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十五回目
第40話
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チリン
僕らが輝と別れ、坂道を登っているとき、ついにあの鈴の音が聞こえた。
周りを見渡すと、生徒以外の姿は見えなかった。
あの場所まではまだ遠い。
僕が殺されるとしてもまだ時間的猶予は有りそうだな。
「どうしたの悠君。何かあった?」
「いや、そう言うわけじゃないんだけどね。鈴の音が気になっちゃって」
あの鈴の音を僕が忘れるはずが無い。
これまで何度も聞いてきた音だから。
ただ、意外と今の僕は冷静を保っている。
焦りも緊張も恐怖もなく、ただ漠然と命を守ることに集中している。
愛理が心配そうにのぞき込んでくる。
こういった行動がいちいち可愛いから厄介だ。
せっかく冷静でいるのに、一瞬ドキッとしてしまったじゃないか。
チリン
涼やかな音色の鈴は、どこからともなく聞こえてくる。
近いのか、遠いのか。
それすらあいまいになるほど、澄んでいる。
あの場所がもう目と鼻の先だ。
僕は前もあの場所で刺されたんだ。
今回もまたそれが再演される。
そう思うと、なんとも不思議な気がしてきた。
死ぬと分かっていて僕はここにいる。
ただ犯人に会うためだけに。
普通の人が考えたら、狂気の沙汰だろうな。
でも僕はループ世界に取り残された人間だ。
だったらそれを逆手に取ってやればいい。
「悠君?だいじょうぶ?」
「平気だよ愛理。大丈夫、もうすぐ終わりが見えるはずだから」
僕は何か確証があったわけじゃない。
だけどそう感じていた。
第六感?なんて言い方になるのか……非現実的で好きじゃないんだけどね。
僕はついにあの場所へやってきた。
チリン
鈴の音がすぐそばで鳴る。
僕は咄嗟にその場を飛び退く。
すると左側からナイフを持った黒パーカーの犯人が体当たりを仕掛けていた。
犯人はその思惑が外れたことに驚きを見せる。
一瞬その動きが止まった。
そしてフードに隠れた顔には、あのマスクがつけてある。
間違いない、こいつが俺を襲い続けた犯人だ!!
そう確信した僕は、手にした鞄を振り回し、犯人に迫る。
犯人は咄嗟の事に驚いたのか、一歩後退するとしりもちをつく形で倒れてしまう。
その拍子に白いマスクがはすれ、ついにその素顔を露わにした。
そこにいたのは僕の予想外の人物だった……
「輝!?」
「輝君!?」
輝はマスクがは刷れたことに気が付き、慌てて立ち上がる。
その表情は焦りと怒りと何か別な感情が入り混じって、僕にはうまく表現ができない。
ただ、間違いなく目の前にいるのは、僕の親友の輝だ。
「輝、なんでこんなことを!!」
「輝君!!」
輝は何度も僕に襲い掛かってきた。
そのたびにギリギリで躱し続ける。
鞄はすでにナイフでボロボロにされた。
輝も息も絶え絶えで、僕も同様だ。
「悠一……悠一……悠一!!」
鬼の形相……まさに輝の表情を表すにはぴったりの言葉だ。
「あぁぁああぁぁぁぁああぁっぁぁああぁ!!」
輝は何を思ったか、僕とは逆方向に走り出した。
その先にいたのは……
「愛理!!危ない!!」
僕は咄嗟に身体が動いてしまった。
だけどこの時後悔した、こちらを振り返った輝が一瞬ニヤリと笑っていたから。
輝は愛理を襲えば僕が護ろうと動くと分かっていたから。
輝はすぐに踵を返し、僕へ迫る。
僕はすでに走り始めていた為、回避する暇すらなかった。
ドスン
僕と輝の身体がぶつかり合う……
僕は腹部に帯びる熱を感じ、またダメダメだったかと心が折れかける……
せり上がる血の味と匂いが、僕へ死の知らせを届ける。
「悠一……あぁ、僕の悠一……愛してるよ……」
「ひか……る……」
僕は力なくその場に倒れ込む。
傷口から溢れ出る血が、僕の周りに池を作る。
その生温かさが、徐々に冷えていく僕の身体を包み込むようだった。
「悠君!!悠君!!しっかりして!!悠君!!」
愛理が心配そうに僕に駆け寄る。
ダメだ……来るな愛理……
「安心して愛理……君も一緒だよ……」
「え?」
輝の凶刃が愛理の首元に迫る。
愛理は何が怒ったか分からないまま、その柔らかな首から大量の血を溢れさせていた。
「あ……い……り……」
だけど僕の声は愛理に届いてはいない。
力なく倒れる愛理を支えられるわけがなかったから……
「悠一……大丈夫……僕たちはいつまでも一緒だよ……永年にね……だからまた……お休み……悠一……」
