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輝編
第42話 ―輝編~出会いー
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あれは今でも覚えている。
あの出来事はいつまでたっても俺は忘れることはない。
俺が小学校3年生の8月5日の出来事。
俺は悠一に救われて、愛理に救われて、一馬や美冬に救われた。
俺は東京で生まれ育ち、小学三年生まではインターナショナルスクールに通っていた。
だからだかな、この容姿について特に何も感じていなかった。
俺は父親がウクライナ人、母親が日本人の多文化的ルーツを持つ。
俺が小学校三年生の夏の日。
両親は離婚した。
それまでは何の諍いのない、ごく普通の家庭だと思っていた。
だけど中身はまるで違っていて、俺の知らない所で母さんは涙を流していたみたいだ。
その後母さんの実家のあるこの街に引っ越してきた。
東京都内と比べると、俺の印象は長閑の一言だったのを今でも覚えている。
中心市街地はビルやオフィス街が立ち並んでいた。
それを囲むように住宅が立ち並び。
その外に広がる田園風景。
どれも新鮮で、どれも目新しく、俺は心躍らせる思い出いっぱいだった。
だけど現実はそんなに甘くは無かった。
田舎のコミュニティーをこの時の俺は知らなかった。
新しい学校に通うため、あいさつに来た時だった。
校舎に入った時から、何か嫌な視線を子供ながらに感じていた。
陰に隠れてみている、子供たちの視線に気が付き、僕はすぐに手を振り返した。
だけどその子たちは何か怖いものでも見たかのように、すぐに逃げ出してしまった。
俺はこの時これが何を意味しているのか、全く分からなかった。
週が明けて、月曜日。
この日から俺の地獄の日々が始まった。
金髪碧眼というだけでも、この街では異色だったんだろうな。
挨拶の段階でクラスメイトからの奇異な視線を浴びることになった。
その後も、移動授業の時に別のクラスの子供や、上級生下級生の視線が常に突き刺さってきた。
それが俺にとってどれだけ居心地の悪い事かなんて、わかる人は誰もいなかったんだと思う。
それから数日後……
俺の荷物が消える事件が発生する。
先生にそのことを相談すると、気のせいでは?とか、本当に持ってきていたのか?とか、全く取り合うそぶりもなかった。
むしろそのことがかえって行為をエスカレートさせる一因になるなんて思いもしなかった。
最初はどれも小さないたずらだった。
物を隠される。
ちょっとぶつかられる。
給食の量が少し減らされる。
きっと自分が皆と違うから、仕方がないんだと思っていた。
だけどそれを先生に聞くと、その行為のタガが外れてしまった。
物を捨てられ、燃やされる。
机自体が消えている。
暴力が増える。
給食が配られない。
さすがにこれはやり過ぎだろうと、先生に話をしたが、先生は取り合う気もないらしい。
そもそもの話、先生としても〝このクラスにいじめはない〟と言うのが本音だったみたいだ。
いくら俺が訴えたところで、何も変わりはしなかった。
ただ俺が違うルーツを持つ人間だってだけで、俺は人として否定された気がした。
そして運命のその日、8月5日。
俺たちの学校が学校行事の都合上、登校日となっていた。
登校した矢先、俺は数人の男子に囲まれる羽目になっていた。
理由は好きな女子から降られたこと。
どうやらその子は俺に恋心を持っていたようで、それを理由に断ったらしい。
だけどそれが本当かは分からない。
もしかすれば本命がいて、その男の子の名前を出せばこうなると思い、咄嗟に俺をスケープゴートにしたのかもしれないし。
「なあお前ら……さすがにこれはやり過ぎだろ?輝が何したっていうんだよ?」
「悠一……お前に関係ないだろ?」
俺は途方に暮れているとき、一人の男の子が俺の前に立ち上がってくれた。
だけどその子の足は少し震えていた。
怖さを押し殺して、俺の前に立ってくれた彼になんて感謝を伝えたらいいのか……
この時の俺には分からなかった。
「関係なくないだろう?だって僕たちクラスメイトになったんだから。そもそも何が面白いのさ?人を叩いて面白いの?人の物を壊して面白いの?」
「うっさいな、黙ってろよ!!」
いじめの先頭に立っていた少年が、悠一に殴り掛かった。
だけど悠一は避けようとはしなかった。
怖くて動けなかったんじゃない……動いたら俺が殴られるから。
そのまま殴られた悠一は、俺と一緒に床に転げることになった。
その相手も逆に、悠一が躱さなかったことに驚いていた。
本当に殴るつもりはなかったんだと思う。
クラスの空気が一気に変わってしまった。
悲鳴が上がり、他クラスの先生方も集まってきた。
さすがにこの状況はバツが悪いのか、担任もこの事態の収拾に努めようとしたけど、すでに遅かった。
その後俺と悠一は進路指導室に呼ばれ、進路指導の先生にいろいろ話を聞かれた。
俺は包み隠さずにすべてを伝えた。
自分の思いも、これまであったことも。
それを補完するように悠一もまた話をしてくれた。
そして最後に、直ぐ助けなくてごめんって謝られてしまった。
別に悠一が悪いわけじゃない。
悪いのはいじめたやつらだ。
だけど悠一は、自分が納得がいかないと、頭を下げてくれたんだ。
その後担任の先生は休職扱いとなり、自宅謹慎をしていた。
当該の男子児童も、その進路指導の先生にこってり絞られ、且つ親も呼び出しを喰らったみたいだ。
