駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

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5.南海の秘宝

24.雪中行軍?!

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 視界を埋め尽くす白・白・白・白。
 むぅ、一面の銀世界という奴ですが、なぜこんな事になったんでしょう……? そこは、前回の演習と同じように、東西5km、南北2kmの広大なエリアが、緩急あわせた斜面に、所々に生えた針葉樹、そして先ほども言いましたが、白・白・白・白と雪が一面に積っています。
 そして……

「皆さん寒そうですね」

「「「寒いに決まってるだろうが~!!」」」

 お叱りを受けましたが、僕は相変わらずの普段着に風魔法による断熱結界のお陰で寒さは堪えません。というか、みなさん自分で望んだんじゃないですか。冬山での演習を……

「では、PTパーティー毎に隊列を組んでください。事前の編成表では、編成に問題があるPTは無かったはずですが、大丈夫ですね」

 皆さん頷いていますね。では、開始しますか。

「では、途中にはラビがいますので、油断せずに山頂を目指して下さい。雪中行軍訓練、開始!」

 6名づつ15のPTに分かれた90名の戦闘実習受講生は、それぞれ山頂を目指します。

「ちょっと、ラビって危なくないんですの?」

 僕の斜め後ろでは、着膨れしたイリスさんが佇んでいます。相変わらず寒さには弱いんですね。
 ラビというのは、兎に一本角が生えた魔物です。白い毛色は冬山では保護色となっていて、発見は難しく、その行動は俊敏です。山岳地では、時折増えすぎて新芽を食べ尽し、農作物も食い荒らします。

「弱いと侮って戦わなければ、Lv.Eの冒険者さんで余裕のはずですよ。ラビは集団戦はしませんし、時折くるクリティカルさえ喰らわなければ……」

 首を狙ってくるクリティカルが発生すると、高確率で死に至りますが、今回も保護魔道具バリアツールを着けているので、ダメージがあればエスケープさせられます。

「さて、僕達は彼らが帰って来るまで、待つだけですから、少し暖でも採っていましょう」

 今回は基地ベースとして、麓に僕とイリスさん、魔法医療学受講生の7名が待機し、なぜかアレキも一緒にいます。

「アレキは寒くないんですか?」

 僕のイメージでは、猫はコタツで丸くなるのですが、アレキは家猫さんと違って、生粋の森猫さんです。寒さには強いのでしょうね。

「我輩が住んでいた北部の森なぞ、真冬では吐く息も凍る日があるでな。この程度の寒さなど、ものでもない」

 吐いた息の水分が凍りついて、その音が聞こえる現象を、『星のささやき』と言いましたが、たしか-50℃位で聞こえるといいますから、北部エリクシアは途轍もなく寒いのに、あんなに樹があるのは精霊樹の存在が大きいのでしょうね。

 まあ、アレキは良いとして、じっとしていると寒くなりますので、僕は『かまくら』を作る事を提案します。簡単に説明して、みんなで1つ作ると、デーゲンハルトとカレルの2人が、せっせと働いてくれて、大き目の『かまくら』が2つ完成します。女子3名は完成した『かまくら』の中で、七輪にのせたお餅を焼いています。
 レギニータも最初は雪を珍しそうにしていましたが、流石に寒くなったのでしょうね。七輪で暖をとりながら、毛布に包まっています。

 かまくらの外では焚き火を起こして、大鍋で鍋料理でも作りましょうか。大鍋に唐辛子とゴマなどで作ったダシのベースをお水でといて煮立てます。
 白菜をざく切りにして、長ネギを斜め切り、お鍋に投入。適度な所で、事前に作っておいた餃子を投入します。
 餃子に火が通ったら、数センチ単位で切ったニラを投入して出来上がりです。

 赤いスープが辛そうに見えますが、程よい辛さの『坦々餃子鍋』の完成です。むぅ、某キャンプアニメほど見た目は良くないけど、味はまぁいけるほうでしょう。

「はい、これでも食べて待ちましょう」

 イリスさんを含めて7人分(アレキは猫舌ですから無理ですね)をお椀によそい、皆さんに提供します。

「あれ? 食べないんですか? 美味しいのに」

 みなさん、スープが赤いのに抵抗があるようですね。僕は自分の分を一口食べると、うん、十分食べられる辛さですし、美味しいですよ?
 僕が一口食べたら、みなさん諦めたように食べていただけました。その中でもクラリスさんが最初に口をつけてくれます。

「少し辛めですけど、美味しいですね。みなさん、身体が温まりますよ」

 さすがはこのメンバーの中では一番北国出身ですからね。寒さに強いだけではなく、辛目の食べ物の効果もご存知ですね。
 では、僕も続きを頂きましょう。そう思い二口目を食べようとしたその時でした。

『ズンッ』と音が響き、視界の外れで炎があがります。むぅ、ラビ相手に火魔法ですか? 高威力の魔法を、雪山で多用するのは危険なのに……

「あちこちで戦闘が開始されたようですわね。クロエ、いったい何匹ラビを放したんですの?」

 イリスさんが尋ねるので、僕は思い出して見ます。ん~、一山のラビの殆どを捕獲しましたからね。

「多分、100羽、いや100匹以上いるんじゃないかな。参加した冒険者より大目だよ」

「1平方キロメートル当たり10匹でありますか。それほどの密度でもないでありますね」

 デーゲンハルトは何気に計算が速いですね。まあ、最年長ですしね。そんな事を考えながら斜面を見ていると……

 『ズンッ』と再び挙がる火柱に、『ズッ、ズズズズズズズッ』と物音が響きます。
 ありゃ~、誰かの攻撃で、表層雪崩が発生したようですね。複数の冒険者が、雪崩の進行方向から直角の横方向に逃げていますが、斜面を下ろうとした人と数人が巻き込まれたようです。

『只今の雪崩により、2名がエスケープさせられました。残存数は94名です』

 エスケープさせられた人数がアナウンスされますが、残存94名? 90名の戦闘実習受講生と僕達7名で、もともとの人数は97名のはず。2人リタイアしたのであれば、95名で1人数が合いません。

「誰か、ラビにやられたっていうこと?」

 だらしないですね。とはいえ、クリティカルがありますから不運だったのでしょう。それに、先ほどの表層雪崩で、雪中での魔法使用の危険性もわかったでしょう。

「ラビはクリティカルもありますからね。運が悪かったのかもしれませんね」

 僕は斜面の方を見ながら呟きますが、視線の先でも何箇所か雪煙が上がっています。そういえば、3人がリタイアしたPTは同じPTなのでしょうか? 同じPTだとすれば、既に半壊した事になりますね。
 リタイアしたメンバーを確認すると、同一PTのようです。むぅ、様子を見に行ったほうがよいでしょうか?

「仕方ありませんね。半壊したPTがあるようなので、アレキと見に行ってきますね」

 僕はイリスさんにそう告げると、アレキに小型のソリを取り付けます。地球の北欧神話では、女神フレイヤのソリを猫が引いていたということですからね。アレキにも出来るでしょう。

「さぁ、アレキ。着いてきたからには、お仕事をして貰いますよ」

「仕方が無いのぉ。報酬は別途請求するぞ」

 僕をのせた小さなソリを引き、アレキは雪原を走り出しました。
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