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七回目
第18話
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そう思った時だった。
チリン
いつも聞こえるあの鈴の音が、静寂を破るように鳴り響く。
その瞬間、扉が急に引っ張られるように全開になり、右手をドアノブにかけてあったせいで、僕は引きずられるように外に出そうになる。
一瞬何が起こったか理解できなかった。
ただ、僕に死を告げる死神の鈴の音が、否が応でも身体を縛り付けるようだった。
その音が冷たい風が全身をなで、鳥肌が立つほどの恐怖を感じた。
チリン
まただ……
その音の方に視線を向けると、そこには青い作業服を着た人物が立っていた。
手には鈍く光るナイフが握られており、その冷たい輝きが目に焼き付いて離れなかった。
そう……あの冷たい輝きは見間違えるはずがない。
僕を毎回刺し貫き、そしてルリを弄ぶように切り刻んだナイフだ!!
心臓が凍り付く感覚と同時に、血液が沸騰しそうな、相反する感覚が全身を駆け巡っていく。
慌てて態勢を整えようとしたけど、それを待ってくれるほど犯人は優しくなかった。
周囲の音が消え、耳を静寂がつんざく。
ただそこに有ったのは、不気味だけど凛とした鈴の音だった。
それがかえって僕の恐怖心を強く煽り続ける。
チリン
犯人は、バランスを崩した僕に向けてナイフを突き出した。
ナイフは僕の左わき腹を深く突き刺さり、深く空いた切り口からは瞬く間に大量の血があふれ出す。
傷口が焼けるように痛い……
それとは対照的に冷たい金属の感触が、その存在感を増していく。
全身に痛みが走り、視界も徐々にぼやけてくる。
「ちくしょう!!何なんだよ……」
僕はしりもちをつくように崩れ落ち、地面に倒れ込んでしまった。
僕の血で染め上げられた床の冷たさが、僕の体に染みわたる。
暑い夏の昼間だというのに、ものすごくひんやりとしていた。
視界の端に、僕に馬乗りになろうとする犯人の姿が薄ぼんやりと入り込む。
まるで悪夢の中にいるような感覚に、現実感が薄れていく。
そして犯人は、とどめとばかりにそのナイフを何度も僕に振り下ろす。
薄れゆく意識の中で目にしたのは、僕の血で赤く染まったナイフと、返り血で赤く染まった白い仮面だった……
赤く染まる仮面の隙間から見え隠れする犯人の目は、冷酷なほど黒く澱んで見えた。
薄ら笑みを浮かべ、その口元は醜く歪んでいる。
狂気に染まる犯人の感情が、振り下ろされるナイフに乗せられている気がした。
僕は全身に痛みが走り、意識が薄れかけ、呼吸も浅くなってきた。
「お前は……誰だ……」
その問いに犯人は応えることはなかった。
むしろ当ててみろとでも言いたげに、振り下ろすナイフの手を止め、フードを外して見せる。
しかし僕の目はすでにモノを捉えることは出来ず、ただ犯人がフードを取ったとしか分からなかった。
僕の目には周囲の風景はぼやけていき、音も次第に遠ざかる。
そして最後に僕目にしたのは、犯人の仮面越しの冷たい視線。
世界が静寂に包まれ、薄れゆく意識の中、ただあの冷たい鈴の音が耳の奥に残って消えない。
さっきまで激しく鳴り響いていた心臓の音は、今はなりを潜め、徐々にその鼓動が遅くなる。
全身が鉛のように重く感じる……
次第に視界は暗闇へと変わり、僕の意識はその中に溶け込んでいった。
チリン
いつも聞こえるあの鈴の音が、静寂を破るように鳴り響く。
その瞬間、扉が急に引っ張られるように全開になり、右手をドアノブにかけてあったせいで、僕は引きずられるように外に出そうになる。
一瞬何が起こったか理解できなかった。
ただ、僕に死を告げる死神の鈴の音が、否が応でも身体を縛り付けるようだった。
その音が冷たい風が全身をなで、鳥肌が立つほどの恐怖を感じた。
チリン
まただ……
その音の方に視線を向けると、そこには青い作業服を着た人物が立っていた。
手には鈍く光るナイフが握られており、その冷たい輝きが目に焼き付いて離れなかった。
そう……あの冷たい輝きは見間違えるはずがない。
僕を毎回刺し貫き、そしてルリを弄ぶように切り刻んだナイフだ!!
心臓が凍り付く感覚と同時に、血液が沸騰しそうな、相反する感覚が全身を駆け巡っていく。
慌てて態勢を整えようとしたけど、それを待ってくれるほど犯人は優しくなかった。
周囲の音が消え、耳を静寂がつんざく。
ただそこに有ったのは、不気味だけど凛とした鈴の音だった。
それがかえって僕の恐怖心を強く煽り続ける。
チリン
犯人は、バランスを崩した僕に向けてナイフを突き出した。
ナイフは僕の左わき腹を深く突き刺さり、深く空いた切り口からは瞬く間に大量の血があふれ出す。
傷口が焼けるように痛い……
それとは対照的に冷たい金属の感触が、その存在感を増していく。
全身に痛みが走り、視界も徐々にぼやけてくる。
「ちくしょう!!何なんだよ……」
僕はしりもちをつくように崩れ落ち、地面に倒れ込んでしまった。
僕の血で染め上げられた床の冷たさが、僕の体に染みわたる。
暑い夏の昼間だというのに、ものすごくひんやりとしていた。
視界の端に、僕に馬乗りになろうとする犯人の姿が薄ぼんやりと入り込む。
まるで悪夢の中にいるような感覚に、現実感が薄れていく。
そして犯人は、とどめとばかりにそのナイフを何度も僕に振り下ろす。
薄れゆく意識の中で目にしたのは、僕の血で赤く染まったナイフと、返り血で赤く染まった白い仮面だった……
赤く染まる仮面の隙間から見え隠れする犯人の目は、冷酷なほど黒く澱んで見えた。
薄ら笑みを浮かべ、その口元は醜く歪んでいる。
狂気に染まる犯人の感情が、振り下ろされるナイフに乗せられている気がした。
僕は全身に痛みが走り、意識が薄れかけ、呼吸も浅くなってきた。
「お前は……誰だ……」
その問いに犯人は応えることはなかった。
むしろ当ててみろとでも言いたげに、振り下ろすナイフの手を止め、フードを外して見せる。
しかし僕の目はすでにモノを捉えることは出来ず、ただ犯人がフードを取ったとしか分からなかった。
僕の目には周囲の風景はぼやけていき、音も次第に遠ざかる。
そして最後に僕目にしたのは、犯人の仮面越しの冷たい視線。
世界が静寂に包まれ、薄れゆく意識の中、ただあの冷たい鈴の音が耳の奥に残って消えない。
さっきまで激しく鳴り響いていた心臓の音は、今はなりを潜め、徐々にその鼓動が遅くなる。
全身が鉛のように重く感じる……
次第に視界は暗闇へと変わり、僕の意識はその中に溶け込んでいった。
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