余命一年の転生モブ令嬢のはずが、美貌の侯爵様の執愛に捕らわれています

つゆり 花燈

文字の大きさ
40 / 204
【閑話】取り換え姫と世界樹の守護者

取り替え姫

しおりを挟む
 『取り換え姫と世界樹の守護者』

 それはかつて、神々が集っていたというリネス国の史実を元に語られた、このリトリアン王国に伝わる哀しい御伽噺。








 今は昔。神々が集うリネスに、王に見初められ、望まぬ結婚を強いられた美しい娘がいた。



 娘には将来を誓い合った婚約者がいたが、王は娘を望んだ。

娘をとても愛していた娘の婚約者は、娘を連れて逃げようとする。だが、呆気なく二人は捉えられ、娘の目の前で娘の婚約者は殺されてしまう。

さらに娘は年若い弟の命を盾に取られ、泣きながら王の元に嫁いだ。



 娘は王の妃となった。
王は王妃を娶ってからというもの、若く美しい王妃にかまけてまつりごとを疎かにするようになる。

何人もの忠臣たちが王に諫言する。だが、王がその言葉を聞き入れる事はなかった。

やがて王妃は傾国と呼ばれ、王を誑かした悪女と陰口を囁かれはじめた。



 そんな頃、王妃は懐妊する。
王妃は王の子など望んではいなかった。


 だが、王妃はふと考えた。
このリネスは、異世界から現れた勇者がリネスの女神と結ばれ、初代国王となった国。それによって、王の血筋は最も尊ばれている。

王妃の腹の中にいるのは、この国で最も大切な血を持つ存在だった。



傾国と呼ばれた王妃は、彼女の最も大切な婚約者を奪ったこの国から、最も大切な女神と勇者の血筋を奪い、傾国の名のとおりリネスを滅ぼす事を誓う。

やがて王妃は娘を産んだ。そして王妃は秘密裏に、生まれたばかりの王女を平民の娘とすり替えた。




 平民の娘はアリーチェと名づけられ、王女として宮殿で育った。

 アリーチェには王の愛妾から生まれた兄王子がいた。兄王子はとても美しい見目をしているが、常に顔色が悪く、よく寝込んでいた。散歩する為に庭に出ても、転んで怪我をする。それ程に体が弱かった。




 そんな立場の弱い兄王子を見て、アリーチェはわがまま放題に振る舞いはじめた。

「お兄様と一緒に食事がしたいわ。お兄様は決して一人でお食事しては駄目よ」

そう言って、病弱な兄がどんなに体調が悪くても、常に自分と食事を共にする事を強要した。


ある時は、

「お兄様のお皿の方が美味しそう、そっちと交換してちょうだい」

兄王子の前に置かれた皿と自分の皿を、無理矢理取り替えさせようとした。慌てた侍女は皿を落とし、アリーチェの不興を買い王宮を追われてしまう。


またある時は、

「お兄様は一人でお散歩に行っては駄目よ。私と一緒に手を繋いで散歩してね」

兄王子が自由に行動する事すら禁じた。



 さらには、兄王子の交友関係にまで口を挟みはじめた。

「お兄様にあんな身分の高い方は釣り合わないわ。それにこんな高級な紅茶なんて贅沢よ。私が貰っていくから」

アリーチェは悪びれる事すらなく、兄王子が友人にプレゼントされた特別な茶葉・・・・・を奪ってしまう。

そしてそれを飲みもせず、暖炉の火に投げ入れた。



 王妃の娘である事をかさにきて、愛妾の息子である兄王子を我儘で振り回すアリーチェ。その悪名は、やがて国中が知る事になった。

姿かたちは全く王妃に似ていないが、やはりあの王妃の娘だと皆が噂した。



 その頃、兄王子は寝込む事がなくなり、顔色も良くなった。転んで怪我をする事もない。

兄王子は勉強に公務にと忙しかったが、アリーチェのわがままは止まらなかった。




 そんなわがまま放題のアリーチェは、ある時王命で高位貴族のとても美しい少年と婚約した。

 その頃のリネスの貴族達は、皆多かれ少なかれ魔力を持っていた。そして、アリーチェの婚約者に選ばれた少年は、群を抜いて多くの魔力をもっていた。

少年はとても真面目で、努力家だった。
彼は王女であるアリーチェに相応しい人間になる為、失われた魔法が書かれた古文書を独学で読み解く。
そして彼は最年少で最高位の魔術師となった。



 その頃になると、王妃の娘であるアリーチェを女王にするよりも、健やかに賢く育った王子が王となるべきだという声が大きくなっていった。




 そして、アリーチェと高位魔術師の青年との婚姻まで、あと一年という頃。

本物の王女と平民の娘が取り換えられているという事実が露見した。







しおりを挟む
感想 111

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。