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5.南海の秘宝
40.海賊との接敵
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沖合にでてから、艦の機能試験として、機関での最大出力運転や、帆船にはないスラスターや非常用の水流噴進などの試運転を行います。これは青家の皆さんも知らない事が多いので、オスカーさんを始めとした皆さんも本気になっていますね。今回の指示出しは僕がしていますが、明日以後はオスカーさんの指示によって操艦されます。
飛空艇部隊は艦が航走中の発着艦の訓練も行っていますし、小型艇や潜航艇の部隊も同様です。いくら周辺国との間に、技術的優位があっても、運用する側の油断から実戦での戦闘では役に立てない事なんて、過去の歴史にはいくらでも事例がありますからね。そう考えれば、初日としては上手くいった方でしょう。
様々な問題点も出ましたが、大きな問題はなく無事に航行を続けて3日目の事でした。
「2時の方向に船影。縮帆中の大型船と思われます。」
見張り員からの報告に、艦橋内でも双眼鏡を手に2時の方向を確認する士官もいますね。既に通常の航海に関しての習熟過程と入っていますので、本来なら僕が指示を出しますが、副長であるオスカーさんに全てを任せています。
「見張り員は警戒を続行。船種を特定できる情報があれば伝えよ」
既にアレキサンドリアを出港して72時間が経過しています。習熟訓練の為に、船足を抑えていますが、すでに1500km離れています。普通の商船もいれば、武装商船もいます。そして、当然のことながら……
「未確認船、帆を張ります。3本マスト、バークです。フォアセイルは赤地に白の髑髏、海賊船『Bloody killer whale』です」
青家の水兵達にざわめきが走ります。海賊ですか。そろそろ現れてもおかしくはないと思ってましたが、『Bloody killer whale』とは、大げさな名前ですね。
「クロエ艦長、意見を具申させて貰ってもよろしいか?」
僕はオスカーさんを見て頷きます。水兵達の様子を見ると、知っているようですしね。オスカーさんは帽子を被り直しながら、言葉を続けます。
「本艦は経験の浅い水兵や、非戦闘員が多い。幸い進路は風上で、船足をあげれば奴らは追うことはできない。ここは戦闘を回避することを提案する」
艦橋内の士官が一瞬ざわつきます。確かに新造艦で乗員の練度も低い状態ですから、接舷して相手の船上での剣戟で勝負するなら、その意見は妥当でしょう。ですが、この場合は僕達を試していると見た方がよいでしょうね。
「海賊船『Bloody killer whale』について、ご存じですか?」
僕の問いに、オスカーさんはもちろんと頷きます。
「あいつは、南部エリクシアのムルジア領主から復仇免許状を受けた私掠船ですな。簡単に言えば、エリクシアに他国の船を襲ってよいと許可された船という事です。当然、アレキサンドリアの船は勿論、他国の商船を襲います。
艦首・艦尾に小型の砲を4門ずつ、片舷に7門ずつの砲をそなえ、比較的早い8ノットの船足を誇ります。移乗されれば手強い敵ですな」
「こちらに向かってくる目的はわかりますか?」
まあ、こちらの船を鹵獲して奪うつもりなんでしょうね。近づいて、大きさに驚くでしょうけど。
「本艦は商船には見えませんので、鹵獲目的でしょう。それに……」
「それに?……」
「女性がこれほど乗船していると判れば、考えることは一つでしょうな」
はぁ、わからなくもありませんが、本当に男性の考える事は単純ですね。多少なりと、海の男という事で尊敬していたのですが、評価を下げるとしましょう。
「この場合、海賊を捕縛する必要性はあるんですか?」
正直捕まえても危ないし、食事や水などの消費も早まります。海賊船を拿捕しても、えい航していくわけにもいきませんからね。かといって、放っておけば他の船を襲うでしょう。
「特にありませんな。本艦の収容力からすれば、十分閉じ込めておくことは可能ですが」
なら決まりですね。海賊旗をあげてこちらに接近している以上、警告を与えてから沈めてしまいましょう。
「では、本艦はこれより戦闘状態に移行します。航空隊は2機ペアで離陸して、敵船の帆を狙って攻撃してください。ただし、魔法攻撃や弓・銃などの反撃には十分注意をするように。
操艦は敵船から距離をとって接舷させないようお願いします。まあ、甲板の高さが随分違いますから、やすやすとは移乗できないでしょうけど」
「了解しました。総員戦闘配置につけ~」
オスカーさんが、にやりと笑います。別に僕は流血を避けれれば避けたいのですけどね。僕達がさけても、他の人が血を流すことになるのであれば、ここで叩いておいた方が後悔はないでしょう。
「1、2番機発艦用意いそげ~!」
航空隊の指揮所では、今頃ワイアットがにんまりしているでしょうね。ある意味、世界初の航空戦闘なのですから。
『これより、クイーンアレキサンドリアは戦闘態勢に移行します。戦闘区画以外のハッチは間もなく閉鎖されます。総員持場にて待機願います』
艦内放送で、ユイの声が流れます。さて、海賊さんはどうでるでしょうね?
