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十一回目
第28話
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「悠一?悠一?大丈夫か?」
「ん?あぁ、なんでもないよ輝……」
突然僕の腕が引っ張られた。
輝が心配そうに、僕の腕をつかんでいた。
どうやらいつの間にか通学路を歩いていたらしい。
輝は何度か僕に声をかけたけど、どれも上の空の返事だったみたいだ。
きっと無意識にここまで着てしまったのかもしれないな……
そのせいか、ここまでの道のりについてあまり良く覚えていない。
「大丈夫そうじゃないけど……悠一君、無理してない?」
「ん?あぁ、なんでもないよ愛理……」
愛理も心配そうに僕の顔を覗き込む。
おかしいな、皆にばれないようにしてたのに……
どこかで心にストレスがかかっていたのかもしれない。
僕は自分のほほに触れてみると、僅かに引き攣ったように、けいれんを起こしていた。
「大丈夫……大丈夫だから……うん、問題無いよう。ごめんな二人とも。心配かけたね」
そう、あと少しなんだ。
もう少し行けば最初に殺された場所につく。
そこで殺されるのか?
それとも学校で殺されるのか?
それとも家に帰って殺されるのか?
どうせどこで殺されようとも、またあの朝に戻るだけだ。
痛みは確かにある、けど傷はない。
傷つくのは、痛みを受けた僕の心と記憶だけだ。
チリン……
冷たく澄んだ鈴の音が、僕の耳に突き刺さる。
その瞬間、過去の恐怖が一気に蘇り、全身が震えだす。
本当はいつからこの鈴の音に追い詰められていたんだろう……
本当はずっと前から僕はこの日を繰り返していたんじゃないだろうか……
だけどその答えは僕は持ち合わせていなかった。
覚えているのはここ最近の記憶だけだから。
そして確かな事が一つだけある……それはこの鈴の音が僕に絶え間ない恐怖を与えてくると言うことだ。
この鈴の音が聞こえるたびに、今まで受けた痛みと絶望が、鮮明に心を苛んでくる。
何でもないって思っていたけど、心はそれを忘れていなかったみたいだ。
胸が潰されるかのような不安感が僕の身体を支配していく。
心臓は警鐘を鳴らすかのように鳴り響き、全身に冷や汗が溢れ出る。
跳ね上がる心拍が、否が応でも僕に絶望感を突きつける。
チリン……
「やめろ!!やめてくれ!!もう、ほっといてくれ!!」
僕はその音から逃げるように走り出していた。
逃れられるんだったら何処だっていい。
さっきまであきらめかけていた生に、僕は縋りついていた。
逃げなきゃ!!ただそれだけが、僕の脳内を支配していく。
僕の足音が、雑踏に紛れながら、夏の太陽に照らされたアスファルトに響く。
「はぁ、はぁ、はぁ……鈴の音は……聞こえない……」
振り返れば、そこは通学路からかなり離れた場所だった。
学校からも離れていて、通学する生徒の姿は皆無。
仕事へ向かう人たちがその大半を占めていた。
目の前には片側2車線の大通りがあり、朝のラッシュも重なってか、車がひっきりなしに往来している。
やっと鈴の音から逃げた僕は、さらに遠くへ逃げたかった。
チリン……
「え?」
僕の身体は信号待ちの交差点から、大通りへと突き飛ばされていた。
誰が僕を押したんだ……
僕の世界はスローモーションになったかのように、ゆっくりと流れていく。
元居た場所に視線を向けると、何か叫んでいる人や、向かってくる車に何か合図を送る人、驚きのあまり固まって動けない人。
それぞれの反応を見せていた。
その中で一人……不気味な静けさを纏った人物がいた。
夏場だというのに、黒のフードコートを目深にかぶり、マスクの様な物を手にしていた。
そして何より逆光のシルエットが、奴だと僕に告げる。
逆光のせいでわかりづらかったけど、そいつはニヤリと醜く歪んだ笑みを湛え、マスクをかぶる。
間違いな……奴だ……
その次の瞬間……
僕は激しい衝撃を受け、宙に舞った。
空は雲一つない青空で、夏を彩るセミの鳴き声がやたらと喧しく響いてる。
それを覆い隠すように、激しいトラックのブレーキ音と、タイヤの悲鳴。
そして僕を撥ね飛ばした衝撃音。
どれも僕ははっきりと聞き取ることができた。
そして最後に聞いた音は……
チリン……
またあの涼やかな鈴の音だった……
「ん?あぁ、なんでもないよ輝……」
突然僕の腕が引っ張られた。
輝が心配そうに、僕の腕をつかんでいた。
どうやらいつの間にか通学路を歩いていたらしい。
輝は何度か僕に声をかけたけど、どれも上の空の返事だったみたいだ。
きっと無意識にここまで着てしまったのかもしれないな……
そのせいか、ここまでの道のりについてあまり良く覚えていない。
「大丈夫そうじゃないけど……悠一君、無理してない?」
「ん?あぁ、なんでもないよ愛理……」
愛理も心配そうに僕の顔を覗き込む。
おかしいな、皆にばれないようにしてたのに……
どこかで心にストレスがかかっていたのかもしれない。
僕は自分のほほに触れてみると、僅かに引き攣ったように、けいれんを起こしていた。
「大丈夫……大丈夫だから……うん、問題無いよう。ごめんな二人とも。心配かけたね」
そう、あと少しなんだ。
もう少し行けば最初に殺された場所につく。
そこで殺されるのか?
