絶望の鈴音(りんね)~夢幻の牢獄と僕と……~

華音 楓

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六回目

第15話

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 校舎に入るところから、僕の緊張は膨れ上がってきた。
 まさに疑心暗鬼……すべての場所、人が怪しく見えてくる。
 ガサゴソと鞄を漁るあの女子生徒とか……
 廊下の角で何かを見つめている男子生徒とか……
 玄関フロアの正面にある職員室の出入り口からこちらを見ているあの教師とか……

「なあ悠一……やっぱり変だぞ?本当に大丈夫なのか?」
「あ、あぁ。大丈夫だ。そう、大丈夫だから」

 僕はぎりぎり残ったなけなしのプライドで、消えそうな声で二人に大丈夫と告げた。
 でもやっぱり納得はいっていないみたいだ。

 それから靴を履き変え教室へ向かう廊下に進むと、通学完了している生徒たちが廊下で何か話し合いをしていた。
 その行動一つ一つが怪しすぎて、今の僕からすれば何がOKで何がNGなのか分かりづらい状況になってしまった。

 そして次の場所……僕の教室手前の廊下。
 僕はここで背後から刺されたんだ。
 
「悠一……保健室行こうぜ?」
「そうだよ悠く、悠一君……」

 取り繕う様に愛理は呼び名を普段のモノに戻した。
 僕としてどっちでもいいんだけど、愛理的には照れ臭いらしいね。

 その場を過ぎても殺されなかった。
 ということは、僕は歴史を塗り替えたのか?
 いったい何が原因で今までとは違う流れになったんだ?
 とは言え、まずは死亡を回避できたことを喜ぼう。


 それから教室に入ると、特に変わったことはなく、スムーズに授業が消化されいき、ついには何事もなくお昼の時間を迎えた。
 僕たちの学校には給食が無く、弁当持参か購買での購入がメインになっている。
 僕たち3人は、いつも通りに校舎の屋上に向かった。
 普段だったら教室か中庭で食べることが多かったんだけど、今日に限って愛理が屋上で食べたいって言い始めた。
 まあ、夏休み中の学校だし、いくら人気ナンバーワンの屋上でも人がいないだろうという愛理の予測だった。
 到着すると案の定人影はまばらで、ほぼ僕たちの貸し切り状態になってるみたいだ。

「やっぱ屋上で食べるご飯はおいしいよね!!」

 愛理はご機嫌で昼食を食べ進めて、あっという間に完食してしまった。
 僕はあまり急いで食べる派ではないため、まだ半分くらいしか進んでなかったりする。

 ご飯を食べ終わった僕たちは、普段とは違う景色を眺めていた。
 手すりがあるとは言え、4階建ての校舎と言う事もあり、下を見ればその高さで足がすくむ思いだ。
 しばらく3人で他愛のない話で盛り上がっていた。
 昨日のテレビ番組の事、今好きな音楽や漫画の事。
 ほんと、受験勉強とは程遠い内容だ。
 それでもこのゆっくりとした日常が、僕にとってとてもとても大事に思えた。
 それからしばらくして、なぜか輝と度胸試しをすることになってしまった。
 なぜ輝がそう言い出したかは分からないけど、ここで引いたらなんとなくかっこ悪いって思ってしまった。
 それにしてもだ……輝は僕が高いところが苦手だって知ってて、この勝負を仕掛けてきたんだろうな……卑怯だぞ輝!!

 勝負は簡単。
 どちらがより怖がらず端まで行けるかってやつだ。
 とは言え遊びの範疇だし、柵を超えていこうった話にはならないはずだ。
 僕と輝はじゃんけんをして、順番を決める。
 見事に負けた輝が先攻、僕が後攻。
 二人とも遊びと言う事もあり、わざと怖がるふりをしつつ、徐々に手すりに近づいていく。
 すると輝は何を考えたのか手すりに手をかて、乗り越えようとし始めた。
 さすがにそれは危険だ。
 なんていったって、手すりの先はすぐ空中だ。
 幅としては50cmもないはず。

「冗談だって、さすがに俺だって死にたくないしね」
「びっくりさせるなよ……」

 僕は輝のいたずらに見事に引っ掛かってしまったらしい。
 どうやら愛理は事前に教えてもらっていたらしく、少しバツの悪いと言わんばかりの表情を浮かべていた。
 安堵した僕は何の気なしに手すりに手を付いた。

 その時だった……

 突然支えを失ったかのように僕の身体が傾いていく。
 手すりに目をやると、根元が腐っていたのかぽっきりと折れてしまっていた。
 どうにかバランスを取ろうと必死にもがくも、僕の身体は急に浮く。
 僕はそのまま地面にたたきつけられてしまった。
 僕が最後に見た光景は、愛理の泣き顔だった……

 ちくしょう……せっかくここまでこれたのに……
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