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第三章
【小休憩SS】誰にだって怖い物はあるよね…みたいな?話
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意味がわかれば怖い話…っぽい。
ベアトリーチェのトラウマ回想あり。熊の怖い話が出て来るので閲覧注意です⚠️
TwitterのSSに掲載した話を、加筆して掲載します。
────────
ある日、アリシティアが錬金術師の塔の5階、ベアトリーチェの部屋で周辺国の地図を広げていた時のお話。
アリシティアはふと感じた疑問を口にした。
「ねぇ、熊ちゃん、熊ちゃん。この塔って、熊ちゃん以外の住人を見た事ないんだけど、何人くらい住んでるの?」
「熊ちゃんって呼ばないで。今更何言ってるのよ。一階ごとに一人ずつ住んでるわよ」
ベアトリーチェは古い手書きの本のページをめくり、抑揚のない声で答えた。
「そうなの?だとしたら、この塔は7階建てだから、ベアトリーチェを入れて七人?」
「そうね。だけど一階の住人以外は、私ですら滅多に顔を合わす事はないわ。まあ、顔を合わせないに越した事はないけどね」
「一階の住人って。もしかして」
「そういつも一階のフロアのカウンターで、本を読んでる人。彼はこの塔に来る客を選別してるから、だいたいあそこにいるの」
ベアトリーチェの言葉に、アリシティアは一階のフロアでいつも本を読んでいる、やる気のない受付係を思い出す。
「ふーん。あの人ここの住人だったのね。でも、あと五人も住んでる割に、全く見かけないのはなんで?」
「夜行性だからじゃないの?」
「夜行性?昼夜逆転してるオタクみたいな人達って事?」
「違うわ。あいつらは夜になると墓穴から這い出てくる幽鬼よ」
忌々しげに呟いたベアトリーチェの声は、普段より一段と低かった。
「それって、あくまでも比喩よね?!」
アリシティアはふるりと身体を振るわせ、何か恐ろしい物から自分を守るように、自らの身体を抱きしめる。
そんなアリシティアを横目に、ベアトリーチェはほんの僅かではあるが、口角を持ち上げた。
「ああ、そう言えばあんた、怖い話が苦手だったわね。ねぇ、あんたも知ってるでしょ?この塔にまつわる怖い話」
ベアトリーチェの言葉にアリシティアは眉根を寄せ、ベアトリーチェを睨んだ。
錬金術師の塔については、さまざまな噂がある。石炭を金に変える研究やホムンクルスの研究など、まさに錬金術の王道的な研究をしている人が住んでいると言う噂もあれば、
『塔の住人は遺体に生きている人の魂を入れる、″生きた死体″ の研究をしていて、遺体を集めている』
とか、
『生きている人を美しい人形にする研究の為に、この塔にはさらわれた子供を買い取る者がいるらしい』
など、怪談じみた話も多い。そのせいで、錬金術師の塔は王宮のメイドや侍女の間では、ちょっとした怪奇スポットのように扱われ、近寄る人は殆ど居ない。
ちなみに、
『塔の中は廃墟のように埃っぽく、階段や通路は蜘蛛が巣をはり、人がいる気配はない。どの部屋の扉を開けても、中には打ち捨てられた家具がある位で、本当は誰も住んでは居ないのをこの目で確認した」
……なんて話まである。
「こ、この塔にまつわる怪談のような怖い噂は、ベアトリーチェが流した嘘ばっかりなの、ちゃんと知ってるんだからね」
「あら、知ってたの」
「知ってたわよ。全然怖くなんて、ないんだから!!」
シャーシャーと周囲を威嚇する子猫のように、アリシティアは何故か後退りながら虚勢を張る。そんなアリシティアを見て、ベアトリーチェはパタンと手元の本を閉じ、にっこりと微笑んだ。
「そうね、殆どの噂が嘘ね。私だって他の人が何をしてるか知らないもの。上の住人が、時々変な物を持ち込んだりしてるのは知ってるけど」
「変なもの?」
「気になる?」
