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第一話 退学処分
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「君は退学処分とする」
いつものような退屈な朝のホームルームの時間に担任が話そうとしたところ、突然扉を荒く開けるとそいつは俺の前まで来てそう言った。
そいつはその言葉を言ったことに満足したのか、ぎとぎとした顔をにやりとさせながら俺を見ていた。
それと同時に『ついに来たか』、そんな言葉が脳を支配している。
一体なぜこんなことになったのか、話は簡単だ。
ダンジョンを攻略するための学校に主席として中等部から入学した俺は、持ち前の剣技で入学当初から期待されていた。
ダンジョンに潜る際に、学年一優秀なパーティーの一員だったし、校長も月一で俺の状況を確認するくらいには。
だが、俺は高等部1年、つまり16歳の今になっても魔法を習得できていない。
そのことに、周りの生徒も先生も、親しくしてた友達も、この学校にいる全ての人間が俺を急に見下し始めたのは入学から半年がたってからのことだ。
皆が俺を見下すのは当然だ。
ダンジョンに潜ることは高尚なことで、ダンジョンを囲んで東西南北に4つの学院しかない。
そんな学院の生徒が魔法を覚えられないなんてことは、俺も聞いたことがない。
それどころか、普通の町人でさえ火を起こしたりするちょっとした魔法を使えるのだ。
俺はこの学院にいられる資格はない。
そんなことはわかっていたはずだが、いざそう口に出されると、自分が不出来であることを実感する。
「まぁ!! 当然だよな」
「そうね、当然よ当然」
追い打ちをかけるように、学年一最強のパーティー所属のガリスとソンネは席を立ち、俺の前でにやりとした表情をしていた。
「そんな! 可哀想じゃないの! 未だに選抜クラスに入れられているのよ? 慈悲はないの?」
突然神のように優しい声が聞こえてくると思ったか。
全く違う。皮肉めいた口調でそういう女はこれまた最強のパーティ、ルクラン所属の女サラ。
「相変わらずサラは性格わりー。でも、いつまでも最近まで校長の慈悲で俺たちのパーティーにいて、しかもこの選抜クラスにいられるなんてありえねーよな」
男口調のように話すショートカットで日焼けした肌が特徴的な、ニーナもまたルクラン所属。
そう、俺はつい最近までルクランに所属していた。
それは校長が『アラスくんはいずれ才能を開花するだろう』という言葉をもって、働きかけた結果だ。
だから俺は校長だけはこの学院で信用できる人物だと思っていた。
だが、今目の前にいる校長の表情は信用できる表情とは全く逆の、見下した表情をしていた。
俺をこの学院に推薦したのは校長だ。
自分の失態を隠すために今まで優しくしていたということだろう。
でも、いつまで経っても才能が開花しない俺をついに鬱陶しく思ったという事だろう。
「なに黙っているのよ!?」
ソンネは腕組をしながら、俺をきつく睨みつけていた。
俺はその悪意の篭った目を見ても、反論や怒りを覚える事なんてなかった。
だって、俺が不出来なのは事実だったからだ。
「......」
俺は何も言えないまま俯くしかなかった。
「まぁ、皆さん。アラスくんも精一杯頑張ったのですよ。もうこれくらいでいいじゃないですか。でも、最後にお別れの挨拶くらいはしましょう」
静まり返った教室にどすのきいた校長の声が聞こえてくる。
「じゃあ、僕から」
そう言ったのはガリスだ。
「今まで君には苦労したよ。一人かけた状態でダンジョン攻略で常にトップでい続けることが如何に大変か分かるか? あと、俺はお前が嫌いだった。ソンネやニーナ、サラにも好かれて。さらに言えば最初は学年中の人気者でさ。だから、魔法を覚えられないゴミだと知ったときはどれほど嬉しかったか」
ガリスはニヤニヤした表情で俺を上から見下していた。
「ああ、もう一つ言い忘れてたよ。ソンネは俺のことが好きだってよ!! 」
「知っている」
そう、ガリスがつい最近ソンネと付き合っていることなんて知っている。
ダンジョン攻略中にいちゃついていたり、互いの部屋に行っているのを目撃しているというのにこの男は今さら何を言い出すのかと思う。
「言いたいことは、お前が好きだったソンネは俺に鞍替えしたってことさ。あー快感だぜ!!」
そう言うガリスの言葉に俺は今にも殴りかかりたい衝動にかられた。
ソンネは今の今でも実は俺の事を好きだと思っていたかった。
「ちょっと!! 恥ずかしいこと言わないでよ!! あたしにとってもあれは黒歴史なんだから。魔法さえ覚えられないゴミのことを好きだなんてね。どうかしてたわ」
