後天スキル【ブラックスミス】で最強無双⁈~魔砲使いは今日も機械魔を屠り続ける~

華音 楓

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第10章 リベンジ

第134話 廃墟の戦い 準備

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「つまりはそういうことだね。正確には、影がってところまで分かれば花丸大正解。」

 リヒテルは完全に名前に騙された形になっていた。
 【不快な腐乱死体ロッティングコープス】という名前から、ゾンビに本体がいると考えていた。
 だからこそケントたちが倒していた【不快な腐乱死体ロッティングコープス】の中から、その本体の特徴を探そうと考えていたリヒテル。

 だが本体が影となれば話は違ってくる。
 いくら【不快な腐乱死体ロッティングコープス】のゾンビを調べたところで、解決策などではしないのだから。

「あれ?だけどケントたちはいつ地面に攻撃してたんだ?」

 レイモンドの疑問は最もであった。
 傍から見れば、ケントたちは普通に戦闘しているようにしか見えなかったからだ。
 これにはタクマの横で戦っていたギルバートも、レイモンドに同意を示す。

「ん?それほど不思議ではなかろう?影ごと焼き切ってしまえば問題はなかろうて!!」

 そう言って豪快に笑い飛ばすタクマ。
 それを聞いたギルバートとレイモンドは、二人とも同じ思いに行きついた……〝この脳筋が!!〟と。
 助けを求めるように、二人はケントとタケシへ視線を向けた。
 しかしケントも、どこか困り顔であった。

「おれもタケシ君も影ごと撃ち抜いてるからね……。タクマのことは言えないかな?」

 アハハハと乾いた笑みを浮かべるケント。
 深い溜め息をついたタケシが、追加で説明を始めた。

「先に言っておくけど、あの筋肉バカと一緒にしてほしくはないよ?」

 話の流れ的に脳筋扱いされたことが気に入らなかったのか、タケシの表情には若干の嫌悪感を滲ませていた。
 そしてタクマに視線を送ると、未だ豪快に笑い飛ばしていることを知り、再度深いため息をつくのだった。
 
 「それでだ……答えはシンプルで、それ以外の正解はないんだ。例外的に、ラーみたいに周囲の状況ごと飲み込んじゃえば話は変わるんだけどね。結論としては、どうやって影を倒すかに問題は集約される。ここまで言えばジェシカは気がつくんじゃない?」
「そうね……【レム】で炙り出すのが正解ってとこかしら?」

 気を取り直したタケシの話で、ある程度の目処がたったジェシカが、タケシに答えを求めた。
 タケシもその答えに納得した様子だった。

「そうだね。あの筋肉バカは影ごと切ってるって言ってるけど、実際は剣に付与された火属性の光で炙り出して切り裂いてるのが正解。俺とケントさんはから直接攻撃。ラーは問答無用で飲み込んでる。だから倒せたってわけだね。」
「なるほどね~。だからこの階層は薄暗いのか。広域に使える光源がなければ、【不快な腐乱死体ロッティングコープス】の本体からすれば逃げたい放題ってわけだ。それにあれだけの数で押し込まれたら本体の場所も、そもそも分かりづらい。まさに木を隠すなら森の中で訳か……」

 レイモンドもこの状況に納得したようで、さてどうしたものかと思案していた。
 ジェシカ的には、【レム】を使って周囲に光源を設置しようとしていた。
 だがそれでは指定できる範囲もせまく、戦闘での効率が悪すぎる。
 ではどうするべきか。

「なぁリヒテル。魔弾で光源って創れないか?」

 ふと、レイモンドが何かを思いついた様子でリヒテルに尋ねる。
 普通に考えてみたらわかりやすい事。
 照明弾を作れば解決する話であった。
 これであれば上空に打ち上げておけばいいだけであって、ジェシカがコントロールする必要もなくなる。
 それによって戦力は減らないので、現状願ったり叶ったりだ。

「それはいいんだけど、材料が足りないぞ?」
 
 リヒテルが使う技能スキル【ブラックスミス】における魔弾の製造には、魔石マナコアが必要だった。
 だが、リヒテルの感覚として、ここで採れる魔石は魔石だが、魔石マナコアとは似て非なる物だった。
 そのこともあり、リヒテルは基本的には【属性付与エンチャント】を利用して疑似的に魔弾を作り上げていた。
 だがこの【属性付与エンチャント】にも制限があり、細かな設定は出来なかった。
 弾丸の軌道を曲げたり、追尾機能を付けたり、何かを付与することは出来たが、光そのものを作り出すことはできなかった。
 元来の照明弾も、弾の周りに薬品をバラまき燃やすことで明かりを作り出していた。
 それを【属性付与エンチャント】で再現しようとした場合、そこに込める魔力が尋常ではない量となってしまう。
 さすがのリヒテルでも技量的にそこまでできず、おそらくはリンリッドあたりであれば出来なくはない、そういった類のものであった。