*****
「でけぇ……」
「……なんで帆柱も帆も無いのに進むんだよ」
Bloody killer whaleと知られた海賊船の船上では、徐々に近づいてくる獲物に、賑わっていた海賊達の声が徐々に静まりだしていた。
遠目にも見える真っ白な船体は、荒波の外洋を波しぶきをあげて進んでくる。本来水平線上に見えた相手との接敵は、1時間余りかかるのに、その半分程度の時間でやってきたのである。
「相手がでかいなら、大砲だって外れやしないだろ。とっととブチかましてやれ。
ああ、船には当てるなよ。あれが手に入れば俺たちがこの海では最強になれるさ」
頭の声が響くが、今一つ仲間のノリも悪い。
「スターボート急げ、異常に足が速いぞ。通り脱ぎられちまう!」
今までに見たこともない白い巨艦のせいで、相手との距離を見誤った操舵員が船首を右に回そうとしたとき、それは起こった。
ピッっという何かが掠める音がしたかと思ったとたん、『バンッ、ビリィィイ』と音が自響き渡り、一気に帆が裂ける音が鳴り響く。追い風を総帆に受けて洋上を走っていたのだ。僅かな帆への傷は、風圧により一気に広がったのだ。
『ビンッ、、ブッ』と低い音が響き、帆を支えるヤード・ブームが支えを失って回転し、マストへとぶち当たる。
急なブームの動きは、船体の急激な傾きを呼び、切れたロープで鞭打たれた船員や、マスト上にいた見張り員などの落下や落水を呼んだのである。
あっという間に戦闘不能となった海賊船『Bloody killer whale』であったが、それをもたらしたのが、隠蔽魔法で空中から忍び寄っていた2機の飛空艇によってもたらされたとは、一人の海賊も気が付くことは無かったのである。
飛空艇部隊は艦が航走中の発着艦の訓練も行っていますし、小型艇や潜航艇の部隊も同様です。いくら周辺国との間に、技術的優位があっても、運用する側の油断から実戦での戦闘では役に立てない事なんて、過去の歴史にはいくらでも事例がありますからね。そう考えれば、初日としては上手くいった方でしょう。
様々な問題点も出ましたが、大きな問題はなく無事に航行を続けて3日目の事でした。
「2時の方向に船影。縮帆中の大型船と思われます。」
見張り員からの報告に、艦橋内でも双眼鏡を手に2時の方向を確認する士官もいますね。既に通常の航海に関しての習熟過程と入っていますので、本来なら僕が指示を出しますが、副長であるオスカーさんに全てを任せています。
「見張り員は警戒を続行。船種を特定できる情報があれば伝えよ」
既にアレキサンドリアを出港して72時間が経過しています。習熟訓練の為に、船足を抑えていますが、すでに1500km離れています。普通の商船もいれば、武装商船もいます。そして、当然のことながら……
「未確認船、帆を張ります。3本マスト、バークです。フォアセイルは赤地に白の髑髏、海賊船『Bloody killer whale』です」
青家の水兵達にざわめきが走ります。海賊ですか。そろそろ現れてもおかしくはないと思ってましたが、『Bloody killer whale』とは、大げさな名前ですね。
「クロエ艦長、意見を具申させて貰ってもよろしいか?」
僕はオスカーさんを見て頷きます。水兵達の様子を見ると、知っているようですしね。オスカーさんは帽子を被り直しながら、言葉を続けます。
「本艦は経験の浅い水兵や、非戦闘員が多い。幸い進路は風上で、船足をあげれば奴らは追うことはできない。ここは戦闘を回避することを提案する」
艦橋内の士官が一瞬ざわつきます。確かに新造艦で乗員の練度も低い状態ですから、接舷して相手の船上での剣戟で勝負するなら、その意見は妥当でしょう。ですが、この場合は僕達を試していると見た方がよいでしょうね。
「海賊船『Bloody killer whale』について、ご存じですか?」
僕の問いに、オスカーさんはもちろんと頷きます。
「あいつは、南部エリクシアのムルジア領主から復仇免許状を受けた私掠船ですな。簡単に言えば、エリクシアに他国の船を襲ってよいと許可された船という事です。当然、アレキサンドリアの船は勿論、他国の商船を襲います。
