余命一年の転生モブ令嬢のはずが、美貌の侯爵様の執愛に捕らわれています

つゆり 花燈

文字の大きさ
76 / 204
第二章

2

しおりを挟む

「勝つまでって。勝負の意味…。いや、今はそれはいい。いや、よくないか? まあいい。それで、君の方は、その招待状を手に入れるために、何を賭けたんだ?」

「何をと言われても、私が勝つまでやったので、色々賭けましたが…」

 レオナルドの問いに、アリシティアは唇に人差し指を当てて、左上に視線を向けうーんと考え込む。

「甘いお菓子が一番多かったかな?」

「はあ? 甘い菓子??? どこか有名店とかの?」

 思わずリカルドが口をはさむ。

「いいえ、私が作った揚げ菓子とか焼き菓子です。あとは飴玉とか?です。一緒に勝負していた人はペンとか、封筒とか。あ、あと、お願いをなんでも叶える券とかも作って賭けていました。まあ、基本はその辺にあるものですね」



 青い月明かりの下で、テーブルに揺れるいくつもの灯りに照らされ、面接に挑む就活生のようにアリシティアはにこやかに答える。そんな彼女を前に、二人の騎士は絶句していた。

 お願いをなんでも叶える券を、前世でいうところの、子供のお手伝い券や肩たたき券などと、同様にみなしたのかもしれない。実際には、王弟の発行した印章入りの誓約書なのだが。


 他の二人の出してくる物とはレベルが違い過ぎる物を賭けていたのはアリシティアくらいだ。だが、アリシティアにとっては、それこそどうでも良い事だった。
 



「結果的には、一通はなんとか自力で頑張って勝ち取ったのですが、ソニア様がお強すぎて、何度挑んでもソニア様に二度は勝てなかったので、とりあえずもう1人から勝ち取ったお願いをなんでも叶える券を使って、その人が手に入れていたソニア様の招待状を、私が手に入れました」

 さも、正々堂々勝負して手に入れたかのようにアリシティアは言う。実際には子供が親にわがまま放題な条件を押し付けて遊んで貰い、勝ったと自慢しているような状態でしかない。

 そんなアリシティアの言葉に呆然とした二人の騎士の耳には、虫達の求愛のノイズがやたらと響いていた。

「その辺にあるもの扱い…。ソニア・ベルラルディーニのサロンの特別演奏会への招待状が…」

 呆然と呟くリカルドの目は死んだ魚のようにうつろで、レオナルドからは表情が抜け落ちた。




 虫達の鳴き声が、やたらと耳についた。風が心地よくすり抜ける。蚊がいないのは、流石異世界と言うところだろう。



 そんなどうでも良い事を考えながら返事を待つアリシティアの前で、二人の青年は、ただひたすら呆然としていた。

 それをしばらく眺めていたアリシティアは、自分の作戦がうまくいかなかったと判断した。そうなると彼女に残された道は、迅速な撤退のみだった。
 


「…やはり、非常識なお願いでしたか。どうか、この事は、お忘れください」

 そう言いのこして、立ち上がろうとした瞬間。

「ちよっ、待った!! 実は俺、今まで取り繕っていたけど、めっちゃくちゃやばい所に平気で出入りするような屑なんだ」

リカルドが突如、告白を始めた。

 リカルドについて、調べ尽くしているアリシティアは、「こいつは何を言い出したんだ?」とでも言う風に、キョトンとした顔で小首を傾げた。

実はリカルドは熟女好きで、自重に耐えられなくなり垂れた巨乳の胸の谷間に、顔を埋めてその感触を楽しむのが好きだ。ほんのり微妙な性的嗜好の巨乳フェチではあるが、屑とは言い難い。

 その言葉に続いてレオナルドまで、「実は俺も、勘当寸前のろくでなしだ」等と自己申告をする。それを聞いて、顎に指をあてたアリシティアは「んん?」と考え込んだ。


 たしかにレオナルドは結構遊んでいる。付き合う女性の取っ替え引っ替えが激しい。もしアリシティアがレオナルドの婚約者なら、レオナルドのあそこを輪切りにして切り落としているレベルだ。

 けれど、そんな彼にこれ幸いと、過去お試しで何人か細マッチョ好きな女性を送り込んでみたりもした。

 だが、分かったのはベッドの上では意外とねちっこくて言葉攻めが好きで、お相手の女性に隠語を言わせて楽しむという性癖だけだった。自分が彼女なら御免被りたいが、他人なのでどうでもよいと思える情報以外はなにも得られなかった。


 別に言葉攻めが好きでも問題はないし、女を取っ替え引っ替えしていても、勘当されるレベルのろくでなしではない。

 とはいえ、レオナルドは小説の中でエヴァンジェリンと結ばれるのだ。消去法で彼しか残らなかった事もあるが…。小説のヒーローがこんなに下半身が緩くて良いのだろうか。



──── あれか? ヤリチンチャラ男がヒロインに恋をしたら、一途になるというやつか?!


 そんなことを考えながら、アリシティアは思わず遠い目になった。



しおりを挟む
感想 111

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。