駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

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5.南海の秘宝

10.問題?!

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 演習場に響き渡る、二種類の魔物の高笑い。
 僕の目の前には、魔物に挑んで死亡判定を受けて屍を晒す冒険者パーティー。
 笑顔を引き攣らせながら治療に当たる魔法医療講座の受講生と、すっかり俯いてしまった先輩冒険者。
 それを不安気にみる新人っぽい冒険者達。

「……困りましたね」

 僕は方を竦めて、演習場で呟きました。
 現在演習場に展開している魔物は2種類。どちらもレベル2の強さの魔物さんで、上位冒険者さんの討伐を、新人さんに見てもらって参考にしてもらおうと思ったのですけど……

「皆さん、弱っ」

「……勘弁してくれよ。ゴブリンやコボルト退治なんざ、何年もやってないんだ。まして、相手のフィールドじゃないか」

「いや、楽勝って挑んだのは皆さんですよ? それに新人さんが戦うのも、相手のフィールドさんですよね。上位冒険者さんが勝てないんじゃ、新人さんには難しいって事ですよね」

 僕が泣き言を言った冒険者さんを鋭く見つめると、恥じ入って俯きます。確かにゴブリンは地中の巣穴が戦場ですし、コボルトは森林地帯が設定されていますが、彼らの生息地ですよね。

 余裕だといって、ゴブリン退治に一人で潜った馬鹿(ホセ)が速攻で落とし穴に嵌って脱落したのは、反面教師だったのでよいとして。それを見ていた中堅どころ、ランクDハンターさんが4人で向って、多勢に無勢で全滅。
 コボルトに対しても、コボルト側に先に発見されてしまい、狼に騎乗したコボルトに背後に回りこまれて、包囲されて全滅と、良いところが全くありません。

 もちろんゴブリンにしても、コボルトにしても損害は出ていますが、20頭のゴブリンやコボルトに同数の冒険者を送り込む事はないので、冒険者側の負けでしょう。

 僕が行っても、新人さんの参考にならないと言われてしまいましたし、困りましたね。

「だいたい、ゴブリンの巣穴は小さいのに長剣持って穴に潜るとか、武器の選択間違ってますよ」

 僕の言葉に一言も無いようですね。まさか、オーガを倒す冒険者が、ゴブリン・コボルトに負けるとは思いませんでしたよ。

 魔獣のくせに、この2種族は集団戦術を使ってきます。ゴブリンは罠や毒を使いますし、泣き落としも使います。コボルトは、歩兵と狼に騎乗した部隊でかく乱してきますし、かなわないとなれば一斉に逃げをうつ為、全滅させることが出来ません。

「せめて先輩方で一度は倒してくれないと、指示に従うのも不安に思われちゃってますね」

「手段を選ばなけりゃ、倒せるさ」

 そういう冒険者さんも居るんですけど、コボルトやゴブリンを倒すのに森で木を焼いたり、洞窟を土魔法で崩したりしたのでは、何の為の討伐なのか判らなくなります。

 先輩方がだらしないとばかりは言えないんですよね。なにせ、僕の講座を受ける人は戦闘職の方が中心です。盗賊関係やレンジャーは居ないんですよね。盗賊系の技能者が居ない為に、罠への適応がまずいのが一番目。二番目は数の暴力を、狭い洞窟内で無効化出傷に押しつぶされているのが原因です。

 あっ、そうだ。僕はふと思い出して、タブレットを取り出します。イリスさんが怪訝な目で見ていますが、すぐにSNSに表示されるのでわかるでしょう。

『クロエ:ユーリアちゃん、今時間空いていないかな?』

『ユーリア:んと、次の講義があるので今は難しいですぅ』

『イリス:今から呼んだって、時間内には間に合わないんだから、ユーリアは気にしなくていいわよ』

『クロエ:確かにそうだった。ごめんね、邪魔したね~』

 むぅ、ユーリアちゃんを呼び出すのはいい手と思ったんですが、駄目でしたね。仕方がありません。今日の処は、この敵は中断しましょう。

「ごめんね。新人さん達の参考にと思ったんだけど、この課題は次に持ち越しますね。次回は、必ず倒しましょう」

 がっかりしている新人達と、肩を落としている先輩達を見ながら、今日の講義を僕は終了しました。

*****

「ということがあったので、ギルドで依頼を出してよいでしょうか?」

 僕の目の前には、何故かにこやかな笑顔を貼り付けた、カーラさんが仁王立ちしています。
 依頼を出そうと、冒険者ギルドに直行して、パトリシアさんにお話した途端、ギルドマスターの執務室に連行されてしまったのです。

「クロエさん、そういう講義を行う場合は、まずギルドに一声かけてほしかったのですが……」

「えっと、それはその~、急遽きゅうきょ決まったことでして」

「もう、数回講義は行なっていますよね?」

「……はい」

「ギルドに属している中堅の冒険者さんが、コボルトやゴブリンに負けたなどという悪評が立っちゃいましたよ。如何してくれるんです?」

「いや、だって事実だし……」

 言った途端睨まれましたよ。いろいろお話をした結果、実はレベル2の魔物は、単体ではむちゃくちゃ弱いくせに、集団戦は妙に手ごわいというギルド泣かせの魔物らしいですね。

「上位の魔物や魔獣は、知能も高いのですが、自分達の武力にも自信があるので姑息な手段はあまり使わないのです。
 しかし、ゴブリンやコボルトは悪知恵がまわりますからね。自分達が単体では弱いことは知っていますから、姑息な手段も平気で使いますし、数で圧倒しようともします。
 しかも、繁殖力も高いので、群れを完全に滅ぼす事も難しいんですよ。巣穴は別な出口が無いかなど調査しておかないと、直ぐ逃げられます」

 確かにそうでしたね。侵入者に気付いたゴブリンが、別な出口からでて、冒険者の侵入した入り口から突入し、挟み撃ちを受けて全滅とか、直接見せられましたから。

「実際、ゴブリンやコボルト狩りは、冒険者さんに人気がありませんし、アレキサンドリアではエルフの森やドワーフの鉱山方面しか居ませんからね。普通の冒険者さんでは、遭遇する機会も少ない所為もありますが、今回は甘く見ていた人たちにも良い薬になったとしましょう」

 カーラさんの発言に、パトリシアさんも仕方ないですねと頷きます。

「冒険者ギルドから、2パーティーを派遣させていただきますわ。新人さんの研修目的であれば、ランクはLv.Cくらいまでが宜しいでしょうけど、費用面もありますし」

「後進に道を示すということで、比較的安価に受けてくれるパーティーもあるかもしれませんね。場所が中央区ですし」

 カーラさんとパトリシアさんの間で話が決まっていきます。そして、2人は僕をみてにこやかな笑顔を浮かべます。

「それでは、クロエさん。次週以後の討伐予定の魔物を、1ヶ月分提出していただく事には同意していただけますね? あと、ギルドからも討伐訓練として魔物の用意をしていただいても宜しいですよね?」

「……はい、よろしくお願いします」

 僕は妥協するしかありませんでした。
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