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愛理編
第49話 ―愛理編~恋心―
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それから2年後……小学校3年の時、私は運命の出会いをすることになる。
彼の名前は輝。
自己紹介ではウクライナ人の父親と、日本人の母親のハーフだって言ってた。
その見た目から女子の間でも話題となったのを覚えている。
違うクラスの私の耳にすら入ってくるほどだもの。
それに、こんな田舎であれほどの美少年に出会える確率なんて、計算しなくても分かりそうなものだから。
だからこそこの後起ったことは必然だったと思う……
男子生徒からのやっかみ。
それが、男子からの陰湿ないじめに変わっていく。
最初はちょっとからかってやろうから始まったのかな?
男子たちはだんだん面白くなってきたのか、その行為自体エスカレートしてきた。
それがなぜかクラスの……それから学年の総意みたいな空気になり、私への同調圧力へ変わってくる。
私はそんなのに加担するつもりはなかった。
だって輝君は何も悪くないもの。
だからと言って積極的に助けられるほど私は強くない。
だからできるのは静観する事。
それが罪だと分かっていても、手を貸すことができなかった。
「なあお前ら……さすがにこれはやり過ぎだろ?輝が何したっていうんだよ?」
「悠一……お前に関係ないだろ?」
この事で一気にクラスが静まり返っていた。
あまりの急な出来事に、たまたま友達を訊ねてきていた私を含め、傍観者を気取っていた皆はざわめきだす。
そしてその声の主は悠君だった。
私の幼馴染で別に正義感が特別強い男の子ってわけじゃないはず。
だけどその日の悠君は違っていた。
何かを護りたい……そんな空気を身に着けていたの。
私はこの時、悠君の姿にかっこいいって思ってしまったの。
だって、誰も何も言えない中で、ただ一人輝君の為に立ち上がれるんだよ?
それだけで、好きになってしまったの。
「関係なくないだろう?だって僕たちクラスメイトになったんだから。そもそも何が面白いのさ?人を叩いて面白いの?人の物を壊して面白いの?」
「うっさいな、黙ってろよ!!」
そしてついに怒ってはいけないことが怒ってしまう。
一人の男子生徒が、悠君に殴り掛かったの。
もちろんそんなに早いパンチじゃなかったからよけようと思えば避けれたと思う。
だけど悠君はそれをしなかったの。
悠君の後ろには輝君がいたから。
悠君が避けたら後ろにいる輝君が殴られることになる。
だからかな、悠君は躱すことなくそのパンチをもろに喰らっちゃったの。
そのせいもあって悠君は輝君ともども地面に強くたたきつけられる形になったったんだ。
その音が思いのほか大きく、生徒のざわめきも相まって他の教室の先生が私たちの教室にやってきた。
その後のゴタゴタを含めて輝君のいじめはなくなっていった。
ただそれは新たなターゲットを見つけたってだけで。
その空気が顕著にったのは4年生に上がった時だった。
4年生はクラスが持越しで、私は3年生同様に二人とは別クラス。
正直同じクラスがよかったなって思ってたりもする。
輝君を護ったことで悠君はクラスで浮いてしまっていた。
本来は物静かな男の子だけに、窓際で本を読みふけっている姿は、特段困っていそうには見えなかった。
それを輝君は良しとしなかったのかな?
