つれづれなるおやつ

蒼真まこ

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甘辛みたらしだんご

似て非なるもの

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 俺が生まれ育った愛知県では、県民性なのか、小倉のあんこが好きな人間が多い。
 小倉トーストだけでなく、あんことマーガリンを挟んだ菓子パンも定番人気だし、小倉のあんこを使った菓子も多いと思う。
 そんな環境で育ったけれど、なぜか俺は小倉のあんこがあまり好きではなかった。
 勧められれば普通に食べるし、アレルギーだとかがあるわけでもない。
 甘いものがあまり好きではないから、生まれつきの好みだとしか言いようがない。
 俺と同じようにあんこはあまり好きではないという友人はいたし、和菓子より洋菓子のほうが好きという人もいた。
 しかし俺とは違い、小倉のあんこが大好きだという人が多かったのも事実なので、人前で「小倉あんは苦手なんだ」とは言わないようにしていた。

 そんな俺がとても美味しいと思うのが、みたらしだんごだった。
 祖母がよく買ってきてくれたのだ。

「おばあちゃん、みたらしだんご買ってきてくれたの?」
「将ちゃんが甘辛なみたらしだんごを好きだでねぇ」
「わぁい!」

 やや小さめの白い団子が五つ串に通されていて、黒い焦げ目がつくぐらい、しっかりと焼かれている。そこにたまり醤油が塗られているのだ。甘さはほんのり感じる程度で、あまじょっぱいというよりは、甘辛い味わいだ。
 とろみのついた醤油系のあんもついていないので、さっぱり食べられる。しっかりついた焦げ目も、たまり醤油との相性が良く、香ばしい風味になっているのもお気に入りだった。
 甘いものや小倉のあんこをあまり好まない俺にとって、祖母が買ってくれる甘辛なみたらしだんごは特別なおやつだったのだ。

 たまり醤油の甘辛なみたらしだんごは、他の地域にも当然あるものと思っていた。
 元々甘味を好むタイプではないため、愛知を出てからも特に甘いものを探したり食べ歩いたりはしなかった。だから気づけなかった。自分が好きだったみたらしだんごが、聡美の好むみたらしだんごとは別のものだと。
 大人になるにつれて、甘いものよりお酒などを好むようになったので、みたらしだんごを食べる機会が減ったのも要因の一つかもしれない。

 団子の数が違うとはいえ、見た目はどちらもよく似ている。
 白い団子に醤油系のあんか、たまり醤油。
 しかし食べ比べると違うとわかる。

 聡美が買ってきてくれたみたらしだんごも美味しいとは思う。
 質の良い材料だけを使い、丁寧に作っているから、聡美の家族が好んで食べるのもよくわかる気がする。
 だが甘いものが苦手な俺には、醤油系のあまじょっぱいあんでも甘すぎるのだ。

 スマホでわかるだけ調べた結果では、みたらしだんごと一言でいっても、実は地域によって微妙に違うのだと気づいた。
 東京であっても店によって違いはあると思うが、聡美が好きなみたらしだんごは、あましょっぱい醤油系のたれをたっぷりとからめたもの。
 団子をこんがり焼き、たまり醤油をさっと塗ったものが俺の好きなみたらしだんごなのだ。

「マジかよ……」

 似て非なるものとはいえ、聡美があれほど喜んでいるみたらしだんごを、「俺が好きなものと違う」とあっさり否定するのは申し訳ない気がした。可愛い聡美の笑顔を曇らせたくない。

「まぁ、黙ってれば問題ないよな。みたらしだんごだってたまにしか買ってこないだろうし」

 聡美との雰囲気を壊したくなかった俺は、みたらしだんごが違うことは一切言わずに過ごすことにした。

「将也くん、どうかしたの?」

 いつまでも戻ってこない俺に、聡美は気になってしまったようだ。

「ごめん、ごめん。ちょっとメッセージが着ててさ」
「なにか急用?」
「ううん。友達からの飲み会の誘いだった」
「将也くん、お酒好きだもんねぇ。あまり飲みすぎないようにね」
「おう、わかってる」

 みたらしだんごの違いに戸惑いはしたものの、恋人の聡美と良い時間を過ごすことができた。みたらしだんごの件も、それで終わると思っていた。

 ところが。

「将也くん、みたらしだんご買ってきたよ。一緒に食べよ♪」

 俺がみたらしだんごを「うまい」と言ったからか、俺と一緒に食べたいのか、聡美は俺のアパートに遊びにくるたびに、みたらしだんごを買ってくるようになったのだ。

「あ、ありがとな、聡美」
「気にしないで。私も好きだし、将也くんも好きでしょ?」
「そうだな……」

 俺にとっては甘すぎるみたらしだんごを、可愛い恋人が来るたびに一緒に食べる羽目になったのだ。


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