ソンネは微笑んだのちに、無表情になり、
「ま! 私が言いたいことはそれだけよ。特にいう事はないわ。新しいところでも頑張って」
そう言うとソンネは教室から去っていた。
知りたくもない真実を知ってしまって、自然と目から涙がでてくる。
ソンネはやはり、俺を好きではなかったようだ。
「そんな表情をしていたら、何も言えないじゃないですか...... でもね、事実君は弱かったの。それだけよ、君はこのクラスに相応しかったわ、本当にね」
サラはそう言うと、自分の席に戻っている。
ああ、分かっている。自分が出来損ないだということは。
「まーなんつーか。皆言いたいこと言っちまったからな。特に言いたいことはねーけどよ。ダンジョンでの荷物持ちには感謝したぜ! あと、パーティ館の食事や、掃除係にもな。まあ、それも雑魚には当然の仕事だったけどな」
ニーナは大笑いをしながら席に戻っていた。
今までずっと優しかったソンネ。
俺を嫌いだって言うことが伝わるくらいに剣呑だったガリス。
今の今までずっと俺を皮肉っていたサラ。
スパっと俺に暴言を言ってきたニーナ。
そんな最低な4人でも俺は情というものを持っていた。
だが、今となっては憎しみしかない。
いくら無能とはいえ長い間付き合ってきた仲間だ、こんな仕打ちを受けなくてもいいじゃないかとも思う。
衝動的にガリスがニーナやサラとも関係を持っているということをばらしたくもなっている。
そんなことを考えているうちにも、クラスの皆は俺の事を散々罵倒している。
「この雑魚ともおさらばか!」
「今までありがとうな無能!! さっさと出ていけ無能」
俺は我慢の限界を超えていた。
自分が無能だということは自分が一番よく知っている。
だから今まで罵倒されていても無視をしていた。
でも、クラス中から罵倒されると俺の感情ゲージも振り切れていた。
俺はこいつらを見返したい、いつか、必ずどうにかして見返したい。
そう、憎しみしかなかった。
「必ず、お前たちより強くなってやる」
「やってみろよ。いつでも相手になってやるよ。なあ、皆」
ガリスは即座にそう言うと、クラス中の皆も笑いながら頷いていた。
「ま、これまでのように、散々罵倒しながら戦ってやるよ」
クラスの中の一人がそう言っている。
「まぁ、アラスくんがそう言うのなら、いつでも我々のところに来なさい。相手になってあげますよ」
校長は脂ぎった顔をにやつかせると、
「さあ、もうこの学院の生徒じゃないでしょう。出て行ってください無能」
最後まで俺を笑っていたクラスの生徒に見送られ、俺は学院の外に出た。
いつものような退屈な朝のホームルームの時間に担任が話そうとしたところ、突然扉を荒く開けるとそいつは俺の前まで来てそう言った。
そいつはその言葉を言ったことに満足したのか、ぎとぎとした顔をにやりとさせながら俺を見ていた。
それと同時に『ついに来たか』、そんな言葉が脳を支配している。
一体なぜこんなことになったのか、話は簡単だ。
ダンジョンを攻略するための学校に主席として中等部から入学した俺は、持ち前の剣技で入学当初から期待されていた。
ダンジョンに潜る際に、学年一優秀なパーティーの一員だったし、校長も月一で俺の状況を確認するくらいには。
だが、俺は高等部1年、つまり16歳の今になっても魔法を習得できていない。
そのことに、周りの生徒も先生も、親しくしてた友達も、この学校にいる全ての人間が俺を急に見下し始めたのは入学から半年がたってからのことだ。
皆が俺を見下すのは当然だ。
ダンジョンに潜ることは高尚なことで、ダンジョンを囲んで東西南北に4つの学院しかない。
そんな学院の生徒が魔法を覚えられないなんてことは、俺も聞いたことがない。
それどころか、普通の町人でさえ火を起こしたりするちょっとした魔法を使えるのだ。
俺はこの学院にいられる資格はない。
そんなことはわかっていたはずだが、いざそう口に出されると、自分が不出来であることを実感する。
「まぁ!! 当然だよな」
「そうね、当然よ当然」
追い打ちをかけるように、学年一最強のパーティー所属のガリスとソンネは席を立ち、俺の前でにやりとした表情をしていた。
「そんな! 可哀想じゃないの! 未だに選抜クラスに入れられているのよ? 慈悲はないの?」
突然神のように優しい声が聞こえてくると思ったか。
全く違う。皮肉めいた口調でそういう女はこれまた最強のパーティ、ルクラン所属の女サラ。
「相変わらずサラは性格わりー。でも、いつまでも最近まで校長の慈悲で俺たちのパーティーにいて、しかもこの選抜クラスにいられるなんてありえねーよな」
男口調のように話すショートカットで日焼けした肌が特徴的な、ニーナもまたルクラン所属。
そう、俺はつい最近までルクランに所属していた。
