絶望の鈴音(りんね)~夢幻の牢獄と僕と……~

華音 楓

文字の大きさ
46 / 51
輝編

第46話 ―輝編~誘惑―

しおりを挟む
ピピピッ
 ピピピッ
  ピピピピピピピピッ

「ここは……」
 
 俺は目覚ましを止めると、自分の部屋にいることに気が付いた。
 確か俺は愛理に……
 斬られたであろう首を触っても、傷跡一つなかった。

「夢……か?」

 そう思うと、なんとも言えない気持ちになってしまった。
 どこからが本当で、どこからが夢か分からない。
 だけど悠一に断られたのは事実だし。
 とりあえずメールをして、謝ることにした。

 そして俺はこの時愛理の意味が分かった……
『大丈夫だよ輝君……失敗したらやり直せばいいんだから』
 その意味を。
 スマホに映し出された日付……それは〝7月31日午前5時00分〟。

 俺は死んで時間が巻き戻されていたんだ。
 まさかと思い、俺はネットニュースを確認する。
 そこには前に確認した内容の記事がたくさん載っていた。
 だけど、昨日見たニュースについては一つも載っていない……
 本当に戻った……

 俺は半信半疑のまま食堂へ向かった。
 そこで流れているテレビを見て、本当に現実だと実感することになる。

 俺は震える手で愛理にメールを送ろうとしたけど、〝今の愛理〟が本当に〝前の愛理〟と同一人物なのか?それが気になって送れなかった。

 そんな時に運よくというか、狙っていたとでも言いたげに、愛理からのメールが届いた。

『おはよう輝君。ちゃんと起きられたかな?少し混乱していると思うけど、そこは間違いなく輝君の過去だよ。そして私の過去でもね。それからこの後輝君に渡したいものがあるから、施設の玄関に出てくれるかな?』

 本当に狙いすましたかのような内容に、俺は慌ててスマホを落としてしまう。
 その音が食堂に響き、皆の注目を浴びてしまう。
 俺はそのメールに従い、玄関に向かう。
 その足は次第に駆け足となり、心臓はバクバクと鼓動を速めていく。

 玄関に付くと、門の外に愛理の姿があった。
 そもそも愛理の目的が全く分からない。
 何がしたいのか。
 

「あ、輝君おはよう」

 そこにいたのはいつもの愛理だ。
 ポワポワとして、どこかおっちょこちょいなイメージの抜けない愛理。
 その印象の裏に隠れた本性を前回の当たりにしてしまった。

「おはよう……で、いったい何の用が……」

 俺が全てを言い終る前に、愛理はニンマリと薄ら笑みを見せる。
 その表情は今まで見た中で一番愛理とはかけ離れた、むしろ別人事見て見えるほどだ。
 俺は思わずたじろいでしまう。
 これを見たら誰がどう見たって、愛理だとな認識できないはずだ。

「逃げることないじゃない輝君……私たちは、秘密を共有した仲なんだよ?」
「仲って……俺はお前に殺されて……」

 また俺が言い終える前に、今度は指で口元を抑えられてしまう。
 いったい何がしたいんだ……

「これ見てほしいんだけど……何かわかる?」
「これは……ナイフ?」

 愛理が取り出したのは、一振りのナイフだった。
 それは革製の鞘に納められていた。
 愛理はそれをするりと抜き出すと、それは鈍鉄色にうっすらと光りを放っている。
 美しい……とは言い難く、それでいて、なぜか引き込まれる物がある。
 魔性とも魅了ともとれるが……それよりも俺にでもわかる、触ってはいけないというほどの禍々しさを纏っている。

「このナイフを輝君にあげるね。これは願いが叶うナイフなんだ。これでその人を殺すと、その人と何度でも人生をやり直せるの。素晴らしいナイフでしょ?」

 何を言っているのか分からない……
 だけど納得している自分がいた。
 なぜならば、すでに体験してしまっているから。

「どうしてこれを俺に……」
「必要でしょ?悠君と一緒にいるためには……ね?」

 愛理の笑みが、天使の微笑みに見える。
 本当は悪魔の誘いなのはわかってる。
 だけど俺はその誘惑に負けてしまったんだ。

 愛理はそれに満足したのか、嬉しそうに帰っていった。
 残されたのは、俺の手の中にある、この禍々しいナイフが一振りだけだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...