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7.女王の奏でるラプソディー
77.神々のお茶会
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「……まさか、あ奴を倒してしまうとはな……」
しばしの呆然自失状態から再起動したアリアであったが、温かい木目調の丸テーブルを挟んで座る精霊樹のジト目にようやく気付いた。
「なんじゃ? そんな目で見ても何も出ん……ぞ……」
状況が分からずに口にしたアリアだが、無言で精霊樹がアリアに押しやってきた三段のスタンド上のお菓子はひどい状態であった。
だが、残っているのはアリアの分だけであり、斜め両隣に座る精霊樹とディスは最良の状態を保ったままのお菓子を自分の取り皿に確保済みであった。
『這いよる混沌』を見た瞬間、即座に自分のケーキの安全を確保する二人の反応速度は、クロエの銃捌きを軽く凌駕しているのは、慣らされた結果でもある。
「……ふん、あの程度の奴に倒されるような可愛げのあるクロエではあるまい」
「そういいながらも眷属を待機させてたでしょ? ディスもずいぶん丸くなったね~」
宝瓶と呼ばれる持ち手の無い茶器から、一人上等な煎茶を湯飲みに注ぎながらディスを揶揄する精霊樹だが、最近ではディスにおびえる事も少ないようである。
そんな精霊樹に、自分の湯飲みを押し付けお代わりを要求するディスも、当初よりは態度が軟化しているようだ。
「今回は東国の菓子と茶か…… たまに趣向を変えるのも悪くないな……」
添えられた竹串で器用にお菓子を切り分け口にするディスと、自分の分を確保しながら給仕をする精霊樹の姿であるが、アリア自身のお菓子までは守る気はなかったらしい。
噴き出したお茶で、いろんな意味でやばい状態のお菓子を押しやられたアリアは、黙り込んだままケーキスタンドを片付けるとつぶやく。
「お主ら、何とも思わんのか。あの『這いよる混沌』を、ただの人間が倒してしまったのじゃぞ?」
精霊樹は首をかしげて、アリアの呟きに答える。
「そんなに変な事じゃないでしょ? あいつは元々自分は動かずに人が望むモノを与えるだけだもの。
基本裏で暗躍して、自分では何もしないもの。まぁ、あいつの口車に乗せられる人もエルフも多いんだけどね」
「しかし、最近あいつらを見かけないと思ったが、今日はまた大量にでてきたな……」
「あはは、でもあれリアルでやられると引くと思うよ~、クロエちゃんたちもおびえたというより引いてたって感じだったし……」
「……道化には道化の役目しかできんからな」
なんだかんだと和やかな会話を続けながら、お茶と菓子を楽しむ二人を見て、アリアは自分の菓子を情けない目で見ながら椅子に座……ろうとして、尻餅を突いた。
涙目になって傍らの椅子を探すが、そこに優雅に座る黒影一つ……
「まさかこのような場所に観客が居るとは思ってもみませんでした。皆様の期待に添えられずに、まことに申し訳ありませんでしたね」
ブフッと吹いたのは精霊樹であり、ディスは何食わぬ顔で現れた漆黒の男を見ている。アリアは呆然とするしかない。
「な、なんで貴様がここに現れる事ができる!」
アリアの問いかけに、顔が無いくせに苦々しげな表情を作ったそいつは、『異界の道化』ことニャルラー・トテップである。
「……しかたありませんね。不本意ではありますが、理解できていない貴女に説明してさしあげましょう。
黒の姫が、遼寧の一般市民には購入することさえできないお菓子やお茶を、少し変わった亜空間に収納するのをみて興味がわいたのですよ。
お菓子なんかに擬態したのは酷い誤りだったと、今は身に染みているところです」
そういうニャルラー・トテップの黒衣は一様に湿っており、彼は情けなく両掌を上に向けて降参のポーズをする。
どうやら、クロエが購入した神々への献上用の菓子に紛れ込んできたらしい。全身濡れているのは、アリアの前に置かれたお菓子に混じっていたからだろう。
ニャルラー・トテップは右手でパチンと音をたてる、俗にいう指パッチンをすると、彼の湿った黒衣は綺麗に乾燥し、アリアのお菓子も元の状態に復元される。