ベアトリーチェの問いに、アリシティアはこくりと頷く。
「あんたには話してなかったわね。最初にこの塔の住人を見たのは、私がこの錬金術師の塔に来たその日。時間は真夜中を超えた丑三つ時」
ベアトリーチェは、抑揚のない声でゆっくりと話し始めた。
***
ベアトリーチェが錬金術師の塔の住人となったその日。
最も夜が深まる時間になった頃、不意に廊下の先から何かを引きずるような音が聞こえてきた。
奇妙な音は、ずるりずるりと少しずつ大きくなっていく。ベアトリーチェは誰かが部屋の前の廊下で何かをしているのかと思った。けれど次第に大きくなる音から、誰かが、何か重い物を引きずって、階段を登って来ているのだと気づく。
ベアトリーチェは奇妙に感じながらも、好奇心には勝てず、息を殺して廊下に出た。足音を立てないように歩き、月明かりに照らされた階段の下を覗き込んだ。
ベアトリーチェの視線の先には、真っ黒なローブを頭から被った男がいる。男は人の何倍もある巨大な黒い毛の塊を引きずりながら、少しずつ階段を登ってきていた。
周囲は腐臭と獣臭が満ち、ベアトリーチェは無意識に口元を手で覆う。黒い毛の塊は、ロープでぐるぐる巻きにされた熊だ。熊の裂けた腹から漏れ出た体液は、引きずられた階段に赤黒い筋を残し、この異様な臭いの元となっている。
予想もしなかった光景に、ベアトリーチェは思わず目を見開く。そんなベアトリーチェの目の前まで来たローブの男は、ベアトリーチェを見てへらりと笑った。
「やぁ、新しい住人だね。ちょうどよかった、ちょっと手伝ってくれないかい?コイツの腹に空いた穴から中身が出て、階段に散らばってしまったんだ。放置したら怒られてしまうから、申し訳ないけどアレを拾って上まで運んでくれない? お礼に新鮮な熊肉をご馳走するよ?」
男はお腹に穴が空いた熊に巻きつけたロープを片手に、階段のあちこちに点在する、月の光を反射して鈍く光る白い塊を指差した。
「新鮮な熊肉?」
思わず呟いたベアトリーチェは、男の指の先をまじまじと見た。どろりとした赤黒い体液と共に落ちている白い塊は、腐りかけの肉塊のように見える。周囲には、腐臭と嘔吐を誘発する匂いが充満していた。
「ああ、この臭いか。これはコイツじゃなくて、そこに落としてしまった肉の臭いだから、問題ないよ。数人分はあるから、ちょっと匂うけど」
ローブの男は階段の下を振り返って、ぽつりぽつりと点在する肉の塊を眺める。
ベアトリーチェは、思わず息を呑んだ。男のいうアレが、既に消化されかかった人の手や足だと気づいたからだ。
「嘘…だろ?」
深夜の階段で立ちすくむベアトリーチェが、小さく呟いたその時。
「あ、マズイ。ねぇ君、それを止めて!!」
上の階にたどりついた男が、慌てたような声をあげた。同時に階段の上からは、黒いサッカーボールのようなどろりとした塊が転げ落ちてきて、ベアトリーチェの足先に当たって、ピタリと止まった。
***
「いやーー!!!」
アリシティアの叫び声が、塔の中に響き渡った。
「私絶対変な人が住んでるアパートとかには住まない」
「まあ、私としては一人暮らしするなら、一軒家をおすすめするわ。ていうか、さっきから地図を広げて何をしてるの?」
ベアトリーチェの問いに、アリシティアは再び地図に視線を戻す。
「私ねぇ、長生きしたら老後は海のある街で暮らそうとおもって。潮騒が聞こえて、家の目の前がビーチになってるところがいいなと思って探してるの」
「あら、本当に住む場所を探してたの?まあ、あんたって、地味な引きこもり貴族の癖に、お金だけは掃いて捨てるほどあるもんね。でも、海が目の前だと、嵐の時とか大変そうよ」
「それなんだけどね。自然災害の影響を受けない地形で、治安の良い綺麗な街を探してるんだけど、これが結構難しくて」
「んー、長年の嵐の進路とか、過去の被害状況とか、街の人口推移や地場産業の資料がないと難しいんじゃない? 本格的に探すなら、それなりに時間が必要になると思うわ」
