駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

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5.南海の秘宝

49.宴の後……

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『まもなく第3停泊配備に切り替えます。艦外にいる乗員は、艦内に入るように願います』

 ユイの艦内放送で、最後まで飛行甲板上で涼んでいた数名が、居住区画へと入ったことを確認し、僕は艦橋で第3停泊配備への切り替えを宣言します。
 とはいえ、既に0時をまわっており、ほとんどの乗員は自室に引き上げています。一部は、居住区画の談話室等で、ささやかに宴会を続けている人はいるようですが。
 オスカー副長も、イリスさんと久しぶりに家族の語らいをしていることでしょう。

『第3停泊配備となりました。これより艦外にでる全ての通路・ドアはロックされます。艦外への移動は軍規違反として処罰します』

 警告の放送を最後に、僕はユイに言葉をかけて自室へと引き上げてもらいます。

「さて、エマとジェシーも休んでいいよ?」

 僕がつぶやくと、背後に2つの陰が現れます。忍術でいえば隠形の術ですね。必要に応じて、護衛対象の陰に潜むことができる空間魔法の一種です。もともと魔法は得意じゃなかったはずなのに、最近の上達は恐ろしいものがありますね。でも、艦内であれば警戒する必要はないはずなのですが。

「クロエが起きているのに、私達が眠る事はできません」

「アレクシア様、リリー様からも、停泊配備中の護衛は厳命されております」

 むぅ、多少過保護な気がしますよ。僕も来年で15歳となり、この世界での成人を迎えますし、中身は18歳+7歳で現在でも25歳。十分大人のはずなのですが、危険視されているわけではないのですから(たぶん……)そこは感謝しないとですね。

「じゃあ、情報の確認を行うから、少し(身体を)頼むよ」

 せっかくですから、二人の好意に甘える事にしましょう。今までは緊急性を感じる情報はなかったようですが、この数時間の間の艦本体の感知した情報を整理します。
 艦内のセンサー群の報告から確認していきます。むぅ、機関区では、2番タービンに少し減圧が見られますね。巡航する分には問題がありませんが、第2戦速異常だと危険かもしれません。リアンに調整か交換を、お願いしておきましょう。
 医療モニターが、女性の居住区画であるC10号室と、男性の居住区画でもD04号室のトイレで警戒を出していますので、衛生科に問診をお願いしましょう。C区もD区も、艦内での作業区画の乗員の居住区画です。なれない環境で、体調を崩しかけている方も少しいるようですね。

「やはり一日中、艦内での作業をしている人が、時間間隔が狂って体調が悪くなりつつありますね。やはり、お日様にあたる事は大事ですよね。展望室とかを閉鎖区画から解放して、軽食が取れるようにしたいのですが……」

 ダメージコントロールの観点からいえば、大きなガラスがある舷側の展望室などは、危険ということで、乗員が常時使用可能な区画として、委員会は認めてくれないので、今は倉庫として使用しているんですよね。
 一応、外部には金属製のシャッターと、内側にも緊急用隔壁がありますし、戦闘時に食事をそんな場所で食事をとる人もいないでしょう。アレキサンドリアに帰港したら、委員会に上申しなければいけませんね。

 そんな事を考えていた矢先のことでした。左腕にザワリとした不快感を感じて、僕は意識を身体へと戻します。

「……やはり、来ましたか……、エマ、ジェシー着いてきて……」

 二人は何も言わずに、僕の後をついて歩きます。艦橋から通路を通って飛行甲板に出た僕達は、そのまま艦首方向へと歩きます。ドアは僕たちが出ると自動的にロックされています。

 僕達が足を止めたのは、艦首右舷のいかりがある場所の上方に位置する場所です。ざわざわ感がひどくなっていますね。艦外監視カメラの情報を見ると、数名の人影が錨鎖びょうさを伝ってよじ登ってきているようです。
 まあ、そのまま侵入しても、錨鎖室までしか侵入はできませんし、そんな処に行く乗員もいませんから、問題はないのですが、余計な情報を与える必要はありませんね。

