駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

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7.女王の奏でるラプソディー

62.遼寧にて……事後処理

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 その後、今日の会食の献立をたてた人物は副料理長と判明し、料理長と合わせて二人が捕えられました。
 捕縛当初は知らぬ存ぜぬを繰り返していた両者ですが、イリスさん推定の致死量の二倍の食事を無理やり食べさせられた結果、副料理長の単独犯行であることを自白したそうです。

 イリスさんによると、複数も食物から毒素の元を抽出するための分解と、触媒を介した毒の生成だけでなく、呪法による解毒を妨害するために呪いのようなモノまで施されている高度な技術だそうです。
 イリスさん自身も、固有魔道具であるアスクレビオスからの警告によって気づいたというレベルのモノだそうですから、毒殺方法としてはかなり高度といえるでしょう。

 駆けつけた宮廷医師の処置により、皇帝陛下は一命を取り留めました。将軍時代に敵の毒矢を受けたことがあり、わずかではありますが神経性の毒に対する耐性があった為、大事には至らなかったようです。

 脳筋お姉さんは、毒の摂取量が多く、怪我による抵抗力の低下と、僕の魔法攻撃を受けたために体内の魔力の乱れが影響して、宮廷医師の呪法による解毒が及ばず、四肢に麻痺が残る結果となっています。

 えっ? 僕たちは何をしていたかって? 

 治療することは可能ですが、お二人の治療には何もしていません。冷たいように見えますが、僕たちが手を出すことによって、皇帝陛下と脳筋お姉さんの健康に、責任を押し付けられるのはごめんです。
 もともと、会食に使用された食材は、その日の夕食に使用される予定だったものだそうなので、犯行が少し早まったにすぎませんからね。

 そして僕たちは、今回の模擬戦の報酬を受け取りました。

 報酬の一つは、招待に応じなければ購入できていたはずの味噌や醤油・お酢や料理酒といった調味料の他に、お米です。お米は種もみも含めて購入しましたので、開放都市チッタ・アベルタの農園で栽培が可能かを調べることができます。

 そしてもう一つの報酬ですが…… これはエリーゼさんが皇帝陛下と約束した報酬で、政変の真実を問うものでした。自国の恥になりますので、普通は言いたくない話でしょうが、あくまでも個人的興味であることと、他言しないことを条件に了承されたものでした。

 そして、宮廷医師の処方が終わった時点で、僕たちはその内容を聞いています。

「……つまり、遼寧における政変は、先帝陛下と皇帝陛下の示し合わせた、計画された政変だったということですの? 単に皇帝の地位を譲るだけであれば『禅譲』するなど、他にも方法はおありでしたでしょう?」

 エリーゼさんの発言は最もなことです。政変による死者は先帝や皇后、側妃や皇子・皇女を筆頭に、主だった官や軍の高官すべてに及んでいます。

「……腐敗した軍や宮廷の高官を一掃するには、位を譲られる『禅譲』ではだめなのだ。それでは、腐った宮廷や軍までも引き継いでしまう。
 腐った朝を滅し、新皇帝の強権を持って、前王朝の不正を正す『革命』でなければ、腐敗した宮廷や軍を刷新できぬまでに、当時の遼寧は追い込まれていたのだ」

 一見平和に見えていた当時の遼寧ですが、宮廷や軍には腐敗が蔓延していたそうです。軍でいえば、本来北方の遊牧民に対する備えとして使われる軍費が、他国に対する見栄で、大型の軍艦の建造に回され、その費用さえも賄賂や横流しの横行などで湯水のように浪費される国費。
 それに輪をかけ、皇后・側妃を含めた一族の争いや、皇子・皇女による次期帝位の跡目争いなど、派閥や利害関係に基づく争いも絶えなかったとのことですね。

「自身による勅命は軽んじられ、近衛すらもおざなりの警護しかせぬようになり、『人形陛下』とさえ揶揄されていた先帝は、遼寧という国を再興するために、北斗将軍であった我とともに、革命による王朝の刷新を計画されたのだ」

 皇帝といえば強大な権限を持ちなんでもできそうですが、国は皇帝だけでは動きませんからね。軍の高官を掌握できていなければ、軍は皇帝のいうことを聞きません。
 同じように冢宰ちょうさいを筆頭とした官僚も、派閥争いなどの足の引っ張り合いに終始し、これに輪をかけて跡目争いを巡って皇后・側妃、皇子・皇女が争っていたのです。

 自分だけでは腐敗した官僚や軍の高官を除外できないと判断した先帝は、腐敗した朝廷に批判的であった弟の北斗将軍とともに、革命を行う為の準備を始めます。

 まず、幼く派閥争いに巻き込まれていなかった二人の皇女、第六皇女と第七皇女を遊学という名目で国外にだしました。
 革命となれば、先帝の皇子や皇女はもめ事の種となり処刑されるのが常ですし、今回は彼らも腐敗の要因にもなっています。罪もない幼い二人の皇女が、粛清の渦に巻き込まれないように配慮したのでしょうね。