「それなのよ。だから今から良い物件を探しておこうと思って。どうせなら泳げる海がいいな」
アリシティアが嬉しそうに、地図の中の海岸線を指でたどる。そんな彼女を見て、ベアトリーチェは呆れたように笑う。
「今からって、いくらなんでも早くない?あんたの言う老後って何歳くらいなわけ?」
「んー??19歳かな?」
アリシティアの答えに、ベアトリーチェは苦笑した。
「あっそ。あんたって生き急いでるのねえ」
「何事も計画的に…ってね」
「じゃ、計画的に今日の予定をこなしましょ。まずはジビエを食べに行くんでしょ?その後は剣の手合わせね」
「そうなの、ジビエ解禁したからね」
「それって新鮮な熊肉?」
「やめて、鴨肉よ!! 私二度と熊のジビエは食べないから」
「はいはい」
「てか、ベアトリーチェはさっきの話で、その新鮮な熊肉を食べたりしてないわよね?」
「食べたと思う?」
ベアトリーチェの答えに、アリシティアはほっと安堵のため息をつく。
「ベアトリーチェが熊が怖い理由がわかって、スッキリした」
「別に怖くないから」
ベアトリーチェは不機嫌に反論しつつ、手の中の本を再び開いた。そして、最初のページに描かれている少女の絵を、しばし眺める。
青紫がかった銀の髪に、夜明け色の女神の瞳。目の前の少女をそのまま写し取ったかのような、とても美しい絵だ。
絵の隅には、この日記の持ち主であり、100年前に生きていた人形師のサインが書き込まれている。
『リーベンデイル』
ベアトリーチェは繊細な細工が施された美しい箱に本を戻し、蓋を閉めた。
やがて来るであろう残酷な未来から、今はまだその目を逸らすように。
────────────
読んでくださりありがとうございました。このお話のラストまでの詳細なプロットはできておりますが、諸事情により本編を書きすすめられずにいます。
お待ち頂いている方には本当に申し訳ありません。
この話は私が初めて書いた話でもありますので、ラストまでは書き上げたいと思っていますので、どうぞ見捨てずにいてくだされば嬉しいです。
ベアトリーチェのトラウマ回想あり。熊の怖い話が出て来るので閲覧注意です⚠️
TwitterのSSに掲載した話を、加筆して掲載します。
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ある日、アリシティアが錬金術師の塔の5階、ベアトリーチェの部屋で周辺国の地図を広げていた時のお話。
アリシティアはふと感じた疑問を口にした。
「ねぇ、熊ちゃん、熊ちゃん。この塔って、熊ちゃん以外の住人を見た事ないんだけど、何人くらい住んでるの?」
「熊ちゃんって呼ばないで。今更何言ってるのよ。一階ごとに一人ずつ住んでるわよ」
ベアトリーチェは古い手書きの本のページをめくり、抑揚のない声で答えた。
「そうなの?だとしたら、この塔は7階建てだから、ベアトリーチェを入れて七人?」
「そうね。だけど一階の住人以外は、私ですら滅多に顔を合わす事はないわ。まあ、顔を合わせないに越した事はないけどね」
「一階の住人って。もしかして」
「そういつも一階のフロアのカウンターで、本を読んでる人。彼はこの塔に来る客を選別してるから、だいたいあそこにいるの」
ベアトリーチェの言葉に、アリシティアは一階のフロアでいつも本を読んでいる、やる気のない受付係を思い出す。
「ふーん。あの人ここの住人だったのね。でも、あと五人も住んでる割に、全く見かけないのはなんで?」
「夜行性だからじゃないの?」
「夜行性?昼夜逆転してるオタクみたいな人達って事?」
「違うわ。あいつらは夜になると墓穴から這い出てくる幽鬼よ」
忌々しげに呟いたベアトリーチェの声は、普段より一段と低かった。
「それって、あくまでも比喩よね?!」
アリシティアはふるりと身体を振るわせ、何か恐ろしい物から自分を守るように、自らの身体を抱きしめる。
