19 / 22
新米冒険者の半吸血鬼少女
ハイエルフの来訪者
しおりを挟む
フィアが、好奇心によって箍の外れた魔法使い達に揉みくちゃにされ、最終的には全力全壊の気を乗せた震脚によって黙らせてどうにか脱した後。二人は今、冒険者ギルドに戻る帰路の途中にあった。
「はぁ……本当に、酷い目に遭ったぞ……」
「はは、連中も悪気は無い……とは言い難いが、魔法使いなんてのはまぁ好奇心をこじらせたまま成長した、デカい子供みたいなもんだからな。連中も謝っていたし、許してやってくれ」
実際は、流石に肝が冷えたらしく真っ青な顔で土下座していたのだが……まぁいい薬だろうとアッシュは目を逸らした。
そう言って、アッシュはつい先ほど通り掛かった露天で購入したベーコンの串焼きをフィアに渡してやる。その香ばしい香りと肉汁滴る肉感に、あっさり元気を取り戻し目を輝かせたフィアが、早速ベーコンに齧りつこうとした……その時。
「おや、大きな子供とは、心外じゃのぅ」
「うわぁ!?」
突然背後から聞こえてきた声に、フィアがズサっと飛び退る。
振り返った先には……一人の、ローブを纏った人影。
「さ、さっきの爺さん……って、それ、おれの串焼き!」
突然現れた老爺の手には、先程までフィアの手にあったはずの串焼き。
驚いた拍子に手放してしまったそれを、老爺は暫く見つめた後……パクっと、食べてしまった。
「あぁあ……おれの串焼き……」
老爺の口の中に消えていく串焼きの肉を、泣きそうな目で見つめているフィア。
見かねたアッシュがそのフィアの手に、もしかしたら健啖なこの少女には足りないかもと一本余計に買っておいた串を握らせると、まるで地獄から救い出されたかのようにパァッと顔を輝かせる。
そうして、今度は取られまいと、まるで餌を確保した野生動物のように警戒して一生懸命に食べるフィアを、アッシュは老爺と二人で眺めて待つ。
……なんだこれ。
アッシュが今の状況にそんな疑問を抱き始めた頃、ようやく食べ終わったフィアが、眼前の老爺をキッと睨みつけた。
「……な、何の用だ!?」
「いや……報酬を渡し損ねていたから、追ってきたんじゃが……」
「フーッ!!」
近寄ろうとする老爺を、前傾姿勢を取り髪を逆立て唸り声を出すという、分かりやすい威嚇を取るフィア。
「……なぁ、何でワシ、威嚇されているのじゃ?」
「お前が不審者だからだろ……あと肉取ったからだ」
食い物の恨みは怖いのだ。それが好物を取られた子供であればなおのこと。
「とりあえず……その変装、やめたら?」
「おっと、そうじゃったわ」
うっかりしておったわ、と自分の額を叩き、カラカラと笑いだす老爺。
「……変装?」
「ふっ、翁の姿は世を偲ぶ仮の姿、これが本来のワシの姿じゃ!」
カッ、と閃光が走る。
思わず目を庇ったフィアが再び視線を戻すと、そこにはもう老爺の姿は無かった。
代わりに、いつのまにかそこに居たのは、サイズの合っていないローブ姿の一人の少女。
「爺さんが消えた!?」
「落ち着け、さっきの爺さんは幻影だ。こっちが本来の姿だよ」
アッシュは、先程魔法協会でフィアに迫る老爺を取り抑える際、触れた時に気がついていた。
ぶかぶかなローブを羽織っているその少女。
身長は、フィアよりもさらに幾分か低い。体型もほぼ凹凸のないスレンダーなもの。有り体に言うと、幼女である。
気の強そうな猫目と、整っている容姿。腰まである銀の髪を、頭頂に近いところで左右ほんの少しだけ括った、いわゆるツーサイドアップの形にしている。
紛う事無き美少女なのだが、中でも目を引くのが……
「……耳が、長い?」
少女の耳は細長く先端は尖っており、左右に大きく突き出していた。それは、まるで……
「……エルフ?」
そう、フィアが尋ねる。何人か、奴隷時代に見た事だけはあった。
人界領にいる、何種類かの比較的友好な関係を築いている亜人。その中で、ドワーフに並んで最も有名な彼ら。森の奥深くに住み、自然を愛し森と共に暮らす、美しい人。
