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8.未来へ……
08.華やかな宴にて……
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眩く輝くシャンデリア、ゆったりとした音楽が流れます。生演奏なんて、学生時代の吹奏楽部の演奏を見て以来ですね。コンサートホールやダンスホールとは違って、音の反射などは計算されていないでしょうけど、演奏者との距離がちかいから、やっぱり迫力があります。
広い室内の前のほうには楽団が配置され、窓際のテーブルには様々な料理が並んでいます。飲み物なども用意されていますが、残念ながら僕とアメリアはこの場での飲食はできません。なにせ、メイド姿ですしね......
時刻はすでに午後八時をすぎていますが、貴族家の夜会はこれから始まるのが普通です。夜会というだけあって、深夜の一時二時にまで及ぶらしいので、華やかな世界だと思っていましたが、結構きつそうですね。
アメリアと二人で壁際に位置どって流れる音楽を聴いていると、やがて男性にエスコートされた令嬢たちが入場してきます。
「今日の夜会は、コリーヌさんとサンドラさんのお披露目も兼ねてということですけど、急に催されたにしては、参加者も多いですの」
アメリアの小声のつぶやきに、僕もうなづきます。
参加者は成人を迎えた貴族の令嬢や令息が中心ですね。そして、男性も女性も見目好い方が多いのは、事実ですね。貴族家というのは、ある意味トップブリーダーです。たいていは、美男美女を夫人に迎える場合が多いので、美形が遺伝的に産まれやすいんですよ。実際、ダンスを踊っている令嬢・令息は、美男美女が多いですね。
コリーヌさんのエスコートをしている男性は、サンドラさんの上のお兄さんですね。サンドラさんをエスコートしているのは、弟さんということです。
こういったパーティーで、貴族令嬢をエスコートするのは婚約者と決まっているようですが、お二人とも婚約者は決まっていませんので、家族がエスコートする形ですね。
二曲目のダンスも、コリーヌさんサンドラさんともに申し込みをする貴族令息の方が多かったのですが、二人ともすべて断って僕たちのほうにやってきます。
「申し訳ありません、コリーヌ嬢も私も普段からダンスは慣れておりませんの。これ以上は、無様をさらしてしまいますのでご遠慮いたしますわ」
サンドラさんがそういって連なる貴族令息の申し込みをぶった切ります。普通の令嬢は、自分たちが踊れないということを公言しないと思いますが、いっそすがすがしいほどの潔さですね。
ここまで言われると、ダンスに誘うのも野暮というものでしょう。貴族令息たちもいったん離れて、他の令嬢たちとダンスを始めます。
「……良いのですか? ほかの令嬢たちに侮られるというか、そういう目線で見られていますよ?」
勿論そういう前に、周囲に遮音の魔法をかけています。
アメリアさんが差し出す、冷やされた飲み物を手に取って、二人はほっと息をついています。
「どうせ、うちらが戦姫だ冒険者だという過去は知れ渡ってるからね。陰でこそこそあることないこと言われるなら、踊れないことを認めて、彼女たちを踊りに誘ってもらえた方がいいさ」
そういって、右手の親指をくいっと少し離れた場所で話している令嬢たちを指さしています。気づかれない程度にそちらをみると、扇で口元を隠しながらこちらを見て話す令嬢たちがいますね。
「ふふっ、どうせ一、二曲踊った後は『よろしければお話を……』ってやってくるしな。アレキサンドリアやチッタ・アベルタの事を聞きたがるのは目に見えているさ。
どうすれば、魔術技術学院【スクオラ・ディ・テクノロジア(Scuola di tecnologia)】に入校できるのかとか、ロンタノ辺境伯と面識を得ることができるのかとかな」
「まあ、話せることは対してないんだけどね。食べ物なんかの話だけで済ませてくれるならいいんだげど、それでも長々と話をするのは疲れるからねぇ」
