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第二章 新たな生活とじゃがいも料理あらかると
目覚め始めたさちの気持ち
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さちはまどろみの中で、かすかな温もりを感じていた。さちの手を誰かが握っているのだ。
(手が温かい。だれ? 母様? それとも蓉子お姉様?)
冷えたさちの手を温めてくれた者は少ない。父の壱郎にいたっては、手を繋いでくれた記憶さえない。
ゆっくり目を開けると、さちの手を握りしめていたのは、ぬらりひょんだった。長年の水仕事や掃除でひどく荒れている手を、ぬらりひょんがつつみ込むようにそっと温めてくれていたのだ。
「ぬ、ぬらりひょん様!?」
「さち? 目覚めたか、良かった。心配したぞ」
ぬらりひょんはまださちの手を握っている。次第に自分がなぜ布団で横になっているのか、少しずつ思い出していく。
(そうだ、私はおりんさんに、『この屋敷を出ていけ』って言われて。断ったら、おりんさんの首が伸びて……。最後に助けてくれたのが、ぬらりひょん様……)
遠くなっていく意識の中で感じたのは、ぬらりひょんを慕う気持ちだった。ぬらりひょんの嫁としてここに来たが、それが何を意味するのか、ぼんやりとしか理解できていなかった。まして、ぬらりひょんからは、嫁として認めるつもりはないと言われていたのだから。
しかしぬらりひょんの傍にいることで、さちは洋食を作り、ぬらりひょんを始めとしたあやかしたちに喜ばれる幸せを感じることができた。さちにとってぬらりひょんは恩人といっていい。
(わたし、ぬらりひょん様のおそばにいたい。できることならこの先もずっと……)
ちらりとぬらりひょんを見ると、変わらずさちの手を握ったまま、心配そうに見守っている。ぬらりひょんのことを意識した途端、さちの体は一気に火照っていく。
(ぬらりひょん様が、私の手を握っている。荒れすぎて汚い手を……!)
「い、いやっ!」
急に恥ずかしくなったさちは、小さく叫びながら、ぬらりひょんの元から自分の手を引き抜いてしまった。
「さち? どこか具合が悪いのか?」
手を引き抜かれたぬらりひょんは、怪訝な顔をしている。ぬらりひょんはただ、さちのことを心配していただけだというのに。
「や、やだ、私ったら失礼なことを。申し訳ありません、ぬらりひょん様!」
さちは飛び起きると、布団の横で土下座をして頭を畳に叩きつけた。高鳴っていく心臓の鼓動と、恥ずかしさで頭がおかしくなりそうだ。
「謝られるのは好きではない、と言ったろう? さち」
「そ、そうでした。ご、ごめんなさい、あ、いえ、ち、ちがうんです。ですから、あの」
さちはもはや何を言えばいいのかわからない。ただただ恥ずかしくて、この場を逃げ出したい気分だ。
「顔をあげよ、さち」
「で、でも」
「わしは怒っておらん。ただおまえのことが心配なだけだ。だから顔をあげよ」
「は、はい……」
ゆっくり顔をあげると、ぬらりひょんは穏やかに微笑んでいた。その微笑みを見た途端、さちの体はどうしようもなく熱くなっていく。
「どれ……」
ぬらりひょんはさちのおでこに手を伸ばし、ひんやりした大きな手をあてた。
「ふむ。顔が赤いし、体も熱いようだ。風邪をひいたか? 今日はゆっくり休め。おぬしは働き者だが、無理はいかんぞ」
おでこを通して、ぬらりひょんの優しさと温もりが伝わってくる。さちの体はますます熱くなっていく。
「おおぅ。体がどんどん熱くなっていくではないか。これはいかん。さち、早く休みなさい」
ぬらりひょんはさちの背中に片手をおくと、抱くようにして、さちの体を横にさせようとする。
(わたしの体、いったいどうしてしまったの? ぬらりひょん様は私をただ心配しているだけなのに)
体の火照りと、胸の高鳴りがとまらない。心臓が今にも飛び出てきそうで、さちの心はもう限界だった。
「え、あ、ぬら、さま」
酸素が吸えない金魚のように、ぱくぱくと口を動かしていたさちだったが、やがて仰向けに卒倒してしまった。
「さち!? さち、どうした!」
再び遠くなっていく意識の中で、ぬらりひょんに抱かれているのを感じる。より一層火照っていく体と心をを受け入れることができず、さちは完全に気を失ってしまったのだった。
(手が温かい。だれ? 母様? それとも蓉子お姉様?)
