のような気がして、麻野はさっさと風呂からあがった。

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