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十回目
第26話
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「おはよう愛理」
「おはよう、輝君、悠一君。今日はルリちゃんも一緒んなんだね」
愛理は僕たちへの挨拶もそこそこに、ルリに駆け寄ると、朝のあいさつ代わりと、キャッキャとはしゃいでいた。
ルリは愛理を年の近い姉のように慕っていた。
初詣の時も昔はよくルリも一緒にいってたっけ。
今は友達と行くって言って、3人での初詣が定番になってたけど。
ルリと愛理の関係性は変わりないみたいだね。
「あれ?今日はみんなおそろいだね」
「お、ほんとだ。おはようさん」
心臓破りの急こう配を上り始めると、ルリの友達も合流した。
朝の挨拶もそこそこに、友達同士の話題で盛り上がっていた。
その後すぐに幼馴染の美冬と一馬も合流した。
このはじめての状況に、僕は一瞬立ち止まり、困惑を覚えてしまった。
正直、今まで一馬や美冬とは教室で挨拶していたくらいだ。
高校入ってからは、少し疎遠になっていた部分が有ったから。
それが今回はどうして……
分からないことだらけで、僕は思考を停止しそうになった。
「おはよう一馬、美冬。二人そろってこの時間は早いね?」
「あれ?学校メール見てないのかよ?登校時間が急遽早まったって。ほら例の事件あるだろ?それもあって教師も早出して通学路の見回りをしているらしいぞ?」
そんなメール来てた?
おそらく父さんや母さんに届いてはいたろうけど、僕はそれを確認するすべはない。
それにしても変わり過ぎじゃないか……
別世界にきてしまったかのようだ。
僕の胸には不安と期待が交錯していた。
もしかしたら、このまま何事もなく過ごせるのではないか……そんな淡い期待を抱いてしまう。
でも奴は必ずやてくる。
だけど、奴は必ずやって来る……そう確信があった。
確信と期待の狭間で、僕の心が揺れ動いていた。
「そうだ悠一……あとで渡したいものがあるんだけど」
「なあ、輝。まさかと思うけど……」
輝がそっと僕に近づき、こそりとそう告げる。
こういう時は決まってアレの受け渡しの時だ。
僕はこくりと一つ頷くと、輝と受け渡し場所の詳細を小声で相談した。
「おいおい、二人で何やってんだよ」
僕らが話をしていると、一馬が突然割り込んできた。
「面白そうな話なら、俺も混ぜてくれよ」
二人の間に圧し掛かるように腕を肩に回した一馬は、ぼそりと呟く。
一馬はニヤリと笑みを浮かべていた。
どうやら僕たちが、良からぬことを考えていると思ったみたいだ。
それに自分も乗りたい……そう言った感じみたいに思えた。
僕と輝は互いに顔を見合わせると、軽いため息と同時に同じくニヤリとして見せる。
実際問題、一馬はこういった類の話が大の苦手だったりする。
見た目的には、ガタイも大きくスポーツが得意な短髪イケメンだから、免疫ありそうなんだけど、実際はものすごく奥手だったりする。
一馬は美冬にぞっこんの割に、いまだ手をつないですらいない。
美冬も前に言っていたけど、せめて手くらいはつないでほしいらしい……
リア充爆発しろ!!
そしてそんな一馬に輝は鞄から例のモノをチラリと見せつける。
『秘めた花園の誘惑~少女の花の散るころに~』
表紙絵と共に一馬に見せつけると、一馬は一転顔を真っ赤にして目を背けてしまった。
僕は心の中でやめた方が良いのになって思ってしまったのは内緒だ。
それから僕らは何事もなく学校へ向かい、何事も授業を受け、そして何事もなく帰宅してしまった。
そう、何もなかったんだ……
おかしい……明らかに変だ……
僕が殺されなかったなんてありえない。
ここはそう言う世界じゃないのか?
なのになんで僕は生きているんだ?
死ななきゃおかしい世界じゃないのか?
