最強の召喚魔法を駆使して生きて!〜亡命の召喚騎士、生き延びるため必死に抗う~

DORA

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冒険者ギルドと【ヌルい存在】

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ガヤ…ガヤ


水の国ヴリドラの首都『アクアプラス』。

ヴリドラは弱小とはいえ、さすがに首都だけあって人も多く活気も良い。
俺に対する入口の検問も緩かったことから、ひときわ治安の良い平和な都市であることも明白だろう。



「兄さん、こんなに荷物持てるのか?相当あるぜ」
「まかせろ!スキル『筋力強化』!」

「うおっ筋力強化持ちか。なら大丈夫だな」



歩いていると、ある道具屋でこのような光景を見かける。

荷物を持つ、自信に満ち溢れた男の表情。
スキルや魔法を頼りに人間は生活を豊かにしてきた証だ。
もっとも俺からしたら、スキルだの魔法だのどうでもいいことだったが。



「で?これからどうする?」



俺が召喚したリリスはもともと姿形が人間に近いのもあり、姿を消さずにそのままついてきてもらっている。

消えていてもリリスが気まぐれで突然出てくるリスクを考えれば、こちらのほうがいくらかましだ。
なぜならリリスの姿を消す闇魔法≪インビジブル≫は、存在さえも不可視とする。

人間の魔法では原理が決して成立しない、反則級の魔法だ。
そのため、インビジブルを見られることで召喚騎士が召喚した『召魔』と断定されてしまうケースが一番やばいからだ。

ただし、目立ちやすい浮遊は禁じているため少し不満そうだが。



秘宝がここアクアプラスの中心部、王宮にあるのは明白。

俺のコンパスが反応しているからだ。
とはいえ王宮の警備は厳重で、目立たずに探すとなれば工夫が必要。
ここは、しばらく腰を据えて探しところだが…



「ゆっくり探すならこんなのもあるぞ?」
「ギルドか…」



リリスはニヤニヤしながら大きい建物を指さした。

俺がギルドを嫌いなことをわかって言っているな。
嫌そうな顔をしていると、入口の鎧をきた男がこちらへきた。
ギルドあるあるの新規狙いの勧誘だろう。



「よう兄ちゃん!冒険者になるならギルドがおすすめだよ」
「えっ俺はちょっと」
「それにしても横のお姉ちゃん、スゲエきれいだな!カップルで冒険者というのもよくあるんだぜ?」

「そうなのか。よしおまえ、詳しく聞かせろ」



リリスとカップル冒険者とか冗談ではない。


なぜかリリスは食いついているが、冒険者など召喚騎士とは対の存在。
冒険者が『陽』の存在だとしたら、召喚騎士は『陰』の存在だ。



「悪いが冒険者になるつもりはないんだ」
「えー」


リリスは残念がるが、当然だ。

そもそもギルドがはじまったのは、実は召喚騎士のおかげだ。
というのも召喚騎士が国家間の苛烈な戦争を一手に引き受けていた。
これにより、召喚騎士以外の大部分の人々が戦争とは無縁の平和な生活を手に入れた歴史がある。

平和になれば刺激を求めるのが人間というもの。
その穴を埋めるように登場したのがギルド、そして冒険者というわけだ。
しかし俺にも当然、召喚騎士としてのプライドがある。

ようするに、冒険者は召喚騎士とは比べ物にならぬ『ヌルい』存在だ。



「珍しい兄ちゃんだな。兄ちゃんくらいの若いヤツはみんなこの国の英雄、グイン様に憧れて冒険者になるんだぜ?」
「脳筋のグインになるとか死んでもごめんだ」


「あら…今の言葉は聞きづてなりませんわね」
「あなたさまは…」


後ろから女の声が聞こえると同時に、勧誘していた男は一歩後ずさりした。
そして驚いたように声をあげた。


「S級冒険者!『蒼のエレナ』様!?」
「なんだってー!?」


リリスがノリノリに声をあげた。

実際、S級だかなんだか知らんがこの女からはトラブルの匂いしかない。
それも含めてリリスがノリノリなのだろう。


「英雄グイン様を貶めることは重罪ですわよ?」
「いえ、めっそうもありません」
「でもあなたさっき、グイン様のことを」
「さ、さようならー」


俺はリリスを抱え光速でその場から去った。

秘宝のためにもこんな序盤からミスはできない。
その後ろ姿を見て、冒険者のエレナはニヤリとつぶやいた。


「久々にイジメがいのある者を見つけたかもしれませんわ」
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