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しおりを挟む「こ、此方を…ですか?」
何か、凄い事を言われた気がする。
これは護身用で使い切りの物なので何個かストックは有る。
だが、まさか王族の方に『欲しい』と言われるとは思っていなかった。
彼等は魔力量の多い者が多数であり、自らの事は大抵自らで守れる程の実力者ばかりだからだ。
「あぁ、是非。私には妃が居てね、彼女に持たせてやりたいんだ」
「成程、奥様に…」
チラッと横に居るエル様を見ると頷いてくれる。
「護身用として、とても良い物だった。これは献上しても問題無い。私達が証明出来る」
「ははは、その通りだ。今、体験した所だからね。譲って頂けるかな?」
「こんな物で宜しければ、お包み致しますっ」
「ありがとう。勿論、代金はお支払いしよう」
「えっ!そんな、代金等必要御座いません!」
「いや、これはちゃんとした対価を払うべきだ。これからの為にもね」
「では、私が代金の設定を致しますので、また後日ご連絡とお届けをさせて下さい」
「うん、エルフィングが価格設定を考えるなら安心だね。それでお願いするよ」
アワアワとしていたら大人二人でサクッと決まってしまった。
まさか、自分の発明に代金が発生する日が来るとは…。エル様と婚約してから良い事づくめだ。
「さぁ、そろそろお暇しようかな。いつまでも主役が来ないんじゃパーティーも終わらないしね」
「お気を付けてお帰り下さい。馬車は付けて有りますので」
「ご苦労。またね、ロレッタ嬢」
「またお会い出来ます事を楽しみにしております」
ひらひらと手を振りながら、殿下はエル様が付けたお供を連れてお帰りになった。
ハプニングは有ったが、何とか切り抜けたようでドッと疲れがやって来る。
そこへ、ポンッと肩に温かい手が置かれた。
「お疲れ様。無理をさせた」
「いえ、エル様もお疲れ様です」
「ありがとう。はぁ…、早くパーティーも終わらせよう」
「そうですね、今日が終わったらゆっくりお休み出来たら良いのですが…」
「明日は休みだ、もぎ取って来た」
「良かった、では明日はゆっくりしましょうね」
「あぁ、そうしよう」
明日の休みを固く誓い合うと、ホールへ戻りパーティーのラストスパートだ。
あんなに練習した二人でのダンスは疲れていたからか、ほぼ無心で踊った。余り記憶が無い。
後から少し勿体なかったかな、と思った。
ギャラリーの目は純愛宣言をした後だからか、何だか生暖かかったのでそれはそれで早く雲隠れしたいと願うばかりだった。
やはり社交界は向いていない。
*****
「はぁ……、何だかとても疲れてしまったわ…」
バタバタとした今日がもうすぐ終わりを迎える。
パーティーが恙無く終了し、エル様と再度明日の休みを固く誓い合い、寝支度を終えてベッドへ潜り込む。
「皆様にとっては、私達は愛し合う夫婦になってしまったのね…」
ボソリ、と自分しか居ないのに言葉に出してしまう。
身体はとても疲れているし、一人になると複雑な気持ちがグルグルと渦巻く。
終わりの無い黒い靄に支配されそうで、両手で自分の両頬をペシンと叩いた。
「よし、悩むの終わり。
今日は私の発明品が初めてお金になった日よ。とても記念すべき日なのに、暗くなっては駄目よね 」
沢山有る枕の一つをギュッと抱き締める。
「エル様のお顔……とっても近かったな…」
殿下を部屋に押し込め、戻って来た時のエル様は演技で私を腕の中に収め、まるで愛し合うかの二人という距離で仮初の愛を囁いた。
とても甘く、少し虚しい物だ。
例え愛の無い結婚だとしても、結婚してしまえば
もっと、あんな事やこんな事もするかもしれないのに。
「私の想い、溢れて仕舞わないかしら…」
それは決して、知られてはいけない。
優しいあの方はきっと困ってしまうもの。
「だからこそ……、貴方の為に、便利な物を……」
作りたい、と瞼を閉じて静かに願う。
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