「ふふん、わしはその中でも精霊に近い原初のエルフである貴種、豊穣と自然に寄り添う小神族ハイエルフである! 驚いて敬うがいいぞ!」
踏ん反り返って偉そうに宣う少女に、フィアがどう反応したらいいか迷い、助けを求めるようにアッシュの方を見る。
「あー、そいつの言ってる事は全部マジだ。エルフってのは、個人差はあるがある年齢まで成長するとそこで止まるんだ。その後は死ぬ直前までその姿のままなんだが……その中でもハイエルフってのは、なんでも不老不死って噂で……」
そこで、アッシュが言葉を切る。
その目は、悲しげに揺れていた。
「あいつは、あの見た目でもう成長が、止まっちまったんだ……」
「そうかぁ……もう成長しないのか……」
「おい待てお主ら……その憐れみの目は一体なんなのじゃ……?」
二人の心の底からの憐憫の眼差し。
注目を浴びている少女は戸惑い、不安げに二人に視線を彷徨わせるのであった。
路地裏で会話を続けるというのも躊躇われ、二人はエルフの少女の提案で、小路の先にあった小さなカフェへと入っていた。
少女がこちらで見つけた穴場なのじゃと自慢げに言う店内は、流石は貴種とまで呼ばれる種族である少女が言うだけあり、素朴ながらも綺麗に飾り付けられ、趣きのある雰囲気を醸し出していた。
先程の詫びに奢るとの事で、フィアはあっさりと少女への警戒を解いた。
少女がケーキセットを自分とフィアの二人分、アッシュはコーヒーのみを頼み終えると、そこでようやく人心地ついて向き直る。
「改めて。こいつはアグラリエル。俺たちは、リエルって呼んでいた」
「うむ。童よ、お主にもそう呼ぶ事を許す、光栄に思うがよいぞ。よろしく頼む」
そう、尊大に宣う彼女。
事実、フィアどころかアッシュより何倍も年長らしいため、それも致し方ないだろう。
「こう見えても、魔法協会の大幹部だ。こいつの魔法使いとしての腕は一級品で、指導者としても人界領では最高峰だと俺は思っている……気まぐれなのがアレだけどな」
「ほぁ……リエルさんは、すごいんだな……」
「ふふ、もっと褒めるがよいぞ」
踏ん反り返り、胸を張る少女。胸はないが。
一通り尊敬の眼差しを浴びて満足したらしく、上機嫌で蜂蜜をひと匙入れた紅茶に口をつけるリエル。その様は、たとえ見た目は幼くとも、長く生きたエルフの貴種というだけあり、流石に気品に満ちた所作であった。
「それで、えぇと……なんと呼べば良い?」
そうして茶を一口嚥下し喉を潤した後、リエルがアッシュに問いかける。
「アッシュだ。今はそう名乗っている」
「ふむ……灰とな。ちと自虐が過ぎやせんか?」
「……放っとけ」
そう言われて、ムスッと明後日の方を向き、珈琲を啜るアッシュ。年長の知り合いが居るためどうにも普段の調子が出ないらしく、やりにくそうにしているのだった。
「しかしまぁ、お主にこのような愛らしい連れが居るとはのぅ」
「色々あったんだよ。話すと少し長くなるが……」
愛らしいという点については疑念の余地なく最高峰であるお前が言うな、と思いつつ、アッシュはフィアと出会ってからのこれまでの経緯を説明する。
「ふむ……禁呪の呪いで今の姿に、のぅ」
「んぉ?」
呑気に、何層にもクリームとクレープを重ねたケーキにすっかり心奪われていたフィアが、リエルの視線を感じて顔を上げる。
「……の、割にはこの童、呑気に過ぎぬか?」
「……だよな。いや、いい事だとは思うんだけども」
フィアには、呪われたもの特有の悲壮な様子や何か苦しんでいる様子が、全く無い。その様は、自然体そのものだ。
「……俺の記憶では確か、死ぬまで永続する呪いだった筈なんだが」
「なるほどのぅ……死ぬまで、な」
得心いったように、リエルがフィアの様子をジッと見ながら、頷く。