自分にまとわりつくその他大勢の女子を押しのけて、悠君に向かっていったの。
そこで何をどんな話をしていたかは教えてもらってなかったけど、どうやら輝君が女子を軽く一蹴しちゃったみたい。
その子は顔を真っ赤にして教室から出ていった。
私は入れ違う様に教室に入ると、そこは微妙に気まずい雰囲気が漂っていた。
だけど悠君と輝君の場所だけが、なんだか華やいで見えたの。
そこにいるのは男同士。
親友が楽しくおしゃべりをしている。
それなのになぜかキラキラとして、きれいだなって思ったの。
その理由は自分でも分からなかったけど。
「あれ?なんか楽しそうだね悠君。」
「あ、愛理か……愛理のクラスは隣の隣だろ?もうすぐ休憩が終わるよ?」
私は思い切って二人に話かけてみる。
悠君は相変わらず、私の扱いは雑だったけど、輝君は少し違ってた。
なんだか顔が赤かったの。
一瞬目があったんだけど、この時はすぐに目をそらされちゃったんだよね。
それからかな、私と悠君と輝君、三人が一緒にいる時間が増えたのは。
それから少しして、一馬君と美冬ちゃんも一緒に遊ぶことが増えてきた。
二人ともいじめなんていらないって感じで、輝君と悠君を護ってくれている感じだった。
悠君もそれを感じていたみたいで、なんだか照れ臭そうにしているのが印象に残ってる。
3年生の時の勇敢な姿とは違う、はにかんだ笑顔がすごく大好き。
5年生の時、輝君が家庭のトラブルで養護施設に入ることになったけど、それ以外は特に何かあったわけじゃなく、仲良く5人で遊んでいたんだ。
そんな中、私の家族に変化が起こったの。
海外を飛び回っていたお父さんが、考古学の地質調査中に武装勢力に襲われて死んでしまった。
それが私が中学2年生の時。
最初これが夢じゃないのかって思ってた。
だけどこれは現実で、お父さんは帰ってこないんだって……
それからお母さんとお父さんの遺品の整理をした。
お母さんは遺品をしまうたびに涙を流していた。
私もそれにつられて、涙してしまう。
どれだけ涙を流しても、止まることはなく、いっそ枯れてくれればって何度も思った。
時間をかけて家の中の遺品整理が終わり、次に来たのは貸倉庫。
お父さんが家に入りきらなかった荷物をしまっていた場所。
私たちはその倉庫を開けると、中にはと狭しと荷物が置かれていた。
とは言え、散乱しているわけではなく、きれいに整頓されていた。
お父さんの几帳面さが出ているねって、お母さんと笑いあったっけ。
それから棚をいろいろみていると、倉庫の奥に一つのカギ付きの箱を見つけての。
最初これが何かわからなかった。
その時お母さんが、遺品の中に鍵があったことを思い出した。
念の為と持ってきていたカギを刺してみた。
カチャリ
するとカギは見事解錠された。
中を見ると、そこに入っていたのは、あの日お父さんがしまい込んだあのナイフだった。
私はこのナイフを遺品として残すことにした。
なぜかと聞かれても、その答えは持ち合わせていない。
だって、ただなんとなくだから。
彼の名前は輝。
自己紹介ではウクライナ人の父親と、日本人の母親のハーフだって言ってた。
その見た目から女子の間でも話題となったのを覚えている。
違うクラスの私の耳にすら入ってくるほどだもの。
それに、こんな田舎であれほどの美少年に出会える確率なんて、計算しなくても分かりそうなものだから。
だからこそこの後起ったことは必然だったと思う……
男子生徒からのやっかみ。
それが、男子からの陰湿ないじめに変わっていく。
最初はちょっとからかってやろうから始まったのかな?
男子たちはだんだん面白くなってきたのか、その行為自体エスカレートしてきた。
それがなぜかクラスの……それから学年の総意みたいな空気になり、私への同調圧力へ変わってくる。
私はそんなのに加担するつもりはなかった。
だって輝君は何も悪くないもの。
だからと言って積極的に助けられるほど私は強くない。
だからできるのは静観する事。
それが罪だと分かっていても、手を貸すことができなかった。
「なあお前ら……さすがにこれはやり過ぎだろ?輝が何したっていうんだよ?」
「悠一……お前に関係ないだろ?」
この事で一気にクラスが静まり返っていた。
あまりの急な出来事に、たまたま友達を訊ねてきていた私を含め、傍観者を気取っていた皆はざわめきだす。
そしてその声の主は悠君だった。
私の幼馴染で別に正義感が特別強い男の子ってわけじゃないはず。
だけどその日の悠君は違っていた。
何かを護りたい……そんな空気を身に着けていたの。
私はこの時、悠君の姿にかっこいいって思ってしまったの。
だって、誰も何も言えない中で、ただ一人輝君の為に立ち上がれるんだよ?