輝もまた自分の首を搔き切り……大量の血をぶちまけた。
そうして僕の意識は途絶えたのだった。
僕らが輝と別れ、坂道を登っているとき、ついにあの鈴の音が聞こえた。
周りを見渡すと、生徒以外の姿は見えなかった。
あの場所まではまだ遠い。
僕が殺されるとしてもまだ時間的猶予は有りそうだな。
「どうしたの悠君。何かあった?」
「いや、そう言うわけじゃないんだけどね。鈴の音が気になっちゃって」
あの鈴の音を僕が忘れるはずが無い。
これまで何度も聞いてきた音だから。
ただ、意外と今の僕は冷静を保っている。
焦りも緊張も恐怖もなく、ただ漠然と命を守ることに集中している。
愛理が心配そうにのぞき込んでくる。
こういった行動がいちいち可愛いから厄介だ。
せっかく冷静でいるのに、一瞬ドキッとしてしまったじゃないか。
チリン
涼やかな音色の鈴は、どこからともなく聞こえてくる。
近いのか、遠いのか。
それすらあいまいになるほど、澄んでいる。
あの場所がもう目と鼻の先だ。
僕は前もあの場所で刺されたんだ。
今回もまたそれが再演される。
そう思うと、なんとも不思議な気がしてきた。
死ぬと分かっていて僕はここにいる。
ただ犯人に会うためだけに。
普通の人が考えたら、狂気の沙汰だろうな。
でも僕はループ世界に取り残された人間だ。
だったらそれを逆手に取ってやればいい。
「悠君?だいじょうぶ?」
「平気だよ愛理。大丈夫、もうすぐ終わりが見えるはずだから」
僕は何か確証があったわけじゃない。
だけどそう感じていた。
第六感?なんて言い方になるのか……非現実的で好きじゃないんだけどね。
僕はついにあの場所へやってきた。
チリン
鈴の音がすぐそばで鳴る。
僕は咄嗟にその場を飛び退く。
すると左側からナイフを持った黒パーカーの犯人が体当たりを仕掛けていた。
犯人はその思惑が外れたことに驚きを見せる。
一瞬その動きが止まった。
そしてフードに隠れた顔には、あのマスクがつけてある。
間違いない、こいつが俺を襲い続けた犯人だ!!
そう確信した僕は、手にした鞄を振り回し、犯人に迫る。
犯人は咄嗟の事に驚いたのか、一歩後退するとしりもちをつく形で倒れてしまう。
その拍子に白いマスクがはすれ、ついにその素顔を露わにした。
そこにいたのは僕の予想外の人物だった……
「輝!?」
「輝君!?」
輝はマスクがは刷れたことに気が付き、慌てて立ち上がる。
その表情は焦りと怒りと何か別な感情が入り混じって、僕にはうまく表現ができない。
ただ、間違いなく目の前にいるのは、僕の親友の輝だ。
「輝、なんでこんなことを!!」
「輝君!!」
輝は何度も僕に襲い掛かってきた。
そのたびにギリギリで躱し続ける。
鞄はすでにナイフでボロボロにされた。
輝も息も絶え絶えで、僕も同様だ。
「悠一……悠一……悠一!!」
鬼の形相……まさに輝の表情を表すにはぴったりの言葉だ。
「あぁぁああぁぁぁぁああぁっぁぁああぁ!!」
輝は何を思ったか、僕とは逆方向に走り出した。
その先にいたのは……
「愛理!!危ない!!」
僕は咄嗟に身体が動いてしまった。
だけどこの時後悔した、こちらを振り返った輝が一瞬ニヤリと笑っていたから。
輝は愛理を襲えば僕が護ろうと動くと分かっていたから。
輝はすぐに踵を返し、僕へ迫る。
僕はすでに走り始めていた為、回避する暇すらなかった。
ドスン
僕と輝の身体がぶつかり合う……
僕は腹部に帯びる熱を感じ、またダメダメだったかと心が折れかける……
せり上がる血の味と匂いが、僕へ死の知らせを届ける。
「悠一……あぁ、僕の悠一……愛してるよ……」
「ひか……る……」
僕は力なくその場に倒れ込む。
傷口から溢れ出る血が、僕の周りに池を作る。
その生温かさが、徐々に冷えていく僕の身体を包み込むようだった。
「悠君!!悠君!!しっかりして!!悠君!!」
愛理が心配そうに僕に駆け寄る。
ダメだ……来るな愛理……
「安心して愛理……君も一緒だよ……」
「え?」
輝の凶刃が愛理の首元に迫る。
愛理は何が怒ったか分からないまま、その柔らかな首から大量の血を溢れさせていた。
「あ……い……り……」
だけど僕の声は愛理に届いてはいない。
力なく倒れる愛理を支えられるわけがなかったから……
「悠一……大丈夫……僕たちはいつまでも一緒だよ……永年にね……だからまた……お休み……悠一……」
輝もまた自分の首を搔き切り……大量の血をぶちまけた。
そうして僕の意識は途絶えたのだった。
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