「それで、お主はこの童をアズっちのところまで連れて行って診てもらうつもりと。どうやら、あやつともう一度会う決心はついたみたいじゃな」
「ああ……こんな時だけ都合良く頼るみたいで、申し訳ない気はするが……」
「はは、構わぬ構わぬ、アズっちも、口ではなんと言おうがお主に頼られればきっと喜ぶわ。なれば、野暮な事は言わぬが華じゃな」
一人、くくっと笑うリエル。その様子に、アッシュが首を傾げる。
「……何の事だ?」
「お主が、あいも変わらず頭は良いのに肝心なところで抜けていて安心した、ということじゃ」
煙に巻くような彼女の言葉に、アッシュはますます頭に疑問符を浮かべるのだった。
「それで……リエルさんは、なんでこの街にいるんだ? えらい人なんだろ?」
「おお、そうじゃった。お主ら……特に、アッシュも居るとは、望外の幸運じゃ」
フィアの声に、フッとスイッチが入るように、ピリピリとした雰囲気を発し始めたリエル。
その表情は、真剣……そして深刻な物だった。
「……何があった?」
そのリエルの様子に只ならぬ物を感じ、姿勢を正して向き直るアッシュ。
その様子に、うむ、とひとつ頷くと、口を開く。
「魔法協会本部に、報告があった。わしは一足先に転移して来たが、近日中に、冒険者ギルドにも連絡が届くであろう」
そう言って一呼吸起き、告げる。
「この街の近辺で、魔族がなんらかの活動している痕跡があると報告された――それも、侯爵級のな」
その彼女の言葉に……アッシュは、自分の顔が強張るのを感じたのだった――……
「はぁ……本当に、酷い目に遭ったぞ……」
「はは、連中も悪気は無い……とは言い難いが、魔法使いなんてのはまぁ好奇心をこじらせたまま成長した、デカい子供みたいなもんだからな。連中も謝っていたし、許してやってくれ」
実際は、流石に肝が冷えたらしく真っ青な顔で土下座していたのだが……まぁいい薬だろうとアッシュは目を逸らした。
そう言って、アッシュはつい先ほど通り掛かった露天で購入したベーコンの串焼きをフィアに渡してやる。その香ばしい香りと肉汁滴る肉感に、あっさり元気を取り戻し目を輝かせたフィアが、早速ベーコンに齧りつこうとした……その時。
「おや、大きな子供とは、心外じゃのぅ」
「うわぁ!?」
突然背後から聞こえてきた声に、フィアがズサっと飛び退る。
振り返った先には……一人の、ローブを纏った人影。
「さ、さっきの爺さん……って、それ、おれの串焼き!」
突然現れた老爺の手には、先程までフィアの手にあったはずの串焼き。
驚いた拍子に手放してしまったそれを、老爺は暫く見つめた後……パクっと、食べてしまった。
「あぁあ……おれの串焼き……」
老爺の口の中に消えていく串焼きの肉を、泣きそうな目で見つめているフィア。
見かねたアッシュがそのフィアの手に、もしかしたら健啖なこの少女には足りないかもと一本余計に買っておいた串を握らせると、まるで地獄から救い出されたかのようにパァッと顔を輝かせる。
そうして、今度は取られまいと、まるで餌を確保した野生動物のように警戒して一生懸命に食べるフィアを、アッシュは老爺と二人で眺めて待つ。
……なんだこれ。
アッシュが今の状況にそんな疑問を抱き始めた頃、ようやく食べ終わったフィアが、眼前の老爺をキッと睨みつけた。
「……な、何の用だ!?」
「いや……報酬を渡し損ねていたから、追ってきたんじゃが……」
「フーッ!!」
近寄ろうとする老爺を、前傾姿勢を取り髪を逆立て唸り声を出すという、分かりやすい威嚇を取るフィア。
「……なぁ、何でワシ、威嚇されているのじゃ?」
「お前が不審者だからだろ……あと肉取ったからだ」
食い物の恨みは怖いのだ。それが好物を取られた子供であればなおのこと。
「とりあえず……その変装、やめたら?」
「おっと、そうじゃったわ」
うっかりしておったわ、と自分の額を叩き、カラカラと笑いだす老爺。
「……変装?」