それは校長が『アラスくんはいずれ才能を開花するだろう』という言葉をもって、働きかけた結果だ。
だから俺は校長だけはこの学院で信用できる人物だと思っていた。
だが、今目の前にいる校長の表情は信用できる表情とは全く逆の、見下した表情をしていた。
俺をこの学院に推薦したのは校長だ。
自分の失態を隠すために今まで優しくしていたということだろう。
でも、いつまで経っても才能が開花しない俺をついに鬱陶しく思ったという事だろう。
「なに黙っているのよ!?」
ソンネは腕組をしながら、俺をきつく睨みつけていた。
俺はその悪意の篭った目を見ても、反論や怒りを覚える事なんてなかった。
だって、俺が不出来なのは事実だったからだ。
「......」
俺は何も言えないまま俯くしかなかった。
「まぁ、皆さん。アラスくんも精一杯頑張ったのですよ。もうこれくらいでいいじゃないですか。でも、最後にお別れの挨拶くらいはしましょう」
静まり返った教室にどすのきいた校長の声が聞こえてくる。
「じゃあ、僕から」
そう言ったのはガリスだ。
「今まで君には苦労したよ。一人かけた状態でダンジョン攻略で常にトップでい続けることが如何に大変か分かるか? あと、俺はお前が嫌いだった。ソンネやニーナ、サラにも好かれて。さらに言えば最初は学年中の人気者でさ。だから、魔法を覚えられないゴミだと知ったときはどれほど嬉しかったか」
ガリスはニヤニヤした表情で俺を上から見下していた。
「ああ、もう一つ言い忘れてたよ。ソンネは俺のことが好きだってよ!! 」
「知っている」
そう、ガリスがつい最近ソンネと付き合っていることなんて知っている。
ダンジョン攻略中にいちゃついていたり、互いの部屋に行っているのを目撃しているというのにこの男は今さら何を言い出すのかと思う。
「言いたいことは、お前が好きだったソンネは俺に鞍替えしたってことさ。あー快感だぜ!!」
そう言うガリスの言葉に俺は今にも殴りかかりたい衝動にかられた。
ソンネは今の今でも実は俺の事を好きだと思っていたかった。
「ちょっと!! 恥ずかしいこと言わないでよ!! あたしにとってもあれは黒歴史なんだから。魔法さえ覚えられないゴミのことを好きだなんてね。どうかしてたわ」
ソンネは微笑んだのちに、無表情になり、
「ま! 私が言いたいことはそれだけよ。特にいう事はないわ。新しいところでも頑張って」
そう言うとソンネは教室から去っていた。
知りたくもない真実を知ってしまって、自然と目から涙がでてくる。
ソンネはやはり、俺を好きではなかったようだ。
「そんな表情をしていたら、何も言えないじゃないですか...... でもね、事実君は弱かったの。それだけよ、君はこのクラスに相応しかったわ、本当にね」
サラはそう言うと、自分の席に戻っている。
ああ、分かっている。自分が出来損ないだということは。
「まーなんつーか。皆言いたいこと言っちまったからな。特に言いたいことはねーけどよ。ダンジョンでの荷物持ちには感謝したぜ! あと、パーティ館の食事や、掃除係にもな。まあ、それも雑魚には当然の仕事だったけどな」
ニーナは大笑いをしながら席に戻っていた。
今までずっと優しかったソンネ。
俺を嫌いだって言うことが伝わるくらいに剣呑だったガリス。
今の今までずっと俺を皮肉っていたサラ。
スパっと俺に暴言を言ってきたニーナ。
そんな最低な4人でも俺は情というものを持っていた。
だが、今となっては憎しみしかない。
いくら無能とはいえ長い間付き合ってきた仲間だ、こんな仕打ちを受けなくてもいいじゃないかとも思う。
衝動的にガリスがニーナやサラとも関係を持っているということをばらしたくもなっている。
そんなことを考えているうちにも、クラスの皆は俺の事を散々罵倒している。
「この雑魚ともおさらばか!」
「今までありがとうな無能!! さっさと出ていけ無能」
俺は我慢の限界を超えていた。
自分が無能だということは自分が一番よく知っている。
だから今まで罵倒されていても無視をしていた。
でも、クラス中から罵倒されると俺の感情ゲージも振り切れていた。
俺はこいつらを見返したい、いつか、必ずどうにかして見返したい。
そう、憎しみしかなかった。
「必ず、お前たちより強くなってやる」
「やってみろよ。いつでも相手になってやるよ。なあ、皆」
ガリスは即座にそう言うと、クラス中の皆も笑いながら頷いていた。
「ま、これまでのように、散々罵倒しながら戦ってやるよ」
クラスの中の一人がそう言っている。
「まぁ、アラスくんがそう言うのなら、いつでも我々のところに来なさい。相手になってあげますよ」
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