39 / 51
十五回目
第39話
しおりを挟む
ピンポーン
それからしばらくすると、いつものようにチャイムが鳴る。
輝が迎えに来たみたいだ。
僕たちは学校の準備を済ませ、玄関の扉を開ける。
そこにはいつものように、王子様スマイルを浮かべる輝の姿があった。
「おはよう悠一。ルリちゃんもおはよう」
「おはよう輝」
「おはようございます!!」
ルリがどこか緊張した面持ちで、輝と挨拶を交わしていた。
輝もそれに気が付いたのか、どことなく困り顔だ。
ルリの表情はどこか恋する乙女を思わせる、そんな感じがした。
「ほら二人とも、早くいかないと学校に遅刻するぞ?」
僕は少し呆れながら、うちの玄関の前に固まる二人を急かす。
なんだかねぇ~
「そう言えばさ輝。今朝のニュースみた?まさかこの街で殺人事件が起こるなんてびっくりだよね」
「そうだな。本当にまさかって思ったよ。思ったより大事になってるみたいだし」
輝も不安なんだろうか、どこかこの話題について焦りが見え隠れする。
まあ、誰だって怖いと思うよね。
自分の街に殺人鬼が隠れているかもしれないんだから。
「母さんが、ものすごく心配してたしね。早く捕まってほしいよ」
「そう、だな。そうあってほしいね」
どこか輝の様子がおかしい気がする。
何か隠しているのか?
もしかして犯人に心当たりが?
犯行現場を目撃したとか?
なんてさすがに考え過ぎか。
それからしばらくすると、ハナの家の傍に到着する。
相変わらずハナの行方は分からないのかな?
おじさんが項垂れていた。
「動物の虐待とかもあったみたいだし、なんかいきなり物騒になってないか?」
僕はふと、そう輝に話を振ると輝は一瞬びくりとしていた。
やっぱり輝に何かあったんだ……
そうじゃなきゃ、そんなに驚いたりはしないし……
「なあ輝……僕に何か隠してないか?」
「何のことだい?俺が悠一に隠し事?するわけないだろ?」
慌てる輝がやはり心配になってくる。
いつもならこんなことで慌てるはずないのに。
もしかして犯人に脅されているとか……
ってさすがにドラマの見過ぎかな?
「そっか……ならいいんだけど……何かあったら必ず言ってほしいかな……僕たちは幼馴染で親友だろ?親友が困っているけど助けられないって一番つらいから……」
「分かった。その時は助けを求めるよ。とりあえず今は何もないから安心してほしい」
僕としてはまだ納得はいかないけど、そこは輝が自分から話してくれるのを待つしかないかな。
とりあえずハナについては見つかったらおじさんに声をかけよう。
「大丈夫ですよ輝さん!!お兄ちゃんがダメなら、私が護りますから!!」
「ありがとうルリちゃん。頼りにしているよ」
輝の笑顔がどこかよそよそしく感じてしまう。
これも僕の考えすぎだと思うんだけど……
考えてみれば、ここ一か月くらい輝が本当に笑ってるの見てないかもしれない。
僕といてもどこか違う世界を見ているような、そんな目をしていると気が有る。
きっと気のせいだ……って思うには違う気がする。
「ルリ……少しは場所をわきまえろって。こんなところで空手披露してどうするんだよ」
「お、お兄ちゃんは黙ってて!!ほ、ほら!!輝さんに笑われちゃったじゃない!!」
僕たちのやり取りを見て少しだけ笑みを浮かべる輝。
うん、これなら大丈夫そうだ。
僕はそう思うことにした。
「おはよう輝君、悠一君。それとルリちゃんもおはよう!!」
「あ、愛理さん!!おはようございます!!」
いつもの合流地点から、愛理がやってくる。
僕らがあいさつしようとすると、ルリがかぶせるように愛理に抱き着いた。
なんだかんだでルリは愛理にベタベタ見たいだ。
先輩として尊敬しているってより、姉的立ち位置なのかもしれないな。
その後ルリの同級生も合流し、いつにもまして賑やかな集団になっていた。
「なんかこう言うのもいいよね輝」
「そうだな……こういうのが続くといいんだけど……」
これ以上は聞かない方がいいみたいだ。
輝の影が次第に濃くなっていっている気がする。
僕に話せない何か黒いものが、輝に絡みついているのかもしれない。
それを解いてあげられればいいんだけど、今の僕には難しいようだ。
「あれ?そう言えば輝君……忘れ物してないの?」
「「え?」」
なぜか僕と輝の声が被る。
むしろなんで愛理がそんなこと思ったんだ?
愛理自身何か考えていってるわけじゃないと思う。
ただ漠然とそう思った……そんな感じに思えた。
そもそも、輝が本を忘れてきていることを知っているのは僕以外居ないはず……
それに今回も忘れているかなんてわからない。
だけど愛理は〝輝が忘れ物をする〟と言う事象について話をしてきている。
これはどういうことだ?