「……時間回帰か。貴様、それを死者に使えばその時は俺が自ら貴様の殲滅に乗り出すと知れ……」
ディスが無表情でニャルラー・トテップを睨むが、顔の無い彼には効果はないようである。
コトリと音がして、ニャルラー・トテップの前に白磁の湯飲みが置かれる。温かく香り高いお茶をだしたのは精霊樹である。
「せっかく来てくれたんだ。クロエちゃんの献上品でも味わいながら、君がここにきた目的を話してくれると助かるんだけど?」
にこやかな表情を浮かべる精霊樹だが、その左手には聖杖『ユグドラシル』が握られており、ディスの背後にはいつの間にかリッチが死の大鎌『デス・サイズ』を片手に控えている。
一触即発と言うべき状態でも、ニャルラー・トテップの態度は特に変わりはない。
「先ほども言ったように、目的は興味をひかれただけですよ。
あなた方同様に、私も少しばかり長い時を生きていますので、娯楽には多少飢えておりまして……
あぁ、安心してください。私は他の古き神々と異なり、あなた方との争いに楽しみを見出して自ら滅びるような真似は致しませんので……」
くっくっくっと声を潜めて笑うニャルラー・トテップであるが、その言葉に嘘は無いようである。一礼をして去るリッチと、淡い緑色の燐光を発し消える聖杖『ユグドラシル』を見ても特に表情を変えた様子もない。
「……観客というなら、黙ってみているんだな。俺たち……俺の楽しみを邪魔すれば、ただでは済まさん……」
ディスが何気なく『俺たち』と口走しり、訂正したのに気付かぬ振りで精霊樹もニャルラー・トテップに菓子とお茶を勧める。
表面上は和やかなお茶会が、アリアの眼前で繰り広げられているが、座り込んだアリアの目にはテーブルの下で何時でも『ユグドラシル』を召喚できるように、指をワキワキしている精霊樹の姿がみえている。
QAに持ち込んだ精霊樹の苗が、膨大な魔力を糧に艦内に作った聖域には、枯死しそうだったこの星の『宇宙樹 ユグドラシル』が移され、それが精霊樹に力を与えている。
それもあってか、ディスにおびえる素振りがなくなり、ディスもその存在を認めるかのように態度を軟化させていたが、ここにきて『這いよる混沌』ことニャルラー・トテップまで現れてしまうとは、クロエをキーとして進む事態に先行きの不安を感じるアリアである。
コトリと音を立て、ニャルラー・トテップが立ち上がると、慇懃な一礼をして彼は語る。
「道化である私としても、皆さま方同様楽しみは欲しておりましてね。かの姫が作る品々は、神々もいろいろと触発されるご様子。
私もまた彼女たちが存命の限り、手を出さない事に致しましょう。長き生のうちのささやかな平和の時、共に楽しもうではありませんか」
「君がそう言うなら、僕に異存はないよ」
「生と死の理に触れねば、俺がお前に興味を持つことはない……」
二人の言葉にうなずきながら、ニャルラー・トテップはくっくっと笑う。彼は最後にアリアを見て一言口にした。
「さて彼女の存在は、貴女の試験において吉と出るか、凶とでるか……
そして、その結果貴女が堕ちるか、再度試験に臨むか。それを合わせて楽しませてもらいますよ」
口にした後、アリアに向けられた無いはずの視線は、アリアを心から怯えさせた。
ニャルラー・トテップは現存する神々との戦いに敗れた古の神々の一柱だったと伝えられている。
古の神々の中でも最強といわれながら、他の古の神々、現存する神々の全てをさげすんでいる。
しかし、何故か神々よりも非力な人間に自ら接触し、様々な魔術や機械、知識を与えるが、それを受け取った者はほぼ全てが自滅している。
単純な力関係でいっても、ディスよりも上とされてるので、当然アリアがかなうはずがない。クロエたちが彼に勝利したのも、自分自身の生死を含めて、クロエたちの反応を見てみたかったゆえに、あえて人間が対処できるよりもわずかに高い値に自己を設定していたからである。
そして、それはクロエも感じているのだろう。物理攻撃のみしか仕掛けない彼を、訝しんでいたのだから。
座り込んだアリアの足元に徐々に汚水の池が広がるのを見たニャルラー・トテップは、その姿を嘲笑った。
「おやおや、貴女自身の眷属ともいえる、黒の姫はそんな醜態をさらしませんでしたよ?