それとも学校で殺されるのか?
それとも家に帰って殺されるのか?
どうせどこで殺されようとも、またあの朝に戻るだけだ。
痛みは確かにある、けど傷はない。
傷つくのは、痛みを受けた僕の心と記憶だけだ。
チリン……
冷たく澄んだ鈴の音が、僕の耳に突き刺さる。
その瞬間、過去の恐怖が一気に蘇り、全身が震えだす。
本当はいつからこの鈴の音に追い詰められていたんだろう……
本当はずっと前から僕はこの日を繰り返していたんじゃないだろうか……
だけどその答えは僕は持ち合わせていなかった。
覚えているのはここ最近の記憶だけだから。
そして確かな事が一つだけある……それはこの鈴の音が僕に絶え間ない恐怖を与えてくると言うことだ。
この鈴の音が聞こえるたびに、今まで受けた痛みと絶望が、鮮明に心を苛んでくる。
何でもないって思っていたけど、心はそれを忘れていなかったみたいだ。
胸が潰されるかのような不安感が僕の身体を支配していく。
心臓は警鐘を鳴らすかのように鳴り響き、全身に冷や汗が溢れ出る。
跳ね上がる心拍が、否が応でも僕に絶望感を突きつける。
チリン……
「やめろ!!やめてくれ!!もう、ほっといてくれ!!」
僕はその音から逃げるように走り出していた。
逃れられるんだったら何処だっていい。
さっきまであきらめかけていた生に、僕は縋りついていた。
逃げなきゃ!!ただそれだけが、僕の脳内を支配していく。
僕の足音が、雑踏に紛れながら、夏の太陽に照らされたアスファルトに響く。
「はぁ、はぁ、はぁ……鈴の音は……聞こえない……」
振り返れば、そこは通学路からかなり離れた場所だった。
学校からも離れていて、通学する生徒の姿は皆無。
仕事へ向かう人たちがその大半を占めていた。
目の前には片側2車線の大通りがあり、朝のラッシュも重なってか、車がひっきりなしに往来している。
やっと鈴の音から逃げた僕は、さらに遠くへ逃げたかった。
チリン……
「え?」
僕の身体は信号待ちの交差点から、大通りへと突き飛ばされていた。
誰が僕を押したんだ……
僕の世界はスローモーションになったかのように、ゆっくりと流れていく。
元居た場所に視線を向けると、何か叫んでいる人や、向かってくる車に何か合図を送る人、驚きのあまり固まって動けない人。
それぞれの反応を見せていた。
その中で一人……不気味な静けさを纏った人物がいた。
夏場だというのに、黒のフードコートを目深にかぶり、マスクの様な物を手にしていた。
そして何より逆光のシルエットが、奴だと僕に告げる。
逆光のせいでわかりづらかったけど、そいつはニヤリと醜く歪んだ笑みを湛え、マスクをかぶる。
間違いな……奴だ……
その次の瞬間……
僕は激しい衝撃を受け、宙に舞った。
空は雲一つない青空で、夏を彩るセミの鳴き声がやたらと喧しく響いてる。
それを覆い隠すように、激しいトラックのブレーキ音と、タイヤの悲鳴。
そして僕を撥ね飛ばした衝撃音。
どれも僕ははっきりと聞き取ることができた。
そして最後に聞いた音は……
チリン……
またあの涼やかな鈴の音だった……
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