それだけで、好きになってしまったの。
「関係なくないだろう?だって僕たちクラスメイトになったんだから。そもそも何が面白いのさ?人を叩いて面白いの?人の物を壊して面白いの?」
「うっさいな、黙ってろよ!!」
そしてついに怒ってはいけないことが怒ってしまう。
一人の男子生徒が、悠君に殴り掛かったの。
もちろんそんなに早いパンチじゃなかったからよけようと思えば避けれたと思う。
だけど悠君はそれをしなかったの。
悠君の後ろには輝君がいたから。
悠君が避けたら後ろにいる輝君が殴られることになる。
だからかな、悠君は躱すことなくそのパンチをもろに喰らっちゃったの。
そのせいもあって悠君は輝君ともども地面に強くたたきつけられる形になったったんだ。
その音が思いのほか大きく、生徒のざわめきも相まって他の教室の先生が私たちの教室にやってきた。
その後のゴタゴタを含めて輝君のいじめはなくなっていった。
ただそれは新たなターゲットを見つけたってだけで。
その空気が顕著にったのは4年生に上がった時だった。
4年生はクラスが持越しで、私は3年生同様に二人とは別クラス。
正直同じクラスがよかったなって思ってたりもする。
輝君を護ったことで悠君はクラスで浮いてしまっていた。
本来は物静かな男の子だけに、窓際で本を読みふけっている姿は、特段困っていそうには見えなかった。
それを輝君は良しとしなかったのかな?
自分にまとわりつくその他大勢の女子を押しのけて、悠君に向かっていったの。
そこで何をどんな話をしていたかは教えてもらってなかったけど、どうやら輝君が女子を軽く一蹴しちゃったみたい。
その子は顔を真っ赤にして教室から出ていった。
私は入れ違う様に教室に入ると、そこは微妙に気まずい雰囲気が漂っていた。
だけど悠君と輝君の場所だけが、なんだか華やいで見えたの。
そこにいるのは男同士。
親友が楽しくおしゃべりをしている。
それなのになぜかキラキラとして、きれいだなって思ったの。
その理由は自分でも分からなかったけど。
「あれ?なんか楽しそうだね悠君。」
「あ、愛理か……愛理のクラスは隣の隣だろ?もうすぐ休憩が終わるよ?」
私は思い切って二人に話かけてみる。
悠君は相変わらず、私の扱いは雑だったけど、輝君は少し違ってた。
なんだか顔が赤かったの。
一瞬目があったんだけど、この時はすぐに目をそらされちゃったんだよね。
それからかな、私と悠君と輝君、三人が一緒にいる時間が増えたのは。
それから少しして、一馬君と美冬ちゃんも一緒に遊ぶことが増えてきた。
二人ともいじめなんていらないって感じで、輝君と悠君を護ってくれている感じだった。
悠君もそれを感じていたみたいで、なんだか照れ臭そうにしているのが印象に残ってる。
3年生の時の勇敢な姿とは違う、はにかんだ笑顔がすごく大好き。
5年生の時、輝君が家庭のトラブルで養護施設に入ることになったけど、それ以外は特に何かあったわけじゃなく、仲良く5人で遊んでいたんだ。
そんな中、私の家族に変化が起こったの。
海外を飛び回っていたお父さんが、考古学の地質調査中に武装勢力に襲われて死んでしまった。
それが私が中学2年生の時。
最初これが夢じゃないのかって思ってた。
だけどこれは現実で、お父さんは帰ってこないんだって……
それからお母さんとお父さんの遺品の整理をした。
お母さんは遺品をしまうたびに涙を流していた。
私もそれにつられて、涙してしまう。
どれだけ涙を流しても、止まることはなく、いっそ枯れてくれればって何度も思った。
時間をかけて家の中の遺品整理が終わり、次に来たのは貸倉庫。
お父さんが家に入りきらなかった荷物をしまっていた場所。
私たちはその倉庫を開けると、中にはと狭しと荷物が置かれていた。
とは言え、散乱しているわけではなく、きれいに整頓されていた。
お父さんの几帳面さが出ているねって、お母さんと笑いあったっけ。
それから棚をいろいろみていると、倉庫の奥に一つのカギ付きの箱を見つけての。
最初これが何かわからなかった。
その時お母さんが、遺品の中に鍵があったことを思い出した。
念の為と持ってきていたカギを刺してみた。
カチャリ
するとカギは見事解錠された。
中を見ると、そこに入っていたのは、あの日お父さんがしまい込んだあのナイフだった。
私はこのナイフを遺品として残すことにした。
なぜかと聞かれても、その答えは持ち合わせていない。
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