駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

文字の大きさ
299 / 349
7.女王の奏でるラプソディー

68.イリスの絶対領域

しおりを挟む
「さぁ、休む必要はないのだから、さっさと進みますわよ。クロエ、近くに敵の反応はないのかしら?」

 ん~、イリスさんがやる気前回ですね。今のところ、ユイが良いとこ見せてるだけで、イリスさんとしても活躍の場が欲しいのかもしれませんが、ヒーラーの活躍って仲間が被弾してからですしね。
 とりあえず、イリスさんのご希望に添う様に、敵が近くにいないか探してみますか……

「百メートルほど先に敵性反応がありますね……」

 ただ、反応はゴースト系なので、イリスさんとは相性が悪い気がします。かといって、教えなければそれはそれで怖い結果になりますので、事前にゴースト系がいる事を追加で伝えておきます。

「ふふん、いつまでも幽霊ごときに恐怖するわたくしじゃありませんわ。みなさん、進みますわよ。 エマ、前衛をお願いね。ジェシーは後方の守りを」

 珍しく、イリスさんがエマとジェシーに指示をだして、スタスタ歩きはじめましたが、前方に居るのはゴースト系ですよ? 本当に大丈夫なんでしょうか?

 ユイは次の式、炎在鬼と水滅鬼の二体を召喚しています。滅系の式をユイが使うのは珍しいですね。
 ユイの使う滅系の式は、式を中心とする一定範囲の魔法や地形効果を無効化するモノで、これには敵味方の区別はないので、味方の魔法威力を落とす可能性が高いのです。

 既に敵がいる事がわかっているので、エマはいつも通り大剣を構えていますし、ジェシーは水中からの敵の出現を警戒しながら進みます。

 そして、進んだ先では通路が水路によって隔たれています。十メートル程先に再び道が続いていますが、水中に入るのはシー・カンディルがいる以上ごめんです。
 ユイが水滅鬼の方をみてうなづくと、水路の上へとふよふよと進み、一旦胸前で交差していた腕を大きく広げました。

 それと同時に、水滅鬼を中心として直径十メートル程の範囲で水路の水が消滅しました。水のあった場所に現れたのは、一辺が二十センチほどの四角い足場です。
 本来は水面下に沈んでいたようですが、その根元五メートル程も水は消滅していますので、今はその存在が明らかになっています。

「水中の飛び石を渡る事で、カンディルの餌にさせるつもりだったようですね……」

「そうね。この仕掛けを作った後で水没させたのでしょうけど、最初の犠牲者はここを作った職人たちだったようよ……」

 イリスさんの言葉と同時に、水面に揺らめくように現れたのは人形をした幽鬼、レイスです。一様にうつろな視線に暗い表情をしており、生前着ていた衣類も見えますが、労働者のようです。どうやら、意図的にここを渡る者を襲う様に、呪いをかけられてこの場所を離れる事ができない様にされているようですね。

「皆さん、早く水滅鬼の作った領域に入りなさい、水系の攻撃が来るわよ!」

 イリスさんの言葉どおり、レイスは胸前で手を合わせており、幽鬼のような身体の前には、水槍が形成されていきます。飛び石の上に移動したのでは、かえって迎撃が難しいんじゃないでしょうか?

 エマやユイ、イリスさんは次々と飛び石を渡り先に進んでいきますので、僕だけ躊躇している訳にもいきません。エマも後ろからせかしてきてるので、僕も先に進みましょう。

 レイスの放った水槍は、水滅鬼の作った領域内では存在することさえできないのか、領域内に入ると淡い光を放ちながら消えてしまいます。

 水槍が無効と分かったレイスは、凄絶な叫び声をあげました。闇系の魔法、恐慌パニックですが、イリスさんのHoly restoration聖なる回復が継続しているので、SAN値が下がることはなく、正気を失うメンバーはいません。