その程度の神であれば、世に不要でしょう…… 一度消滅してみますか?」
アリアの頭部に右手を伸ばすニャルラー・トテップを、ディスも精霊樹も止めようとはしなかった。そして、その右手がアリアの頭を掴もうとしたその時、ニャルラー・トテップはその手を止める……
アリアは見た。
ニャルラー・トテップの伸ばされた右手の中指……
その指先に一筋の朱の線が入ったのを。そして、そこから僅かに滴った赤い液体……
「くっくっくっ…… いや、こうでなければ私が注目するほどの価値はない。ふふふふふっ、あっははっは。
いや、今日は楽しい時を過ごさせていただいた。いつか、君たちにもこの礼をするとしよう」
そして慇懃無礼な一礼をアリアたちに向けると…… 一瞬で消失したのであった。
◇◆◇◆◇◆
「むぅ…… まだまだ力不足な気がしますね…… 今の火力では、混沌を僅かに切り裂く事しかできない気がします。
いっそ。QAの艦首に波○砲でもつけないと対抗できないんじゃ……」
艦首前方に浮かべた標的は、見事にブルズアイを打ち抜かれ、弾丸は設置した亜空間に消えましたが、なぜか僕には不満が残ります。
『Barrett M82A1』を模して作った対物ライフルですが、まだまだ改良が必要なようですね。とりあえず実体弾はこんなものでしょうと、一人うなずいていた僕の肩に、だれかがポンと手を置きます。
「なんですか? 僕はまだ新兵器の試射が残っ……て……」
振り向いた僕の視線に映るクイーンのこめかみには、怒りのマークが浮いていますね……
「で? 艦首に何をつけるって? 貴様、ただでさえ考えなしに騒動を巻き起こす上に、私まで巻き込む気か?」
クイーンの剣幕にタジタジになりますが、あの這い寄る混沌は、一個人どころか、生身の人間が挑むものじゃありませんよ?
「じゃあクイーン、いっそ変形して人型のロボ……」
「なるかそんなもん!!」
深夜の艦首では、その後僕とクイーンの追いかけっこが始まりますが、追われているのは一体どちらだったんでしょうね~
◇◆◇◆
第7章、77話という7尽くしのお話でしたので、久しぶりに神々の登場でした……
しばしの呆然自失状態から再起動したアリアであったが、温かい木目調の丸テーブルを挟んで座る精霊樹のジト目にようやく気付いた。
「なんじゃ? そんな目で見ても何も出ん……ぞ……」
状況が分からずに口にしたアリアだが、無言で精霊樹がアリアに押しやってきた三段のスタンド上のお菓子はひどい状態であった。
だが、残っているのはアリアの分だけであり、斜め両隣に座る精霊樹とディスは最良の状態を保ったままのお菓子を自分の取り皿に確保済みであった。
『這いよる混沌』を見た瞬間、即座に自分のケーキの安全を確保する二人の反応速度は、クロエの銃捌きを軽く凌駕しているのは、慣らされた結果でもある。
「……ふん、あの程度の奴に倒されるような可愛げのあるクロエではあるまい」
「そういいながらも眷属を待機させてたでしょ? ディスもずいぶん丸くなったね~」
宝瓶と呼ばれる持ち手の無い茶器から、一人上等な煎茶を湯飲みに注ぎながらディスを揶揄する精霊樹だが、最近ではディスにおびえる事も少ないようである。
そんな精霊樹に、自分の湯飲みを押し付けお代わりを要求するディスも、当初よりは態度が軟化しているようだ。
「今回は東国の菓子と茶か…… たまに趣向を変えるのも悪くないな……」
添えられた竹串で器用にお菓子を切り分け口にするディスと、自分の分を確保しながら給仕をする精霊樹の姿であるが、アリア自身のお菓子までは守る気はなかったらしい。
噴き出したお茶で、いろんな意味でやばい状態のお菓子を押しやられたアリアは、黙り込んだままケーキスタンドを片付けるとつぶやく。
「お主ら、何とも思わんのか。あの『這いよる混沌』を、ただの人間が倒してしまったのじゃぞ?」
精霊樹は首をかしげて、アリアの呟きに答える。
「そんなに変な事じゃないでしょ? あいつは元々自分は動かずに人が望むモノを与えるだけだもの。
基本裏で暗躍して、自分では何もしないもの。まぁ、あいつの口車に乗せられる人もエルフも多いんだけどね」