艦首・艦尾に小型の砲を4門ずつ、片舷に7門ずつの砲をそなえ、比較的早い8ノットの船足を誇ります。移乗されれば手強い敵ですな」
「こちらに向かってくる目的はわかりますか?」
まあ、こちらの船を鹵獲して奪うつもりなんでしょうね。近づいて、大きさに驚くでしょうけど。
「本艦は商船には見えませんので、鹵獲目的でしょう。それに……」
「それに?……」
「女性がこれほど乗船していると判れば、考えることは一つでしょうな」
はぁ、わからなくもありませんが、本当に男性の考える事は単純ですね。多少なりと、海の男という事で尊敬していたのですが、評価を下げるとしましょう。
「この場合、海賊を捕縛する必要性はあるんですか?」
正直捕まえても危ないし、食事や水などの消費も早まります。海賊船を拿捕しても、えい航していくわけにもいきませんからね。かといって、放っておけば他の船を襲うでしょう。
「特にありませんな。本艦の収容力からすれば、十分閉じ込めておくことは可能ですが」
なら決まりですね。海賊旗をあげてこちらに接近している以上、警告を与えてから沈めてしまいましょう。
「では、本艦はこれより戦闘状態に移行します。航空隊は2機ペアで離陸して、敵船の帆を狙って攻撃してください。ただし、魔法攻撃や弓・銃などの反撃には十分注意をするように。
操艦は敵船から距離をとって接舷させないようお願いします。まあ、甲板の高さが随分違いますから、やすやすとは移乗できないでしょうけど」
「了解しました。総員戦闘配置につけ~」
オスカーさんが、にやりと笑います。別に僕は流血を避けれれば避けたいのですけどね。僕達がさけても、他の人が血を流すことになるのであれば、ここで叩いておいた方が後悔はないでしょう。
「1、2番機発艦用意いそげ~!」
航空隊の指揮所では、今頃ワイアットがにんまりしているでしょうね。ある意味、世界初の航空戦闘なのですから。
『これより、クイーンアレキサンドリアは戦闘態勢に移行します。戦闘区画以外のハッチは間もなく閉鎖されます。総員持場にて待機願います』
艦内放送で、ユイの声が流れます。さて、海賊さんはどうでるでしょうね?
*****
「でけぇ……」
「……なんで帆柱も帆も無いのに進むんだよ」
Bloody killer whaleと知られた海賊船の船上では、徐々に近づいてくる獲物に、賑わっていた海賊達の声が徐々に静まりだしていた。
遠目にも見える真っ白な船体は、荒波の外洋を波しぶきをあげて進んでくる。本来水平線上に見えた相手との接敵は、1時間余りかかるのに、その半分程度の時間でやってきたのである。
「相手がでかいなら、大砲だって外れやしないだろ。とっととブチかましてやれ。
ああ、船には当てるなよ。あれが手に入れば俺たちがこの海では最強になれるさ」
頭の声が響くが、今一つ仲間のノリも悪い。
「スターボート急げ、異常に足が速いぞ。通り脱ぎられちまう!」
今までに見たこともない白い巨艦のせいで、相手との距離を見誤った操舵員が船首を右に回そうとしたとき、それは起こった。
ピッっという何かが掠める音がしたかと思ったとたん、『バンッ、ビリィィイ』と音が自響き渡り、一気に帆が裂ける音が鳴り響く。追い風を総帆に受けて洋上を走っていたのだ。僅かな帆への傷は、風圧により一気に広がったのだ。
『ビンッ、、ブッ』と低い音が響き、帆を支えるヤード・ブームが支えを失って回転し、マストへとぶち当たる。
急なブームの動きは、船体の急激な傾きを呼び、切れたロープで鞭打たれた船員や、マスト上にいた見張り員などの落下や落水を呼んだのである。
あっという間に戦闘不能となった海賊船『Bloody killer whale』であったが、それをもたらしたのが、隠蔽魔法で空中から忍び寄っていた2機の飛空艇によってもたらされたとは、一人の海賊も気が付くことは無かったのである。
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