何か変化が起こりかけているのか?
このループ世界の綻び?
分からないことだらけで、混乱していく。
輝はというと、驚きのあまりどこか感情が抜けたような表情を見せていた。
「どうして愛理はそう思ったの?」
輝の質問はもっともだ。
僕が輝だったら同じ質問をしていたと思うから。
とうの本人は小首をかしげながら、何かひらめいた的な感じを見せていた。
「どうして……って言われてもなぁ。うん、なんとなくだね。なんとなく輝君が忘れ物してるんじゃないかって思ったの」
うん、本当に勘だった。
これはどうしたものかな……
すると輝が僕に近づくと、何やら耳打ちを始める。
「悠一……どうしよう。確かに俺……忘れ物したんだ。悠一に渡そうと思って準備してた小説。取りに戻った方がいいかな?」
「小説ってまさか……官能?もしかして、机の上に出しっぱなしってことはないよね?」
僕の言葉にも驚きを見せる輝。
もしかして朝から上の空だったのはそれが原因だったのか?
輝にそれを問いただすと、小さく頷き返してきた。
僕の朝からの心配を返せ!!
そりゃ浮かない顔をするはずだ。
親がもし自分の部屋に入ったら、机の上に官能小説がどんと置いてあるんだから。
卒倒してもおかしくはないよね。
それに最近の輝の読書傾向が日々エスカレートしているのも知ってる。
それを考えれば心ここにあらずはうなずける。
「ごめん、俺一回施設に帰るから!!先生に言われたら適当に返しておいて!!」
輝はそう言うと、一目散に自宅へ戻っていった。
しかもかなり慌てるように、猛ダッシュで。
「それにしてもよくわかったな」
「それがね、おかしいんだ。なんだか見たことがある光景だなって。あれかな?デジャブ?的な?」
愛理も半信半疑といった具合だ。
だけど僕にはその経験があった。
僕がこの世界に囚われた違和感がそれだったから。
まさか……ね。
「なあ愛理……鈴の音って覚えてる?」
「鈴の音?う~ん、ちょっとわかんないかな?」
記憶から引き出そうと必死に考えてくれているみたいだけど、やっぱり覚えていないらしい。
それはそれで僕としては一つのヒントになるからありがたい。
とりあえず愛理はこの世界に囚われてはいない可能性が高い。
だけど何かしらの影響を受け始めている。
そう考えるのが妥当だろうな。
それからしばらくすると、いつものようにチャイムが鳴る。
輝が迎えに来たみたいだ。
僕たちは学校の準備を済ませ、玄関の扉を開ける。
そこにはいつものように、王子様スマイルを浮かべる輝の姿があった。
「おはよう悠一。ルリちゃんもおはよう」
「おはよう輝」
「おはようございます!!」
ルリがどこか緊張した面持ちで、輝と挨拶を交わしていた。
輝もそれに気が付いたのか、どことなく困り顔だ。
ルリの表情はどこか恋する乙女を思わせる、そんな感じがした。
「ほら二人とも、早くいかないと学校に遅刻するぞ?」
僕は少し呆れながら、うちの玄関の前に固まる二人を急かす。
なんだかねぇ~
「そう言えばさ輝。今朝のニュースみた?まさかこの街で殺人事件が起こるなんてびっくりだよね」
「そうだな。本当にまさかって思ったよ。思ったより大事になってるみたいだし」
輝も不安なんだろうか、どこかこの話題について焦りが見え隠れする。
まあ、誰だって怖いと思うよね。
自分の街に殺人鬼が隠れているかもしれないんだから。
「母さんが、ものすごく心配してたしね。早く捕まってほしいよ」
「そう、だな。そうあってほしいね」
どこか輝の様子がおかしい気がする。
何か隠しているのか?
もしかして犯人に心当たりが?
犯行現場を目撃したとか?
なんてさすがに考え過ぎか。
それからしばらくすると、ハナの家の傍に到着する。
相変わらずハナの行方は分からないのかな?
おじさんが項垂れていた。
「動物の虐待とかもあったみたいだし、なんかいきなり物騒になってないか?」
僕はふと、そう輝に話を振ると輝は一瞬びくりとしていた。
やっぱり輝に何かあったんだ……
そうじゃなきゃ、そんなに驚いたりはしないし……
「なあ輝……僕に何か隠してないか?」
「何のことだい?俺が悠一に隠し事?するわけないだろ?」
慌てる輝がやはり心配になってくる。
いつもならこんなことで慌てるはずないのに。
もしかして犯人に脅されているとか……
ってさすがにドラマの見過ぎかな?
