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第二章 新たな生活とじゃがいも料理あらかると
突然の美しい訪問客
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その訪問客は、ある日唐突にやってきた。
さちが土間の掃除をしていた時のこと、女と思われる、しとやかな美しい声が正門から響いてきた。
「ごめんください」
「はーい」
(女の方のお客様かしら、珍しいこともあるものね)
ぬらりひょんの屋敷に来る客は、あやかしがほとんどだ。そのあやかしの多くも目まぐるしく変わりゆく日本についていけず、幽世へ行ってしまったと聞く。残っているものは、理由があるか、好んで残っているものばかりだ。以前は人間もぬらりひょんの屋敷に来ていたというが、今は来るものは少ない。さちもこの屋敷に来て、人間と会ったことがなかった。
「ごめんくださいませ」
「はーい、お待ちください」
九桜院家でも、ぬらりひょんの屋敷でも、外の者と会うことが少ないさちは、客人に慣れていない。一つ目小僧や油すましは土間からひょっこり顔を出すし、化け火は元からかまど辺りにいる。
(えっと、失礼のないようにしないと)
着物の埃を払い落とし髪を整えると、門のほうへ走っていった。緊張で速まる鼓動を呼吸でなんとか整える。
(私はぬらりひょん様の嫁としてここにきたのだもの。正式な妻と認められたわけではないけれど、ぬらりひょん様のお客様の一人や二人、ちゃんと応対できないとね)
自らに言い聞かせ、心を落ち着かせると、引戸をゆっくりと開けた。
「お待たせして申し訳ありません」
門の前に立っていたのは、華やかな着物を着た美しい女性だった。すらりと背が高い。
さちにとって、この世でもっとも美しいのは、姉の蓉子だと思っている。蓉子は深窓の令嬢らしい、奥ゆかしくて品の良い美しさだ。
今さちの目の前に立っている女は下町の人間らしく、親しみのもてる華やかさを漂わせている。美しさでは蓉子とひけを取らないが、蓉子の艶やかさとはまた違う美貌だ。
「おや」
女は小柄なさちを見下ろすと、不思議そうな声を発した。
「あんた、ぬらりひょん様の女中さんかい?」
いきなり「女中」と言われて驚いたが、九桜院家での生活を思えば、女中と思われても不思議はない。
「は、はい。私はぬらりひょん様の嫁としてここに参りましたが、今は家事手伝いとして働かせていただいております」
どもってしまったところが情けないが、なんとか自分の立場を伝えることができたさちだった。
「よめぇ!? あんたがかい?」
女は仰天したようで、さちの頭の上で大きな声を発した。
「ぜったい、嘘だよね。あんた、本当はただの女中なんだろう。嘘はいけないよ、嘘は」
女はさちの華奢な肩を掴み、かくかくと前後に揺らしながら真偽を問おうとする。ゆらゆらと揺らされて、目が回りそうになりながらも、さちは懸命に伝える。
「う、嘘ではございません。わ、わたしは、ぬらりひょん様のところに嫁として参りました九桜院さちと申します」
「九桜院?」
九桜院の名前を出した途端、さちの肩を揺らす女の手がぴたりと止まった。
「ふぅん、なるほどね」
女は腕を組み、さちを上から下へと、品定めするような視線でしげしげと見つめている。なぜそのような目で見られるのか、さちには理由がわからない。
「あ、あの」
おそるおそる声をかけると、女はさちの声にやっと気付いたというように顔を向けた。
「ああ、悪いね。あたしはおりんって言うの」
自らをおりんと名乗った女は、ようやく笑顔を見せた。
「おりんさん、とおっしゃるのですね。私は……」
「ああ、知ってる。九桜院家の娘だろ。さっき名乗ったじゃないか。ただの人間ってことだろ?」
「え? ええ、私は人間ですけど……」
おりんは愛想よく笑っているが、その視線は突き刺すように冷ややかだ。さちを虐めていた九桜院家の使用人たちの視線を思い出し、さちの体はこわばっていく。
「ただの人間ってことはさぁ……こういうの、どうだい?」
おりんはにやりと笑い、自らの顔を指差した。さちがおりんの美しい顔を見つめた瞬間、女の首は音もなく、するすると伸びていく。
「え……?」
驚いて固まるさちの目の前で、おりんはさらに首を伸ばしていく。白い首筋が妙になまめかしい。伸ばした首をくねらせながら、おりんはさちの顔をのぞき込む。
「うふふ……。あたし、きれい?」
長く伸びた首をくるりと回転させながら、おりんはにたぁと笑った。
さちはしばし声も出なかった。見目麗しい女の首が伸びる。彼女が人間ではないことは一目瞭然だ。かたかたと体が震えていく。
「あ、あ、う……」
うめき声のようなさちの声を聞いたおりんは、満足そうに微笑み、うひひと笑ってみせた。
「怖いだろう? 怖かったら、このお屋敷をさっさと出ておいき」
さちをにらみつけたおりんは、冷たく言い放つ。
「あたしの姿を見て怖がる人間は、ぬらりひょん様の嫁にふさわしくないんだよ。不相応な婚姻は不幸を呼ぶだけ。理解したなら、とっとと出ていきな!」
おりんの怒鳴り声に、さちはようやく理解した。おりんはさちを、ぬらりひょんの屋敷から追い出したいのだと。
(ぬらりひょん様のお屋敷を出ていく……?)
