絶望の鈴音(りんね)~夢幻の牢獄と僕と……~

華音 楓

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十二回目

第30話

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「ここは……」

 僕が意識を覚醒させると、そこは真っ白な部屋だった。
 天井の蛍光灯が、部屋を明るく照らしていた。
 僕の周りにはたくさんの機械が並んでいて、規則的な音も聞こえてくる。

「痛つっ!!」
 
 身体を起こそうとして左腕を動かすと、左腕を起点として全身に痛みが広がっていく。
 まるでナイフにでも刺された、あの悪夢のような痛みだ。
 何が起こったんだ……
 僕は思わず左腕を見ようと顔を動かす。
 そこには包帯でぐるぐる巻きにされた僕の腕があった。
 右腕には点滴の針が刺さっている。

 そうか、ここは病院か……
 でもなんで病院に……

 僕は必至で考えたけど、いまいちよく思い出せない。
 ただ、腕に痛みがあるって言う事は、何らかの事故や事件に巻き込まれたってことか……
 そうなると、僕は犯人に襲われて一命をとりとめたってことか。
 
 良かった。
 僕は助かったんだ。
 僕は犯人に殺されずに済んだんだ。
 これで僕はまたあの朝に戻らなくて済むんだ。

 そう思うと僕は、今にも飛び跳ねて喜びを爆発させたい気分で一杯だった。
 そうは言っても、身体は動かせないけど。

「そうだ、ナースコールは……って身体が動かないや……誰か~~~、誰かいませんかぁ~~~~」

 僕は目を覚ましたことを伝えようと、必死で声をあげる。
 それに気が付いてくれたのか、カラカラとカートを押す音が聞こえてきた。
 そのカートの音に反応するかのように、僕の心臓の鼓動は早鐘を打つように激しく動き出す。
 ちょっと待て……カートの推す音?

 僕の脳裏にあの光景が浮かび上がる。
 あの病院で殺された出来事が。
 まさか……まああの時の出来事が繰り返されるのか⁈

「よかった、目を覚ましたのね。」

 病室に入ってきたのは、若い看護師さんだった。

 僕はそのことに安堵した。
 気が付けばかなり緊張していたのか、手足や背中に大量の汗が噴き出していた。
 看護師さんは僕が目を覚ましたことに安堵したのか、優しく微笑んでくれた。
 それが何よりも僕の心を和ませてくれた。

「少し傷口を確認するわね」

 そう言って包帯を外していく看護師さん。
 そして最後にガーゼを剥がすと、そこには十針以上縫われたであろう傷口が見えた。
 今は血が止まっているが、その傷口はギザギザで、縫合もうまくは出来なかったみたいだった。

「血は止まったみたいね。それじゃあ先生を読んでくるから待っててね。それから絶対に動かさないこと、良いわね?」

 そう言うと看護師さんは傷口にガーゼを新たに付け替え、固定用のテープで簡単に止めていった。
 それから少しして先生が病室に入ってきた。
 先生は僕の左腕を見て、渋い顔を浮かべる。
 それが何を意味しているかは分からないけど、あまりいい状況じゃないということは、なんとなく分かった。

「あの、先生……家族は……」
「今こっちに来るはずだよ。少し待っててくださいね……って、来たみたいだね。」

 先生が全部を言い終る前に、家族が病室へ入ってきた。
 父さんも母さんもルリも皆心配そうにしていた。
 ほんとごめんなさい……その気持ちでいっぱいだった。

「それではご家族が来られたので、説明をさせてください。悠一君の左腕ですが、傷の再建はあと2回ほど行えばほぼ見えなくなるまでは回復するでしょう。」

 その言葉に家族のみんなからは安堵の息が漏れた。
 ただ先生の言葉に何となく引っ掛かりを覚えた。

「タダですね……おそらく神経は難しいですね……かなりのダメージを負っていたので、なんとか努力はしたのですが、このまま感覚が戻らない可能性もあります。まずは傷を治しリハビリを中心に頑張りましょう」

 医師の言葉に安堵と共に、不安が押し寄せてくる。
 天国から地獄……とでも言えばいいのかな。
 僕の左腕はもうだめらしい。
 確かに痛みは感じる……だけど動かそうと思っても、動いてはくれなかった。
 先生曰く、その痛みも〝脳が痛いと思っているだけ〟の可能性もあるそうだ。
 だからこそ、リハビリを頑張れば、以前の様な暮らしに戻れるかもしれないってことらしい。
 その言葉が慰めなのか、現実なのか、今の僕には判断がつかなかった。
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