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第三章 初めての戦いと二人の秘密
鬼の力の封印
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息を整え、手で印を結ぶと、雷烈に向けて星は封印術をかけ始めた。
「封印術・天の印」
星が呪文を唱えると、『天』の文字が光を放ちながら空中に浮かんだ。
宙に浮かんだ『天』の文字は雷烈の体に覆いかぶさるように貼りついた。やがて吸い込まれるように消えていったが、すぐに雷烈の体に激しい痛みが走る。
「くぅ……」
かすかなうめき声をあげたものの、雷烈は封印の痛みに必死に耐えていた。
鬼の力の強さを思えば、封印される際の痛みは、床に転げ回って叫びたいほどであるはずだ。
だが皇帝である雷烈が叫び声をあげれば、太監や宮女たちが何事かとすっ飛んでくることになる。そうなれば封印術どころではないし、なにより星と雷烈の正体が発覚してしまう。それだけは避けねばならない。どれだけ苦しくても、雷烈には耐えてもらわなくてはならないのだ。
(やはり想像以上に抵抗が強い……! 何度かに分けて封じなければ抑えられそうにない)
苦しいのは雷烈だけではなかった。封印術をほどこす星もまた吹き飛ばされそうなほど強い霊力に耐えながら、懸命に術をかけ続けていた。
星が生まれた天御門家の封印術は特殊な力だ。中でも秘術とされている呪封術はおいそれと人に伝承してはならない、天御門家だけの力なのだと優から聞かされたことがあった。天御門家の封印術と呪封術を用いれば、どれほどおぞましい呪いのケモノであっても、凶悪な化け物だとしても封じることができるのだと聞いた。
呪封術は天御門家初代から始まったものだが、初代が呪封術を用いた際に家族の少女が亡くなるという痛ましい事故が起きたと優は話してくれた。呪封術はとても強力なものだが、それゆえに扱いが難しく、危険を伴うため天御門家だけで守っていくことになったという。
(ここに優がいれば、陛下を苦しめることなく鬼の力だけを封印できたかもしれない。でも優はもういない。私だけでやらなくては)
星が雷烈に必死に封印術をかけていると、雷烈の気配にある異常を感じた。鬼の力が何かと激しくぶつかりあっているのだ。その『何か』がどういったものであるのか、星はすぐに察知した。
(後宮で感じた陛下への呪いだ。呪いのケモノが陛下に触れられないように、鬼の力が守っているんだ。だから鬼であった陛下の母君が、私の意識の中で挨拶されたのかもしれない。息子を呪いのケモノから守ってほしいと)
雷烈の霊力の高さから、呪いのケモノが陛下に近づけないと思っていたが、それだけではなかったのだ。鬼の血を引く方だからこそ、呪いのケモノに蹂躙されることも支配されることもなかったといえる。
だがそのために眠っていた鬼の力が強まる結果となってしまった。このまま鬼の力が強くなれば、雷烈はどんどん鬼化していくことになるだろう。見た目も変わってしまえば、さすがに鬼の血を引くことを隠せなくなる。
(陛下は人間として、この国を守りたいと言われていた。陛下の願いを叶えてさしあげたい。そうしなければ私は、優を殺した悪鬼に復讐できなくなるもの)
星は印を結び直し、さらに力を込めていく。するとその願いに応えるように、星の霊力が白い鳥の形へと変幻していく。白い鳥は生きたように動き出し、羽ばたきながら雷烈に向かって飛んでいく。
「天の印・封!」
雷烈の体から『天』の文字が再び浮かび上がり、白い鳥と重なり合うようにして吸い込まれていく。封印術を二度に分けてかけることで、ようやく鬼の力を少しだけ抑えることができたのだ。
「少しだけですが、陛下の中に眠る鬼の力を封じさせていただきま、した。これで今すぐに鬼化してしまうことはないと思いましゅ。ですが、鬼の力の覚醒を完全に抑えるためには、陛下への呪いをかけた人間を見つけ出し、呪いを無力化させなければいけないと思います」
苦しそうな呼吸をくり返しながら、雷烈が星に問うた。
「俺に呪いをかけた人間を見つけだす? それと鬼の力の目覚めとなんの関係があるのだ?」
鬼の力が強まっている理由を雷烈は知らなかったようだ。星は封印術かけながら、雷烈の霊視から感じたことを詳しく説明した。
「そうか。母の力が俺を呪いから守っていてくれたのだな。鬼の力が強くなったのは、俺が即位して後宮に出入りするようになってからだ。皇帝になるのだという覚悟が俺の中に眠る鬼の力を目覚めさせてしまったと思っていたが、それだけではなかったわけだ」