思い出すのは、さちを見つめる、ぬらりひょんの優しい微笑み。自分を「さち姐さん」と慕う一つ目小僧に、いつも油を分けてくれる油すまし。温かな火を起こして、料理作りを手助けしてくれる化け火。
さちはぬらりひょんの屋敷で、心から笑うことができた。さちが作る料理を美味しいと喜び、笑顔を見せてくれるあやかしたちの存在が、どれだけ嬉しいことか。
(……いや、私は出なくない)
さちは唇を噛みしめると、おりんをその目でしっかりと見据えた。
「で、出ていきません! わ、私はぬらりひょん様の妻ですから!」
体はまだ震えている。けれど、もう迷いはなかった。
「あなたなんて、ち~っとも怖くありません! ただ首が伸びるだけじゃないですか!」
「な、なんだってぇ?」
驚いたのは、おりんのほうだった。かたかたと震え続けることしかできない少女が、必死に自分に歯向かってきたのだから。
「生意気な娘だね。少し痛い目に合わないとわからないのかい?」
おりんは長く伸びた首を、さちの細い体にくるくると巻き付けていった。しなやかな白い首が、さちの体をゆっくりと締め付けていく。恐ろしさで叫ぶこともできないさちをあざ笑うように、おりんはさちの真正面に顔を運び、にたぁっと笑って見せた。その表情の恐ろしいことといったら。まるで地獄の底から呪い殺しにきたかのようだ。
「ひ……」
さちが声にならない小さな叫び声を発すると、おりんはうふふと笑いながら、さらに体を締め付けていく。
「ほぅら、怖いだろ? 苦しいだろ? 今すぐここを出ていくと言ったら解放してやるよ」
恐怖のあまり、さちは気を失いそうだった。自分の体にぴったりと密着したおりんの白い首は、ぞっとするほど冷たく感じられた。
(こわい……でも、わたしは……!)
「い……」
「い? なんだい? 何て言ったんだい?」
気が遠くなりそうになるのをどうにか堪えながら、さちはありったけの力を込めて叫んだ。
「いやです!! わたしは、でていきません!」
虐げられる毎日を、ただ耐えることしかできなかったさちが、自分の意志を貫いた瞬間だった。
「な、なんて強情な……!」
怒ったのか、おりんがさらに首を伸ばそうとした時だった。
「そこまでだ、おりん。止めよ!」
ぬらりひょんの冷ややかな声が響いた。いつの間にか、すぐ近くまで来ていたようだ。
「ぬらりひょん様!」
「おりん、さちの体からすぐに離れろ。これは命令だ」
「は、はい……。申し訳ございません……!」
驚いたおりんは巻き付けていた首を離し、さちの体を解放した。しゅるしゅると音を立てながら、首を元に戻していく。
(ぬ、ぬらりひょん様……?)
