元落ちこぼれ魔法少女、異世界で本領発揮します

もわゆぬ

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 ゴゴゴゴゴと、実際は出ていないのに背中に炎が見える。

 イリスは仁王立ち(浮)の状態で私を見下ろしている。

 私?私は勿論、正座だ。



『あ~~~や~~~め~~~。』


「はい、すみません。」


『すみませんで済んだら魔法少女は要らないわよ!』


 あの後トントン拍子にセネシオから魔力循環を教えて貰える事になり、セネシオの家であるカスクウェル家の別邸に戻ってきた。
 セネシオ自身は物凄く嫌そうだったが、王のジョセフがノリノリであった為に押し切られてしまっていた。
 2日後にはセネシオの弟子として、彼が所属する魔術師団に顔を出す事が決まっている。

 何の相談もせず、あの場で決めて自ら進んでハリケーンの中に飛び込んで行こうとする様な私に、イリスはカンカンだ。


『分かってる?あいつらは貴女に民を騙せと言っているのよ?
皆の前で変身して、瘴気を浄化する"フリ"をさせようとしてるの。
嘘をつき続けなければいけない。たとえ、良い事だとしてもバレたら民からの信頼を失い、貴女は最悪の場合……糾弾されるわ。それでもやるの?』

 私を想うイリスの言葉がズシリと重く響いた。
少し息を吸って、ゆっくり吐き、私はイリスを見つめた。

「うん、分かってる。それでも、私やりたいの。」


『どうして?』

「私、今まで誰の役にも立てなかった。役に立つどころか足を引っ張っていた時だってあったわ。
誰かを守りたいと言葉で言っていても、生きる為に魔法少女をしているだけ、という気持ちが何処かにあったのも事実だから。」

『それの何が悪いの!?菖蒲が頑張ってきた事は私が一番知ってるわよ!怪人の足止めしか出来なくても、どんなにボロボロになっても、人間を守っていた事、知ってるんだから……!
わ、わたし、はっ…、貴女のお供、でっ!ずっと、見てきたん、だからぁー……!!』


 わんわんと、イリスが泣き出してしまう。
そんなイリスを、私も自分から溢れるそれを止められず抱き締める。 

「…ありがとう、イリス。私の、相棒。
後、少しだけ力を貸して欲しいの。私、やっと誰かの役に立てるのよ。」

『うぅ~…バカ!バカ菖蒲!!』

「うん、うん。最後までバカでいるわ。だから、イリスが居てくれなきゃダメみたい。」




 魔法少女には掟がある。



 魔法少女は18歳を過ぎるとお供妖精との契約を解除しなければならない。という厳しい掟。

 徐々に魔力が無くなりお供妖精へ魔力を供給出来ず引退をするか、19歳の誕生日にお供妖精との契約を解除するか。
 魔法少女を引退する時はその二択なのである。
19歳以降魔法を使うと、身体が生命力から魔力を作ろうとするらしく、最悪死に至るケースも有るので厳しく定められていたのだ。

 基本的には19歳まで続けられる魔法少女は殆ど居ない。皆、若いうちに魔力が無くなってしまう事が殆どである。
 私がズルズルと魔法少女を続けてしまったのは、魔力だけは何故か減っていく事が無かったから。
 こちらに来てどういう訳か視覚化出来てしまったので、あれだけ有ればまだ出来そうだなという気になってしまう。

 まだ、あと少しイリスと魔法少女が出来る事が何より嬉しい。


 お互い疲れるまで泣いて、顔を見合った。
 すると、どちらも酷い顔をしていてどちらともなく笑い合う。



『珍しいわね、菖蒲が笑ってる。』

「本当に。それに、久しぶりにこんなに泣いたわ。魔法少女が出来て嬉しい気持ちなんて忘れてた。」

『…そうね。』


 あちらでは感情を出している暇なんて無かった。

 私には両親が居ない。気付いた時にはもう居らず、施設で育った。
 幸い魔力がある事が判明し、イリスに見付けて貰ってからは魔法少女として働く事で生活をしていた。
魔法少女に慣れた時はそれは、それは嬉しかった。
何でもなかった自分が、特別になれた瞬間だったのだから。
 こんな自分でも誰かを守る為に戦えると。

 魔力量がとても多かった私は過度に期待をされ、一躍有名人となった。

 期待に応えようと沢山努力をした。

 身体を鍛え、徹底的な食事管理をして、自分の体調を気遣った。

 だけど、魔法は私を選んではくれなかった。

 落胆する声、心無い誹謗中傷、嘲笑う人々。
石を投げられた事もあった。

 それでも、選んでくれたイリスを馬鹿にされたくなくて踏ん張っていた。
 最初は励ましてくれていた仲間達も次第に離れていった。

 息を潜めて、生活がギリギリ出来る範囲で魔法少女を続けた。

 何年かすると、私を覚えている人は少なくなった。
そうなってからは少し楽だったけれど、助けに来てくれたと嬉んだ市民の顔がどんどん歪んでいくのを見るのは何度経験しても辛かった。


 そんな中でも、イリスだけはずっと私の傍に居てくれた。
 その日が来たら、私はイリスとちゃんとさよなら出来るんだろうか。
 後、少しだけのこの時間を大切にしなければ。


『菖蒲は笑っていた方がいいわ。』

「そう、かな?」

『ええ。貴女顔は良いんだから、笑っときなさい。でないと、私が居なくなってから生きていけないわよ。』

「ふふ、顔が良いだなんてイリスも冗談を言うのね。」

『冗談じゃ無いんだけど…。まぁ、いいわ。』


 呆れた様にイリスは言うが、顔が良いなんて言われた事が無いのでイリスが私への特大フィルターがかかっているとしか思えない。
 イリスは私に甘いから。



 そろそろ寝ようかと、ボフンとベッドに二人で飛び込んだ。
 すると、疲れていたのだろう。強烈な睡魔が私を襲い、そのまま夢の中へと旅立っていった。


『…おやすみ、菖蒲』
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