後宮の中では、おぞましく感じるほど呪いの力が強かった。となれば呪いをかけたものは後宮に暮らす者である可能性が高い。理由はわからないが、後宮の中で雷烈を激しく憎み、呪っているのかもしれない。
「封印術・天の印」
星が呪文を唱えると、『天』の文字が光を放ちながら空中に浮かんだ。
宙に浮かんだ『天』の文字は雷烈の体に覆いかぶさるように貼りついた。やがて吸い込まれるように消えていったが、すぐに雷烈の体に激しい痛みが走る。
「くぅ……」
かすかなうめき声をあげたものの、雷烈は封印の痛みに必死に耐えていた。
鬼の力の強さを思えば、封印される際の痛みは、床に転げ回って叫びたいほどであるはずだ。
だが皇帝である雷烈が叫び声をあげれば、太監や宮女たちが何事かとすっ飛んでくることになる。そうなれば封印術どころではないし、なにより星と雷烈の正体が発覚してしまう。それだけは避けねばならない。どれだけ苦しくても、雷烈には耐えてもらわなくてはならないのだ。
(やはり想像以上に抵抗が強い……! 何度かに分けて封じなければ抑えられそうにない)
苦しいのは雷烈だけではなかった。封印術をほどこす星もまた吹き飛ばされそうなほど強い霊力に耐えながら、懸命に術をかけ続けていた。
星が生まれた天御門家の封印術は特殊な力だ。中でも秘術とされている呪封術はおいそれと人に伝承してはならない、天御門家だけの力なのだと優から聞かされたことがあった。天御門家の封印術と呪封術を用いれば、どれほどおぞましい呪いのケモノであっても、凶悪な化け物だとしても封じることができるのだと聞いた。
呪封術は天御門家初代から始まったものだが、初代が呪封術を用いた際に家族の少女が亡くなるという痛ましい事故が起きたと優は話してくれた。呪封術はとても強力なものだが、それゆえに扱いが難しく、危険を伴うため天御門家だけで守っていくことになったという。
(ここに優がいれば、陛下を苦しめることなく鬼の力だけを封印できたかもしれない。でも優はもういない。私だけでやらなくては)
星が雷烈に必死に封印術をかけていると、雷烈の気配にある異常を感じた。鬼の力が何かと激しくぶつかりあっているのだ。その『何か』がどういったものであるのか、星はすぐに察知した。
(後宮で感じた陛下への呪いだ。呪いのケモノが陛下に触れられないように、鬼の力が守っているんだ。だから鬼であった陛下の母君が、私の意識の中で挨拶されたのかもしれない。息子を呪いのケモノから守ってほしいと)
雷烈の霊力の高さから、呪いのケモノが陛下に近づけないと思っていたが、それだけではなかったのだ。鬼の血を引く方だからこそ、呪いのケモノに蹂躙されることも支配されることもなかったといえる。
だがそのために眠っていた鬼の力が強まる結果となってしまった。このまま鬼の力が強くなれば、雷烈はどんどん鬼化していくことになるだろう。見た目も変わってしまえば、さすがに鬼の血を引くことを隠せなくなる。
(陛下は人間として、この国を守りたいと言われていた。陛下の願いを叶えてさしあげたい。そうしなければ私は、優を殺した悪鬼に復讐できなくなるもの)
星は印を結び直し、さらに力を込めていく。するとその願いに応えるように、星の霊力が白い鳥の形へと変幻していく。白い鳥は生きたように動き出し、羽ばたきながら雷烈に向かって飛んでいく。
「天の印・封!」
雷烈の体から『天』の文字が再び浮かび上がり、白い鳥と重なり合うようにして吸い込まれていく。封印術を二度に分けてかけることで、ようやく鬼の力を少しだけ抑えることができたのだ。
「少しだけですが、陛下の中に眠る鬼の力を封じさせていただきま、した。これで今すぐに鬼化してしまうことはないと思いましゅ。ですが、鬼の力の覚醒を完全に抑えるためには、陛下への呪いをかけた人間を見つけ出し、呪いを無力化させなければいけないと思います」
苦しそうな呼吸をくり返しながら、雷烈が星に問うた。
「俺に呪いをかけた人間を見つけだす? それと鬼の力の目覚めとなんの関係があるのだ?」
鬼の力が強まっている理由を雷烈は知らなかったようだ。星は封印術かけながら、雷烈の霊視から感じたことを詳しく説明した。
「そうか。母の力が俺を呪いから守っていてくれたのだな。鬼の力が強くなったのは、俺が即位して後宮に出入りするようになってからだ。皇帝になるのだという覚悟が俺の中に眠る鬼の力を目覚めさせてしまったと思っていたが、それだけではなかったわけだ」
後宮の中では、おぞましく感じるほど呪いの力が強かった。となれば呪いをかけたものは後宮に暮らす者である可能性が高い。理由はわからないが、後宮の中で雷烈を激しく憎み、呪っているのかもしれない。
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