「そっか……ならいいんだけど……何かあったら必ず言ってほしいかな……僕たちは幼馴染で親友だろ?親友が困っているけど助けられないって一番つらいから……」
「分かった。その時は助けを求めるよ。とりあえず今は何もないから安心してほしい」
僕としてはまだ納得はいかないけど、そこは輝が自分から話してくれるのを待つしかないかな。
とりあえずハナについては見つかったらおじさんに声をかけよう。
「大丈夫ですよ輝さん!!お兄ちゃんがダメなら、私が護りますから!!」
「ありがとうルリちゃん。頼りにしているよ」
輝の笑顔がどこかよそよそしく感じてしまう。
これも僕の考えすぎだと思うんだけど……
考えてみれば、ここ一か月くらい輝が本当に笑ってるの見てないかもしれない。
僕といてもどこか違う世界を見ているような、そんな目をしていると気が有る。
きっと気のせいだ……って思うには違う気がする。
「ルリ……少しは場所をわきまえろって。こんなところで空手披露してどうするんだよ」
「お、お兄ちゃんは黙ってて!!ほ、ほら!!輝さんに笑われちゃったじゃない!!」
僕たちのやり取りを見て少しだけ笑みを浮かべる輝。
うん、これなら大丈夫そうだ。
僕はそう思うことにした。
「おはよう輝君、悠一君。それとルリちゃんもおはよう!!」
「あ、愛理さん!!おはようございます!!」
いつもの合流地点から、愛理がやってくる。
僕らがあいさつしようとすると、ルリがかぶせるように愛理に抱き着いた。
なんだかんだでルリは愛理にベタベタ見たいだ。
先輩として尊敬しているってより、姉的立ち位置なのかもしれないな。
その後ルリの同級生も合流し、いつにもまして賑やかな集団になっていた。
「なんかこう言うのもいいよね輝」
「そうだな……こういうのが続くといいんだけど……」
これ以上は聞かない方がいいみたいだ。
輝の影が次第に濃くなっていっている気がする。
僕に話せない何か黒いものが、輝に絡みついているのかもしれない。
それを解いてあげられればいいんだけど、今の僕には難しいようだ。
「あれ?そう言えば輝君……忘れ物してないの?」
「「え?」」
なぜか僕と輝の声が被る。
むしろなんで愛理がそんなこと思ったんだ?
愛理自身何か考えていってるわけじゃないと思う。
ただ漠然とそう思った……そんな感じに思えた。
そもそも、輝が本を忘れてきていることを知っているのは僕以外居ないはず……
それに今回も忘れているかなんてわからない。
だけど愛理は〝輝が忘れ物をする〟と言う事象について話をしてきている。
これはどういうことだ?
何か変化が起こりかけているのか?
このループ世界の綻び?
分からないことだらけで、混乱していく。
輝はというと、驚きのあまりどこか感情が抜けたような表情を見せていた。
「どうして愛理はそう思ったの?」
輝の質問はもっともだ。
僕が輝だったら同じ質問をしていたと思うから。
とうの本人は小首をかしげながら、何かひらめいた的な感じを見せていた。
「どうして……って言われてもなぁ。うん、なんとなくだね。なんとなく輝君が忘れ物してるんじゃないかって思ったの」
うん、本当に勘だった。
これはどうしたものかな……
すると輝が僕に近づくと、何やら耳打ちを始める。
「悠一……どうしよう。確かに俺……忘れ物したんだ。悠一に渡そうと思って準備してた小説。取りに戻った方がいいかな?」
「小説ってまさか……官能?もしかして、机の上に出しっぱなしってことはないよね?」
僕の言葉にも驚きを見せる輝。
もしかして朝から上の空だったのはそれが原因だったのか?
輝にそれを問いただすと、小さく頷き返してきた。
僕の朝からの心配を返せ!!
そりゃ浮かない顔をするはずだ。
親がもし自分の部屋に入ったら、机の上に官能小説がどんと置いてあるんだから。
卒倒してもおかしくはないよね。
それに最近の輝の読書傾向が日々エスカレートしているのも知ってる。
それを考えれば心ここにあらずはうなずける。
「ごめん、俺一回施設に帰るから!!先生に言われたら適当に返しておいて!!」
輝はそう言うと、一目散に自宅へ戻っていった。
しかもかなり慌てるように、猛ダッシュで。
「それにしてもよくわかったな」
「それがね、おかしいんだ。なんだか見たことがある光景だなって。あれかな?デジャブ?的な?」
愛理も半信半疑といった具合だ。
だけど僕にはその経験があった。
僕がこの世界に囚われた違和感がそれだったから。
まさか……ね。
「なあ愛理……鈴の音って覚えてる?」
「鈴の音?う~ん、ちょっとわかんないかな?」
記憶から引き出そうと必死に考えてくれているみたいだけど、やっぱり覚えていないらしい。
それはそれで僕としては一つのヒントになるからありがたい。
とりあえず愛理はこの世界に囚われてはいない可能性が高い。
だけど何かしらの影響を受け始めている。
そう考えるのが妥当だろうな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる