絶望の鈴音(りんね)~夢幻の牢獄と僕と……~

華音 楓

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七回目

第17話

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「輝、悪いんだけど……ちょっと僕体調が悪いみたい……先生に伝えてくれるかい?」
「大丈夫か?送ろうか?」

 2時間目の休憩中、僕は輝に早退する旨を伝えた。
 輝はとても心配そうにしていたが、正直仮病なだけに心苦しかった。
 輝に大丈夫と告げ、僕は自宅に戻ることにした。
 誰かにばれないように、そっと学校を出ると、周囲を確認しながら僕は心臓破りの急こう配を下っていく。
 行きよりも帰りの方が足の負担が大きく、いつも転びそうになる。
 ほんと誰だよここに建てようって言ったやつ。

 それから程なくして自宅に着くと、案の定母さんから心配されてしまった。
 母さんにも体調が悪くて早退してきた話を伝えると、病院に行くかと聞かれたけど、仮病で病院とか意味が分からない状況になるので、寝てればなおると伝え自室に戻ることにした。

 ここまでは順調。
 誰にもバレていないはず。
 さすがに犯人が家に押しかけてくることはないはずだ。

「悠一、母さん町内会の集まりで出かけるからね。昼前には戻ると思うけど、戸締りきちんとしておいてね?」
「分かったよ。」

 どうやら母さんは出かけるらしいな。
 この家に一人になると思うと、途端に不安が首をもたげてきた。
 とは言え住居侵入してまで僕を殺しに来るとは思えない。
 おとなしくこのまま過ごせば、今日という日を終わらせられるはずだ。

 一階から鍵の閉まる音が聞こえたから、母さんが出かけたようだった。
 さて、どうしたものかな。
 僕は一応と思いすべての窓や扉の施錠の確認をした。
 そしてすべての窓や扉がしっかりと施錠されていることを確認すると、胸の奥で少し安堵感が広がっていく。
 こんな些細なことでも安堵するなんて、どれだけ自分が緊張していたか、改めて実感した。
 それから部屋に戻ると、何もすることがないことに気が付いてしまった。
 とは言え、さすがに勉強をサボると受験に支障が出るから、今日受けるはずだった補習事業の課題ワークをこなすことにした。

ピンポーン

 それからどれくらいたったのだろうか……
 ひっそりと静まり返った家の中に、玄関のチャイムが鳴り響く。
 僕の心臓は、恐怖からか一瞬鼓動が止まったように感じ、次に飛び跳ねるように激しく脈打った。
 ビックリした……誰か来たのは間違いけど……誰だ?
 僕は防犯カメラを確認すると、段ボールを持った業者風の人が立っていた。
 帽子を目深にかぶっていて顔までははっきりと分からなかった。

「はい、どちら様ですか?」
「お荷物お持ちしました。玄関への置き配でよろしいですか?」
 
 ん?なんかくぐもって声が聞こえるな。
 ドアホンの調子が悪いのかな?
 そう言えば置き配ならいちいち声をかけるっけ?
 こういった物は母さんがほぼ受け取っているから、僕には判断がつかなかった。
 まあ置き配だって言うし、そのまま玄関に置いてもらえばいいか。

「はい、そのままそこに置いてください。」
「ではここに置いておきます。」

 そう言って宅配業者は荷物を玄関先に置くと、そのままカメラの範囲外に駆け足で走っていった。
 カメラ上には不審人物は見当たらない。
 これならカギを開けても問題ないだろうね。

 僕は玄関のカギを外し、扉を開ける。
 念の為チェーンロックはそのままに、恐る恐る。
 そこから見える範囲には異常は……なさそうだ。
 僕はチェーンロックを外し、ゆっくりと慎重に扉を半開にする。
 目の前の段ボール箱にはあて名書きが貼られていなかった。
 え?宅配便じゃないの?宛名なしってどういう……

 その瞬間、背筋に冷たいものが走る。
 家の中にまで不安感が忍び寄ってくるのを感じた。
 僕の手は汗ばみ、心臓の鼓動が耳の奥まで響く。

 まさか……
 いや、そんなはずはない。
 僕は懸命に不安の拭う様に、思考を切り替えようと努力した。
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