冷えたさちの手を温めてくれた者は少ない。父の壱郎にいたっては、手を繋いでくれた記憶さえない。
ゆっくり目を開けると、さちの手を握りしめていたのは、ぬらりひょんだった。長年の水仕事や掃除でひどく荒れている手を、ぬらりひょんがつつみ込むようにそっと温めてくれていたのだ。
「ぬ、ぬらりひょん様!?」
「さち? 目覚めたか、良かった。心配したぞ」
ぬらりひょんはまださちの手を握っている。次第に自分がなぜ布団で横になっているのか、少しずつ思い出していく。
(そうだ、私はおりんさんに、『この屋敷を出ていけ』って言われて。断ったら、おりんさんの首が伸びて……。最後に助けてくれたのが、ぬらりひょん様……)
遠くなっていく意識の中で感じたのは、ぬらりひょんを慕う気持ちだった。ぬらりひょんの嫁としてここに来たが、それが何を意味するのか、ぼんやりとしか理解できていなかった。まして、ぬらりひょんからは、嫁として認めるつもりはないと言われていたのだから。
しかしぬらりひょんの傍にいることで、さちは洋食を作り、ぬらりひょんを始めとしたあやかしたちに喜ばれる幸せを感じることができた。さちにとってぬらりひょんは恩人といっていい。
(わたし、ぬらりひょん様のおそばにいたい。できることならこの先もずっと……)
ちらりとぬらりひょんを見ると、変わらずさちの手を握ったまま、心配そうに見守っている。ぬらりひょんのことを意識した途端、さちの体は一気に火照っていく。
(ぬらりひょん様が、私の手を握っている。荒れすぎて汚い手を……!)
「い、いやっ!」
急に恥ずかしくなったさちは、小さく叫びながら、ぬらりひょんの元から自分の手を引き抜いてしまった。
「さち? どこか具合が悪いのか?」
手を引き抜かれたぬらりひょんは、怪訝な顔をしている。ぬらりひょんはただ、さちのことを心配していただけだというのに。
「や、やだ、私ったら失礼なことを。申し訳ありません、ぬらりひょん様!」
さちは飛び起きると、布団の横で土下座をして頭を畳に叩きつけた。高鳴っていく心臓の鼓動と、恥ずかしさで頭がおかしくなりそうだ。
「謝られるのは好きではない、と言ったろう? さち」
「そ、そうでした。ご、ごめんなさい、あ、いえ、ち、ちがうんです。ですから、あの」
さちはもはや何を言えばいいのかわからない。ただただ恥ずかしくて、この場を逃げ出したい気分だ。
「顔をあげよ、さち」
「で、でも」
「わしは怒っておらん。ただおまえのことが心配なだけだ。だから顔をあげよ」
「は、はい……」
ゆっくり顔をあげると、ぬらりひょんは穏やかに微笑んでいた。その微笑みを見た途端、さちの体はどうしようもなく熱くなっていく。
「どれ……」
ぬらりひょんはさちのおでこに手を伸ばし、ひんやりした大きな手をあてた。
「ふむ。顔が赤いし、体も熱いようだ。風邪をひいたか? 今日はゆっくり休め。おぬしは働き者だが、無理はいかんぞ」
おでこを通して、ぬらりひょんの優しさと温もりが伝わってくる。さちの体はますます熱くなっていく。
「おおぅ。体がどんどん熱くなっていくではないか。これはいかん。さち、早く休みなさい」
ぬらりひょんはさちの背中に片手をおくと、抱くようにして、さちの体を横にさせようとする。
(わたしの体、いったいどうしてしまったの? ぬらりひょん様は私をただ心配しているだけなのに)
体の火照りと、胸の高鳴りがとまらない。心臓が今にも飛び出てきそうで、さちの心はもう限界だった。
「え、あ、ぬら、さま」
酸素が吸えない金魚のように、ぱくぱくと口を動かしていたさちだったが、やがて仰向けに卒倒してしまった。
「さち!? さち、どうした!」
再び遠くなっていく意識の中で、ぬらりひょんに抱かれているのを感じる。より一層火照っていく体と心をを受け入れることができず、さちは完全に気を失ってしまったのだった。
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