男装呪封師と鬼の皇帝〜秘された少女は後宮で開花する〜

蒼真まこ

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第三章 初めての戦いと二人の秘密

雷烈の覚悟

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 必死に霊視しながら、雷烈が放つ霊力に星は引きずりこまれていった。まるで誘導されているかのようだ。

 星の意識の中に、美しい姿をした女人の姿が見えた。その隣には、立派な身なりをした男性が連れ添っている。とろけるほど幸せそうに微笑む女人は人間ではない、と星はすぐに察知した。

(ひょっとして、この女性が陛下のお母様で和国から来た鬼? では隣におられる方は)

 鬼であったという雷烈の母親は、雷烈の父である皇帝を誘惑してたぶらかし、関係をもったのではないかと星は思っていた。

 だが星の意識の中に見える雷烈の母と父は、このうえないほど幸福な様子だった。たぶらかされた関係とはとても思えない。

(ひょっとして御二人は純愛だったのかも……)

 二人の愛が本物だったのではないかと思った瞬間。星の意識に見える雷烈の母、鬼の女が星に顔を向け、静かに頭を下げたのである。

 まるで「わたくしの息子をお願い致します」とでも告げているかのように。

 驚いた星は目を開けてしまい、二人の姿は視えなくなってしまった。

「どうした? ずいぶんと驚いた表情をしているが」

 星は乱れた息を整えながら、雷烈に視線を向けた。

「霊視の中で、陛下のお父様とお母様のお姿が視えました」
「そこまでわかるのか? たいしたものだな、星の力は」

「視えた」というより、「視させられた」が正解だろう。それほど雷烈の中に眠る鬼の力は強いのだ。

「おそらく陛下のお母様は、かなり力の強い鬼だったのだと思います。そのため和国を追われたのかもしれませんが、恐ろしい方のようには思えませんでした」

 鬼というものは人間を獲物としか思っていない、極悪非道な存在だと星は思っていた。兄の優を殺した悪鬼のように。
 しかし極悪ではない鬼もいるのかもしれない。思えば人間だって、良い人もいれば悪い人もいる。鬼だからといって、すべてが悪い存在ではないのかもしれない。

「そうであろうな。母の正体が異形な鬼であると知っても、深く愛していたと父は話してくれた。名家の出身ではないため、身分は下級の妃のままだったが、母が後宮にいてくれただけでも十分幸せだったと言っていた。すでに母も父もこの世におらぬが、二人は確かに愛し合っていたと思っている」

 身分も立場も、種族さえも乗り越えて愛し合った二人から生まれたのが、目の前にいる皇帝雷烈なのだ。圧倒的な霊力と精気を有するのは当然のように思えた。

「それではなぜ、鬼の力を封印したいのですか? 大切に思ってらっしゃるのでしょう? お母様のことを」

 鬼の力を封印するのは簡単なことではない。なぜ鬼の力を封じたいのか、理由を聞かなくては星も術を使えないと思った。

「この庸国という国と民の安寧を守るためだ。父から託されたのだ。『庸国を、民を頼む』と。鬼の力でもって民を束ねるのではなく、人として民を幸せにしてやりたいのだ。そのためには俺の中の鬼の力が、これ以上目覚めるのは困る」

 すべては国と民の平和のため。

 若き皇帝ではあったが、統治者としての雷烈の覚悟と才覚を感じ、星の体はかすかに震えていた。

(心して臨まなければ、鬼の力を封印できないかもしれない。それでもやる。やってみせるわ)

 心を決めた星は、姿勢を正して雷烈を見すえた。

「私がもつ全ての力を用いて、これより陛下に封印術をかけさせていただきます。強いお力を感じますので、陛下自身にも痛みを感じるかもしれません。それでも耐えられますか?」

 星の決意を感じたのか、雷烈はにやりと不敵な笑みを浮かべた。

「オレを誰だと思っている。どれほどの痛みであろうと耐えてみせるさ」
「わかりました。それでは始めさせていただきます」

 男装の呪封師である星と、鬼の血を引く皇帝雷烈。

 不思議な繋がりではあったが、お互いの目的のため、二人は心をひとつにして挑むこととなった。

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