「ん?魔石マナコアと魔石に違いはないよ?」
「え?」

 ケントは何を当たり前の事行ってるんだと小首を傾げるが、リヒテルたちには初耳であった。
 その為会話がかみ合わない状況が発生してしまった。

「え?だって前言ったよね?この世界の魔石マナコアは、あの自称神の置き土産だって。このダンジョンの魔石も自称神が作り出したダンジョンそのまんまだから、同じものに決まってるでしょ?」
「あ……」

 ようやく意味を理解したリヒテルはうなだれて、地面に四つん這い状態になっていた。
 ドンマイとでも言いたいのか、ラーがそっと自分のお菓子を差し出して、優しく背中を撫でていた。

 それから少しして気持ちが落ち着いたのか、試しにとリヒテルは魔石を使用して魔砲の製造を行った。
 だが以前にも同じように試してみたが、結果として〝使えない〟と判断せざるを得なかったのは事実だった。
 しかし今回は様子が違っていた。
 魔石は魔石マナコア同様にリヒテルの体内の魔石マナコアと共鳴を始める。
 そして魔石は光に包まれ、一つの拳銃のようなものが出来上がった。
 確かに形は拳銃だったが、その口径はかなり大きく、おおよそ50mmはあろうかというものだった。
 まさかと思い、さらに魔石を使い魔弾を作り出す。
 そこに出来たのは、円筒形の散弾銃の弾丸を思わせるようなものだった。
 リヒテルは、早速その弾丸を魔砲に装填した。
 
 試射の為一度階段を降り、また第21層へとむかう。
 上空目掛けて引き金を引くと、ポンというなんとも頼りない音と共に、一筋の閃光が空高く昇っていく。
 その数秒後、大きな爆発音とともに、眩い光があたり一面を覆いつくした。
 あまりの眩しさに目を開けていられなかったが、1秒もしないうちに光は落ち着き、あたりは昼間を思わせるような明るさに包まれていた。

「これはすごいな……。俺が考えていた照明弾とはわけが違ったよ。」

 そう漏らしたのはタケシだった。
 タケシは元自衛官だっただけに、そういった火器の使用経験があった。
 だが、当時タケシが使っていた照明弾とは全くの別物だったのだ。
 本来の照明弾はりゅう弾砲や迫撃砲といった大型の火器から砲弾を打ち上げたのち、その砲弾が上空でパラシュートを開きゆっくりと下降。
 その際に薬品を周囲に散布し、その薬品が燃焼する事で光を作り出していた。
 その為徐々に高度が下がり、長時間の使用には難点があった。
 しかし、リヒテルが作り出した照明弾は、いわば疑似太陽。
 上空に浮かんだまま、降りてくることが無かったのだ。

「これあとどの位もつの?」
「それは確認しないと分からないかな。魔石のランク次第で伸びるとは思うけど……なんせ初めて作ったからね。こればっかりは俺にも分からない。」

 レイラは呆気にとられつつも、リヒテルに疑問を投げかけた。
 リヒテルは少し困り顔だったが、観測するほかないと思っていた。
 
 それから約20分くらい経った時、ようやく魔弾はその役割を終えて静かに消えていった。
 
「一発で20分か……レイモンド、周囲の様子はどうだった?」
「明かりはおおよそ500mは問題なさそうだな。どうやらその光を嫌って逃げる【不快な腐乱死体ロッティングコープス】もいたぞ。」

 リヒテルは照明弾の打上のあと、観測をレイモンドへ依頼していた。
 レイモンドは気配を消して周囲を見て回ってみたが、目に付いた【不快な腐乱死体ロッティングコープス】にはきれいに影が出来上がっていた。
 それも併せてリヒテルに報告すると、リヒテルは作戦が決まったのか一度階段まで戻り、準備ができ次第戦闘開始する事を皆に伝えた。

 そしてリヒテルの準備が整い、ついにリベンジマッチが始まろうとしていた。
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