「しかし、最近あいつらを見かけないと思ったが、今日はまた大量にでてきたな……」
「あはは、でもあれリアルでやられると引くと思うよ~、クロエちゃんたちもおびえたというより引いてたって感じだったし……」
「……道化には道化の役目しかできんからな」
なんだかんだと和やかな会話を続けながら、お茶と菓子を楽しむ二人を見て、アリアは自分の菓子を情けない目で見ながら椅子に座……ろうとして、尻餅を突いた。
涙目になって傍らの椅子を探すが、そこに優雅に座る黒影一つ……
「まさかこのような場所に観客が居るとは思ってもみませんでした。皆様の期待に添えられずに、まことに申し訳ありませんでしたね」
ブフッと吹いたのは精霊樹であり、ディスは何食わぬ顔で現れた漆黒の男を見ている。アリアは呆然とするしかない。
「な、なんで貴様がここに現れる事ができる!」
アリアの問いかけに、顔が無いくせに苦々しげな表情を作ったそいつは、『異界の道化』ことニャルラー・トテップである。
「……しかたありませんね。不本意ではありますが、理解できていない貴女に説明してさしあげましょう。
黒の姫が、遼寧の一般市民には購入することさえできないお菓子やお茶を、少し変わった亜空間に収納するのをみて興味がわいたのですよ。
お菓子なんかに擬態したのは酷い誤りだったと、今は身に染みているところです」
そういうニャルラー・トテップの黒衣は一様に湿っており、彼は情けなく両掌を上に向けて降参のポーズをする。
どうやら、クロエが購入した神々への献上用の菓子に紛れ込んできたらしい。全身濡れているのは、アリアの前に置かれたお菓子に混じっていたからだろう。
ニャルラー・トテップは右手でパチンと音をたてる、俗にいう指パッチンをすると、彼の湿った黒衣は綺麗に乾燥し、アリアのお菓子も元の状態に復元される。
「……時間回帰か。貴様、それを死者に使えばその時は俺が自ら貴様の殲滅に乗り出すと知れ……」
ディスが無表情でニャルラー・トテップを睨むが、顔の無い彼には効果はないようである。
コトリと音がして、ニャルラー・トテップの前に白磁の湯飲みが置かれる。温かく香り高いお茶をだしたのは精霊樹である。
「せっかく来てくれたんだ。クロエちゃんの献上品でも味わいながら、君がここにきた目的を話してくれると助かるんだけど?」
にこやかな表情を浮かべる精霊樹だが、その左手には聖杖『ユグドラシル』が握られており、ディスの背後にはいつの間にかリッチが死の大鎌『デス・サイズ』を片手に控えている。
一触即発と言うべき状態でも、ニャルラー・トテップの態度は特に変わりはない。
「先ほども言ったように、目的は興味をひかれただけですよ。
あなた方同様に、私も少しばかり長い時を生きていますので、娯楽には多少飢えておりまして……
あぁ、安心してください。私は他の古き神々と異なり、あなた方との争いに楽しみを見出して自ら滅びるような真似は致しませんので……」
くっくっくっと声を潜めて笑うニャルラー・トテップであるが、その言葉に嘘は無いようである。一礼をして去るリッチと、淡い緑色の燐光を発し消える聖杖『ユグドラシル』を見ても特に表情を変えた様子もない。
「……観客というなら、黙ってみているんだな。俺たち……俺の楽しみを邪魔すれば、ただでは済まさん……」
ディスが何気なく『俺たち』と口走しり、訂正したのに気付かぬ振りで精霊樹もニャルラー・トテップに菓子とお茶を勧める。
表面上は和やかなお茶会が、アリアの眼前で繰り広げられているが、座り込んだアリアの目にはテーブルの下で何時でも『ユグドラシル』を召喚できるように、指をワキワキしている精霊樹の姿がみえている。
QAに持ち込んだ精霊樹の苗が、膨大な魔力を糧に艦内に作った聖域には、枯死しそうだったこの星の『宇宙樹 ユグドラシル』が移され、それが精霊樹に力を与えている。
それもあってか、ディスにおびえる素振りがなくなり、ディスもその存在を認めるかのように態度を軟化させていたが、ここにきて『這いよる混沌』ことニャルラー・トテップまで現れてしまうとは、クロエをキーとして進む事態に先行きの不安を感じるアリアである。
