駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

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5.南海の秘宝

26.VS???

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 被害を受けたPTパーティーを、再びイリスさん経由で呼び出したアレキにベースまで運んでもらい、僕はそのまま丘の上を目指します。

『クロエ:イリスさん、周りにラビの変種とか亜種に詳しい人っていない?』

『イリス:ん~、クラリスが北方の国だから詳しいかもしれないわね。どんな事が知りたいの?』

『クロエ:ん~とね、目つきが悪くて、防御を貫いてダメージを与えてくるようなラビっている?』

『イリス:……冗談で言ってるんじゃないわよね? 目付きが悪い? 防御を貫いてダメージを与える? 正気??』

 イリスさんが聞き返してくるのも理解できますね。自分で見なければ僕だって信じていませんよ。

『クロエ:一応正気のつもり。アレキが連れ帰る人達からも聞いてみて』

 僕は回答を返答を待ちながら歩き続けます。やがて、軽快な音がして、イリスさんから回答が来ました。

『イリス:クラリスも特に聞いたことないそうよ。ただ……伝説として貴女のあだ名の#殺人兎__ボーパルバニー#がいるくらいよ』

 むぅ、きっとイリスさんは笑っていますね。とりあえず、お礼を言っておきましょう。

『クロエ:ありがと~』

 さて、実在しない未知の存在ですか。なかなか厄介な相手かもしれませんね。
 丘の上で、後足だけで立っている、目つきの悪い兎を見て僕は溜め息をつきます。先ほどのPTからの情報では、魔法は追尾性があるのにあっさり避けるとか、弓の弦を切るとか言ってましたしね。弦は首を狙った攻撃がたまたまそれたのかも知れませんが、それでも首をきっちり狙ってきて、防御無効というのは厄介ですね。

「さて、リアル『ボーパルバニー』と、その名を賭けてバトルと行きましょうか? 僕はそんなあだ名返上しても構わないのですが……」

 僕の発言が気に入らなかったのか、『ダンッ!』と大きな音が聞こえます。なるほど、後ろ足で地面を叩いているから、あんな音が出るのですね。
 左右の『ガンブレード』をホルスターから貫きました。相手の手がわからない時に攻撃するのは、良い手ではありませんが、何度か見せてもらいましたからね。何も出来ずに倒れてしまう事はないでしょう。

「《光弾Light bullet》」

 右手の『ガンブレード』から放たれた魔法弾は、光の速さで目つきの悪い兎へと進みます。命中し……た?

「ブー」

 馬の様に鼻を鳴らされましたね。放たれた光弾Light bulletは何処に言ったのでしょう? 首を傾げて考えた僕に、角をこちらに向けてラビが真っ直ぐ突っ込んできます。

「うわっと、いけません。戦闘中でしたね」

 慌てて左右の『ガンブレード』に魔力による刃を生成します。とはいえ、普通の刀剣とは使い方が異なります。まともに振ったら、当たった衝撃で手首を傷めてしまいますからね。交わしざまに、突き入れる感じで左のガンブレードを突き出しますが、背中の毛を数本切っただけですね。ラビは僕の後方、数メートルの所でこちらを振り向いて、再び突撃の体勢です。

「かなり避けたはずなのに、こうなりますか……」

 僕の右肩は、服が裂けて、右腕を血が伝わるのを感じます。見た目の攻撃だけをかわすのは危険なようですね。あの角だけであれば、目つきの悪いラビの攻撃は『点』でしかありません。そして、角の軌道上に僕の右肩は存在していませんでした。

 雪の中に沈んでしまわないように、自分自身に浮上floatの魔法をかけていましたが、これですと足場をしっかりと踏みしめられずに、動きが遅くなってしまいます。

「《風の精霊シルフよ、我が足元に足場を作れ! 空気の塊りAerial block》」

 魔法の発動と同時に、ラビに向って《光弾Light bullet》を左右のガンブレードで連射し、何度かラビと交差します。
 こちらも、あちこちが切り裂かれ、血がにじみますが、ラビも僕の攻撃を全て回避できたわけではなく、白い毛に所々赤く血がにじんでいます。

 こうして目つきの悪いラビの攻撃を受けてみると、違和感がかなりありますね。雪上なのに『ダン!』と音が立つこと、不可視の刃? それに僕の光弾Light bulletも微妙に軽減されていますね。威力はLv.1の魔石ですから、元々余り高くありませんが、通常のラビはしとめることが出来ているのです。

 そもそも、ラビは基本角の生えた兎で、生態もあまり変わらないときいています。魔物といっても、本来は捕食される側ですので、角は自衛の為の武器のはず。
 でも、この目つきの悪いラビは、伝説の首狩り兎ボーパルバニーの様に、切り裂く攻撃、しかもその門歯に頼らない攻撃手段を持っています。
 そこまで考えて、ふと気付きました。このラビは、風魔法を使う変異種ではないかという事に。そう考えれば、足ダンが出来るのも、盾などの防御を貫いて首を狩れることも、納得できます。先ほどの攻撃で僕の怪我が小さかったのは、僕が寒さ避けの風壁を展開していた事で、魔法の効果範囲が狭まったからでしょう。

 僕は、ラビの変異種に向って話しかけます。

「できれば、君を倒したくないんだよね。君が仲間をキツネやコボルトから守って、いたんだよね? でも、その所為で元々君達が住んでいた場所は、樹や草がまるでなくなってしまうことになったんだ。
 増えすぎれば、こんどは食べるものが無くなって餓死してしまう。仲間全てを助ける事は僕には出来ないけれど、君だけでも助けさせてくれない?」

 ラビの目つきは変わりませんね。あいも変わらず睨みつけるような目つきですが、足ダンはしなくなりましたね。左右のガンブレードを僕はホルスターに収納して、片膝をついてラビの動くのを待って見ます。
 むぅ、こちらが攻撃の意思を示さなければ、仲良くなれるかと思っていましたが、そう簡単にはいきませんか……

 寒さの中(僕は寒くありませんが)、ラビとの我慢比べが続きましたが、最後はあっけなく決着が付きました。そう、動物ならば餌で釣ろうと、お鍋には入れなかった具材、人参を目の前に差し出すと、呆気なくラビは僕の側により、人参を齧りだしたのです。

「うぅ、最初からこの手を使っていれば、こんなにボロボロにならずに済んだのに……」

 その後、ラビを抱きかかえてベースまで戻った僕の目に映ったのは、既に丘の上との雪中行軍が終了し、ベースに戻っていた受講生と、すっかり空になった大鍋でした。
 ガクリと膝を落とす僕を尻目に、イリスさんは満足そうにお腹をなでています。

「僕の坦々餃子鍋~」

 僕の悲痛な叫び声に、腕の中のラビは頭をブルッと振って答えてくれました……
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