「ふっ、翁の姿は世を偲ぶ仮の姿、これが本来のワシの姿じゃ!」
カッ、と閃光が走る。
思わず目を庇ったフィアが再び視線を戻すと、そこにはもう老爺の姿は無かった。
代わりに、いつのまにかそこに居たのは、サイズの合っていないローブ姿の一人の少女。
「爺さんが消えた!?」
「落ち着け、さっきの爺さんは幻影だ。こっちが本来の姿だよ」
アッシュは、先程魔法協会でフィアに迫る老爺を取り抑える際、触れた時に気がついていた。
ぶかぶかなローブを羽織っているその少女。
身長は、フィアよりもさらに幾分か低い。体型もほぼ凹凸のないスレンダーなもの。有り体に言うと、幼女である。
気の強そうな猫目と、整っている容姿。腰まである銀の髪を、頭頂に近いところで左右ほんの少しだけ括った、いわゆるツーサイドアップの形にしている。
紛う事無き美少女なのだが、中でも目を引くのが……
「……耳が、長い?」
少女の耳は細長く先端は尖っており、左右に大きく突き出していた。それは、まるで……
「……エルフ?」
そう、フィアが尋ねる。何人か、奴隷時代に見た事だけはあった。
人界領にいる、何種類かの比較的友好な関係を築いている亜人。その中で、ドワーフに並んで最も有名な彼ら。森の奥深くに住み、自然を愛し森と共に暮らす、美しい人。
「ふふん、わしはその中でも精霊に近い原初のエルフである貴種、豊穣と自然に寄り添う小神族ハイエルフである! 驚いて敬うがいいぞ!」
踏ん反り返って偉そうに宣う少女に、フィアがどう反応したらいいか迷い、助けを求めるようにアッシュの方を見る。
「あー、そいつの言ってる事は全部マジだ。エルフってのは、個人差はあるがある年齢まで成長するとそこで止まるんだ。その後は死ぬ直前までその姿のままなんだが……その中でもハイエルフってのは、なんでも不老不死って噂で……」
そこで、アッシュが言葉を切る。
その目は、悲しげに揺れていた。
「あいつは、あの見た目でもう成長が、止まっちまったんだ……」
「そうかぁ……もう成長しないのか……」
「おい待てお主ら……その憐れみの目は一体なんなのじゃ……?」
二人の心の底からの憐憫の眼差し。
注目を浴びている少女は戸惑い、不安げに二人に視線を彷徨わせるのであった。
路地裏で会話を続けるというのも躊躇われ、二人はエルフの少女の提案で、小路の先にあった小さなカフェへと入っていた。
少女がこちらで見つけた穴場なのじゃと自慢げに言う店内は、流石は貴種とまで呼ばれる種族である少女が言うだけあり、素朴ながらも綺麗に飾り付けられ、趣きのある雰囲気を醸し出していた。
先程の詫びに奢るとの事で、フィアはあっさりと少女への警戒を解いた。
少女がケーキセットを自分とフィアの二人分、アッシュはコーヒーのみを頼み終えると、そこでようやく人心地ついて向き直る。
「改めて。こいつはアグラリエル。俺たちは、リエルって呼んでいた」
「うむ。童よ、お主にもそう呼ぶ事を許す、光栄に思うがよいぞ。よろしく頼む」
そう、尊大に宣う彼女。
事実、フィアどころかアッシュより何倍も年長らしいため、それも致し方ないだろう。
「こう見えても、魔法協会の大幹部だ。こいつの魔法使いとしての腕は一級品で、指導者としても人界領では最高峰だと俺は思っている……気まぐれなのがアレだけどな」
「ほぁ……リエルさんは、すごいんだな……」
「ふふ、もっと褒めるがよいぞ」
踏ん反り返り、胸を張る少女。胸はないが。
一通り尊敬の眼差しを浴びて満足したらしく、上機嫌で蜂蜜をひと匙入れた紅茶に口をつけるリエル。その様は、たとえ見た目は幼くとも、長く生きたエルフの貴種というだけあり、流石に気品に満ちた所作であった。
「それで、えぇと……なんと呼べば良い?」
そうして茶を一口嚥下し喉を潤した後、リエルがアッシュに問いかける。
「アッシュだ。今はそう名乗っている」
「ふむ……灰とな。ちと自虐が過ぎやせんか?」
