【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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新しい生活

122話 守られる

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いつもならグドが帰ってくる時間
今夜はディンと2人だけだ
僕は今も眼帯を着けている
既に見られた後でも、ディンがつけたから

ディンの作った夕飯を食べた
今日が最後のディンのご飯なのに、味がわからない
それどころか拒食反応まで見せている

「…食べれそうに無いか?」
「ごめん…なさい……」
「いや、無理して食べなくてもいい」

この状態に既視感があった
6歳の時、僕がアイリスの代わりとして育てられていた時
『僕じゃなくてエリーが生きていればみんな喜んだ』と思い、自分の存在そのものに否定的に何度もなった
その時は、ただ他人に従い、自分の意思も何も無く、食事すらままならなかった
そうだ、今のこれはその時に似ている
……ディンがいるかいないか
それだけで今の状況が違う
周りに敵しかいなかったら、きっと一口食べただけで嘔吐していただろう

「……どうした?さっきから様子がおかしいが」
「昔のことを思い出してた。ごめん、心配かけて……。もう大丈夫、昔に比べたらこれくらい……」
「……昔に何があったのか、聞いても良いか?」

僕は少しだけ教えた
事故で死んだと思われていた姉の代わりに生きてきたこと
幼少期は幽閉されて教育されていたこと
まともに殺しが出来なかったから、何度も痛みで教えられたこと
自分のせいで何人も苦しめたこと
何度も死に近い経験をした事

「…そうか、やっぱり俺たちはどこか似てるな」
「どうだろう。お互いに知らない事だらけだし、きっとそこまで似てはいないと思う」
「それもそうか…って、それどうした?その左手…」

ディンに言われてようやく気がついた
左手の甲、アズとの契約印が光っている
いつから?
もしかして、町で会った時?
……まずい、かもしれない
なんとか少ない魔力を使って光を消した


ディンは僕が考え込んでる間に片付けを終わらせた
そしてそのまま寝室に入った
不安と悪寒に震えていると、どこかから人の気配がした
こんな森の中だと、生き物の気配には敏感になる
それも人間なら尚更

「……誰だ?こんな時間のこんなとこに」
「ど…しよ……。嘘、見つかっ……」
「ミリー、お前は布団に隠れてな」

ディンにベッドに押し倒されて布団を被せられた
頭までしっかりと隠され、僕は息を殺す
キャンドルの灯りを消し、少しずつ近づく気配を感じとる
その気配は数分で家のドアの前まで来た

コンコン

「誰かいませんか」

その声は確かにアズのもの
本当に、特定されたんだ
契約印が光ってたのは、魔法士が主人の元へ行くための目標
すぐに消したとはいえ、方角と距離はほとんど特定されている

何も返さずにじっとしてると、アズは家の中に入ってきた
焦りから心臓が速くなる
ディンは「静かにしてろ」と小さく耳元で呟くと、寝室のドアの前に移動した

「誰だ?」
「失礼、旅の者ですが人を探していまして。『カメリア』と言う名の赤髪の男性なのですが、見ていませんか?緑と青のオッドアイ、もしくは片目を隠した状態だと思うのですが……この森で見失ってしまいまして」
「…いや、知らないな」

ディンは知らないふりをした
このまま帰ってくれるだろうか
はやく諦めて……

「そうですか、ありがとうございます。それと…すみませんが一晩、泊めてもらえませんか?」

……嘘
だめ、気付かれる…
きっとアズはまだディンを疑っているだろう
この部屋に2人いることくらい、アズはわかる

「悪いがそれは出来ない。……俺の女が寝たばかりでな。だいぶ乱れているのに客人を入れる訳にはいかないだろう?それに、疲れているだろうから起こしたく無い。これ以上の会話はしたく無いんだがな」

……なんて言い訳をしてるんだ
聞いてるこっちが恥ずかしくなる

「それは…失礼。それなら私はここを離れよう。」

上手く、行った?
……良かった
そのままアズは家を出て気配を絶った
ここでようやく僕は一息つけた

しかし、今度はディンが戸惑っていた
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