コトリと音を立て、ニャルラー・トテップが立ち上がると、慇懃な一礼をして彼は語る。
「道化である私としても、皆さま方同様楽しみは欲しておりましてね。かの姫が作る品々は、神々もいろいろと触発されるご様子。
私もまた彼女たちが存命の限り、手を出さない事に致しましょう。長き生のうちのささやかな平和の時、共に楽しもうではありませんか」
「君がそう言うなら、僕に異存はないよ」
「生と死の理に触れねば、俺がお前に興味を持つことはない……」
二人の言葉にうなずきながら、ニャルラー・トテップはくっくっと笑う。彼は最後にアリアを見て一言口にした。
「さて彼女の存在は、貴女の試験において吉と出るか、凶とでるか……
そして、その結果貴女が堕ちるか、再度試験に臨むか。それを合わせて楽しませてもらいますよ」
口にした後、アリアに向けられた無いはずの視線は、アリアを心から怯えさせた。
ニャルラー・トテップは現存する神々との戦いに敗れた古の神々の一柱だったと伝えられている。
古の神々の中でも最強といわれながら、他の古の神々、現存する神々の全てをさげすんでいる。
しかし、何故か神々よりも非力な人間に自ら接触し、様々な魔術や機械、知識を与えるが、それを受け取った者はほぼ全てが自滅している。
単純な力関係でいっても、ディスよりも上とされてるので、当然アリアがかなうはずがない。クロエたちが彼に勝利したのも、自分自身の生死を含めて、クロエたちの反応を見てみたかったゆえに、あえて人間が対処できるよりもわずかに高い値に自己を設定していたからである。
そして、それはクロエも感じているのだろう。物理攻撃のみしか仕掛けない彼を、訝しんでいたのだから。
座り込んだアリアの足元に徐々に汚水の池が広がるのを見たニャルラー・トテップは、その姿を嘲笑った。
「おやおや、貴女自身の眷属ともいえる、黒の姫はそんな醜態をさらしませんでしたよ?
その程度の神であれば、世に不要でしょう…… 一度消滅してみますか?」
アリアの頭部に右手を伸ばすニャルラー・トテップを、ディスも精霊樹も止めようとはしなかった。そして、その右手がアリアの頭を掴もうとしたその時、ニャルラー・トテップはその手を止める……
アリアは見た。
ニャルラー・トテップの伸ばされた右手の中指……
その指先に一筋の朱の線が入ったのを。そして、そこから僅かに滴った赤い液体……
「くっくっくっ…… いや、こうでなければ私が注目するほどの価値はない。ふふふふふっ、あっははっは。
いや、今日は楽しい時を過ごさせていただいた。いつか、君たちにもこの礼をするとしよう」
そして慇懃無礼な一礼をアリアたちに向けると…… 一瞬で消失したのであった。
◇◆◇◆◇◆
「むぅ…… まだまだ力不足な気がしますね…… 今の火力では、混沌を僅かに切り裂く事しかできない気がします。
いっそ。QAの艦首に波○砲でもつけないと対抗できないんじゃ……」
艦首前方に浮かべた標的は、見事にブルズアイを打ち抜かれ、弾丸は設置した亜空間に消えましたが、なぜか僕には不満が残ります。
『Barrett M82A1』を模して作った対物ライフルですが、まだまだ改良が必要なようですね。とりあえず実体弾はこんなものでしょうと、一人うなずいていた僕の肩に、だれかがポンと手を置きます。
「なんですか? 僕はまだ新兵器の試射が残っ……て……」
振り向いた僕の視線に映るクイーンのこめかみには、怒りのマークが浮いていますね……
「で? 艦首に何をつけるって? 貴様、ただでさえ考えなしに騒動を巻き起こす上に、私まで巻き込む気か?」
クイーンの剣幕にタジタジになりますが、あの這い寄る混沌は、一個人どころか、生身の人間が挑むものじゃありませんよ?
「じゃあクイーン、いっそ変形して人型のロボ……」
「なるかそんなもん!!」
深夜の艦首では、その後僕とクイーンの追いかけっこが始まりますが、追われているのは一体どちらだったんでしょうね~
◇◆◇◆
第7章、77話という7尽くしのお話でしたので、久しぶりに神々の登場でした……
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