以前にコリーヌさんが言っていたように、この国の貴族は良くも悪くも貴族らしいですからね。そして、二人は僕たちをみてニッコリ笑みを浮かべます。
「二人にも無関係じゃないぜ? 二人にも話を聞かせろっていう奴は多いだろうしね。身分をカサにいろいろいう奴もいるだろうし」
「二人には実力をみんなの前で示してほしいんだ。そうすれば、二人に付きまとうような奴も出ないだろ」
「できれば、うちらに着くハクがピッカピカになるくらいにな」
二人の言葉に、再び僕とアメリアは顔を見合わせました。
◇◆◇◆◇◆
貴族の令嬢令息の前で、僕とアメリアは二メートルほどの距離をおいて対峙します。
(アメリアは近接攻撃のできる海兵さんのはずでしたね……)
アメリアは僕に、ニッと笑みを浮かべます。
「さぁて、殺人ウサギの実力、久しぶりに見せてもらうんですの」
そう言うと、両腕を胸元に引いて構えると、軽くステップを踏み始めます。そして、そのまま正面に踏み込んでくると左の拳を僕の顔面に向かって飛ばしてきました。
ちょ、ボクシングスタイルですか。しかも、アウトボクサーですね。
ほぼ同身長のアメリアとの闘いは、僕が先手を取られます。短く早いジャブを主体に、足を使って距離をとるアメリアに対して、僕は両足を肩幅に開いたべた足で、アメリアの攻撃を左右の手のひらで受けています。
アメリアの左右の拳での攻撃を、僕が手のひらでさばいているだけの組手でしたが、アメリアが大きく踏み込んできたことで流れが変わりました。
風をまとった拳が、僕の顎を狙って真下から振り上げられましたが、首をひねってかわした僕に、そのままひじの打ち下ろし攻撃を仕掛けてきます。
とっさに左の手のひらで流して、そのまま体を反転、右後ろ蹴りに繋げましたが、アメリアはあっさりとかわして距離をとりました。
「……アメリア。風魔法をまとった打撃なんて、演武で見せるものじゃないですよ?」
「姫さんこそ、紳士淑女の皆さまの前で、蹴り技はまずいですの。それに、ただの格闘戦では、皆さんを満足させることはできないですの」
周囲を見回すと、確かに格闘戦では皆さま納得してくれそうもありませんね。でも魔法を使うと、被害が出やすいんですよね。ここ、調度品のお値段が高そうなのですが……
広い室内の前のほうには楽団が配置され、窓際のテーブルには様々な料理が並んでいます。飲み物なども用意されていますが、残念ながら僕とアメリアはこの場での飲食はできません。なにせ、メイド姿ですしね......
時刻はすでに午後八時をすぎていますが、貴族家の夜会はこれから始まるのが普通です。夜会というだけあって、深夜の一時二時にまで及ぶらしいので、華やかな世界だと思っていましたが、結構きつそうですね。
アメリアと二人で壁際に位置どって流れる音楽を聴いていると、やがて男性にエスコートされた令嬢たちが入場してきます。
「今日の夜会は、コリーヌさんとサンドラさんのお披露目も兼ねてということですけど、急に催されたにしては、参加者も多いですの」
アメリアの小声のつぶやきに、僕もうなづきます。
参加者は成人を迎えた貴族の令嬢や令息が中心ですね。そして、男性も女性も見目好い方が多いのは、事実ですね。貴族家というのは、ある意味トップブリーダーです。たいていは、美男美女を夫人に迎える場合が多いので、美形が遺伝的に産まれやすいんですよ。実際、ダンスを踊っている令嬢・令息は、美男美女が多いですね。
コリーヌさんのエスコートをしている男性は、サンドラさんの上のお兄さんですね。サンドラさんをエスコートしているのは、弟さんということです。
こういったパーティーで、貴族令嬢をエスコートするのは婚約者と決まっているようですが、お二人とも婚約者は決まっていませんので、家族がエスコートする形ですね。
二曲目のダンスも、コリーヌさんサンドラさんともに申し込みをする貴族令息の方が多かったのですが、二人ともすべて断って僕たちのほうにやってきます。
「申し訳ありません、コリーヌ嬢も私も普段からダンスは慣れておりませんの。これ以上は、無様をさらしてしまいますのでご遠慮いたしますわ」
