駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

文字の大きさ
73 / 349
3.帝政エリクシア偵察録

13.エリーゼ

しおりを挟む
「それで、なんで僕をつけてるんです? 僕からお昼ご飯をせしめる為ですか?」

 僕の質問に、満面の笑みでスープパスタを食べていた、金髪のお姉さんの表情が固まります。うん、この人は面白い人ですね。

「あぁ、すまなかったね。それが目的ではなかったのだが、まずは名乗らせて貰おう。私はヘルガ、こちらの金髪の方がエリーゼだ。君を追っていたのは……」

 ヘルガさんは、縛られた男達を親指で指しいいました。

「あいつらが君を追っていったのと、この界隈で見かけない武器を持っていたのでね。君の剣技に興味があったからだよ」

 ヘルガさんの言葉が終ると、スープパスタを完食したエリーゼさんが僕に向って言い放ちます。

「それで、あなたの名前は? この地に着た目的はなに?」

 ……お昼ご飯たかっておいて、いい性格ですね。僕は呆気にとられましたが、確かに名乗ってもいないので答えておきましょうか。

「僕はクロエです。旅の目的は修行ということでお願いします。あと、彼らの対応はお任せしても良いですか?」

 僕が男達を指差して言うと、エリーゼさんは綺麗な顔をしかめて言います。

「私達はハンターじゃないわ。貴女が衛士に突き出せばいいじゃない」

「俺達を突き出したって無駄だ。なにせ俺達には伯「馬鹿止めろ!」……」

 うんうん、悪役としても三流以下のようですね。僕は2人に肩をすくめて見せます。

「と言う事なので、僕が突き出してもすぐ釈放どころか、僕が捕まりそうなんですよね。お偉方の悪事の証人位にはなるんじゃないですか?」

「はぁ。やはり此方の身分も、ある程度想像がついているようだな」

 ヘルガさんは予想していたようですし、立ち居振る舞いというか、動作が違うんですよね。日頃から訓練している人の動作は、歩く・食べるなどの基本的な動作から違います。それにしても、男達が煩いですね。少し黙ってもらいましょう。

(《風よ、彼の者の発する言葉を封じよSilent》)

 急に静かになった男達を訝しげにみたヘルガさんですが、気にしない事にしたようですね。僕を真っ直ぐ見て質問して来ました。

「それで? 何故君は貯木場や造船所と言った所を、巡っていたんだい? この地のそれらの施設は、帝国の軍事機密となっているのでね。怪しくかぎまわる君を野放しにも出来ないんだよ」

「……毒でも盛っておけば良かったですね。御二人同時にきますか?」

 僕は、のんびり敷物や食器を収納に仕舞いながら、質問します。

「高貴為る者、その様な恥ずべき行為はいたしませんわ。私がお相手します」

 スラリと音が刷るような感じで、エリーゼさんが細剣を抜き構えます。なるほど、金属の輪を組み合わせたような鞘なので、抜く動作に遅滞がありませんね。そして、剣身が長い……1m近くありますね。エリーゼさんの体格だと腕の長さも含めて、1.5m以上は彼女の攻撃範囲でしょう。左手にはダガーを握った二刀流の様に思えます。
 僕が使う天羽々斬の刀身は95cm程度で、武器としての長さは余り変わりませんが、体格の差は大きいですね。そして、細剣は突き重視の戦い方ですので、避けにくい事は間違いありません。

 エリーゼさんは細剣の切っ先を真っ直ぐ僕に向けたまま、右に動いて突いてきましたが、慌てて抜いた天羽々斬で右に逸らせます。

「片刃の剣ですか。やはりこの辺では見ない武器ですわね。しかも鞘は消えているという事は魔法の物ということでしょうか」

 エリーゼさんは間合いを取りつつ油断無く構えていますが、僕としては余り付き合うつもりもありませんので、魔法を使わせてもらいますよ。

(《調査 XXXXSearch Bladder》)

 エリーゼさんが高速の刺突3連撃を繰り出すのを、剣先でいなしながら何とか回避して次の詠唱を行います。

(目標確認、目標1,2共に《水よ満たせ、器の中をFill water》)

