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第五章 繋がる心
星の迷い
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謎めいた存在だった天御門家初代当主兄妹、晴人と琳子。二人の生き様と愛の話は、星の心を深く締め付けた。
(琳子様は愛する晴人様を守るため、肉体も心も霊力もすべて九尾の狐に捧げた。それ以降、琳子様の心は意識の奥底に閉じ込められていたんだ。琳子様の体を使って九尾の狐が悪行を重ねているのを、どんな思いでご覧になっていたのか……考えるだけで胸が苦しくなる)
琳子と同じ天御門家の女であること、共に男女の双子であったからか、星には琳子の苦悩と慟哭が苦しいほどに理解できてしまう星だった。
『九尾の狐はわたしの体を乗っ取ったことで、妖狐の妖力とわたしの霊力をあわせ持つ最強のあやかしとなった。肉体も長年朽ちることはなく、若々しさと美しさを保ったのだ。九尾の狐は和国の妖狐たちを引き連れて海を渡り、庸国へとやってきた。大国である庸国を手中に収めたいと考えたらしい。最強のあやかしとなった九尾の狐に不可能なことはない。だが一つだけ誤算があった。どれだけ優れた妖力と霊力を有していようと、乗っ取ったわたしの体はあやかしではなく人間だ。どれだけ力があろうと、いずれ肉体は朽ち果てる。少しずつ衰えていく体に恐怖した九尾の狐は、ある計画を思いついた。それはさらに強い力をもつ存在を、肉体に取り入れること。そうすれば肉体は永久に滅ぶことはなくなるし、世界を手にするほどの力をもつことも夢ではないと九尾の狐は考えた。目を付けたのが、庸国の皇帝であり鬼の母をもつ雷烈と、天御門家で生まれながら秘かに育てられていた天御門星だ。優れた呪封師になれる素質をもつ星を利用し、雷烈の霊力と鬼の力をこのわたし、天御門琳子の肉体に取り込む、つまり呪封させるつもりだったのだ』
そこまで話を聞いた星は、ようやく恐ろしい陰謀のすべてを理解することができた。
「で、では天御門家一族が抹殺され、私が雷烈様に出会ったことも、さらなる力を求めた九尾の狐が朽ち果てることがない肉体を手に入れるための計画だったのですか!?」
苦しそうな表情を見せながら、琳子は無言で頷いた。
『天御門家の最後の生き残りとなってしまった星まで九尾の狐に利用されることだけは、どうしても避けたかった。でも意識の奥底に閉じ込められたわたしでは何もできなくて……。だが星が九尾の狐の甘言に騙されることなく真実を見抜き、わたしのことを理解してくれる言葉を聞いた瞬間、初めて抗う力を感じた。星のため、そして天御門家初代当主のひとりとして、今一度だけ九尾の狐と戦ってみようと決意した。星よ、わたしにはあまり時間がない。油断すれば九尾の狐が再びわたしの体と心を乗っ取ってしまうだろうから。その前に頼みたいことがある』
琳子から頼みがあると言われた星は、涙で潤んだ目を手で拭い取り、顔を正面に向けた。
「私にできることでしたら何なりとお申し付けください、琳子様」
星は精一杯元気よく答えた。
『ありがとう……こんなことを頼んで申し訳ない。けれど星にしかできないことなのだ。どうかわたしの体、天御門琳子の肉体から九尾の狐を祓ってほしい。わたしの体から離れれば、九尾の狐の力は半減する。わたしの体にある霊力を失うからだ。そうすればきっと星と皇帝雷烈の力で、悪しき九尾の狐を倒すことができる』
琳子の霊力と肉体を手に入れ、最強のあやかしとなった九尾の狐を倒すには、琳子の言うとおりにするのが正解だろう。だが星には、どうしても気になることがひとつだけあった。
「琳子様の体から九尾の狐を追い祓ったら、琳子様の御体は、魂はどうなるのですか?」
『九尾の狐がわたしの体から離れた瞬間に、肉体は朽ち果て、魂は消え去ることとなる』
天御門琳子の霊力と九尾の狐の妖力で肉体を保っていたのだから、二つの存在が離れれば、肉体も魂も滅ぶことになるのは自然の摂理と言えた。
「そんな……! ずっと苦しんでこられた琳子様が消えてなくなるなんて、そんな酷いこと私にはできません!」
『いいのだ。本来なら天御門琳子はとうの昔に死んでいるはずなのだから。罪深きわたしだが、許されるならば天に召された兄の晴人の元へ逝きたい……』