 続いて、腐敗した官僚や高官たちに疎まれていた有能な人材を、北の任地へと移動させました。
 幸いにして、北の任地に赴くということは、帝都の官僚からすれば左遷に等しいわけで、有能な人材が北の任地に配置換えをされることに、腐った官僚は喜びはすれど、皇帝を止める人は存在しません。

 北部の辺境で、新たな朝を担う人の育成や、計画された先帝の無能無策っぷりで、帝都の防衛に穴を開け、万全を配して北斗将軍による革命が起こされます。
 本来であれば、腐敗した官僚や将軍を討つだけでよかったかもしれませんが、皇后や側妃、皇子や皇女も閥をつくって争いをしていたのですから、処罰されなければ人々は納得しないでしょう。そして、それは革命を招いてしまったとされる先帝も同様でした。

「遼寧という国を救うために、自らの家族や自分自身の命を顧みず、自らを滅ぼす革命を招いた。それが先帝を英雄視する一部の物語だよ」

 皇帝陛下のつぶやく言葉を最後に、僕たちはその場を辞することにしましたが……

『貴様ら、これが東方一の大国、遼寧の近衛部隊の小隊長に対する対応か!!』

 うるさい人が約一名、帝都から港町へと向かう馬車の荷台から声が響きます。エマ&ジェシーが通訳してくれますが、僕たちはげんなりするしかありません。

「あら、ずいぶん威勢が良いですわね。 貴女は既に近衛の兵ではありませんわよ?
 面倒になったら港町で放り出しても構わんと、陛下のお墨付きを頂いてますし」

 エリーゼさんの言葉に、ぐぅと唸って真っ赤な顔で黙り込むのは、手足が麻痺して自力では動けなくなった脳筋お姉さんです。
 皇族用の馬車ではなく、荷物を積んだ馬車の荷台。それも、他の荷物を積み重ねて作った空きスペースに居るのが不満なようですね。
 兵としては有能だったようですが、さすがに障害が残る身体となってしまい、軍から退役させられてしまいました。

「クロエ、うるさいと通りを行く人から注目集めるから、遮音フィールド張っておいてよ」

 そうですね。ここまでうるさくなるとは思っていませんでしたが、煩わしいので遮音フィールドを張り、静かになったことを確認して、僕はイリスさんに問いかけます。

QAクイーンアレキサンドリアが洋上を航海中の間預かることになりましたが、いいんですか? イリスさん」

 麻痺の残る手足は、QAクイーンアレキサンドリアの医務室で治療を受ければ治るかもしれない事を伝えたのはイリスさんです。

 彼女は、僕の魔法攻撃を受けたせいで乱れている魔力の流れが落ち着いたところで、抗麻痺anti paralysisの魔法をかければよいのですが、イリスさんは魔法治療をする気はないようですしね。

「魔法や一時的な状態異常を治すのはわかるけど、病気や怪我なんかの定着した状態異常を治せるなんて変人は貴女くらいよ。
 それに遼寧至上主義も結構だけど、私たちが学んでいる事まで馬鹿にされるのは許せませんわ。アレキサンドリアが一番などというつもりはないけど、他国の技術も正当に評価してもらわないと」

 こっそりイリスさんが言いますが、確かに遼寧至上主義の彼女ではいつか身を滅ぼすでしょうね。っていうか、変人とかいわれてますね、僕……

 ちなみに。このお姉さん、下賤な者に名など名乗れんとかいってますので、僕たちの間では脳筋お姉さんで呼ぶことにしています。
 もしかすると、ユイなら知っているかもしれませんが、身バレになる可能性もあるから黙っているのかもしれません。

 脳筋お姉さんは現皇帝陛下の娘であり、兵としては有能ですが将としては視野が狭いという欠点があります。一兵卒であれば、それでも良いかもしれませんが、皇族としては問題がありまくりですし、この状態を好ましく思っていない皇帝陛下は、毒の後遺症の治療を僕たちに依頼することで、世界をみて視野を広げてほしいようですね。

 一応帝位継承者として、息子が宰相をしていますので、四肢が不自由で嫁入りが困難になった彼女を、今のまま放置するよりは、僕たちに身を預けてでも、一人の女性として普通の生活が営めるようになればよいとの考えでしょう。

「彼女には思いっきり苦労してもらいますわ。リハビリは特にきついメニューにするから、勝手に魔法治療してはだめよ? もし、そんなことをしたら非献体にはクロエになってもらいますわよ?」

 イリスさんの言葉に、僕は激しくうなづきます。まぁ、一人の人間を大勢で叩き潰そうとしていたのですから、僕が治療を促す立場ではありませんしね。

 そして僕たちは港町からPAプリンセスアレキサンドリアに乗艦して無人島まで移動後、ヴァルキリーVF1に乗り換えて無事QAクイーンアレキサンドリアに帰艦することができました。
 脳筋お姉さんが絶句していたのは当然のことですが、帰艦後エリーゼさんは、薬をもられたヘルガさんから厳しいお説教を喰らったのは当然ですよね?
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