 僕の詠唱が終ると、途端にエリーゼさんの動きが止まります。ヘルガさんの方を見てみると、俯いて何故かプルプルしているようですね。

「どうかしましたか?」

 白々しいとは思いますが、あえてにっこり微笑んでエリーゼさんに問いかけます。エリーゼさんの顔は、顔が真っ赤になってますよ? 心なしか脚もモジモジしているようです。

「……な、何をし……たの」

 そろそろ限界が近いようですね。僕はそ知らぬ顔でのんびり答えます。

「ちょっと魔法を嗜んでいるので。戦闘を回避してみようかと……」

 僕の言葉に、エリーゼさんは叫びました。

「卑怯な……手を、使う……わね、ヘルガ!」

 残念ですが、ヘルガさんも同様の処置をさせて貰っています。僕は貴族でもありませんので、名誉を賭けた戦いなどに付き合う心算もありませんしね。
 返答できないヘルガさんを見て、どうやら諦めたようですね。表情は凄く苦しそうにですが、エリーゼさんは僕に漸く負けを認めます。

「くっ、私達の……負けだ。さっさ……と魔法を解け」

「? 別に継続する魔法ではありませんよ。それ以上水が満たされる事はありませんし」

 そして、僕はあることに気付いてテヘペロしました。

「すいません。この魔法は溜めた水の消失は出来ないんですよね~。その辺でおし「「言うな~!!」」……」

*****

「い、痛い……」

 僕の呟きを無視して、ぷんすか激怒状態のエリーゼさんをヘルガさんが宥めています。

わたくし、生まれて初めてこのような恥辱を味わいましたわ。」

「まぁまぁ、エリーゼ様。確かに彼女の言う通り、お互い怪我をせずに住んだのですから、そこは認めてあげましょう。まあ、私も許す気はありませんが……」

 いや、お二人ともそう言いますけど、遮蔽や防音などいろんな魔法を駆使させられたんですけど? しかも、漫画とかなら絶対三段瘤になってますよ? 一応僕が勝者のはずなんですが。

「……それで、こいつ等から情報をとるということで良いんですか? たいしたことは知らないと思いますけど」

 僕は縄で一括りにされている男達を指で示します。あぁ、今は先程の騒動から男達は視覚も聴覚も封じてありますが、これ以上放置すると発狂しますね。とりあえずかけた魔法を解除しておきます。

(《視覚・聴覚阻害解除 解除Release》)

 煩いから、口は塞いだままですが、情報をとるために1人だけ口をきける様にしておかないとですね。僕は男達の中でリーダー格らしい男の魔法を解除しました。

(《発声阻害解除 解除Release》)

「さて、貴女には選択の余地がありますよ? この場ですぐ話すか、痛い目を散々見てから話すのか。どちらがいいです?」

「……」

 無言ですか、そうですか。僕は天羽々斬を再び抜くと、投げ出されている彼の脚に振り下ろし、彼の足の指に沿って靴先に切れ込みを入れて見せます。

「綺麗な足ではありませんが、どうせなら足の指をもう少し長くしてみましょうか?少しくらいなら歩くのに支障は無いと思いますよ……多分」

 震えだす男を見ながら、エリーゼさんが一言呟きました。

「やっぱり、この娘はえげつないですわね」

 うんうん頷くヘルガさんを見て僕は小首を傾げます。何もしてないのにこの言われようは酷いですよね?
 この後、とても素直になってくれた冒険者リーダーさんからいろいろ情報を聞き出したところ、どうやらこの領の領主様の一存で事は引き起こされているらしいですね。色々情報をとった後の捕虜は、どうせ衛士に突き出しても意味がなさそうなので、彼らの武器防具を全て回収して、3cm位の球に圧縮してみせます。震え上がった彼らの目の前で、出来た球を川にぽいして、僕は歩き出しました。なぜかエリーゼさん達の後ろを……
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。 「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」 どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。 彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。 幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。 記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。 新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。 この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。 主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。 ※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。

処理中です...