愛する兄の元へ逝きたい。その思いは痛いほど理解できる。
だが星には、どうしても決断できなかった。
(琳子様は愛する晴人様を守るため、肉体も心も霊力もすべて九尾の狐に捧げた。それ以降、琳子様の心は意識の奥底に閉じ込められていたんだ。琳子様の体を使って九尾の狐が悪行を重ねているのを、どんな思いでご覧になっていたのか……考えるだけで胸が苦しくなる)
琳子と同じ天御門家の女であること、共に男女の双子であったからか、星には琳子の苦悩と慟哭が苦しいほどに理解できてしまう星だった。
『九尾の狐はわたしの体を乗っ取ったことで、妖狐の妖力とわたしの霊力をあわせ持つ最強のあやかしとなった。肉体も長年朽ちることはなく、若々しさと美しさを保ったのだ。九尾の狐は和国の妖狐たちを引き連れて海を渡り、庸国へとやってきた。大国である庸国を手中に収めたいと考えたらしい。最強のあやかしとなった九尾の狐に不可能なことはない。だが一つだけ誤算があった。どれだけ優れた妖力と霊力を有していようと、乗っ取ったわたしの体はあやかしではなく人間だ。どれだけ力があろうと、いずれ肉体は朽ち果てる。少しずつ衰えていく体に恐怖した九尾の狐は、ある計画を思いついた。それはさらに強い力をもつ存在を、肉体に取り入れること。そうすれば肉体は永久に滅ぶことはなくなるし、世界を手にするほどの力をもつことも夢ではないと九尾の狐は考えた。目を付けたのが、庸国の皇帝であり鬼の母をもつ雷烈と、天御門家で生まれながら秘かに育てられていた天御門星だ。優れた呪封師になれる素質をもつ星を利用し、雷烈の霊力と鬼の力をこのわたし、天御門琳子の肉体に取り込む、つまり呪封させるつもりだったのだ』
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「で、では天御門家一族が抹殺され、私が雷烈様に出会ったことも、さらなる力を求めた九尾の狐が朽ち果てることがない肉体を手に入れるための計画だったのですか!?」
苦しそうな表情を見せながら、琳子は無言で頷いた。
『天御門家の最後の生き残りとなってしまった星まで九尾の狐に利用されることだけは、どうしても避けたかった。でも意識の奥底に閉じ込められたわたしでは何もできなくて……。だが星が九尾の狐の甘言に騙されることなく真実を見抜き、わたしのことを理解してくれる言葉を聞いた瞬間、初めて抗う力を感じた。星のため、そして天御門家初代当主のひとりとして、今一度だけ九尾の狐と戦ってみようと決意した。星よ、わたしにはあまり時間がない。油断すれば九尾の狐が再びわたしの体と心を乗っ取ってしまうだろうから。その前に頼みたいことがある』
琳子から頼みがあると言われた星は、涙で潤んだ目を手で拭い取り、顔を正面に向けた。
「私にできることでしたら何なりとお申し付けください、琳子様」
星は精一杯元気よく答えた。
『ありがとう……こんなことを頼んで申し訳ない。けれど星にしかできないことなのだ。どうかわたしの体、天御門琳子の肉体から九尾の狐を祓ってほしい。わたしの体から離れれば、九尾の狐の力は半減する。わたしの体にある霊力を失うからだ。そうすればきっと星と皇帝雷烈の力で、悪しき九尾の狐を倒すことができる』
琳子の霊力と肉体を手に入れ、最強のあやかしとなった九尾の狐を倒すには、琳子の言うとおりにするのが正解だろう。だが星には、どうしても気になることがひとつだけあった。
「琳子様の体から九尾の狐を追い祓ったら、琳子様の御体は、魂はどうなるのですか?」
『九尾の狐がわたしの体から離れた瞬間に、肉体は朽ち果て、魂は消え去ることとなる』
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「そんな……! ずっと苦しんでこられた琳子様が消えてなくなるなんて、そんな酷いこと私にはできません!」
『いいのだ。本来なら天御門琳子はとうの昔に死んでいるはずなのだから。罪深きわたしだが、許されるならば天に召された兄の晴人の元へ逝きたい……』
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だが星には、どうしても決断できなかった。
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