ぬらりひょんを呼ぼうとしたが、声が出すことができない。ようやく楽になったさちだったが、もはや立っていることもできなかった。ゆっくりと倒れていくさちを、ぬらりひょんはその腕でしっかりと抱き止めた。
「ぬ、ぬら……さま……」
ぬらりひょんの腕の中で、さちはかすれた声を出した。
「すぐに気付いてやれなくてすまぬ。さち、大丈夫か?」
心配そうにさちを見つめるぬらりひょんの姿が、涙でぼやけていく。遠のいていく意識の中で、さちはぬらりひょんの着物の袂をそっと掴み、心から思った。
(ああ、わたしは、ぬらりひょん様のおそばにいたい。たとえ妻として認められなくても……)
耐えることしか知らぬさちには、ぬらりひょんへの気持ちが仄かな恋心になっていることに気付いていなかった。まだ生まれたばかりの感情であったが、さちの心を確かに突き動かしていた。
自らの思いを自覚する時間もなく、さちはゆっくりと意識が遠のいていった。
さちが土間の掃除をしていた時のこと、女と思われる、しとやかな美しい声が正門から響いてきた。
「ごめんください」
「はーい」
(女の方のお客様かしら、珍しいこともあるものね)
ぬらりひょんの屋敷に来る客は、あやかしがほとんどだ。そのあやかしの多くも目まぐるしく変わりゆく日本についていけず、幽世へ行ってしまったと聞く。残っているものは、理由があるか、好んで残っているものばかりだ。以前は人間もぬらりひょんの屋敷に来ていたというが、今は来るものは少ない。さちもこの屋敷に来て、人間と会ったことがなかった。
「ごめんくださいませ」
「はーい、お待ちください」
九桜院家でも、ぬらりひょんの屋敷でも、外の者と会うことが少ないさちは、客人に慣れていない。一つ目小僧や油すましは土間からひょっこり顔を出すし、化け火は元からかまど辺りにいる。
(えっと、失礼のないようにしないと)
着物の埃を払い落とし髪を整えると、門のほうへ走っていった。緊張で速まる鼓動を呼吸でなんとか整える。
(私はぬらりひょん様の嫁としてここにきたのだもの。正式な妻と認められたわけではないけれど、ぬらりひょん様のお客様の一人や二人、ちゃんと応対できないとね)
自らに言い聞かせ、心を落ち着かせると、引戸をゆっくりと開けた。
「お待たせして申し訳ありません」
門の前に立っていたのは、華やかな着物を着た美しい女性だった。すらりと背が高い。
さちにとって、この世でもっとも美しいのは、姉の蓉子だと思っている。蓉子は深窓の令嬢らしい、奥ゆかしくて品の良い美しさだ。
今さちの目の前に立っている女は下町の人間らしく、親しみのもてる華やかさを漂わせている。美しさでは蓉子とひけを取らないが、蓉子の艶やかさとはまた違う美貌だ。
「おや」
女は小柄なさちを見下ろすと、不思議そうな声を発した。
「あんた、ぬらりひょん様の女中さんかい?」
いきなり「女中」と言われて驚いたが、九桜院家での生活を思えば、女中と思われても不思議はない。
「は、はい。私はぬらりひょん様の嫁としてここに参りましたが、今は家事手伝いとして働かせていただいております」
どもってしまったところが情けないが、なんとか自分の立場を伝えることができたさちだった。
「よめぇ!? あんたがかい?」
女は仰天したようで、さちの頭の上で大きな声を発した。
「ぜったい、嘘だよね。あんた、本当はただの女中なんだろう。嘘はいけないよ、嘘は」
女はさちの華奢な肩を掴み、かくかくと前後に揺らしながら真偽を問おうとする。ゆらゆらと揺らされて、目が回りそうになりながらも、さちは懸命に伝える。
「う、嘘ではございません。わ、わたしは、ぬらりひょん様のところに嫁として参りました九桜院さちと申します」
「九桜院?」
九桜院の名前を出した途端、さちの肩を揺らす女の手がぴたりと止まった。
「ふぅん、なるほどね」
女は腕を組み、さちを上から下へと、品定めするような視線でしげしげと見つめている。なぜそのような目で見られるのか、さちには理由がわからない。
「あ、あの」
おそるおそる声をかけると、女はさちの声にやっと気付いたというように顔を向けた。
「ああ、悪いね。あたしはおりんって言うの」
自らをおりんと名乗った女は、ようやく笑顔を見せた。
「おりんさん、とおっしゃるのですね。私は……」
「ああ、知ってる。九桜院家の娘だろ。さっき名乗ったじゃないか。ただの人間ってことだろ?」
「え? ええ、私は人間ですけど……」
おりんは愛想よく笑っているが、その視線は突き刺すように冷ややかだ。さちを虐めていた九桜院家の使用人たちの視線を思い出し、さちの体はこわばっていく。
「ただの人間ってことはさぁ……こういうの、どうだい?」
おりんはにやりと笑い、自らの顔を指差した。さちがおりんの美しい顔を見つめた瞬間、女の首は音もなく、するすると伸びていく。
「え……?」
驚いて固まるさちの目の前で、おりんはさらに首を伸ばしていく。白い首筋が妙になまめかしい。伸ばした首をくねらせながら、おりんはさちの顔をのぞき込む。
「うふふ……。あたし、きれい?」
長く伸びた首をくるりと回転させながら、おりんはにたぁと笑った。
さちはしばし声も出なかった。見目麗しい女の首が伸びる。彼女が人間ではないことは一目瞭然だ。かたかたと体が震えていく。
「あ、あ、う……」
うめき声のようなさちの声を聞いたおりんは、満足そうに微笑み、うひひと笑ってみせた。
「怖いだろう? 怖かったら、このお屋敷をさっさと出ておいき」
さちをにらみつけたおりんは、冷たく言い放つ。
「あたしの姿を見て怖がる人間は、ぬらりひょん様の嫁にふさわしくないんだよ。不相応な婚姻は不幸を呼ぶだけ。理解したなら、とっとと出ていきな!」
おりんの怒鳴り声に、さちはようやく理解した。おりんはさちを、ぬらりひょんの屋敷から追い出したいのだと。
(ぬらりひょん様のお屋敷を出ていく……?)
