絶望の鈴音(りんね)~夢幻の牢獄と僕と……~

華音 楓

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十六回目

第41話

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——————今日は20✕✕年8月5日の朝です!!朝です!!起きるのです!!——————

 そうか、そう言う事だったのか。
 輝が僕を……
 その理由はある程度はっきりしてきた。
 まさに愛憎……
 輝がそこまで思っていたなんて。

 さかのぼれば僕らは小学三年生からずっと一緒だ。
 輝がいじめられた時も、僕が代わりにいじめられた時もずっと。
 それからラノベで意気投合して、親友になった。
 何でも話せる親友に。
 そこに愛理も加わった。
 一馬も、美冬も。
 だから分からなくなっていた。
 輝の本当の気持ちを。
 本当の望みを。
 きっと輝は誰かの愛がほし方のかもしれない。
 それが僕であり、愛理だ。
 
 だからと言ってこのままでいいってわけにはいかない。
 これまでも僕が殺された後、愛理もその手にかけていたはずだ。
 だったら親友として僕が輝を止めないと。
 輝に罪を重ねさせないためにも。

 僕はすぐに輝にメールを入れる。

 〝あの場所で待つ〟と……
 
 きっと輝もこのループ世界に囚われている住人だ。
 むしろ、そもそものループ世界の住人が輝なんだ。
 あの時、僕の意識はまだあった。
 だけど輝が死んだ瞬間に、この朝に戻されていた。
 そう考えれば、僕はこの世界のイレギュラーなんだと思う。
 
 僕はすぐにベッドから出ると、カーテンと窓を開ける。
 真夏の朝の静けさ……とは言えないかな。
 いつもの日常がそこに有った。
 だからこそ終わらせよう……

 着替えを済ませ僕はすぐに家を出た。
 母さんが何か言ってたけど、うまく聞き取れなかった。

 それから僕は〝あの場所〟……僕が殺された場所へ向かう。

 
チリン
 
 そこには黒いパーカーを羽織った人物の姿があった。
 鞄にぶら下げてある、お守りがその鈴の音の正体だったみたいだ。

「おはよう輝……」
「おはよう……悠一……」

 向かい合った二人に言葉は無かった。
 バツが悪そうな輝に、何て声をかけていいか分からない。
 輝もまた同じだと思う。

「なあ輝……なんでこんなことを……」
「言ったはずだよ悠一……俺はお前が好きなんだ……愛しているんだ……変だよな。男なのに……」

 そう言うと輝はうつむいてしまった。
 それ以上の言い訳をするつもりはないみたいだ。

「いつから?」
「ずっと……5年生かな……意識しだしたのは。だけどおかしいって自分でもわかってたんだ。だからずっと親友でいようって」

 僕がポツリと質問すると、振り絞るかのように答えを返してくれた。
 その目には涙を溜めて……

「ごめん輝……気持ちに気付いてあげられなくて……」
「違うんだ、悠一が悪いんじゃないんだ!!俺が!!俺がおかしいだけなんだ!!」

 輝の慟哭が僕の心に突き刺さる。
 それは鋭いナイフの様で、今までよりもより深く突き刺さってくる。
 どう伝えて良いのかもわからない。
 確かに僕は輝が大切だ。
 家族とどっちを取るかと言われると、迷うほどに僕の中に入ってきている。
 だけど……
 きっと輝の望む答えはかけてあげられない。
 だからきっと輝は壊れてしまったんだ。
 その答えを知っているから。
 理解してもらえないって思ってしまってるから。

「輝は悪くない……悪くないんだ……誰も悪くないんだ……」
「悠……一……悠一……悠一……」

 輝はその場に膝を付き泣きじゃくる。
 感情の堤防が決壊したかのように、とめどなくあふれる涙を止めることは出来なかった。

 どれくらい経ったか分からない。
 輝は涙を流しつくしたのか、少しすっきりとした表情を見せる。
 僕はそれを見て安心していた。
 これでこの物語は終了すると思ったから。

「ごめん悠一……これまで俺は君にひどいことを……ルリちゃんにも、君の家族にも……」
「いや、いいんだ。すべて許せるかって言ったらそうじゃないけど、僕も輝と同罪だ」

 僕も家族を殺している。
 だから輝を責める事なんてできるはずもない。

「そう言えば、ニュースでやっていた殺人事件ってあれも輝なのか?」
「え?俺はやってないぞ?」

 なるほど、犯人は別にいるってわけか。
 どうりで共通点を考えても分からないわけだ。

「動物とかも殺してない?」
「あぁ、もちろん殺してなんてない」

 うん、これで安心した。
 僕らはこれから新しい朝を迎える。
 僕らの20✕✕年8月5日はこれで終わりだ……

「残念……悠君。まだまだこの世界は終わらないよ?お休み悠君」
「え?」

 僕の意識はそこで途切れたのだった。
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