駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

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5.南海の秘宝

25.ラビ

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 アレキの引くソリに乗って、雪崩の起きた場所に辿り着くと、雪に腰まで埋まった人が1名見えました。そして、辛うじて右手の杖で接近する魔物をなしています。
 とはいえ、左腕は角で抉られたのか、出血が見られますね。

 右腕を背後に回し、ヒップホルスターから久しぶりに『ガンブレード』を抜き撃ちします。撃ち出された火弾Fire bulletは、ラビの頭部を貫通し、その場にラビは倒れました。

「大丈夫ですか、後2人の方は?」

 僕は魔法でそのお姉さんを雪から掘り出して確認しましたが、お姉さんは俯いて首を振ります。どうやら、雪に埋もれて身動きが出来なくなった所を、ラビに狙われたようですね。
 そうなると、今の1匹に回復役ヒーラー以外のメンバーが、雪崩によって埋もれてしまったとは言え倒された計算になってしまいます。

「この1匹に、お姉さんの仲間5人が倒されてしまったのですか?」

 僕の質問にお姉さんが答えてくれた事を纏めると、最初に登坂中に1匹のラビが現われたらしい。斥候役の弓師の人が、『昼食用の肉Get!』などと矢を放った直後、ラビは矢を回避し、まっすぐ弓師に駆け寄って来た処を、盾役タンクがスモールシールドを構えて、攻撃ライン上で防御した……はずだったらしい。
 しかし、クリティカル判定でタンクがエスケープさせられ、距離が離れたラビに対し、魔術師が咄嗟に火魔法である火球Fire ballを発動。
 大きな雪煙と共に発生した雪崩の直撃を受けて2人が死亡判定でエスケープ。3人残った処に、別なラビが現われ、半ば雪に埋まっていた弓師と魔術師の2人を攻撃したとの事。

「ん? それじゃあ最初のラビと後のラビが違う個体か判らないんじゃないの?」

 僕は倒したラビをつまみ上げて、お姉さんに見せます。ラビは白一色の体毛で、特に模様はなく区別はつきません。疑問に思った僕に、お姉さんは震えて呟きます。

「違うんです……。最初のラビは、……とても目つきが悪かったんです……」

 はっ? ラビの目つきが悪い……?
 僕はお姉さんをジト目で見つめます。そんな僕をみて、お姉さんが叫びました。 

「そう、最初のラビは、今の講師の様な目で私達を見たんです!」

「ジト目のラビなんかいるか~」

 ついつい大声で叫んでしまい、慌てて自分の口を塞ぎます。雪面を雪玉が転がっていきますが、辛うじて2度目の雪崩を起こす事は避けられたようです。

「冗談だと判ったら、イリスさんに指名依頼を出してもらいますからね? アレキ、お姉さんをベースに運んであげて」

 僕の言葉に首を立てに振って震えるお姉さんを、アレキの引くソリに乗せて僕は山の上へと向かい歩き出します。

「仕方ないのう、これは貸しじゃぞ」

 そう言ってベースに向けて走り出す、アレキを見送って……

*****

 雪中を歩いていくと、ラビの足跡が見つかりますが、特に大きさなどの違いはありませんね。索敵魔法では、現時点で僕に敵意を持っているラビはいないので反応がありません。

「特に変わった個体がいるように見えないのですけどね~」

 独り言を口にしながら、登坂を続けますが、ふと気付いてエスケープ人数を確認します。

「ん? エスケープ数18? 随分増えていますね。2割のPTが倒れたという事ですか」

 タブレットを取り出して、僕はイリスさんにベースの様子を確認します。

『クロエ:イリスさん、ベースの方に変化は無い? 随分多くの人がエスケープしてるんだけど?』

『イリス:ん~? 特にこっちは何も変化はないですわよ。アレキさんが、お姉さんを1人連れてきただけ』

『クロエ:そうなんだ、判った。僕はもう少し原因を探ってみるよ』

『イリス:了解~』

 むぅ、特に変わった所は無いようですね。こちらも特に異常は無さそうです。視界に入ったラビにガンブレードを向けますが、ラビは立ち上がって耳を立てて警戒はしているようですが、特に襲ってくる様子はありません。
 あのお姉さんの怯えようからすると、嘘を言って僕をからかった様子は無いと思いますがね~。それにしても、ラビの目つきね~。
 歩き出した僕のみて、先ほどのラビは僕と離れる方向に逃げていきます。特に不審な様子はありませんね。

 そうして数分斜面を登った頃でしょうか。周囲に杉のような針葉樹林が増え始めました。樹の幹の周囲は一部雪が解けて、穴の様になっています。

「『根開き』ですか。少しづつ温かくなっているのはわかりますが、今はラビが隠れられそうで、面倒ですね」

 僕はポツリと呟きます。気温が上昇して、樹の幹が雪の反射などで暖められると、解けた雪や氷が樹の幹の表面を伝って落ちていきます。するとその水が、幹の周りの雪を溶かして、樹の幹の根元を中心に、徐々に周囲の雪を溶かしてゆき、これが『根開き』とか『根回り穴』と呼ばれるものになります。今は、ラビが隠れる絶好の場所になってしまっていますね。

 さらに数分登った所で、戦闘音が聞こえます。僕は風魔法で加速をつけて、更に前へすすむと、丘の稜線で戦っているPTが目に付きます。相手はラビ?
 氷魔法を放たれたラビは、ぎりぎりの処でそれをかわして距離をとっています。とりあえず、接近されないようにしているのは成功しているようですが、その割りに魔術師のお兄さんの表情は苦しげです。
 弓師の方を見ると、弦が切れて風に頼りなくたなびいています。周囲には血を流して倒れている剣士のお兄さんがいましたが、見ている前でエスケープさせられます。

「支援は必要ですか?」

 僕がそう聞こうとした途端、『ダンッ』っと大きな音が聞こえました。雪上で何処からこんな音がと音源を捜すと、彼らのPTと距離をあけたラビの方が音源のようです。僕が呆気にとられてみている前で、再び『ダンッ』っと大きな音がして、ラビがタンク役に真っ直ぐ向っていきました。
 咄嗟に僕は右手で『ガンブレード』を抜き、撃とうとしました……が。

「くそっ、射撃線上に回復役ヒーラー魔術師キャスターが……」

 襲われているPTのメンバーが射撃線上に入り、撃つ事ができない僕の目の前で、ラビの口元がギラリと光を放ちました。真っ直ぐ喉元を狙って突っ込んでくるラビに向って、大き目のシールドを構えたタンクでしたが、ラビと交差した途端淡い光を放って消えてしまいます。

「なっ、エスケープさせられた……」

 確かに盾でガードしたはずのタンクは、あっけなく消えて、ラビはそのまま山頂方向に走り抜けていきました。そして、一瞬僕はラビの目を見てしまいました。ジト目の様に見えて、明らかに殺意に爛々と燃えていたその瞳を……
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