「……エマ、ジェシー、最低二人は生かしておいてね」

「はい……残りはKillしても?」

 僕は無言で頷きます。そしてエマとジェシーの二人は、飛行甲板から身を躍らせたのでした。

*****

「さて、海賊さん。君達の所属を教えてくれない? あぁ、事前に言っておくと、君達が『自由な海の男たち』なんて存在じゃないのは、既にわかっているから」

 わずかな時間の後、僕はゆっくりと海面上に降下して、生き残った二人の海賊とおぼしき人影の尋問中です。この島に着いた時から、飛空隊や哨戒艇をうまくやり過ごしていたつもりだったのでしょうが、索敵魔法からは逃れられなかったようですね。

「俺達は、ムルジア領「グラナドス伯より、復仇免許状を受けている商人だ?」……」

 予想通りの答えですね。彼らが素直に話しているのは、空らの後ろに立つエマとジェシーのおかげでしょう。2人はいかりにつながる鎖の上を走って、先頭2人を瞬殺。その後ろを上っていた二人の腕を鎖の輪を通すように、剣で縫い付けたのです。彼らは必死で鎖をつかんでいましたが、身体の重さで徐々に体が下がるとともに、腕は剣に引き裂かれていきます。
 あぁ。現在は僕が魔法で浮かせていますから、それ以上腕が裂かれることはありません。2人ともとても素直ですよ?

 そう僕達は、海賊がいる事を承知の上で、あえて甲板上でパーティーをしたのです。彼らには、乗員がそれほど多くない事。女性もそれなりに多いこと。そして、男性の乗員も飲酒をしていることは十分観察できたことでしょう。

「さて、そうなると問題はなぜそんな事を計画したのかですね、教えてくれませんか? レギニータ」

 しばらく沈黙が続いた後、軽やかな水音と共に、浅瀬の岩の上に人魚姿のレギニータが現れました。

「なぜ、わかったんですの……?」

 僕はレギニータの姿を、視界の中央におさめるように、水上で向きをかえます。

「オスカーさんがこの場所の話をした時に、あごを触っていたんだよね。イリスさんに昔聞いたことがあってさ。あれは何か気になる事がある時の、彼の癖なんだって。
 甲板上で貝や魚を焼いていたのは、君の分身体だよね。恐らくは水魔法の一種。この艦に搭載されている魔道具群は、あの存在がきみでないという事を教えてくれていたんだよね。
 その後、四季の新作お菓子をみんなの前で提供した時も、君はやってこなかった。ほぼ全ての女性があの場に集まっていたのにね。
 そして最後に、イリスさんの飲酒。彼女は、僕よりも人の放出魔力の感知能力は高いもの。あの時点で既に気づいていたよ。そして、気づかれないように身を隠す理由も、僕と同じように気づいていたと思う」

 レギニータは、『はぁっ』と大きなため息を付きいて、肩を落としました。

「まさか感知されるとは思いませんでしたの。水魔法で、人魚族の上をいくものが居るなんて……」

「……それで? 僕はまだ答えをもらっていないけど?」

 レギニータは黙りこくったままですね。仕方がありませんね。

「実は答えは分かっているんだけどね。アレキサンドリアとエリクシアのムルジア領グラナドス伯が保護している海賊達とを、本格的に戦わせたかったんだよね?
 クリスティーナとルーシーの二人からも、イリスさん経由で君が海賊にトラウマを持っていたことも報告が上がっているし、魔術技術学院【スクオラ・ディ・テクノロジア(Scuola di tecnologia)】への入学の動機も、海賊の被害に苦しむ人達を救いたいからと聞いてるよ?」

 アレクシス、いえロンタノ辺境伯も、自分の策略からレギニータが乗艦を言い出したことに責任を感じていたのでしょう。もしかすると、何か問題が発生したときに、自分の責任にされる事を恐れたのかもしれませんが。
 レギニータはびくりとその身体を震わせて、青みがかった銀髪を揺らします。僕は空に浮かぶ星すら映しそうな、そんな彼女の髪をみて、奇麗だなと思いつつも続きを話します。

「そして、そんな君が先日の戦いで、『血まみれのシャチ』が瞬殺されるところを見れば、
考えるだろうね。少しでも早く、この南洋諸島が海賊の被害から逃れるにはどうすればよいのかって……」

 そう言った僕の言葉は、潮騒の中、低く響いたのでした。
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