元落ちこぼれ魔法少女、異世界で本領発揮します

もわゆぬ

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6 ※セネシオ視点

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 面倒な事になった。


 突如、我が領土で現れた魔力反応。
膨大な魔力の光が柱となって出現した為、大急ぎで西の森に確認をしに行った。
 眩しくて見えなかったが、それが私を見た瞬間に光が止み、一人の傷だらけの少女と紫色の猫のぬいぐるみがバタリと音を立てて倒れた。
 後々聞くと彼女は、少女というには大人だったのだが。
 
 サラサラと真っ直ぐ伸びる黒髪はこちらでは見ない色で、傷や汚れはあるがこんな森の中で居るような格好では無いことに違和感があった。

「鑑定」

 何者か分からないので、とりあえず鑑定を行う。
彼女の上に文字が浮かび上がり、私にしか見えないそれらを読み上げていく。

「なんだ、これは…?」

 そこには意味のわからない数字の魔力量と、知らない文字の名前、職業には【魔法少女】という謎の職業。そして【神の落としもの】と書かれていた。魔力量のゼロの数が多すぎる。
だが、それよりも

「実在したのか…。」

 資料では見た事があった。魔物が大量発生するスタンピードが起こったとされる数百年前に異世界から【神の落としもの】と呼ばれる人物が突然現れ、世界を救ったというもの。
 また、昔からある絵本では戦争を行っていたこの世界に神が嘆き悲しんだ際涙が一粒落ちた。その地に光り輝く娘が聖なる力を持って現れ戦いを収めると、国同士が一つになり平和がもたらされた。とあった。
 研究者によれば、それも【神の落としもの】であったのでは無いかと言われている。

 そんな伝記や物語の世界の人間が目の前にいるのだ。

 即座に王に早馬を飛ばし、逃げ出さない様に魔力を封じた。
 まさか三日も待つなんて思わなかったけれど。

 たまたま様子を見にきている時に目を覚まし、そのまま王に謁見を求め王城に向かった。

 そこで見たモノは驚きの連続だった。

 【変身】と呼ばれる、妖精の力を借り、妖精を身に纏う事で得られる不思議なコスチュームと呼ばれる服。
 髪は色を変え美しく伸び、菖蒲色に変化した瞳、唇にも薄らと色が付き、その姿はまるで天上界から我々の元へ遣わされたかのように神秘的であった。

 なので、王の気持ちも分かる。

 だが、どうして私が魔力循環を教える事になってしまったのか。
 しかも結局この家で面倒を見る羽目になっていた。
父と母には報告してるとはいえ、挨拶はしなければならないだろうな…。あの父と母がなんと言うか…。
 同僚達の事も考えなければならないとなると、頭が痛くなってきた。


 別邸の自室で父と母に送る文章を考えていると、何者かの気配がしたのでバッと振り向く。


『こんばんは。』

 
そこにはあのもっちりとした猫…、いやイリスというお供妖精がいた。

「何か御用ですか。」

 笑顔を作る元気も無いのでとりあえず用を聞く。

『私が何かするかもしれないのに、危機感が無いのね。』

「危険性が有りませんから。」

『ホント、失礼しちゃうわ。まぁ、私達は人間には何も出来ないからその通りなんだけどね。』


 そう言ってふわりとこちらに飛んできた。


『貴方に言っておきたいことがあるの。』

「…なんでしょう?」

『あの子は表情は乏しいけれど、優しい子よ。
あちらでは魔力が上手く使えなくて本当に苦労をしたの。…それは魔法を教えていた私のせいでもあるんだけど。
だから、これ以上傷付けないであげて欲しい。』

「………。私ではアヤメ嬢の気持ちは分からないので約束は出来ないですね。
ですが、意識はしておきましょう。」

『あら、素直なのね。』

「こちらからすれば勝手に来たのですが、あなた方からしても望んでこちらに来た訳では無いでしょうし。
あくまで"協力"という形で雇われると思って頂ければ。それに、そこまで非情では有りませんよ。」

『ええ、ありがとう。』

 彼女達の世界での妖精は私達に力を貸し、その力を持って属性のある魔法が使えるという。
 この目で見た事は無いが、イリスのような見た目の妖精が居る等聞いた事がない。
故に、王も私もぬいぐるみだと思っていたのだが、こうして羽根も無いのに動き、飛び回る姿を見ると彼女は妖精なのだと思わされる。

「何故、貴女がアヤメ嬢に魔法を教えていたのですか?」

『そういうものだったの。私達お供妖精は、そうやって言われてきたのよ。だけど…、魔力循環なんて言葉さえ知らないわ…。
私達は使えるようになった魔法を魔法少女に教えるだけ…。だから、根本的に間違っていたのかもしれない。』

「魔力を操作する為の勉学を魔法少女は全くしていないと?」

『えぇ。こちらの世界では勉強をするのね…。』

 「…なんと危険な事を。」

 魔力循環が出来なければ、そりゃあ魔法を使う事も難しかっただろう。何故他の魔法少女が魔法を使えていたのか謎なくらいだ。
 そんな状態で下手に魔法を使えば、魔力が暴走して命の危険さえある。そうでなくても魔力回路がぐちゃぐちゃになってしまう。

 彼女はそれをこちらに来て気付いたのだろう。
 私の視線に気付いて悲しそうに笑った。


『あの子には人並みに幸せになって欲しいの。あんなに光ってちゃ腕輪を外す事だって出来ないでしょ。』

「そうですね。」

『魔法少女の魔法は多分貴方達のものとは異なるわ。だから、魔法を教わる事は出来ない。
でも、魔力循環なら同じじゃないかと思うのよね。』

「なるほど。理解しました。」


『……菖蒲を宜しくね。』

 そう言うと、彼女はまたふわりと飛んで菖蒲の所へと戻っていった。


「………面倒だ。」


 一度メガネを置き、眉間を揉む。
そして、書きかけの手紙を進める事にした。

 これからの事は明日考えよう…。

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