駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

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8.未来へ……

07.華やかな宴の前に……

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 今日の僕たちの宿泊先は、チッタ・アベルタの魔術技術学院【スクオラ・ディ・テクノロジア(Scuola di tecnologia)】魔法医療学の学生、サンドラ・ノヴィエロ嬢の自宅でした。

 どうやら、僕たちのミッテルベルク王国行きに合わせて自宅へと帰郷していたよう。おそらく、デーゲンハルト氏やロンタノ辺境伯とも示し合わせていたのでしょう。そうでもないと、僕たちと同じ日に出発しても追いつくことはできないからです。

 僕たちの馬車は、普通の馬車と違って軽量で乗り心地が良いだけではありません。軽量なので、普通の馬が引いても一日の移動距離は長くなりますが、僕たちの馬車を引いている馬は魔力で動作する『ゴーレム・ホース』なのです。
 普通の馬とは異なり、食事や水は必要ありませんし、僕がいる限り駆動用の魔力も切れることはありません。それに、ゴーレムなので馬の疲労はありませんからね。

 きっと、 ロンタノ辺境伯とデーゲンハルト氏が相談したうえで、サンドラさんが帰郷するのに間に合うように日程を調整していたに決まっています。そうでなければ、初日とはいえ半日も時間をつぶすはずがありませんからね。

 ノヴィエロ家の所領は、チッタ・アベルタから北東の方角、アルべニア王国の王都からは北西の方角にある、マール・ミラ湖の西岸に当たります。
 アルべニア王国併合以前もノヴィエロ家が所有していた領地であり、西部には森林と山岳地帯があり、東部は湖に挟まれた穀倉地帯でもありますが、西部に侵攻してきたアルべニア王国軍に対して無抵抗で降伏し、ノヴィエロ家がそのまま領主となった土地でもあります。

 ノヴィエロ家の居城は、マール・ミラ湖に突き出た険しい崖に挟まれた細長い岬を中心に築かれています。岬の左右は、二本の河川によって形作られた丘陵地が広がり、川を天然の堀とした要塞じみた地形です。川の要塞側には、南北二キロ、東西は三キロメールにも及ぶ街壁に囲まれ、岬には湖の名前を冠した、マール・ミラ城が築かれています。

 過去とはいえ、一国の国都だった為、街とそれを囲む街壁の範囲は広いのですが、居城自体は規模の割には小さい感じがします。代々のノヴィエロ家の当主は、華美を嫌い、領地を豊かにすることに資金を使っていたようですが、近年は要塞じみた城址を改修して、街の近くに伯爵家に相応しい居館を建築したとの話です。

 もっとも、ノヴィエロ家の当主自体は、代々続いてきた要塞にある居館に住み、新しい建物は対外的な貴族としての仕事に使用されているとのことでした。

 僕たちは、そんな新しい建物にサンドラさんの案内で、ノヴィエロ家の使用人の皆さまのお迎えを受けながら、左右に大きな階段の広がるホールを二階へと昇り数分移動するという、個人の家では考えられない移動距離を果たして、こじんまりとした客館ゲストハウスへと案内されました。

 階段を上って二階にいたはずなのに、いつの間にか一階の通路を歩いており、斜面上に建物が配置されていることがわかります。
 こじんまりとした客館ゲストハウスとはいってもコリーヌさんが案内された部屋は二階に位置しており、湖に面したバルコニーのある客間は十メートル四方。隣接する続きの間には主寝室やお風呂、トイレといった設備の他に、狭いながらも(とはいっても六畳間以上はある)侍女の控え部屋もあります。

 通路を挟んだ場所には、僕とアリシアの部屋として護衛などの人員の為の部屋があり、こちらもお風呂やトイレなどの一通りの設備は整っていました。もちろん、調度品は質はよさそうですけど、コリーヌさんの部屋ほどじゃありませんので、高価な品物に囲まれて気疲れする心配はなさそうです。

 えっ? デーゲンハルト氏とアルバートの部屋ですか? 彼らの部屋は、客館ゲストハウスの一階にある来客用使用人部屋となっていますよ。さすがに、貴族令嬢と男性使用人を同じフロアの部屋にするのは問題がありますからね。

