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第6章
第62話 領地へ 世間知らず
しおりを挟むクレマンド殿下達のリクエストに応えて、水やら他の物を差し入れに来た。
パトリシアは、殿下達が乗る馬車の前に立ち扉をノックする。
『トントン』
「クレマンド殿下。いらっしゃいますか?」
声を掛けると中から鍵の開ける音がして扉が開く。
すると目の前に側近のトリマンが居た。
「失礼しますわ、トリマン様?先程仰っていたお水と、他の物をお持ち致しましたわ」
「これはこれは、わざわざお嬢様自ら、頼んだ物を……?お嬢様自らお持ち頂けるなんて……申し訳ありません」
「いえ、頼まれたのは私ですから」
「では、せっかく来て頂いたのです。出発までまだ時間があるようでしたら、中にお入りになりませんか?」
「……え?」
出発時間に余裕が有るかしら?
まぁ、中に入って色々お出ししてから戻ってもそう時間は掛からないわね?
「でしたら、少しお邪魔致しますね?」
「えぇ、どうぞ」
そう言われて中に入って殿下に声を掛ける。
「お邪魔致しますわ殿下?馬車の中はどうですか?先程も聞かれたのかも、知れませんが?」
中に入ると、クレマンド殿下が座って微笑み私を見る。
「これは、パトリシア嬢。わざわざ、ご自身で来て頂けたのですか?ありがとうございます」
「いえ、たいした事では無いですわ?さ!お水です。このテーブルに、お出ししますわね?」
アイテム鞄からポンポンと、空のピッチャー、レモン、蜂蜜と塩を出す。
そして、ピッチャーに魔法で水を入れ氷を入れる。
そこに絞ったレモンの果汁と蜂蜜、塩を少し入れマドラーでかき混ぜる。
更に鞄から、ワインを赤と白を数本それに摘みに、クラッカー、チーズ、ナッツ類、チョコレート、ポテチ、リンゴの籠盛りを置いた。
「一通りお出ししたので、また何か御座いましたらメイドにお申し付け下さいませ?」
「「「「す、凄い」……」」」
鞄から色んな物が出てくる光景を見て、クレマンド殿下と、側近達が関心したのか?興奮気味にきいてくる。
「いやぁ、凄いですね?その鞄からこれだけの物が出てくるなんて」
「い、いえ。大したことは無いですわ?私の家ではごく普通の事ですわ。では、私はこれで失礼致しますわ?あ!そうだわ?殿下、馬車の中では退屈でしょう?」
ふと思ったので聞いてみる。
「ええ、外の景色を見るだけですからね、暇ですね?私も外に出て馬で走りたいですよ。ハハハ」
「まぁ、そうですわね?私もそうですもの。でも外に出ると怒られますから……」
「ハハハ。お互い運動不足になりそうですね?あ!これは……ご令嬢に失礼を」
「いえ、気にしないで下さいませ?私も、身体を動かしたいですもの」フフフ。
殿下と二人で笑い合う。
「それは良かった。どうも私はご令嬢やご夫婦に、一言多いらしく、嫌われてしまうので……」
「まぁ、そうですの?今の一言ぐらいで、お怒りになる方なんて、居るのかしら?あら、ごめんなさい。私余り、社交の場に出たことがなくて。世間知らずなのですね?ごめんなさい。殿下」
「いえ、そんなことで、気分を害すること等ないですよ?お気になさらず」
「フフフ。それは良かったですわ?」
「殿下。パトリシアお嬢様?お二人とも、謝ってばかりですね?」
「え?ああ。そうだね?フフフ」
「まぁ、そうでしたか?」ニコリと笑う。
《主?何か可笑しいの?》
(フフフ、何でもないわよ?)
《ふうぅ~ん》
肩に乗るルトが不思議がる。
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