その他加担した生徒も指導を受ける事となり、この件は一件落着……かと思っていた。
その後俺への風当たりはなくなったとは言わないけど、どこか柔らかいものに変わっていった。
だからすべてが解決したんだと思っていた。
あの出来事はいつまでたっても俺は忘れることはない。
俺が小学校3年生の8月5日の出来事。
俺は悠一に救われて、愛理に救われて、一馬や美冬に救われた。
俺は東京で生まれ育ち、小学三年生まではインターナショナルスクールに通っていた。
だからだかな、この容姿について特に何も感じていなかった。
俺は父親がウクライナ人、母親が日本人の多文化的ルーツを持つ。
俺が小学校三年生の夏の日。
両親は離婚した。
それまでは何の諍いのない、ごく普通の家庭だと思っていた。
だけど中身はまるで違っていて、俺の知らない所で母さんは涙を流していたみたいだ。
その後母さんの実家のあるこの街に引っ越してきた。
東京都内と比べると、俺の印象は長閑の一言だったのを今でも覚えている。
中心市街地はビルやオフィス街が立ち並んでいた。
それを囲むように住宅が立ち並び。
その外に広がる田園風景。
どれも新鮮で、どれも目新しく、俺は心躍らせる思い出いっぱいだった。
だけど現実はそんなに甘くは無かった。
田舎のコミュニティーをこの時の俺は知らなかった。
新しい学校に通うため、あいさつに来た時だった。
校舎に入った時から、何か嫌な視線を子供ながらに感じていた。
陰に隠れてみている、子供たちの視線に気が付き、僕はすぐに手を振り返した。
だけどその子たちは何か怖いものでも見たかのように、すぐに逃げ出してしまった。
俺はこの時これが何を意味しているのか、全く分からなかった。
週が明けて、月曜日。
この日から俺の地獄の日々が始まった。
金髪碧眼というだけでも、この街では異色だったんだろうな。
挨拶の段階でクラスメイトからの奇異な視線を浴びることになった。
その後も、移動授業の時に別のクラスの子供や、上級生下級生の視線が常に突き刺さってきた。
それが俺にとってどれだけ居心地の悪い事かなんて、わかる人は誰もいなかったんだと思う。
それから数日後……
俺の荷物が消える事件が発生する。
先生にそのことを相談すると、気のせいでは?とか、本当に持ってきていたのか?とか、全く取り合うそぶりもなかった。
むしろそのことがかえって行為をエスカレートさせる一因になるなんて思いもしなかった。
最初はどれも小さないたずらだった。
物を隠される。
ちょっとぶつかられる。
給食の量が少し減らされる。
きっと自分が皆と違うから、仕方がないんだと思っていた。
だけどそれを先生に聞くと、その行為のタガが外れてしまった。
物を捨てられ、燃やされる。
机自体が消えている。
暴力が増える。
給食が配られない。
さすがにこれはやり過ぎだろうと、先生に話をしたが、先生は取り合う気もないらしい。
そもそもの話、先生としても〝このクラスにいじめはない〟と言うのが本音だったみたいだ。
いくら俺が訴えたところで、何も変わりはしなかった。
ただ俺が違うルーツを持つ人間だってだけで、俺は人として否定された気がした。
そして運命のその日、8月5日。
俺たちの学校が学校行事の都合上、登校日となっていた。
登校した矢先、俺は数人の男子に囲まれる羽目になっていた。
理由は好きな女子から降られたこと。
どうやらその子は俺に恋心を持っていたようで、それを理由に断ったらしい。
だけどそれが本当かは分からない。
もしかすれば本命がいて、その男の子の名前を出せばこうなると思い、咄嗟に俺をスケープゴートにしたのかもしれないし。
「なあお前ら……さすがにこれはやり過ぎだろ?輝が何したっていうんだよ?」
「悠一……お前に関係ないだろ?」
俺は途方に暮れているとき、一人の男の子が俺の前に立ち上がってくれた。
だけどその子の足は少し震えていた。
怖さを押し殺して、俺の前に立ってくれた彼になんて感謝を伝えたらいいのか……
この時の俺には分からなかった。
「関係なくないだろう?だって僕たちクラスメイトになったんだから。そもそも何が面白いのさ?人を叩いて面白いの?人の物を壊して面白いの?」
「うっさいな、黙ってろよ!!」
いじめの先頭に立っていた少年が、悠一に殴り掛かった。
だけど悠一は避けようとはしなかった。
怖くて動けなかったんじゃない……動いたら俺が殴られるから。
そのまま殴られた悠一は、俺と一緒に床に転げることになった。
その相手も逆に、悠一が躱さなかったことに驚いていた。
本当に殴るつもりはなかったんだと思う。
クラスの空気が一気に変わってしまった。
悲鳴が上がり、他クラスの先生方も集まってきた。
さすがにこの状況はバツが悪いのか、担任もこの事態の収拾に努めようとしたけど、すでに遅かった。
その後俺と悠一は進路指導室に呼ばれ、進路指導の先生にいろいろ話を聞かれた。
俺は包み隠さずにすべてを伝えた。
自分の思いも、これまであったことも。
それを補完するように悠一もまた話をしてくれた。
そして最後に、直ぐ助けなくてごめんって謝られてしまった。
別に悠一が悪いわけじゃない。
悪いのはいじめたやつらだ。
だけど悠一は、自分が納得がいかないと、頭を下げてくれたんだ。
その後担任の先生は休職扱いとなり、自宅謹慎をしていた。
当該の男子児童も、その進路指導の先生にこってり絞られ、且つ親も呼び出しを喰らったみたいだ。
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