◇◆◇◆◇◆

「お二人、いやデーゲンハルト氏にロンタノ辺境伯も含めて四人以上でしたね。皆さんは何を企んでいるんです?」

 僕以外の荷物をそれぞれのベッドの上に置いてきた後、コリーヌさんに割り当てられた客間にて、僕とアメリアはこの場にいる事情を知る二人、コリーヌさんとサンドラさんに質問します。

 コリーヌさんは黙って、部屋付きのメイドさんが入れてくれた紅茶をすすり、サンドラさんは苦笑いして、メイドさんに一時的に部屋を離れるように指示をしています。
 メイドさんが部屋を離れたあと、侍女用の控えの間でクラリスさんが僕たち用にお茶を入れてくれましたが、やはり召使用なのか少し茶葉は異なるようですね。それでも、一般品のなかでは高級な部類の茶葉のようですが……

 二人に勧められて、クラリスさんを含めた三人で椅子に着席すると、やっとサンドラさんが口を開いてくれました。

「あ~、コホンコホン…… 皆さまには申し訳ないのですけど、この館滞在中は私達二人は淑女レディーとして振舞わらねばなりませんの。特に他人の目があるときは……って、あ~話しづらい」

 気取った話し方で始まったサンドラさんでしたが、最後まで持ちませんでしたね。

「はぁ、まあぶっちゃけた話、あたしら二人はここでは貴族令嬢として立ち振る舞わらなきゃいけなくてね。
 貴族位をもたない三人があたしらと一緒にいるためには、申し訳ないけれどクラリスをコリーヌ付きの侍女、クロエ……とアメリアの二人を護衛用側付きガード・メイドということで説明してある」

 はぁ、メイドですか。まあ、今回コリーヌさんは形式上も依頼上での僕たちの雇い主でもありますので、よほどの事でない以上妥協するのは仕方ありません。僕とアメリアは目線を合わせたのちにうなづきます。

「仕方ないですの。アルべニア王国、ミッテンベルグ王国の両国は身分制度のある国なのは承知しておりますですの」

 アメリアの言葉に、サンドラさんもコリーヌさんもほっとしたように笑みを浮かべます。そして、サンドラさんは僕たちに尋ねました。

「いや~、二人はずっと身分制度のない国で暮らしてきてたじゃない? 正直、そこが一番不安だったんだよ。こんな序盤で反発されてと、お互いの信頼関係が崩れるのは困るし」

「あぁ、君たちはエリクシアとも戦った国だからな。正直、身分の違いで異国民の私達に指示されることを拒否される可能性も考えていたんだ」

 そういう二人をみて、僕たちもまた笑みを浮かべます。

お嬢さん、心配無用ですわJeune femme, ne t'inquiète pas(by google翻訳)」

 アメリアの言葉に、コリーヌさんが目を丸くします。

言葉も習俗も把握済みですよJeg forstår allerede språket og skikkene(by google翻訳)」

 僕の言葉に、同じようにクラリスさんが驚きの表情を浮かべていますね。今アメリアが話した言葉は、大陸公用語ではなくミッテンベルグ王国のより北部で使われる言葉で、僕が話した言葉はクラリスの故国ラマグドレーヌの公用語です。

「君たち……は、他国の言葉や習俗すら把握していると……」

 コリーヌさんのつぶやきに、サンドラさんがぽかんと口を開きます。

「えっ、私の故国は、とても遠くてほとんど人の往来もないのに……」

 クラリスさんがつぶやくと、僕とアメリアは笑みを深めて言いました。

「「言語や習俗の把握は、情報戦の基本ですよ」」

 コリーヌさんは天を仰いで遠い目をします。天井はそんなに遠い距離にはないんですが……

「……そうだよな、そもそも竜と会話できるんだから、人の言葉を覚えるなんて容易いんだろうな……」

(ちょっと……竜と会話ってなんなんですの? 私、聞いておりませんんですの!)

 何気にジト目でにらんでくるアメリアの視線が怖い僕だったのでした……
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