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二回目
第4話
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「おはよう悠一君、輝君」
僕たちは通学路にある上り坂……通称心臓破りの急こう配を歩いている。
正直、学校に行く前に疲れて勉強どころではなくなるくらいにはきつい坂道だ。
登り始めてすぐの脇道から、幼馴染の愛理が声をかけてくる。
愛理はどこかおっとりとした雰囲気があり、男子生徒からもそこそこ人気が有ったりする。
とは言え、本人はあまり気にしている様子は無いみたいだ。
あと他に、美冬という女子生徒と、一馬という男子生徒がいる。
この五人はいつも一緒だった。
そんなことよりも、今目の前で問題が発生していた。
僕は輝とアイコンタクトをすると、深いため息をついてしまう。
「なあ、愛理……せめて家出るときには鏡みような?」
「愛理ちゃん……これには俺も同意するよ」
ここでも天然を発動させる愛理。
口元に朝食べたであろうケチャップがうっすらとついていた。
僕は鞄にあったウェットティッシュでそれを拭おうとすると、愛理もいつものようにと顔を突き出してくる。
なんとも無防備な姿に、またドキドキしてしまった。
顔に出てないといいんだけど。
あれ?本当に気のせいだろうか……
これも前に見た気が……
これが俗にいうデジャヴというやつなのかな?
デジャヴって前に似たような風景や、体験をしたことがある場合、それが現実にフィードバックされて起こる現象って聞いたことあるけど、まさにそれなんじゃないのか?
「どうしたの悠一君?」
「あ、いやなんでもない……ちょっと考え事をしてただけだから」
心配そうに僕の顔を覗き込む愛理。
うん、愛理にまで心配させちゃったな。
気のせいだ……そう気のせいに違いない。
「あ、ごめん!!二人とも施設に忘れ物した!!」
そんな僕の心境をよそに、輝は施設《家》に忘れ物をしたことに気が付いたらしい。
その慌てようから、きっと大事なものだって傍から見てもわかるくらいに動揺している。
「何忘れたのさ。宿題だったら見せるけど?」
「いや、あの……」
輝は僕に近づくとそっと耳打ちでその忘れたものを教えてくれた……
絶対に愛理には知られたくない物。
官能小説『給湯室の誘惑』というタイトルのモノだった。
ここ一年で目覚めたらしく、ラノベとは違う独特の世界観に引き込まれたんだとか。
そしてなぜ忘れて慌てたかというと、そう、僕をその道に引きずりこもうと画策していたから。
さすがに気にはなるけど、そっちの世界にはいかないよって毎回言ってるんだけどね。
今回も聞き入れてはもらえそうにない……
無理に取りにいかなくてもいいんじゃないかって言ったら、どうやら机の上に出しっぱなしだったらしい。
親が部屋に入ったら、間違いなく卒倒するに違いない。
僕に理由を教えた輝は、一目散にもと来た道を戻っていった。
親にばれないことを祈ろう。
「いこっか」
「だね」
愛理と短い会話を交わし、僕たちは通学路を学校に向けて歩き始める。
しばらく歩くと生徒の数も増え、息も絶え絶えで登っていく。
真夏の暑い日差しが容赦なく生徒の体力を奪っていく。
誰だよこんな場所に学校建てたの。
もっと利便性考えてほしかった。
始業前にヘロヘロで集中できるわけないのに。
チリン
するとどこからか涼やかな鈴の音が聞こえる。
夏の暑さに良く似合う、そんな鈴の音。
どうやらその鈴の音は僕だけに聞こえたみたいだ。
なんか少し元気が出た気がする。
隣を見ると、愛理はすでに息も絶え絶えだ。
「大丈夫、愛理?」
「へ、平気だよ……うん、平気……」
疲れと熱さから、心が折れかけているみたいだ。
チリン
また一つ。
きっと、この登校する集団の誰かのカバンにでもついてるんだろうな。
僕は最後の体力を振り絞るように、心臓破りの急こう配を登っていく。
周りも必死にこの上り坂の先にある校舎を目指す。
チリン
ドスン
「あ、ごめんなさい……」
僕はあまりの疲れから、左から人が来てることに気が付かづ、ぶつかってしまった。
意識していなかったせいか、ぶつかったところがやけに痛い。
そんなに強くぶつかってなかったのに。
「悠君?悠君⁈悠君!!きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
突然愛理が僕の名前を連呼すると、すぐに叫び声をあげた。
いったい何が……
そう思った時、突然僕の身体から力が抜けてしまった。
足の踏ん張りも効かず、そのまま地面に膝を付いてしまう。
なんで力が入らないんだ……
冷たい汗が僕の背中を流れ落ちていく。
徐々に視界もぼやけ、心臓がやけに激しく鼓動していた。
僕は痛みに耐えながら、原因の場所をさすってみた。
すると、ぬるりとしたものが手に付着したことを感じた。
そしてその手を見て初めて気が付いた……血だ……
え?これ僕の血?
え?どういうこと?
どうして?
どうして?
そうして?