そんなアリシティアを横目に、ベアトリーチェはほんの僅かではあるが、口角を持ち上げた。
「ああ、そう言えばあんた、怖い話が苦手だったわね。ねぇ、あんたも知ってるでしょ?この塔にまつわる怖い話」
ベアトリーチェの言葉にアリシティアは眉根を寄せ、ベアトリーチェを睨んだ。
錬金術師の塔については、さまざまな噂がある。石炭を金に変える研究やホムンクルスの研究など、まさに錬金術の王道的な研究をしている人が住んでいると言う噂もあれば、
『塔の住人は遺体に生きている人の魂を入れる、″生きた死体″ の研究をしていて、遺体を集めている』
とか、
『生きている人を美しい人形にする研究の為に、この塔にはさらわれた子供を買い取る者がいるらしい』
など、怪談じみた話も多い。そのせいで、錬金術師の塔は王宮のメイドや侍女の間では、ちょっとした怪奇スポットのように扱われ、近寄る人は殆ど居ない。
ちなみに、
『塔の中は廃墟のように埃っぽく、階段や通路は蜘蛛が巣をはり、人がいる気配はない。どの部屋の扉を開けても、中には打ち捨てられた家具がある位で、本当は誰も住んでは居ないのをこの目で確認した」
……なんて話まである。
「こ、この塔にまつわる怪談のような怖い噂は、ベアトリーチェが流した嘘ばっかりなの、ちゃんと知ってるんだからね」
「あら、知ってたの」
「知ってたわよ。全然怖くなんて、ないんだから!!」
シャーシャーと周囲を威嚇する子猫のように、アリシティアは何故か後退りながら虚勢を張る。そんなアリシティアを見て、ベアトリーチェはパタンと手元の本を閉じ、にっこりと微笑んだ。
「そうね、殆どの噂が嘘ね。私だって他の人が何をしてるか知らないもの。上の住人が、時々変な物を持ち込んだりしてるのは知ってるけど」
「変なもの?」
「気になる?」
ベアトリーチェの問いに、アリシティアはこくりと頷く。
「あんたには話してなかったわね。最初にこの塔の住人を見たのは、私がこの錬金術師の塔に来たその日。時間は真夜中を超えた丑三つ時」
ベアトリーチェは、抑揚のない声でゆっくりと話し始めた。
***
ベアトリーチェが錬金術師の塔の住人となったその日。
最も夜が深まる時間になった頃、不意に廊下の先から何かを引きずるような音が聞こえてきた。
奇妙な音は、ずるりずるりと少しずつ大きくなっていく。ベアトリーチェは誰かが部屋の前の廊下で何かをしているのかと思った。けれど次第に大きくなる音から、誰かが、何か重い物を引きずって、階段を登って来ているのだと気づく。
ベアトリーチェは奇妙に感じながらも、好奇心には勝てず、息を殺して廊下に出た。足音を立てないように歩き、月明かりに照らされた階段の下を覗き込んだ。
ベアトリーチェの視線の先には、真っ黒なローブを頭から被った男がいる。男は人の何倍もある巨大な黒い毛の塊を引きずりながら、少しずつ階段を登ってきていた。
周囲は腐臭と獣臭が満ち、ベアトリーチェは無意識に口元を手で覆う。黒い毛の塊は、ロープでぐるぐる巻きにされた熊だ。熊の裂けた腹から漏れ出た体液は、引きずられた階段に赤黒い筋を残し、この異様な臭いの元となっている。
予想もしなかった光景に、ベアトリーチェは思わず目を見開く。そんなベアトリーチェの目の前まで来たローブの男は、ベアトリーチェを見てへらりと笑った。
「やぁ、新しい住人だね。ちょうどよかった、ちょっと手伝ってくれないかい?コイツの腹に空いた穴から中身が出て、階段に散らばってしまったんだ。放置したら怒られてしまうから、申し訳ないけどアレを拾って上まで運んでくれない? お礼に新鮮な熊肉をご馳走するよ?」
男はお腹に穴が空いた熊に巻きつけたロープを片手に、階段のあちこちに点在する、月の光を反射して鈍く光る白い塊を指差した。
「新鮮な熊肉?」
思わず呟いたベアトリーチェは、男の指の先をまじまじと見た。どろりとした赤黒い体液と共に落ちている白い塊は、腐りかけの肉塊のように見える。周囲には、腐臭と嘔吐を誘発する匂いが充満していた。