思い出すのは、さちを見つめる、ぬらりひょんの優しい微笑み。自分を「さち姐さん」と慕う一つ目小僧に、いつも油を分けてくれる油すまし。温かな火を起こして、料理作りを手助けしてくれる化け火。
さちはぬらりひょんの屋敷で、心から笑うことができた。さちが作る料理を美味しいと喜び、笑顔を見せてくれるあやかしたちの存在が、どれだけ嬉しいことか。
(……いや、私は出なくない)
さちは唇を噛みしめると、おりんをその目でしっかりと見据えた。
「で、出ていきません! わ、私はぬらりひょん様の妻ですから!」
体はまだ震えている。けれど、もう迷いはなかった。
「あなたなんて、ち~っとも怖くありません! ただ首が伸びるだけじゃないですか!」
「な、なんだってぇ?」
驚いたのは、おりんのほうだった。かたかたと震え続けることしかできない少女が、必死に自分に歯向かってきたのだから。
「生意気な娘だね。少し痛い目に合わないとわからないのかい?」
おりんは長く伸びた首を、さちの細い体にくるくると巻き付けていった。しなやかな白い首が、さちの体をゆっくりと締め付けていく。恐ろしさで叫ぶこともできないさちをあざ笑うように、おりんはさちの真正面に顔を運び、にたぁっと笑って見せた。その表情の恐ろしいことといったら。まるで地獄の底から呪い殺しにきたかのようだ。
「ひ……」
さちが声にならない小さな叫び声を発すると、おりんはうふふと笑いながら、さらに体を締め付けていく。
「ほぅら、怖いだろ? 苦しいだろ? 今すぐここを出ていくと言ったら解放してやるよ」
恐怖のあまり、さちは気を失いそうだった。自分の体にぴったりと密着したおりんの白い首は、ぞっとするほど冷たく感じられた。
(こわい……でも、わたしは……!)
「い……」
「い? なんだい? 何て言ったんだい?」
気が遠くなりそうになるのをどうにか堪えながら、さちはありったけの力を込めて叫んだ。
「いやです!! わたしは、でていきません!」
虐げられる毎日を、ただ耐えることしかできなかったさちが、自分の意志を貫いた瞬間だった。
「な、なんて強情な……!」
怒ったのか、おりんがさらに首を伸ばそうとした時だった。
「そこまでだ、おりん。止めよ!」
ぬらりひょんの冷ややかな声が響いた。いつの間にか、すぐ近くまで来ていたようだ。
「ぬらりひょん様!」
「おりん、さちの体からすぐに離れろ。これは命令だ」
「は、はい……。申し訳ございません……!」
驚いたおりんは巻き付けていた首を離し、さちの体を解放した。しゅるしゅると音を立てながら、首を元に戻していく。
(ぬ、ぬらりひょん様……?)
ぬらりひょんを呼ぼうとしたが、声が出すことができない。ようやく楽になったさちだったが、もはや立っていることもできなかった。ゆっくりと倒れていくさちを、ぬらりひょんはその腕でしっかりと抱き止めた。
「ぬ、ぬら……さま……」
ぬらりひょんの腕の中で、さちはかすれた声を出した。
「すぐに気付いてやれなくてすまぬ。さち、大丈夫か?」
心配そうにさちを見つめるぬらりひょんの姿が、涙でぼやけていく。遠のいていく意識の中で、さちはぬらりひょんの着物の袂をそっと掴み、心から思った。
(ああ、わたしは、ぬらりひょん様のおそばにいたい。たとえ妻として認められなくても……)
耐えることしか知らぬさちには、ぬらりひょんへの気持ちが仄かな恋心になっていることに気付いていなかった。まだ生まれたばかりの感情であったが、さちの心を確かに突き動かしていた。
自らの思いを自覚する時間もなく、さちはゆっくりと意識が遠のいていった。
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