頭の中で繰り返される疑問符に、誰も答えてくれることはなかった。
ただ冷たい血の海が、僕に現実を突きつけてきた。
薄れゆく意識の中で聞こえたのは、大好きだった愛理の声だった。
あぁ、僕は死ぬのか……
ちゃんと愛理に好きだって伝えればよかった……
あれ……これもどこかで……
僕たちは通学路にある上り坂……通称心臓破りの急こう配を歩いている。
正直、学校に行く前に疲れて勉強どころではなくなるくらいにはきつい坂道だ。
登り始めてすぐの脇道から、幼馴染の愛理が声をかけてくる。
愛理はどこかおっとりとした雰囲気があり、男子生徒からもそこそこ人気が有ったりする。
とは言え、本人はあまり気にしている様子は無いみたいだ。
あと他に、美冬という女子生徒と、一馬という男子生徒がいる。
この五人はいつも一緒だった。
そんなことよりも、今目の前で問題が発生していた。
僕は輝とアイコンタクトをすると、深いため息をついてしまう。
「なあ、愛理……せめて家出るときには鏡みような?」
「愛理ちゃん……これには俺も同意するよ」
ここでも天然を発動させる愛理。
口元に朝食べたであろうケチャップがうっすらとついていた。
僕は鞄にあったウェットティッシュでそれを拭おうとすると、愛理もいつものようにと顔を突き出してくる。
なんとも無防備な姿に、またドキドキしてしまった。
顔に出てないといいんだけど。
あれ?本当に気のせいだろうか……
これも前に見た気が……
これが俗にいうデジャヴというやつなのかな?
デジャヴって前に似たような風景や、体験をしたことがある場合、それが現実にフィードバックされて起こる現象って聞いたことあるけど、まさにそれなんじゃないのか?
「どうしたの悠一君?」
「あ、いやなんでもない……ちょっと考え事をしてただけだから」
心配そうに僕の顔を覗き込む愛理。
うん、愛理にまで心配させちゃったな。
気のせいだ……そう気のせいに違いない。
「あ、ごめん!!二人とも施設に忘れ物した!!」
そんな僕の心境をよそに、輝は施設《家》に忘れ物をしたことに気が付いたらしい。
その慌てようから、きっと大事なものだって傍から見てもわかるくらいに動揺している。
「何忘れたのさ。宿題だったら見せるけど?」
「いや、あの……」
輝は僕に近づくとそっと耳打ちでその忘れたものを教えてくれた……
絶対に愛理には知られたくない物。
官能小説『給湯室の誘惑』というタイトルのモノだった。
ここ一年で目覚めたらしく、ラノベとは違う独特の世界観に引き込まれたんだとか。
そしてなぜ忘れて慌てたかというと、そう、僕をその道に引きずりこもうと画策していたから。
さすがに気にはなるけど、そっちの世界にはいかないよって毎回言ってるんだけどね。
今回も聞き入れてはもらえそうにない……
無理に取りにいかなくてもいいんじゃないかって言ったら、どうやら机の上に出しっぱなしだったらしい。
親が部屋に入ったら、間違いなく卒倒するに違いない。
僕に理由を教えた輝は、一目散にもと来た道を戻っていった。
親にばれないことを祈ろう。
「いこっか」
「だね」
愛理と短い会話を交わし、僕たちは通学路を学校に向けて歩き始める。
しばらく歩くと生徒の数も増え、息も絶え絶えで登っていく。
真夏の暑い日差しが容赦なく生徒の体力を奪っていく。
誰だよこんな場所に学校建てたの。
もっと利便性考えてほしかった。
始業前にヘロヘロで集中できるわけないのに。
チリン
するとどこからか涼やかな鈴の音が聞こえる。
夏の暑さに良く似合う、そんな鈴の音。
どうやらその鈴の音は僕だけに聞こえたみたいだ。
なんか少し元気が出た気がする。
隣を見ると、愛理はすでに息も絶え絶えだ。
「大丈夫、愛理?」
「へ、平気だよ……うん、平気……」
疲れと熱さから、心が折れかけているみたいだ。
チリン
また一つ。
きっと、この登校する集団の誰かのカバンにでもついてるんだろうな。
僕は最後の体力を振り絞るように、心臓破りの急こう配を登っていく。
周りも必死にこの上り坂の先にある校舎を目指す。
チリン
ドスン
「あ、ごめんなさい……」
僕はあまりの疲れから、左から人が来てることに気が付かづ、ぶつかってしまった。
意識していなかったせいか、ぶつかったところがやけに痛い。
そんなに強くぶつかってなかったのに。
「悠君?悠君⁈悠君!!きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
突然愛理が僕の名前を連呼すると、すぐに叫び声をあげた。
いったい何が……
そう思った時、突然僕の身体から力が抜けてしまった。
足の踏ん張りも効かず、そのまま地面に膝を付いてしまう。
なんで力が入らないんだ……
冷たい汗が僕の背中を流れ落ちていく。
徐々に視界もぼやけ、心臓がやけに激しく鼓動していた。
僕は痛みに耐えながら、原因の場所をさすってみた。
すると、ぬるりとしたものが手に付着したことを感じた。
そしてその手を見て初めて気が付いた……血だ……
え?これ僕の血?
え?どういうこと?
どうして?
どうして?
そうして?
頭の中で繰り返される疑問符に、誰も答えてくれることはなかった。
ただ冷たい血の海が、僕に現実を突きつけてきた。
薄れゆく意識の中で聞こえたのは、大好きだった愛理の声だった。
あぁ、僕は死ぬのか……
ちゃんと愛理に好きだって伝えればよかった……
あれ……これもどこかで……
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