サンドラさんがそういって連なる貴族令息の申し込みをぶった切ります。普通の令嬢は、自分たちが踊れないということを公言しないと思いますが、いっそすがすがしいほどの潔さですね。
ここまで言われると、ダンスに誘うのも野暮というものでしょう。貴族令息たちもいったん離れて、他の令嬢たちとダンスを始めます。
「……良いのですか? ほかの令嬢たちに侮られるというか、そういう目線で見られていますよ?」
勿論そういう前に、周囲に遮音の魔法をかけています。
アメリアさんが差し出す、冷やされた飲み物を手に取って、二人はほっと息をついています。
「どうせ、うちらが戦姫だ冒険者だという過去は知れ渡ってるからね。陰でこそこそあることないこと言われるなら、踊れないことを認めて、彼女たちを踊りに誘ってもらえた方がいいさ」
そういって、右手の親指をくいっと少し離れた場所で話している令嬢たちを指さしています。気づかれない程度にそちらをみると、扇で口元を隠しながらこちらを見て話す令嬢たちがいますね。
「ふふっ、どうせ一、二曲踊った後は『よろしければお話を……』ってやってくるしな。アレキサンドリアやチッタ・アベルタの事を聞きたがるのは目に見えているさ。
どうすれば、魔術技術学院【スクオラ・ディ・テクノロジア(Scuola di tecnologia)】に入校できるのかとか、ロンタノ辺境伯と面識を得ることができるのかとかな」
「まあ、話せることは対してないんだけどね。食べ物なんかの話だけで済ませてくれるならいいんだげど、それでも長々と話をするのは疲れるからねぇ」
以前にコリーヌさんが言っていたように、この国の貴族は良くも悪くも貴族らしいですからね。そして、二人は僕たちをみてニッコリ笑みを浮かべます。
「二人にも無関係じゃないぜ? 二人にも話を聞かせろっていう奴は多いだろうしね。身分をカサにいろいろいう奴もいるだろうし」
「二人には実力をみんなの前で示してほしいんだ。そうすれば、二人に付きまとうような奴も出ないだろ」
「できれば、うちらに着くハクがピッカピカになるくらいにな」
二人の言葉に、再び僕とアメリアは顔を見合わせました。
◇◆◇◆◇◆
貴族の令嬢令息の前で、僕とアメリアは二メートルほどの距離をおいて対峙します。
(アメリアは近接攻撃のできる海兵さんのはずでしたね……)
アメリアは僕に、ニッと笑みを浮かべます。
「さぁて、殺人ウサギの実力、久しぶりに見せてもらうんですの」
そう言うと、両腕を胸元に引いて構えると、軽くステップを踏み始めます。そして、そのまま正面に踏み込んでくると左の拳を僕の顔面に向かって飛ばしてきました。
ちょ、ボクシングスタイルですか。しかも、アウトボクサーですね。
ほぼ同身長のアメリアとの闘いは、僕が先手を取られます。短く早いジャブを主体に、足を使って距離をとるアメリアに対して、僕は両足を肩幅に開いたべた足で、アメリアの攻撃を左右の手のひらで受けています。
アメリアの左右の拳での攻撃を、僕が手のひらでさばいているだけの組手でしたが、アメリアが大きく踏み込んできたことで流れが変わりました。
風をまとった拳が、僕の顎を狙って真下から振り上げられましたが、首をひねってかわした僕に、そのままひじの打ち下ろし攻撃を仕掛けてきます。
とっさに左の手のひらで流して、そのまま体を反転、右後ろ蹴りに繋げましたが、アメリアはあっさりとかわして距離をとりました。
「……アメリア。風魔法をまとった打撃なんて、演武で見せるものじゃないですよ?」
「姫さんこそ、紳士淑女の皆さまの前で、蹴り技はまずいですの。それに、ただの格闘戦では、皆さんを満足させることはできないですの」
周囲を見回すと、確かに格闘戦では皆さま納得してくれそうもありませんね。でも魔法を使うと、被害が出やすいんですよね。ここ、調度品のお値段が高そうなのですが……
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