「とはいえ、レイス自体は減りませんね……」

 僕のつぶやきに、ユイが言葉を続けます。

「ここは、この遺跡を作った職人の方々を惨殺することで、意図的に作られたけがれた闇の領域のようですね。
 これでは、聖属性系統の式を召喚することは難しいですし、聖属性攻撃もかなり減衰させられると思います」

 ユイの言葉を確認するためにも、僕は周囲を飛び交うレイスの一体に向かって、ガンブレードを抜き打ちで射撃。レイスの一体に聖属性の聖弾Holy bulletを使って狙撃しますが……

「嘘っ、あっさり止められた……」

 聖なる光を放ちながらレイスに向かった聖弾Holy bulletは、着弾することなくその手前までに光を失い消えてしまいました。

 周囲を飛び回るレイスですが、こちらの攻撃が無効だとわかると、じわじわと包囲の半径を縮めてきます。こちらの足場は、水を消滅させているとはいえ、水上に立つ石の柱。足元で暗く光る水面下には、肉食のカンディルがうごめいています。

 水滅鬼のつくった陣の内側に入ったレイスを炎在鬼が殴りつけますが、余りダメージを与える事は出来ていません。本来炎には浄化の作用もあるはずですが、レイスは効果を感じさせず、再び僕たちに迫ります。

「パニックにできないから、僕たちに憑りつくつもりですか!!」

 距離が詰まれば聖弾Holy bulletも多少は有効ですが、闇の力が強いのか微々たるダメージしか与えられません。ここは消費魔力は多くなりますが、聖属性魔法である『ファイナル・ジャベリン』を使うしかないと僕が判断したときでした。

「クロエが動く必要はありませんわ。ここは、私たちに任せなさい」

 イリスさんはそう言うと、短い詠唱を行い魔法を発動します。

「『聖なる光よ、この場に捕われ彷徨う者たちの因果の鎖を浄化せん、神性なる絶対領域Holy absolute territory』」

 イリスさんの詠唱とともに、アスクレビオスが眩い光を放ちました。眩しいほどの光がレイスたちを照らすと、その透けた身体に黒く禍々しい魔法陣と、そこから延びてレイスたちを雁字搦めにしている黒々とした鎖状のものを明らかにします。

 レイスたちの悲痛な声は、光によって彼らを拘束している鎖が消えていき、魔法陣が消滅すると暗かった表情が一変し、歓喜の表情で消え失せていきました。後に残ったものは、地底湖が奏でる水音だけです。

「……浄化の範囲魔法ですか……」

 余りの効果に思わずつぶやいた僕ですが、イリスさんはしっかりドヤ顔をしていますね。

「凄いでしょう。完成させるのに、とても苦労したのよ? ヴィクトリアとクリスティーナには感謝しないといけませんわね。
 最初は怖くて怖くて、夢にまで幽霊が出るものだから睡眠不足になったくらいよ。クリスティーナに悪夢を何度も払ってもらいながら、やっと完成したんだから。おかげで、幽霊が苦手だったのも克服できたわ」

 ……そういえばその昔、クリスティーナとヴィクトリアに睨まれたことがありましたね。その後も彼女たちの僕への当たりが強いのも、この件と無関係ではなさそうです……

「呪いを無効化するのに、ヴィクトリアの協力をお願いしたのですか。でも、実験体の準備は……いえ、結構です。予測が付きましたから」

 僕が言いかけた言葉を止めたのは、間違いなく非合法な実験だからです。おそらく、犯罪者の魂をビクトリアに拘束させて、解呪の練習をしたに決まっています。
 犠牲になった魂も、悪人とは言えイリスさんに浄化されたのでしょうから、幸いだと思うことにしましょう。たとえ、消滅するまでに凄まじい程の苦痛を味わったにしても……

 それにしても、神性なる絶対領域Holy absolute territoryですか…… 一部の紳士の皆さんが狂喜してしまう魔法名ですね。詠唱中に足元から起きる魔力の風で、別な意味での絶対領域も見え隠れしていますしね。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...