僕の思考は徐々に狂気に染まってしまった気がした。
自分でもおかしいと感じているのに、その仄暗い思考が頭から離れない。
底なし沼にでも放ったかのように、深く……より深く沈みこんでいくようだ。
あぁ、そうか……
そうだった……
〝僕がリセットしなきゃ〟
そして僕はキッチンに向かい……
自分の首を包丁で掻き切った。
「おはよう、輝君、悠一君。今日はルリちゃんも一緒んなんだね」
愛理は僕たちへの挨拶もそこそこに、ルリに駆け寄ると、朝のあいさつ代わりと、キャッキャとはしゃいでいた。
ルリは愛理を年の近い姉のように慕っていた。
初詣の時も昔はよくルリも一緒にいってたっけ。
今は友達と行くって言って、3人での初詣が定番になってたけど。
ルリと愛理の関係性は変わりないみたいだね。
「あれ?今日はみんなおそろいだね」
「お、ほんとだ。おはようさん」
心臓破りの急こう配を上り始めると、ルリの友達も合流した。
朝の挨拶もそこそこに、友達同士の話題で盛り上がっていた。
その後すぐに幼馴染の美冬と一馬も合流した。
このはじめての状況に、僕は一瞬立ち止まり、困惑を覚えてしまった。
正直、今まで一馬や美冬とは教室で挨拶していたくらいだ。
高校入ってからは、少し疎遠になっていた部分が有ったから。
それが今回はどうして……
分からないことだらけで、僕は思考を停止しそうになった。
「おはよう一馬、美冬。二人そろってこの時間は早いね?」
「あれ?学校メール見てないのかよ?登校時間が急遽早まったって。ほら例の事件あるだろ?それもあって教師も早出して通学路の見回りをしているらしいぞ?」
そんなメール来てた?
おそらく父さんや母さんに届いてはいたろうけど、僕はそれを確認するすべはない。
それにしても変わり過ぎじゃないか……
別世界にきてしまったかのようだ。
僕の胸には不安と期待が交錯していた。
もしかしたら、このまま何事もなく過ごせるのではないか……そんな淡い期待を抱いてしまう。
でも奴は必ずやてくる。
だけど、奴は必ずやって来る……そう確信があった。
確信と期待の狭間で、僕の心が揺れ動いていた。
「そうだ悠一……あとで渡したいものがあるんだけど」
「なあ、輝。まさかと思うけど……」
輝がそっと僕に近づき、こそりとそう告げる。
こういう時は決まってアレの受け渡しの時だ。
僕はこくりと一つ頷くと、輝と受け渡し場所の詳細を小声で相談した。
「おいおい、二人で何やってんだよ」
僕らが話をしていると、一馬が突然割り込んできた。
「面白そうな話なら、俺も混ぜてくれよ」
二人の間に圧し掛かるように腕を肩に回した一馬は、ぼそりと呟く。
一馬はニヤリと笑みを浮かべていた。
どうやら僕たちが、良からぬことを考えていると思ったみたいだ。
それに自分も乗りたい……そう言った感じみたいに思えた。
僕と輝は互いに顔を見合わせると、軽いため息と同時に同じくニヤリとして見せる。
実際問題、一馬はこういった類の話が大の苦手だったりする。
見た目的には、ガタイも大きくスポーツが得意な短髪イケメンだから、免疫ありそうなんだけど、実際はものすごく奥手だったりする。
一馬は美冬にぞっこんの割に、いまだ手をつないですらいない。
美冬も前に言っていたけど、せめて手くらいはつないでほしいらしい……
リア充爆発しろ!!
そしてそんな一馬に輝は鞄から例のモノをチラリと見せつける。
『秘めた花園の誘惑~少女の花の散るころに~』
表紙絵と共に一馬に見せつけると、一馬は一転顔を真っ赤にして目を背けてしまった。
僕は心の中でやめた方が良いのになって思ってしまったのは内緒だ。
それから僕らは何事もなく学校へ向かい、何事も授業を受け、そして何事もなく帰宅してしまった。
そう、何もなかったんだ……
おかしい……明らかに変だ……
僕が殺されなかったなんてありえない。
ここはそう言う世界じゃないのか?
なのになんで僕は生きているんだ?
死ななきゃおかしい世界じゃないのか?
僕の思考は徐々に狂気に染まってしまった気がした。
自分でもおかしいと感じているのに、その仄暗い思考が頭から離れない。
底なし沼にでも放ったかのように、深く……より深く沈みこんでいくようだ。
あぁ、そうか……
そうだった……
〝僕がリセットしなきゃ〟
そして僕はキッチンに向かい……
自分の首を包丁で掻き切った。
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