「ああ、この臭いか。これはコイツじゃなくて、そこに落としてしまった肉の臭いだから、問題ないよ。数人分はあるから、ちょっと匂うけど」
ローブの男は階段の下を振り返って、ぽつりぽつりと点在する肉の塊を眺める。
ベアトリーチェは、思わず息を呑んだ。男のいうアレが、既に消化されかかった人の手や足だと気づいたからだ。
「嘘…だろ?」
深夜の階段で立ちすくむベアトリーチェが、小さく呟いたその時。
「あ、マズイ。ねぇ君、それを止めて!!」
上の階にたどりついた男が、慌てたような声をあげた。同時に階段の上からは、黒いサッカーボールのようなどろりとした塊が転げ落ちてきて、ベアトリーチェの足先に当たって、ピタリと止まった。
***
「いやーー!!!」
アリシティアの叫び声が、塔の中に響き渡った。
「私絶対変な人が住んでるアパートとかには住まない」
「まあ、私としては一人暮らしするなら、一軒家をおすすめするわ。ていうか、さっきから地図を広げて何をしてるの?」
ベアトリーチェの問いに、アリシティアは再び地図に視線を戻す。
「私ねぇ、長生きしたら老後は海のある街で暮らそうとおもって。潮騒が聞こえて、家の目の前がビーチになってるところがいいなと思って探してるの」
「あら、本当に住む場所を探してたの?まあ、あんたって、地味な引きこもり貴族の癖に、お金だけは掃いて捨てるほどあるもんね。でも、海が目の前だと、嵐の時とか大変そうよ」
「それなんだけどね。自然災害の影響を受けない地形で、治安の良い綺麗な街を探してるんだけど、これが結構難しくて」
「んー、長年の嵐の進路とか、過去の被害状況とか、街の人口推移や地場産業の資料がないと難しいんじゃない? 本格的に探すなら、それなりに時間が必要になると思うわ」
「それなのよ。だから今から良い物件を探しておこうと思って。どうせなら泳げる海がいいな」
アリシティアが嬉しそうに、地図の中の海岸線を指でたどる。そんな彼女を見て、ベアトリーチェは呆れたように笑う。
「今からって、いくらなんでも早くない?あんたの言う老後って何歳くらいなわけ?」
「んー??19歳かな?」
アリシティアの答えに、ベアトリーチェは苦笑した。
「あっそ。あんたって生き急いでるのねえ」
「何事も計画的に…ってね」
「じゃ、計画的に今日の予定をこなしましょ。まずはジビエを食べに行くんでしょ?その後は剣の手合わせね」
「そうなの、ジビエ解禁したからね」
「それって新鮮な熊肉?」
「やめて、鴨肉よ!! 私二度と熊のジビエは食べないから」
「はいはい」
「てか、ベアトリーチェはさっきの話で、その新鮮な熊肉を食べたりしてないわよね?」
「食べたと思う?」
ベアトリーチェの答えに、アリシティアはほっと安堵のため息をつく。
「ベアトリーチェが熊が怖い理由がわかって、スッキリした」
「別に怖くないから」
ベアトリーチェは不機嫌に反論しつつ、手の中の本を再び開いた。そして、最初のページに描かれている少女の絵を、しばし眺める。
青紫がかった銀の髪に、夜明け色の女神の瞳。目の前の少女をそのまま写し取ったかのような、とても美しい絵だ。
絵の隅には、この日記の持ち主であり、100年前に生きていた人形師のサインが書き込まれている。
『リーベンデイル』
ベアトリーチェは繊細な細工が施された美しい箱に本を戻し、蓋を閉めた。
やがて来るであろう残酷な未来から、今はまだその目を逸らすように。
────────────
読んでくださりありがとうございました。このお話のラストまでの詳細なプロットはできておりますが、諸事情により本編を書きすすめられずにいます。
お待ち頂いている方には本当に申し訳ありません。
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