「……放っとけ」
そう言われて、ムスッと明後日の方を向き、珈琲を啜るアッシュ。年長の知り合いが居るためどうにも普段の調子が出ないらしく、やりにくそうにしているのだった。
「しかしまぁ、お主にこのような愛らしい連れが居るとはのぅ」
「色々あったんだよ。話すと少し長くなるが……」
愛らしいという点については疑念の余地なく最高峰であるお前が言うな、と思いつつ、アッシュはフィアと出会ってからのこれまでの経緯を説明する。
「ふむ……禁呪の呪いで今の姿に、のぅ」
「んぉ?」
呑気に、何層にもクリームとクレープを重ねたケーキにすっかり心奪われていたフィアが、リエルの視線を感じて顔を上げる。
「……の、割にはこの童、呑気に過ぎぬか?」
「……だよな。いや、いい事だとは思うんだけども」
フィアには、呪われたもの特有の悲壮な様子や何か苦しんでいる様子が、全く無い。その様は、自然体そのものだ。
「……俺の記憶では確か、死ぬまで永続する呪いだった筈なんだが」
「なるほどのぅ……死ぬまで、な」
得心いったように、リエルがフィアの様子をジッと見ながら、頷く。
「それで、お主はこの童をアズっちのところまで連れて行って診てもらうつもりと。どうやら、あやつともう一度会う決心はついたみたいじゃな」
「ああ……こんな時だけ都合良く頼るみたいで、申し訳ない気はするが……」
「はは、構わぬ構わぬ、アズっちも、口ではなんと言おうがお主に頼られればきっと喜ぶわ。なれば、野暮な事は言わぬが華じゃな」
一人、くくっと笑うリエル。その様子に、アッシュが首を傾げる。
「……何の事だ?」
「お主が、あいも変わらず頭は良いのに肝心なところで抜けていて安心した、ということじゃ」
煙に巻くような彼女の言葉に、アッシュはますます頭に疑問符を浮かべるのだった。
「それで……リエルさんは、なんでこの街にいるんだ? えらい人なんだろ?」
「おお、そうじゃった。お主ら……特に、アッシュも居るとは、望外の幸運じゃ」
フィアの声に、フッとスイッチが入るように、ピリピリとした雰囲気を発し始めたリエル。
その表情は、真剣……そして深刻な物だった。
「……何があった?」
そのリエルの様子に只ならぬ物を感じ、姿勢を正して向き直るアッシュ。
その様子に、うむ、とひとつ頷くと、口を開く。
「魔法協会本部に、報告があった。わしは一足先に転移して来たが、近日中に、冒険者ギルドにも連絡が届くであろう」
そう言って一呼吸起き、告げる。
「この街の近辺で、魔族がなんらかの活動している痕跡があると報告された――それも、侯爵級のな」
その彼女の言葉に……アッシュは、自分の顔が強張るのを感じたのだった――……
0
あなたにおすすめの小説
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~
テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。
しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。
ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。
「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」
彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ――
目が覚めると未知の洞窟にいた。
貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。
その中から現れたモノは……
「えっ? 女の子???」
これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる