余命一年の転生モブ令嬢のはずが、美貌の侯爵様の執愛に捕らわれています

つゆり 花燈

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第三章

【小休憩SS】君の名は…みたいな?話

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※期間限定で掲載していた短編を再掲載します。

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 ある日、アリシティアがいつものごとく、錬金術師の塔の5階、ベアトリーチェの部屋でゴロゴロしていた時のお話。



 アリシティアはふと感じた疑問を口にした。

「ねぇ、熊ちゃん、熊ちゃん。どうしてあなたはベアトリーチェなの?」

「熊ちゃんって呼ばないでよ。それに、その微妙に『ロミオとジュリエット』臭がする言い方するのやめてくれない?」

 ベアトリーチェは薬品を混ぜながら、不機嫌に答えた。

「ああ、ジュリエットのバルコニーでのシーンね。愛の告白のように思わせておいて、その実、ストーカーロミオの不法侵入に盗み聞きに、夜這いと言う、犯罪のオンパレード。天才が書くと、ストーカー犯罪だって美しい愛の感動話にできるという…」

「あんたって、本当に乙女心とか無縁ね」

 ベアトリーチェは呆れたように嘆息した。
 それを横目に、再びアリシティアは疑問を口にする。

「私はいいの。それよりも、なんでベアトリーチェなの?」

「んーそうねぇ。なんとなくかしら。ルクレツィア、オフィーリア、ベアトリーチェが候補に浮かんだの。それでね、ウィルキウスって、なんとなくウェルギリウスに似てるなと思ったの」

「ヴァルプルギス」

 アリシティアが似ているようで、少しも似ていない言葉を口にする。

「違うわよ、それだと魔女のサバトの夜になるじゃない」

「魔女関連から連想したのかと…」

「違う。ウェルギリウス。古代ローマ文学の最高傑作のアエネイスの作者よ。ダンテの神曲に出てくる人」

「ああ、地獄の下層への道案内の人。キリスト誕生以前に生まれた未洗礼者だからって、天国にいけないという理不尽な理由で辺獄にいる人」

 ベアトリーチェは小学生の理科の実験に使うような器具を使って蒸留しているハーブからできた精油を覗き込んだ。

「理不尽とか言ったら、怖い人に怒られたら困るからダメ」

「メタい」

「メタい言うな!ともかくウェルギリウスがダンテを地獄から煉獄へと案内して、そこから彼に変わりダンテを天国へ導くのが、永遠の淑女ベアトリーチェ」

「あれよね、ダンテとすれ違い様に会釈しただけなのに、キモ男なダンテに勝手に運命を感じられて、ナマモノのネタにされて、死んでもなお、彼の妄想被害にあい続けた女性よね」

 アリシティアは一人うんうんと頷いている。

「やめて、イタリア文学史上最高の古典文学なのよ。世界の文学史上でもとてつもなく重要で、キリスト教カトリックにおいては、数で三位一体を表現した、史上最高の叙事詩なの。実在創作みたいに言わないで頂戴!」

「ダンテが天才すぎたせいで、高尚すぎる文学になっただけの、同人…」

「それ以上言うと怖い人に怒られるわよ」

「めっちゃメタい…」

「ともかく、ウェルギリウスの役目を引き継ぐのはベアトリーチェで、何よりも美しくしとやかで、穢れのない永遠の淑女って私にピッタリじゃない?って思ったのよ。だからベアトリーチェにしたの。以上。この話は終わりよ」

「……ベアトリーチェって、かなりナルシストよね」

 聞きたかったのは、なぜ女性名の偽名を使っているかだが、微妙にすれ違ったのか、あえて話をそらされたのか分からず、アリシティアは頬を膨らませてベアトリーチェを睨んだ。



────────────  

この時のベアトリーチェの名前のチョイスの由来が本編に出て来ましたので、未読の方の為に再掲載します。

作者事情により更新が出来ず、本当に申し訳ありません。
楽しみにしてくださっている皆様には、心よりお詫び申し上げます。


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